キャンピングカーだからこそ考えたい 『専用タイヤ』と走行性能について
前回は、安全なタイヤの選び方を紹介した。
さて、タイヤシリーズ第3回である。いい加減飽きた、という方もおられるだろうが、命を載せるパーツのことである。
今回で終わるのでどうかお付き合いいただきたい。
今回はシビアな条件に対応する、キャンピングカー専用タイヤについて説明しよう。
タイヤにとってシビアなキャンピングカー
ハイスピードな車、オフロードを走る車……。車には用途に応じて色々なタイプがある。
当然、それぞれの特性に見合ったタイヤが装着されるべきである。
では キャンピングカーはどうだろうか。
- 常にフル積載→貨物トラックのように、荷物(家具や装備)の積み下ろしがない
- 駐車時間が長い→商用車なら週に一度も稼働しないなどありえない
など、貨物車や商用車をベースにしている割には、それに見合った使い方をされないのがキャンピングカーである。
当然、こうした特殊な条件は、タイヤにとってもなかなかシビアである。
特殊な使われ方をする、あるいは特殊な条件下で働くキャンピングカーなのだから、専用タイヤがあってもいいだろう。というニーズにこたえて、実は、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本にも、キャンピングカー専用タイヤは存在するのだ。
今回はこれら専用タイヤについて、詳しく解説したい。
※アメリカ製キャンピングカー用タイヤについては、日本で登録できない大型クラスAや5thトレーラー用なのでここでは割愛させていただく。
キャンピングカー専用タイヤ
ブリヂストン・デュラビス・キャンパー
日本が誇る国産タイヤである。
構造そのものをキャンピングカーの特性に合わせ、ふらつきや操縦安定性にチューン。
サイズは
195/70R15 106/104L
195/80R15 107/105L
の2サイズ展開で、具体的にはカムロード、ハイエース、キャラバンの各ベース車両をカバーする。
ちなみにタイヤサイズの見方は第一回で紹介している。
これらをベースとしたキャンピングカーの純正装着タイヤと同じ、LT=LightTruck規格なので、空気圧も標準装着と同じでOK。
トレッドパターンは同社のLTタイヤ、デュラビス・R670を継承しており、通常のサマータイヤとなっている。
【試走した印象】
構造を強化してあるため、たしかにレーンチェンジや横風時のふらつきは、通常のLTタイヤよりも少ない。安心してハンドルを握っていられる。
反面、ギャップなどでの突き上げ感がやや強くなるのが難点といえる。そこを承知しておけば、段差・不整地などでは慎重になればいいだけ、ともいえる。
純正から履き替えたときに、空気圧その他を変更しなくてよいというシンプルさが利点だろう。
ミシュラン・アジリス・キャンピング
おなじみ、フランス・ミシュラン社のタイヤである。
日本やアメリカのキャンピングカーはLT=LightTruck、すなわち商用車規格のタイヤを装着している。ところが、ヨーロッパではキャンピングカーの特殊な条件を考慮した専用規格”CPr”が用意されている。
欧米の様々なメーカーがCP規格のタイヤを製造しているが、日本に正規輸入されているのはミシュラン・アジリス・キャンピングのみ。
サイズは、
215/75R16 113Q
225/65R16 112Q
225/75R16 118R
215/70R15 109Q
225/70R15 112Q
の5サイズを展開。
具体的にはフィアット・デュカトなどの欧州キャンピングカー、そして国産キャブコンにも対応している。
特徴的なのが空気圧の設定である。
225/75R16を除き、フロント475kPa・リア550kPa(225/75R16のみ、それぞれ525kPa、600kPa)と単一の設定となっている。
【試走した印象】
やや高めの空気圧設定だが、驚くほど突き上げ感が少ない。路面のギャップを柔らかくいなしていく感覚だ。もちろん、スタビリティ(走行安定性)も良好。
日本車よりもパワーのあるベース車両を採用する欧米の車両を想定しているだけあって、高速走行にも安心感のある対応だ。
M+Sなので少々の雪でも走れるのは、遠出の多いキャンピングカーとしても心強い。ただし、スタッドレスタイヤではないので、過信は禁物だ。
まとめ
最初にもお伝えしたように車が唯一接地している場所、それがタイヤである。
「走る・曲がる・止まる」は最終的にタイヤが支えているといっても過言ではない。
空気圧のチェックをマメに行うことや、TPMS(タイヤ空気圧モニター)を導入するなど、常日頃からタイヤに気を遣うことはとても大切だ。
もちろんそれはキャンピングカーに限った話ではない。が、乗用車に比べて
・重量がある
・装備が多い
・車両サイズが大きい
・重心が高い
など、キャンピングカーならではの特性があることを考えると、タイヤ選びも、タイヤの管理も、運転そのものも、キャンピングカー独自の対応が必要になることはご理解いただけるだろう。
この次にタイヤ交換の時期が来たら、ぜひ「キャンピングカー専用」のタイヤを検討してみることをお勧めする。