【徹底解説!】車中泊仕様車のベースに人気の『軽バン』や『ミドルクラスサイズのバン』の魅力とは!?
車中泊仕様車のベースには、4ナンバーや1ナンバーと呼ばれる貨物自動車となるバンが最適という記事を執筆した。
ナンバープレートの上にある分類番号が、400番代や100番代の分類される車だ。
中でもワイドやスーパーロングなどではない普通のサイズのトヨタ ハイエースやニッサン キャラバンなどのミドルサイズのバンと軽バンは、前者が4ナンバーの小型登録車枠、後者は軽自動車規格をギリギリ目一杯使い、究極まで合理性を追求して作られたような車だ。
その合理性は仕事車としてはもちろん遺憾なく発揮され、どちらのタイプも現在の日本にはなくてはならない存在となっているが、車中泊仕様車のベース車両としても非常に大きな魅力となり、人気も二分している。
そして、これから自分で車中泊仕様車を作ろうと思っていて、ミドルサイズのバンと軽バン、どちらのタイプを選ぶかで大いに悩む人も多いと思う。
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本題に入る前に
本題に入る前にお断りしておきたいことがある。
日産のキャラバンにはほぼ同じ車でありながら、同じ日産でもプリンス系の販売店で販売されているホーミーという名前の兄弟がかつて存在した。
余談だが、これは沖縄では人前で口にできるような単語ではなかったため、沖縄ではプリンス系販売店でもキャラバンが販売されていたなんて逸話もある。
トヨタのハイエースには同様に販売店系列の違いでレジアスエースという名称の兄弟車が存在し、実はハイエースだと思っているかなりの数がレジアスエースだったりもするのだが、実際には皆ハイエースと呼ばれてしまうことが多い。そして、いずれこの名称はハイエースに統一されるそうだ。
また、ハイエース・キャラバンどちらにもマツダ ボンゴブローニーやいすゞ コモなどといったOEM車の存在もある。
ダイハツのハイゼットにはトラックとバンがあって、正式には軽トラックがハイゼットトラック、バンはハイゼットカーゴで、他に変わり種のハイゼットデッキバンというのもある。そしてアトレーという名前の車があり、これはハイゼットカーゴの乗用車バージョンだ。
スズキのエブリィも乗用車バージョンはエブリィワゴンと正式な名称は異なる。
しかし、軽自動車の場合はいずれにしても乗車人数がマックス4名ということもあり、いずれも基本は同じで、乗用車バージョン(ナンバーが4ではなく5ナンバーになる)はハイグレードバージョンと言い換えても間違いではないような感じだ。
また、ハイエース・キャラバンと同様、この二車種にもサンバー・クリッパー・・・など多くのOEM車の存在がある。
このように名前は色々あるのだが、現在新車で買えるミドルサイズのバンは名前が異なろうと中身はトヨタの作るハイエースと日産の作るキャラバンの2車種だけ(見た目が非常に奇妙なトヨタのダイナルートバンは一般ユーザー向けではないような車なので、申し訳ないけど除外する)で、後輪駆動またはそれをベースにした4WDの軽バンはダイハツの作るハイゼットカーゴとスズキの作るエブリィの2車種だけ(ホンダのN-VANはFFまたはFFベースの4WD)だ。
正式な名称が違っていてもゴチャゴチャして面倒なので、ここから先は名称の違いなどは省略し、ハイエース・キャラバン・ハイゼット・エブリィで話を進めさせてもらうことにする。
究極の合理性
冒頭でも述べた通り、この2カテゴリーはどちらも究極の合理性を追求したような車であり、現在の日本にはなくてはならない存在となっているのだが、その「究極の合理性」とは何なのか整理し、魅力を探って行きたいと思う。
ハイエース・キャラバンの外寸
最初にハイエースとキャラバンの外寸について。
ハイエース・キャラバンには1ナンバー登録となるスーパーロング・ワイドボディー・ハイルーフなどもあり、これらは8ナンバー登録(分類番号800番代の特殊用途車)のバンコンのベース車両としての人気も高い。
しかし、一般的に見かけることの一番多い、いわゆる普通の大きさのハイエースとキャラバンの外寸は、どちらも全長が4,695mm、全幅が1,695mmと全く同じで、全高は違いがあっても1,980mmから1,990mmの範囲と誤差程度、全く同じサイズと言っても過言ではない。
この数字は、「小型車(貨物車の場合は分類番号400番代か600番代)のサイズ規定:全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下」に由来している。
全方向に小型車の規格内いっぱいに広げられたサイズなのだ。
