【JCCRモデルコース】あの日を忘れない。東日本大震災の震災遺構をめぐる三陸海岸の旅

2025年10月から11月の約1か月間、東北地方を舞台に開催される「ジャパンキャンピングカーラリー2025(JCCR)」。
米や日本酒をはじめとする絶品グルメ、野生動物の棲む豊かな自然、どこか懐かしくなるような田舎の風景など、東北には見どころがたくさんありますが、同時に東日本大震災の爪跡が深く残るエリアでもあります。
ラリースポットには被災した建物、堤防、市街地跡といった、いわゆる「震災遺構」が多く登録されています。
悲しい記憶を呼び起こすから……と保存に反対意見も出る被災施設を、わざわざ残す理由はただひとつ。
見た人それぞれが防災意識を高め、また資料として活かすことで、後の世代が被災を繰り返さないためです。
観光旅行とは少し違う、震災について学ぶ旅に出てみませんか?
ここでご紹介するのは、宮城県から岩手県までの三陸海岸を丸1日かけて走る、DRIMOオリジナルのモデルコースです。
JCCR2025で「協力施設」または「デジタルスタンプスポット」に登録されているスポットを中心に、実際にキャンピングカーでめぐりました。
「塩釜水産物仲卸市場」の朝食からスタート

今回選んだのは、宮城県仙台市付近から北上するルート。
仙台市にも美味しいものがたくさんありますが、ラリースポットにもなっている塩竈市「塩釜水産物仲卸市場」が朝食におすすめです。
早朝から一般のお客さんも入場可能で、購入したものをその場で食べられる「市場メシ」が名物。
うなぎ屋や定食屋が並ぶほか、好きな刺身でつくるマイ海鮮丼、コンロをレンタルできるBBQコーナー、焼き代を払って焼いてもらう魚介など、目移りするほどの選択肢があります。

私はマグロの刺身とご飯セットを購入して、オリジナルマグロ丼としました。
ラリー開催中は、季節限定のブランドマグロ「三陸塩竈ひがしもの」のシーズンにあたります。
限られた店舗でしか扱わないのですが、とても美味しいので市場内を探してみてください。
塩釜水産物仲卸市場
所在地:宮城県塩竈市新浜町一丁目20番74号
TEL:022-362-5518
開市時間:
火・木・金6:00〜13:00
土・日・月・祝6:00〜14:00
お食事時間:
火・木・金6:30〜12:00
土・日・月・祝6:30〜13:00
定休日:毎週水曜日、1月1日〜4日、8月13日〜15日(臨時休業あり)
詳細はこちら▷塩釜水産物仲卸市場
津波火災の跡を残す「石巻市震災遺構 門脇小学校」

しっかりご飯を食べてエネルギー補給をし、車で約45分のところに位置する「石巻市震災遺構 門脇小学校」にやってきました。
※メンタルヘルスの分野には「共感疲労」という概念があり、災害跡地を見たり体験談を聞いたりすることで、心理的な負担が生じることがあります。
ここからはご自身の体調と相談しながら見学をしてください。
門脇小学校に着くと、すぐに焼け焦げた校舎に気がつきます。
ここは津波と津波火災の跡を同時に残す、全国唯一の震災遺構なのだそうです。

大人600円で校舎内の見学も可能で、ラリーでは追加ポイントを得られる協力施設になっています。
被災から15年近くが経っても、焼け落ちた教室からは言葉にならないほど強烈な印象を受けます。
水害なのに火事とはどういうことだろうと思いますが、火のついた車や家屋が、津波の濁流とともに校舎に流れてきたのです。
津波が来たら「上の階へ逃げる」という垂直避難の定説がくつがえされる遺構です。

