【実録】キャンピングカー旅でクマに遭遇!知っておくべきクマ対策

ヨーロッパのキャンピングカー旅の途中で、私たちはなんと野生のヒグマ4頭に遭遇!
旅の途中、ルーマニアの山で思いがけず、野生のヒグマと鉢合わせしてしまったのです。
「ヨーロッパで最もワイルドな国」とも呼ばれるルーマニアは、ヒグマの生息数が欧州最多とされる野生動物の宝庫。
そんな地で、まさに“野生”と向き合うリアルな体験をすることに。
近年日本でもクマの被害や目撃情報が急増し、車中泊やキャンプを楽しむ方にとっても他人事ではありません。
今回は、私たちがルーマニアで実際にクマと遭遇した体験をリアルにお伝えしつつ、クマが出る地域で車中泊旅やハイキング、キャンプをする際の注意点とクマ対策をご紹介します。
大自然を感じながらヨーロッパ各地をキャンピングカー旅

私たち夫婦は、キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを旅しており、もうすぐ3年になります。
2023年にイタリアで中古のキャンピングカーを購入して以来、オーストリア、ポーランド、フィンランド、スペイン、ポルトガル、チェコなど、21カ国を走り抜けてきました。
観光名所や大型都市を次々に巡るのではなく、目指すのは、穴場の自然スポットや、小さな村、美しい田舎道などを訪れる、のんびりしたスタイルの旅。
スイスやイタリアでは雄大なアルプスの山々、ノルウェーでは北極圏の手つかずの大自然、スペインでは乾いた風が吹く広大な荒野など、ありのままの自然の中で「ワイルドキャンプ」を楽しんできました。
車内にはトイレ、シャワー、キッチン、ベッドなど、生活に必要な設備がそろった、いわば“動く家”。
リモートワークをしながら、現地で暮らすような自由気ままな旅を続けています。
ヨーロッパの”クマ大国”ルーマニアとは?

ルーマニアはヨーロッパ東部に位置し、ウクライナ、モルドバ、ブルガリア、セルビア、ハンガリーに接した、黒海に面する国です。
広大な山岳地帯や深い森が広がる自然の宝庫で、ヨーロッパ最大規模のクマ生息地として知られています。
クマ大国!生息数とエリア
ルーマニアに生息するのは、体長2mを超えることもあるヨーロッパヒグマ(ブラウンベア)。
その数はなんと6,000頭以上とも言われ、スウェーデンやフィンランドを上回る規模で、ヨーロッパ全体の約3割がこの国に集中しているとされます。
生息地の中心は、トランシルヴァニア地方のファガラシュ山脈周辺で、豊かな森林環境のため、約93% がこの山岳帯に分布しているそうです。
なかでも、トランスファガラシャン(Transfăgărășan)国道沿いの標高800m前後の森では目撃情報が多く報告されています。
出没増加の背景と観光資源
本来クマは人を避ける動物ですが、近年は人里への出没が急増。

その背景には、2016年に導入された狩猟禁止政策による個体数の増加、山間部でのゴミ管理の不備、観光客の餌付けなどが要因と指摘されています。

その一方で、トランスファガラシャン国道は「野生のクマが見られる場所」として観光資源にもなっており、道路沿いではクマの関連グッズが並ぶなど、ある意味で“クマと共存する観光地”としてのユニークな一面も見られます。
私たちがこのルーマニアを訪れた最大の理由も、まさに“手つかずの自然”と“本物の野生”が今なお息づいている環境を間近に体験したかったからです。
「クマに出会えるかも?!」と言われるトランスファガラシャン国道をキャンピングカーで通ってみた
私たちが野生のクマに遭遇したのは、トランスファガラシャン国道をキャンピングカーで走っていた時です。
ここは、クマの出没率が非常に高いことで知られ、車中泊仲間からも「ここで見たよ」という声を何度か聞いていました。
実際に道路の至る所に「クマに注意!」「クマに食料を与えてはいけない!」などの看板が多数あり、警戒の必要性が高いようです。
内心「もしかしたら見られるかも…?」と、期待しつつも、「そんな簡単に野生のクマに出会えるわけがない」と半信半疑で出発。

トランスファガラシャン国道はファガラシュ山脈を通る全長約90kmの絶景ドライブロード。
標高2,042mのバレア湖まで上り、急カーブを通りながら、森林、谷、滝、湖、トンネル、そして山のパノラマが続きます。
世界一の絶景が望める国道のひとつとしても知られ、各国からドライブやツーリングの旅人が多く訪れます。

ここにはルーマニア最高峰・モルドヴェアヌ山もあり、私たちは1泊2日のテント泊で頂上を目指すことにしました。
合計約30kmの長距離トレッキングの上、クマ出没エリアでのテント泊ということもあり、かなりの緊張の中、夜を迎えました。

しかし、標高2,000m超の山岳地帯だったためか、幸いクマに遭遇することもなく無事に登頂を終えました。
トランシルヴァニアの山奥で4頭のクマに遭遇!

登山を終え、「やっぱり野生のクマってそんな簡単に見れるもんじゃないんだよ」なんて思いながら、トランスファガラシャン国道を下山することに。
ところが、ヴィドラル湖(Lacul Vidraru)付近を走っていると、前方の車が道の真ん中で停車。
近づいてみると…そこには、まさかの野生のヒグマの姿が!

