今後どうなる?!日本のキャンピングカー事情を予測!
ひとくちにキャンピングカーと言っても、日本のキャンピングカーには大きく分けてふたつの系統がある。
ひとつは、トラックやワンボックスカーの荷台をDIYで加工した、ハンドメイド系。もうひとつは、バニングと呼ばれるワンボックスカーの改造から派生したもの、である。
どちらにも共通しているのは、欧米のキャンピングカーをお手本にしていることだ。
初めこそ見よう見まねだったキャンピングカーづくりも、やがて台数が増えるにしたがって、その国の風土や文化に合わせるようになってくる。
日本と欧米では、そもそも休暇の楽しみ方が違う。
道路事情も違うし、暮らしのインフラ事情も違う。そこで日本の風土、余暇文化に合わせて独自に進化したのが、現在の国産キャンピングカーなのである。
キャンピングカー人気が始まって久しいが、この10年ほどの間に、日本のキャンピングカーは長足の進歩を遂げている。
今回は、そんな日本のキャンピングカーが今後どうなっていくのか、様々な観点から予測してみよう。
ベース車
日本政府は、2035年までに純内燃機関の新車(エンジンだけで動く車=ハイブリッドやEV車をのぞく)の販売を禁止する方針である。
ではキャンピングカーのベース車両はどうなるだろうか。
まず、電気自動車について。次のような問題がある。
●充電施設の設置
●発電所の発電量の問題
キャンピングカーは旅する車である。出先で充電切れを起こしては大変なので、なるべくあちこちに充電設備を用意してもらいたい。
少なくとも現在のガソリンスタンド並みの密度で全国津々浦々になくては、安心して旅などできないだろう。
また、発電所のパワーにも限界がある。原発の稼働は差し止められ、従来型の火力や水力での発電だけでは生活インフラとしての供給でいっぱいいっぱいである。
真夏・真冬の冷暖房需要だけでもひっ迫するのに、果たしてEV充電用の電力まで供給できるか。
太陽光や風力など、いわゆるサスティナブルな発電設備は旧態の発電所をカバーできるほどの力を持てずにいる。
これらの状況をかんがみると、2035年までの約14年で、自動車すべてがEV化するのは難しいだろう。まずは、ガソリンにしてもディーゼルにしても、ハイブリッド化=HVが進むと思われる。
HV化は歓迎すべきムーブメントだ
キャンピングカーは車であると同時に、家である。つまり、家の中には電気で動くさまざまな設備がある。
電子レンジや冷蔵庫、家庭用エアコン、テレビなど、そのすべてではないにせよ、快適に寝泊まりできるだけの何らかの電気製品を積んでいるキャンピングカーは多い。
そんなキャンピングカーにとって、ベース車のHV化は歓迎すべき傾向といえる。
軽自動車を含めてHVがさらに一般的になれば、現在主流となっている独立したサブバッテリーシステムは不要になり、走行用バッテリーからの給電が前提になってゆくだろう。
これまでにも、ごく一部にトヨタ・プリウスをベースにしたキャンピングカーが登場したこともあったが、やはり乗用車であるプリウスをそのままベース車両にするには課題も多かったと思われ、プリウスのモデルチェンジ以降は出てきていない。
一方、キャンピングトレーラーユーザーの間では、すでにHV車を電源利用する動きは出ている。
例えば、三菱・アウトランダーPHEVをヘッド車にすれば、キャンプ地に入る前にフル充電にしておくと、これを給電元にしてトレーラーのエアコンや電子レンジなどがかなり潤沢に使えるほどの容量を誇る。
アウトランダーPHEVの走行用バッテリーの容量がずば抜けて大きいからこそ、なのだが、このような使い方がすでに始まっているのだ。
バンコンのベース車として人気のトヨタ・ハイエース。キャブコンベースとして人気のトヨタ・カムロード。
どちらもマイナーチェンジを繰り返してはいるが、フルモデルチェンジの噂も出回って久しい。排ガス規制がどんどん厳しくなる中、どんな形で新型が登場してくるのか注目したい。
装備はどうなる?