住宅が建ち並ぶ過去の写真と、広大な芝生公園になっている現在の様子を見比べると、何気ない風景が示す意味にハッとします。

被災を免れた屋内運動場は資料展示スペースになっており、なかでも移築された仮設住宅はぜひ見ておきたいです。
被災者がどんな暮らしをしていたのか、テレビなどでは見ていましたが、圧倒的な現実感をもって迫ってきます。
石巻市震災遺構 門脇小学校
所在地:宮城県石巻市門脇町4丁目3番15号
TEL:0225-98-8630
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:00)、冬季(11月〜1月)最終入館15:30
休館日:毎週月曜日、年末年始(12月29日〜1月3日)
特別開館日:毎月11日、6月12日、9月1日、11月5日
入館料:大人600円、高校生300円、小・中学生200円
詳細はこちら▷石巻市震災遺構
余裕があれば「山元町震災遺構 中浜小学校」にも

もうひとつ、「山元町震災遺構 中浜小学校」も見ておきたい遺構ですが、宮城県の南端に位置し、最終的に岩手県北部まで走りたい場合は逆方向になります。
往復すると時間も距離もかなりプラスになるので、前述の門脇小学校との見学順序や取捨選択などご検討ください。
ここは津波被害に遭いながら、屋上に避難した児童・保護者ら90名の命が助かった奇跡の小学校です。
大人400円で校内の見学が可能。
自由見学部分もありますが、映像視聴やガイドさんの案内があるため退館まで1時間弱かかります。

津波によるガレキがそのまま残された校内は、時間が止まったよう。
私も覚えていますが、震災当日は3月にもかかわらずとても寒い夜になりました。
停電による暗闇と寒さのなかで一夜を過ごしたという屋上避難のエピソードは、真に迫るものがあります。
山元町震災遺構 中浜小学校
所在地:宮城県亘理郡山元町坂元字久根22番地2
TEL:0223-23-1171
開館時間:9:30〜16:30(最終入館16:00)
休館日:毎週月曜日、12月28日〜1月4日
特別開館日:3月11日、9月1日、11月5日
入館料:一般400円、高校生300円、小・中学生200円、未就学児無料
詳細はこちら▷山元町震災遺構 中浜小学校
昼食は「道の駅 硯上の里おがつ」

上記どちらかの震災遺構を選んで見学したとしても、おそらく時刻はすでに午後になるでしょう。
私はラリー協力施設「道の駅 硯上の里おがつ」(別記事でご紹介)でランチをしながら、南三陸町まで北上しました。
【道の駅 硯上の里おがつの詳細はこちら】
復興の象徴「道の駅さんさん南三陸」

道中の路面はどこもきれいに整備され、真新しい防潮堤もたびたび目にします。
被災からしばらくは毎年のように道が変わるので、ナビが役に立たないという声も耳にしました。

南三陸町では「道の駅さんさん南三陸」を中心に、「南三陸311メモリアル」「南三陸町震災復興祈念公園」が1カ所にまとまってラリースポットになっています。

建築家・隈研吾氏の監修によるモダンなショッピングモールですが、もとは被災後の仮設商店街だったところ。
今は食事処やカフェ、お土産店、鮮魚店などがずらりと並び、「南三陸さんさん商店街」として元気に営業しています。
地元海産物をふんだんに使った「南三陸キラキラ丼」が名物だそうで、遅めのお昼にもいいですね。
ラリースポット「南三陸311メモリアル」

「南三陸311メモリアル」は、隣接する東日本大震災伝承施設のこと。
住民の証言映像や被災前後の写真などを収集し、資料としてアーカイブしている施設です。
ラリースポット「南三陸町震災復興祈念公園」

「南三陸町震災復興祈念公園」は、道の駅から橋を渡った対岸の広大な公園です。
一見ただの広場に思えますが、もとは市街地だった場所だと知ると見え方が変わってきます。
道の駅さんさん南三陸
所在地:宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町200番地1
TEL:0226-25-8903
営業時間:9:00〜17:00(店舗により異なる)
定休日:年末年始(店舗により異なる)
詳細はこちら▷南三陸観光ポータルサイト
“奇跡の一本松”のある「道の駅高田松原」