前の車が食べ物を与えていたようで、(※本来絶対にやってはいけない行為)クマは”プーさん座り”で食べ物をおねだり。
人間を恐れる様子もなく、こちらをのんびり見ているその姿は、野生動物とは思えないほど可愛らしく、しばらく車を停めて遠くから観察しました。
やがて、食べ物がもらえないと悟ると、クマはゆっくり森へ戻っていきました。
数分後、再び前方に停まる車。
今度は母グマと子グマの親子が登場です。

後ろをちょこちょこ付いて歩く子グマが可愛らしく、私たちの車のすぐ前をゆっくりと横切り、そのまま森の中へ。
非日常的な光景に思わず息をのみました。
さらに数キロ進んだところで、3度目の遭遇が…!
今度はなんと、助手席のすぐ脇に、大きな成獣のヒグマが現れたのです。

至近距離の迫力は圧巻で、車という“安全なシェルター”越しでも、本能的な怖さを感じました。
こちらを一瞬見たかと思うと、クマはそのまま静かに森へと姿を消していきました。
こうしてこの日だけで、4頭もの野生のクマに遭遇。
軽い気持ちで「まぁ、見れたらラッキーだよね」と向かったはずが、想像以上の体験に。
忘れられない思い出になると同時に、クマとの向き合い方について深く考えるきっかけにもなりました。
私たちが学んだ「熊対策」の基本と実践

ルーマニアに限らず、クマの出没が多いカナダ・バンフ国立公園でも登山やキャンプを経験してきた私たち。
そうしたアウトドア経験から身につけた「熊対策」の知識や実践方法を、ここでまとめてご紹介します。
車中泊中に気をつけること
一見安全に思える車中泊も、クマが頻繁に現れる地域では油断禁物です。
基本は、「匂いと食べ物を外に出さない」「刺激しない」「施錠する」。
車はシェルターですが、ドアや窓を開ける個体の報告もあるため、完全に安心はできません。
可能なら、クマが出没するエリアでの車中泊を避けるのがベストです。
私たちもトランスファガラシャン国道では、クマの目撃が多い標高800m台の森林地帯を避け、標高2,000m台のクマがあまり近づかないエリアで車中泊をしました。
・ゴミ袋を車外に置かない、放置しない
・食べ物は密閉容器、クーラーボックス、冷蔵庫に入れ、匂い対策を徹底
・車外での調理、飲食はしない
・食後は窓を開けっぱなしにしない
・夜間に物音や気配がしても外に出ない、近づかない
キャンプ中(テント泊)に気をつけること
カナダの多くのキャンプ場には、木に吊るすためのベアハンガーや、金属製の保管庫(ベアロッカー)が設置され、そこに食料を保管するように徹底されていました。
ルーマニアでのテント泊は、設備のない”ワイルドキャンプ”だったため、私たちもテントから数メートル離れた場所に食料を保管し、テントの近くでは「匂いを出さない・持ち込まない」を徹底しました。
・匂いのする物はテント内に持ち込まない(食料、歯磨き粉、日焼け止めなども対象)
・調理、食事はテントから離れた場所で行う
・食後は徹底的に片付ける。残飯やゴミは密封袋(ジップロックなど)に入れ匂いを断つ
・食料や匂いの出るものは、テントから最低でも50m以上離して保管。吊るす、地面に隠すなど
ハイキング中に気をつけること
登山やハイキング中にクマと鉢合わせしないためには、先に“こちらの存在を知らせる”ことが重要です。
・音を出して歩く。クマ鈴(ベル)やラジオ、ホイッスルなどを活用
・死角では「声を出す」。曲がり角や見通しの悪い場所では「人がいるよ」と知らせる
・登山道から外れない
・単独行動を避ける
・時間帯に注意。早朝・夕方は出没しやすいので、特に警戒する
・痕跡を見つけたら撤退。フン、足跡を見かけたら引き返す判断を
万が一、クマに出会ってしまったら

・気づかれた場合:ゆっくりと後退し、木や車などをクマとの間に置く
・近づいてくる場合:体を大きく見せ、大きな声や手を叩くなど音で威嚇し、背を向けずに距離をとる
・距離が詰まったら:地域で許可されている場合はクマスプレーを使用
・絶対にしないこと:走る(追われる可能性が高い)、写真目的で近づく、餌を与える
私たちが車に積んでいる「クマ対策アイテム」
・ベアスプレー(クマ撃退スプレー)
ハイキング、キャンプでは必需品。使い方を事前に確認しておくことが重要です。
・クマ鈴
ハイキング中や森に近い場所での散策時に使用。
・センサーライト
クマは光を嫌がる傾向があるため、車の外側に設置しています。
【まとめ】自然を恐れすぎず、知識とマナーを持って 安全で楽しい旅を
ルーマニアの旅で、まさか本当に野生のクマに出会えるとは思ってもおらず、まさに“本物の野生”と向き合う、忘れられない体験となりました。
一方で、道路脇で人からの食べ物を待つ、まったく人間を恐れないクマの姿からは、餌付けやゴミの放置が彼らの行動を大きく変えてしまっている現実も痛感しました。
この問題はルーマニアに限らず日本でも、ゴミをあさるクマや、人を襲う事故も増加しており、社会全体で“クマ問題”が深刻化しています。
クマが食べ物を覚え、人里に近づくようになると、最終的に“危険な動物”として命を奪われてしまうことになります。
だからこそ、私たち一人ひとりができる基本は、「絶対にゴミを放置しない」「野生動物にエサを与えない」「興味本位に近づかない」。
それが自分の命を守り、そして野生動物たちの命をも守る、最もシンプルで大切な“クマ対策”だと感じています。
ルールとマナーを大切にしながら、これからも自然と共に車中泊やアウトドア旅を、楽しく安全に続けていきましょう。