車中泊仕様車のベースには『貨物バン』が最適!その特徴やメリットとは?
ミニバン、ステーションワゴン、SUV、クロカン4WD、箱型以外の軽自動車などにも車中泊に適した車は色々ある。
しかし、自分で車内を車中泊仕様車に仕立て上げたいなら、貨物自動車ナンバーの箱型バンがベース車両として最適だ。
貨物自動車と言うと運送業や工事車両などをイメージしてしまいそうだが、ハイエース・キャラバン・タウンエース・NV200バネット、N-VANなどはこれに分類される車だ。
実際に私は、バン、トラック、ステーションワゴンなど数々の車を乗り継ぎ、現在もキャラバンとバモスの2台持ちで、どちらも自分で車中泊仕様車に仕立て上げて使っている。
そこで当記事では、商用車(貨物自動車)の箱型バンの魅力や車中泊仕様車のベース車両に向いている理由などを整理し、まとめてみた。
これから自分で車中泊仕様車を作りたいと思っている人の車種選びの参考になれば幸いだ。
※ 貨物自動車ナンバーの箱型のバンと書いたが、軽自動車は乗用車/貨物自動車に関わらず乗車人数がマックス4名で、色々な面で登録車ほどの差が両者の間にないため、ここではどちらも軽バン(軽ワンボックス)として同じカテゴリー扱いとする。
バンとは?
そもそもバンとはどういったタイプの車のことなのかを確認しておこう。
日本ではミニバンは例外として、バンはキャビンと荷室が繋がった貨物自動車のことを指し、箱型でなくてもキャビンと荷室が繋がっている貨物自動車ナンバー(分類番号が400番代や100番代)の車であればバンと呼ばれる。
プロボックスがステーションワゴンやエステートではなく、バンと呼ばれているのがその一例だ。
そして、外側が基本的に同じ形の車であっても乗用車バージョン(分類番号が500番代・700番代や300番代の車)であれば、一般的にあまりバンとは呼ばない傾向がある。
また、ニュースや新聞記事などでは、貨物自動車/乗用車に関わらず箱形の車をワゴン車と呼んでいたり、日本でミニバンと言うと短い鼻のある乗用車バージョンのVANを指すような節がある。
しかし、これらはどれもちょっと日本独自の解釈や定義のようだ。
欧米では基本的にVANは箱形車の総称のように捉えられている。
貨物自動車バージョンをコマーシャルバン、乗用車バージョンをパッセンジャーバンなどと呼んで区別することはあっても、箱型車がバンであって、アメリカではワゴンと言えば通常ステーションワゴンを指す。
車体後部にも全て窓のあるプロボックスは、多分欧米ではステーションワゴンとかエステートと呼ばれることになると思う。
また、「ミニバン」はシボレー・アストロやダッジ・キャラバンなどが誕生した際に、アメリカでは普通のサイズだったフォード・エコノライン、ダッジ・ラムバン、シボレー・シェビーバンなどと比較して小型のバンということで生まれた呼称であって、本来は形や貨物/乗用の区分、内装の違いなどを表す言葉ではない。
こうした認識や定義の違いで誤解のないように、ここではバンという言葉を基本欧米式の捉え方で話を進めることにする。
サイズの区分
次に貨物自動車ナンバーのバンにはどんなサイズがあってどのような区分があるのか整理してみよう。
現在日本で正規販売されていて、新車で買える貨物自動車ナンバーのバンのサイズを服のサイズのように分類すると以下の通りとなる。
- XS:軽バン。スズキ エブリィ・ダイハツ ハイゼット(アトレー)とこの2車種の派生車とOEM、少し異色のホンダ N-VAN。
- S:トヨタ タウンエース(ライトエース)・ニッサン NV200バネットとこの2車種のOEM(正確に言えばタウンエースもトヨタ製ではなく東南アジアのダイハツ工場製)。
- M:普通のサイズのハイエース・キャラバンとこの2車種のOEM。そして顔がトラックのダイナでボディーが先代100系ハイエースから流用の奇妙な見た目のダイナルートバン。
- ML:ハイエース・キャラバンのワイドボディーやスーパーロング。