さらに北上し、岩手県陸前高田市「道の駅高田松原」までやってきました。
食事や買い物ができる、一般的な道の駅としての機能ももちろんありますが、これまで見てきたなかではもっとも慰霊・追悼の色合いの強い施設です。
厳粛な雰囲気のなか、献花場など国営追悼施設が海に向かって続いています。

すぐ近くの“奇跡の一本松”はテレビなどでも繰り返し報道されたので、ご存じの方も多いでしょう。
津波により全滅状態になった松林のうち、奇跡的に1本だけ残った松です。
当時の木は枯死してしまい、現在あるのはモニュメントですが、陸前高田の象徴となっています。
後ろに見える半壊した建物はラリースポットではありませんが、「旧陸前高田ユースホステル」という震災遺構です。
道の駅 高田松原
所在地:岩手県陸前高田市気仙町字土手影180番地
TEL:0192-22-8411
営業時間:(夏期)9:00〜18:00、(冬期)9:00〜17:00
定休日:年中無休
駐車台数:普通車136台、大型車33台
詳細はこちら▷道の駅 高田松原
車中泊OKの「道の駅くじ」がゴール

朝から降っていた雨は、ここにきて土砂降りに近い状況になりました。
自動車専用道路「三陸沿岸道路」を北上していきます。
復興のために整備された道路なので状態も新しく、ほとんどが無料区間であることも特徴です。
一般道は複雑な地形に沿ってカーブが連続する大変な山道なので、キャンピングカーなら迷わず三陸道がおすすめです。

途中、ラリースポットである「道の駅やまだ おいすた」などを経由しながらひたすら走ります。
「新山根温泉 べっぴんの湯」で心も体もスッキリ
今日は美味しいものや、元気に復興しているスポットにも出会いましたが、同時に感情の上下も大きい1日でした。
車中泊地に行く前にはお風呂に入りたいです。

岩手県久慈市「新山根温泉 べっぴんの湯」は、温泉旅館でありながら最終20時まで日帰り入浴を受け付けている嬉しい施設。

新山根温泉 べっぴんの湯提供写真
ラリースポットにもなっていて、とろみのある強アルカリ性の“美肌の湯”を楽しめます。
心も身体もすっきりしました。
東北の沿岸部や山間部では、都心のように24時間営業のスパ施設などはほとんどないため、計画的に入浴するのがおすすめです。
新山根温泉 べっぴんの湯
所在地:岩手県久慈市山根町下戸鎖4-5-1
TEL:0194-57-2222
営業時間:9:00〜21:00(最終受付20:00)
入浴料金:600円
効能:健康増進、疲労回復、美肌等
詳細はこちら▷新山根温泉 べっぴんの湯
車中泊OK!道の駅くじ

すっかり日が暮れてしまいましたが、私がゴール地点としたのは「道の駅くじ」。
別記事で詳報しますが、車中泊OKの道の駅です。
走行距離が長くなりすぎる場合は、途中に「普代浜園地キラウミRVパーク」などの車中泊スポットもあるので、1泊するのもよいでしょう。
【道の駅くじの詳細記事はこちら】
東北ドライブ旅の注意事項
だいぶ駆け足でしたが、宮城県塩竈市から岩手県久慈市まで三陸海岸を1日で走りました。
東北地方は一部の都市を除けば渋滞もほとんどなく、施設はどこも広い無料駐車場完備でとても走りやすいです。
その一方、かなりの区間ガソリンスタンドがなかったり、クマなどの野生動物が飛び出してきたり、夜になると真っ暗になったりと注意点もあります。
広い面積をもつ県ばかりなので、スポットからスポットへの走行距離も長くなりがちです。
各地にある震災資料館・伝承館は、さっと眺めるだけなら数分ですが、しっかり見ようと思うと時間もかかりますので、無理のないようご計画ください。
また、ご紹介したスポットはラリー運営にはかかわっていませんので、質問などに対応できない場合があります。
問い合わせは参加案内書に従い、JCCR2025運営事務局(くるま旅クラブ事務局)に行うことが推奨されています。
どうぞ安全運転で東北旅を楽しんでください。