大きそうに見えても、例え小型乗用車の代名詞のような存在だったカローラの幅が広くなって3ナンバー登録の普通乗用車になってしまったこのご時世にあっても、普通のハイエースとキャラバンは依然小型車のままだ。
このサイズを超えると1ナンバー登録の普通貨物車となるのだが、1ナンバーになると高速道路の料金が乗用車や4ナンバーの車より高い中型車扱いになってしまい、保険料金も高くなってしまうなどのデメリットがある。
また、車体の全長で料金を区分けするフェリーもあるが、船会社によってはこの分類番号で区分けし、4ナンバーと1ナンバーとで料金が大きく異なるフェリーもあるなど、1ナンバーには不利な点が少なくない。
日本は道が狭いからこの4ナンバーサイズに落ち着いているといった考え方もあるが、昔は日本の乗用車は5ナンバーが圧倒的に多かったのに、5と3の分類番号の違いだけで3ナンバーの乗用車が特別不利になることもなくなって以来、幅が1.7mを超える乗用車がごく一般的なサイズになり、それで非常に困ったことが起きているわけでもない。
乗用車の事情と照らし合わせると、ハイエース・キャラバンが4ナンバーに収まるサイズなのは、環境に合わせた利便性より、ユーザーの経済的利便性を優先した結果なのだと思う。
言い換えれば、この日本独自の制約がなければハイエース・キャラバンが違ったサイズやスタイルになっている可能性も大ありで、あともう少し幅があったらと思うこともなくはないが、この枠がなくなると乗用車と同様無闇に大きくなって使いにくくなってしまう可能性もある。
この制約も巨大化を防ぐ歯止めになっていて、それもある意味良いことなのかもしれない。
ハイエース・キャラバンのスタイルと広さ
そして、ボディースタイルは現行の200系ハイエース、NV350キャラバンどちらも限りなくスクエアに近いようなデザインだ。
興味のある人や拘りのある人には全く違うデザインと映るが、あまり興味のない人には区別もつかないほど似て見えてしまうような違い(もちろん私にはまるで違うが、これが世間一般の認識のようだ)でしかない。
効率をとことんまで追求するとデザイン的にも似通ったものになるのだろう。
構造的にも基本同じスタイルだ。パワートレーン(エンジン・トランスミッション)の上にキャビンの被さるキャブオーバースタイルで、前輪もフロントシートの下にある。
これは平面構成上の効率が最も高いと言うか、同じ外寸なら最も荷室長を長く確保できる構造だ。
カタログの数値ではどちらも荷室の最大幅が1,520mm(※ ハイエースのDXは1,545mm)、最大高はハイエースが1,320mmでキャラバンが1,325mm、セカンドシートをたたんだ時の荷室長はハイエースが約3mでキャラバンが3,05mとあるが、後発のNV350キャラバンは200系ハイエースの寸法を意識して作られたことは間違いない。ほぼ同じと考えて良いと思う。そして、どちらもセカンドシートを出した状態でもその後ろに普通の身長の人が十分に寝られる長さ1.8m以上のスペースがある。
このレイアウトは運転席の足元も広くて良いのだが、前面からの衝突安全性に関して不利ではある。もちろん現在の安全基準はクリアしているが、今後規則が変わると継続することが不可能になる可能性もある形態だ。規則が緩くなることはないと考えると、同じ外寸の動力が内燃機関の車なら、もうこれ以上内部の寸法を広げることは不可能だと思う。
この2車種は4ナンバーという縛りの中で生まれた、メーカーの工夫と努力の結晶と言っても過言ではない車なのだ。
実は運転も楽
このスタイルに馴染みのない人には運転が難しそうと敬遠されることもあるようだが、はっきり言ってそれは大間違いだ。ハイエース・キャラバンは四角いから見切りが良くて車両感覚も掴みやすく、大変運転のしやすい車なのだ。
最近はバックカメラも普及しているからバックで困ることもないし、もっと凄い鳥の目線から自分の車を見られる装置が付いたものまである。
少なくともフロントガラスが大きくスラントし、ダッシュボード上で運動会のできそうな車よりずっと運転しやすい車だと思う。
また、乗用車のミニバンでは同じ車種で5ナンバーサイズに収まるサイズのモデルと、サイズオーバーで3ナンバーになるモデルの両方が存在するようなこともあるようだ。
こうしたタイプは、4ナンバーハイエース・キャラバンより小さそうに見えて、実は長さや幅はハイエース・キャラバンと同程度であったり、むしろ大きいものも存在するということになる。
4ナンバーハイエース・キャラバンより小さくて取り回しが楽そうと思うのは、イメージに過ぎないのだ。しかし室内の広さは桁違いにハイエース・キャラバンが勝る。
他に理由がある場合は別として、運転が乗用車のミニバンより難しそうだからハイエース・キャラバンを選ばないというのは間違いだ。