現在のキャンピングカーに搭載される装備のほとんどは、もはや「枯れた」テクノロジーといっても過言ではないだろう。
温水を利用した壁面暖房や床暖房となど、目新しいトピックスも多少はあるが、基本的な「家の作り」としては、1980年代ごろから、あまり変わっていない。
断熱材など、目に見えない部分に使われる素材などに多少の変化があったり、照明が白熱電球からLEDに変わったりもしたが、いずれもかなり経っている。
そんな中で、近年注目すべきは「エアコン」と「リチウムイオンバッテリー」だろう。
家庭用エアコンが必須設備に
家庭用エアコンはキャブコンのみならずバンコンにも搭載されるようになって久しい。
それというのも、家庭用エアコンの長足の進歩があってこそである。省電力化が進んだおかげでサブバッテリーでも十分に動かせる。
室内機・室外機ともコンパクト化が進んだおかげで、車載もしやすくなった。
さらに、小型の車載専用エアコンも登場。ナローボディベースのバンコンでも、無理なくエアコンが搭載できるようになった。
酷暑がスタンダードになってしまった日本の夏、もはやエアコンは必需品といっていいだろう。
小型・軽量のリチウムイオンバッテリー
エアコン搭載が当たり前になってきた要因の一つが、リチウムイオンバッテリーの台頭だ。
従来の鉛バッテリーと比較して、同容量でも倍近いエネルギーが取り出せるという出力特性がある。さらに鉛バッテリーにくらべて小型で軽量。
キャパシティーの限られるキャンピングカーにはもってこいな特徴である。
もちろん欠点もある。「管理が難しい」「高価である」といった課題が泣き所だったが、少なくとも価格については、量産が進んだことでかなり解消されてきた。
事実、標準装備にするビルダーも増えてきているのだ。
古くからのキャンピングカーユーザーで、サブバッテリーの増設を考えるときに、鉛からリチウムイオンに切り替えようという人もいる。
ネット上では、主に中国通販サイトで安価なリチウムイオンバッテリーが売られている。それらを個人輸入して、DIYでとりつければ、安上がり! と考えるのだろう。
実際、そうしたDIYで構築した例をたまに見かける。ご本人は給電容量が増えて満足だし、個人輸入+DIYの合わせ技で安上がり。
達成感いっぱい、といいたいところだが、私はあえて警鐘を鳴らしたい。
バッテリーシステムは一歩間違えれば火災を引き起こす危険性がある。
まして、ビルダーやディーラーでもない自分が個人輸入した品物で、それをDIYで取り付けて発火しても、誰も保障などしてくれない。
今後、この流れは加速しそうな気がするが、あくまでも自己責任であることは、肝に銘じておきたい。
停泊場所についても変化が
キャンピングカーが増えたことで一番問題になるのが、停泊場所だろう。
RVパークなど、キャンピングカー専用の停泊場所は、かなりのスピードで増えつつあるものの、需要を十分に満たしているとは言えない。
また、これまでサービスエリアや道の駅を利用することに慣れてしまっているユーザーの中には、有料の施設への抵抗感がある人もいる。
とは言え、キャンピングカーとて社会の一員。
道の駅などの商業施設の駐車場を長時間占領したり、ましてはゴミを捨てて帰る、公共のトイレで食器を洗う、施設から電源を勝手に拝借する、など。
一部の心無いマナー違反が取りざたされ、ついには『キャンピングカーお断り!』と締め出しを決めた施設が増えつつあるのは、憂慮すべき事態である。
一泊でも二泊でも、キャンピングカーが滞在すればごみも出る(持ち帰るのが基本)。電源だって使いたい。
そのため、ごみ処理や電源の供給など、嬉しいサービスを備えてくれる停泊施設の存在は非常にありがたいし安心感がある。
そうしたサービスにはお金がかかるのは当然だし、施設を維持するにはコストもかかる。
積極的に有料の施設を使うことで、使いやすい施設は存続できるし、数も増える。地元にお金が落ちることで、新たな雇用も生まれる。地域が活性化する。
旅人が楽しく・快適で地域が潤う、ゲインスパイラルを目指せば、キャンピングカーは全国どこでも、歓迎される存在になるはずだ。
我々の旅先は誰かの地元。キャンピングカーで遊びやすい環境を整えるには、積極的に有料施設を使う意識が求められていくだろう。