- L:欧米メーカーのフルサイズバンや日本で販売されていないトヨタやニッサンのフルサイズバン。しかし、現在どれも日本では正規販売されていない。
- XL:フルサイズバンの中でも特大サイズのもの。L同様どれも日本では正規販売されていない。
見落としがあるかもしれないが、こんなところだと思う。
この分類ではS辺りに入るルノーのカングーなどもヨーロッパではコマーシャルバンがメインだが、日本に正規輸入されているのは内装の立派な乗用車バージョンのみであるように、多分どのサイズのバンも貨物自動車として日本には正規輸入されていない。
Sサイズは最近までマツダが自社でボンゴを製造していて、キャブコン・バンコンのどちらのベース車としても人気があったのだが、現在は残念ながらタウンエースOEMとなってしまった。
下の画像の車にはニッサンのエンブレムがついているが、ボンゴOEMの旧型バネットだ。
同様にMサイズのボンゴブローニイはボンゴより一足先にハイエースOEMになってしまった。いすゞ・ファーゴも姿を消して久しい。
かつては各メーカーが独自に車を作り、同じメーカーの同クラスの中にも違う車種があるなど、商用車(貨物自動車)も賑やかだったのに、要するに、現在日本で新車で買える正規販売の貨物自動車ナンバーのバンは、ブランドや名前は色々あっても、実質XSが3車種、SもMもMLも2車種のみとなってしまったことになる。
L・XLは一応例を挙げたが、貨物車として正規販売されている車はおそらく皆無だろう。
そして、アメリカ車ならではの雰囲気のあったフォード・エコノライン、ダッジ・ラムバン、シボレー・シェビーバンなどももう製造されておらず、いわゆるアメ車のバンはシボレー・エクスプレスとGMC・サバンナ(基本的に同じ兄弟車)のみとなってしまい、他は全てヨーロッパ車や日本では販売されていない日産のNVの巨大なタイプなどに置き換わってしまったようだ。
フィアット デュカト(上の画像のシルバーの車)も日本ではほぼキャンピングカーとなった形でしか見かけることはないが、ヨーロッパでは働く自動車として普通に活躍している車だ。
現在フルサイズ(L・XL)のバンはアメ車スタイルはほぼ姿を消し、世界的に概ねこういった形が主流になっている。また、バンライファーのベース車両としても中古のデュカトなどのコマーシャルバンは人気が高い。
こうやって整理してみると、日本で車中泊のベース車両として選べる貨物自動車のバンが思いの外少ない事実を突きつけられたようで、バン・トラック好きとしはなんとも寂しい気持ちになってしまう。
気を取り直して、次に法的な分類について簡単に触れておこう。
一般的に4ナンバーと呼ばれる小型貨物自動車の定義は、全長が4.7m以下、全幅が1.7m以下、全高が2.0m以下、そしてガソリンエンジンの場合は排気量が2,000cc以下(ディーゼルエンジンは制限なし)となっている。
ワイドボディーやスーパーロングなどではない普通のサイズのハイエースやキャラバンはこれに該当し、大きそうに見えても実は小型車なのだ。
もちろん他にも色々とややこしい規定などはあるが、上に挙げた車体のサイズとエンジンの排気量が一番の要となる部分だ。
これらのうちどれかの数値がオーバーすると普通貨物自動車(分類番号が100番代の車)となってしまうのだが、小型貨物自動車となるか普通貨物自動車となるかで違いは大きい。
維持費や高速道路料金などで普通貨物自動車は不利となってしまうことが少なくないからだ。
維持費のことについては後で述べるが、1ナンバー車(分類番号100番代)の一番のデメリットは、このナンバーがついているだけで高速道路では中型車となってしまい、4t車などと同じ料金を払わなくてはならないことだ。
例え同じ大きさのバンでも3ナンバー(分類番号300番代)で普通乗用車登録となる車より高速料金は高くなる。
最大積載量は500kg程度しかないけどサイズが大きくて1ナンバーとなってしまうピックアップトラックは、荷物を目一杯積んだ2t積みの4ナンバーのトラックより常に高い料金を払わなければならないのだ。