2020年キャンピングカータイプ別『注目したい一台はこれだ!』
まだまだ先の見えないコロナ禍。「三密を回避して遊べる!」とばかりに空前のアウトドアブームである。
例年ならとっくにオフシーズンに突入する11・12月でも、人気のキャンプ場は予約もままならないのだとか。キャンピングカー業界にもその影響は押し寄せている。
感染対策を徹底しながらのショーは大盛況で受注も好調な様子。各ビルダーは「受注をさばくのに手一杯」の状況である。
そのような状況下で、業界の動きが全般的に「従来モデルのマイナーチェンジ」に終始したのも、当然の結果であろうと思う。
それでも注目すべきニューモデルも登場している。今回は今年の総括として、注目したいニューモデルについて解説する。
目次
軽キャンピングカー
キャンピングカープロショップ・フレンドリー『CAMEL』
ベース車両はスズキ・エブリイ バン。一見すると素っ気ないほどシンプルな内装と装備である。
あれも・これも、と機能性をアピールする製品が多い中、潔いほど考え方を絞ったコンセプトが目を引く。
軽自動車の限られた室内空間を最大活用することを最優先に、レイアウトも収納も考え抜かれている。
さらに運転席・助手席ドアにまで断熱加工がほどこされるなど、目には見えない部分でのクオリティが非常に高い。
車内で長時間過ごすことをリアルに想定した、本当の意味での「快適性」を追求した一台。
一般的なサブバッテリーシステムは搭載せず、必要に応じてポータブル電源をオプション設定するなど、徹底した要・不要の割り切りが見事だ。
一言で表現するならば
・限りなくシンプルに、装備も最低限
→必要な装備はオプションで買ってね。
・空間の快適さは最重要視
→何もしなくても室内の快適さは確保しました!
・リーズナブルなスタート価格
→初心者には始めやすく、求めるものが明確になったベテランにも嬉しい設定。
という、軽キャンピングカーの本質を極めた一台といえそうだ。
バンコン
キャンピングカー長野『スペースキャンパーCOOL』
年々、夏の酷暑ぶりが凶悪になる日本で、もはやエアコンは必須装備ともいえるだろう。
バンコンにも家庭用エアコンを搭載するモデルが増えてきたが、室内機・室外機をどうにか収納せねばならない関係上、ベース車両はスーパーロング車に限られてきた。
その点、スペースキャンパーCOOLは家庭用エアコンの中でもウインドエアコンを採用することで「標準ボディ車にエアコン標準装備」を実現(ベース車両はトヨタ・ハイエース)。
その特徴を端的に列記すると、
・価格面でもサイズ面でも手ごろ
・普段使いの利便性と、旅先での涼しい環境を両立
というバンコンユーザーにとってうれしいスペックを満たした一台だ。
サイズ問題は運転上の取り回しの良しあしにとどまらず、保管場所の問題にも直結する。
保管場所に困らない=特殊な駐車場を探す必要がない=ランニングコストの低減にもつながる。
ではなぜ、このサイズとエアコンの両立が可能になったのか。
それはキャンピングカー長野社の「その手があったか!」な発想の転換によるところが大きい。
ご存知の通り、ウインドエアコンの最大の特徴は室内機と室外機が分かれていないことだが、一般的には縦型である。室内外機一体型のおかげで設置は簡単だが、キャンピングカーに設置しやすい形はしていない。
その「縦型」を「横に」設置できるように工夫したのが、同社のすごいところ。
独自の加工でドレン排水などを上手に処理。ウインドエアコンを後列右側のサイドウインドに設置することに成功した。
室外にやや張り出す部分はあるものの、そこはFRP製のカバーをとりつけてデザイン上でもうまく処理している。
夏の間、熱中症を心配することなく思う存分遊びたい。そんなバンコンユーザーにとっては朗報といえる一台である。
キャブコン
キャンパー厚木『Puppy480』
「普段使いのスモールキャブコン」をキャッチコピーに、全長4.85m・全幅1.75mという大型ワゴン車と大差ないサイズのキャブコンがデビュー。
コンパクトキャブコンというと、マツダ・ボンゴベースの車両がほとんどだったが、なんとPuppy480はトヨタ・カムロードを採用。
カムロード=フルサイズキャブコン、というイメージをくつがえした。
ボンゴが生産終了という事情ももちろんあるが、ボンゴに代わるコンパクトサイズのベース車両は現存しない。
従来ボンゴベースで作られてきたコンパクトキャブコンは、この先新たなベース車両が表れない限り、カムロードをベースに工夫することになる。いうなればその第一弾、ともいえる。
キャブコンベースとしておなじみのカムロードに小型軽量な居室を架装したことで、動力性能にもぐっと余裕が出た。
よく計算されたレイアウトと大きくとられた窓の効果で、数値上はコンパクトなサイズのはずでも、まったく狭さを感じさせないところはさすがである。
バンクベッドもダイネット展開からのベッドも、いずれも長さ190cmものベッドサイズを確保。
しかも冷蔵庫、家庭用エアコン、トリプルサブバッテリー、インバーター、昇圧走行充電システム、FFヒーターなどフル装備で598万円〜(税抜き)という価格設定も驚異的。
「キャブコンは欲しいが、普段使いにはちょっと……」そんな悩みを解決してくれる一台になりそうだ。
トレーラー
MYSミスティック『レジストロ クコ』
久しぶりに登場した、純国産キャンピングトレーラー。
一目でレジストロシリーズとわかる丸屋根など、MYSミスティック社のアイデンティティともいえるデザインを継承。その特徴的な意匠は2020年グッドデザイン賞を受賞しているほど洗練されている。
コンパクトサイズなので、さすがに「家族四人がゆったりと」とはいかず、就寝定員は3名。
だが同じけん引免許不要のトレーラーの中でも特筆すべき特徴は(条件にもよるが)「軽自動車でも牽引可能」だということ。
普段使いの車両が軽自動車だからといって、キャンピングトレーラーを諦める必要はないのだ。
気になるレイアウトはコの字型のダイネット(食卓)が中心。ベッド展開時はテーブルを下げてマットを敷き、全面フルフラットになる。
小型のギャレー(キッチン)は使い勝手の良いL字型で収納もばっちり。
外観は特徴的なデザインに目を奪われがちだが、実はレトロな雰囲気を醸し出す波板こそがキモ。
同社独自の「ボディパス工法」により、より強くしなやかで軽量なアルミフレームで構成されている(同社の自走式キャンピングカーも同様である)。
必要最低限の装備をそろえたスタンダードパッケージなら価格も239万円(税込)とリーズナブル。
キッチン収納を冷蔵庫に変更できたり、エアコンなどのオプション類も豊富だ。
構造がシンプルなだけに、自分にあった装備をチョイスできるのも嬉しい限り。ただし、オプションによっては重量がかさむため、軽自動車での牽引はできなくなるのでほどほどに。
まとめ
活動自粛を求められ、世の中全般、何事につけても「成長」しにくかった2020年。
それでも市場のニーズをしっかりつかんだ新製品は、どれも各社の労作ぞろい。
次のキャンピングカーショーではきっと会場に並ぶはずなので、ぜひチェックしてみてほしい。