サブバッテリーについて【初心者のためのキャンピングカー装備講座vol.2】
冷暖房や照明など、私たちの快適な住環境を支えているのは電気だ。
それはキャンピングカーでも同じことである。では、その電気はどこからきているのか。
今回はライフラインのかなめ、電気(サブバッテリー)について考えてみよう。
暮らしを支える電力はどこから?
普通車でも室内灯はつくし、カーオーディオだって聞ける。シガーソケットから携帯を充電することも可能だ。
具体的に説明すると、エンジンがかかっている間はエンジンに取り付けられた発電機(オルタネーター)も回転する。エンジンの回転によって発電機が回り、電力が供給される、という仕組みだ。
一方、エンジンがかかっていなくても、通電した状態(スイッチオンの状態)であれば、同様に電気製品を使うことはできる。この場合発電機は回っていないから、電力はエンジン始動用のカーバッテリーから供給されることになる。
ごく短時間ならカーバッテリーの電気を使っても問題はないが、長時間となると話は別だ。
ただでさえエンジン始動には、瞬間的に大きな電力を必要とする。カーバッテリーが弱ってしまうと、最悪の場合、エンジンがかからないことだってある。
そうした事態を防ぐため、キャンピングカーにはエンジン停止中にも快適に電気が使えるように、カーバッテリーとは別の『サブバッテリー』を搭載しているのだ。
サブバッテリーとはどんなものか
カーバッテリーがメインであるのに対して、停泊時に使われるバッテリーは「サブ」の位置づけのため、「サブバッテリー」と呼ぶ。
容量は車種によってさまざまだが、生活に必要な電力はすべて、このサブバッテリーがまかなってくれるのだ。
サブバッテリーには多くの場合、ディープサイクル・バッテリーが使われている。見た目はよくある自動車用バッテリー(カーバッテリー)にそっくりだが、その特性はまったく違う。
旅先で不用意に充電切れを起こさないためにも、その特性を理解しておきたい。
カーバッテリーの主な用途は「エンジンを始動させること」だ。キーを回す(またはスターターボタンを押す)と、セルモーターがキュルルル……と回り、エンジンが点火する。
この「セルが回る」とき、およそ数秒ながら大きな電力が必要となる。カーバッテリーは、セルモーターが回る瞬間、どん!と大きく電力を放出するようにできているのだ。
一方、生活用電力をまかなうサブバッテリーは、一度にそんなに大きな電流が放出されることはまずない。その代わり、エアコンをずっと継続して使うなど、出力は小さいながらジワジワと長時間使い続けるパターンが多い。
そこで、そうした使われ方に合った性質の「ディープサイクルバッテリー」を採用しているというわけだ。
例えていうなら、カーバッテリーは短距離走(スプリンター型)、ディープサイクルバッテリーは長距離持久走(マラソンランナー型)といえばわかるだろうか。
バッテリーはどのように充電される?
バッテリーは使えば減る。減ったままでは困るので、充電しなければならない。その点はどちらのバッテリーにも共通している。
ただ、ご存知のようにカーバッテリーは走行充電できる。前述のように、エンジンに発電機が取り付けられているので、車を走らせる(エンジンが回転する)ことで発電、生まれた電気はそのままカーバッテリーに蓄積されるのだ。
一方のディープサイクルバッテリーは、少し性質が違う。ディープサイクルバッテリーに充電するルートは次のふたつがある。
1.エンジンが回転することによって発電された電気(カーバッテリーとシェアする)
2.外部から取り込んだ電気(キャンプ場や自宅の外部電源など)
1.にあるとおり、サブバッテリーも走行充電が可能なので、旅行に出かけてサブバッテリーの電気を消費しても、帰り道の走行で補充充電されるというわけだ。ただし、数時間は走らないと十分に充電できないので、自宅に帰ったら念のために、外部電源につないでおくのが賢明だ。
さらに、ディープサイクルバッテリーには放電した状態で長期間置かれると、性能が著しく低下するという欠点がある。
残量ゼロすれすれ、空っぽになるまで使って充電する、という使い方は、バッテリーを傷めてしまうので注意が必要だ。
長期間旅行する予定で、しかも外部入力にあまり頼れないケース(電源つきキャンプ場などを利用しないなど)もあるだろう。あるいは、普段駐車している場所に100V電源がない場合もある。
そんなケースに備えるため、ソーラーパネルを搭載するユーザーも多い。
外部電源から取り込むほど効率は良くないが、太陽が昇っている限り、充電不足を賄うことができる。
気になる次世代バッテリーは?
ディープサイクルバッテリーは先にも説明したように、サブバッテリーに適した特性を持っており、さらに値段もこなれているという長所がある。
だが、最近はバンコンにまで家庭用エアコンが搭載されるなど、電気の要求度は高まるばかりだ。
バッテリーの搭載スペースやシャシーの耐荷重に問題がないならば、なるべくたくさんディープサイクルバッテリーを積むのが理想である。が、当然、キャンピングカーのスペースには限界がある。
そこでいま注目されているのが、ハイブリッド車などにも使われる『リン酸鉄リチウムイオンバッテリー』だ。
通常のディープサイクルバッテリーと比較して、軽量かつハイパワーなのが最大の魅力。ただ、まだまだ価格が高いことに加え、充電器などの周辺機器もすべてリチウムイオンに対応したものを使う必要があるなど、ややハードルは高い。
とはいえ、やがてリチウムイオンバッテリーのシェアが拡大すれば、やがては主流となり、市場に出る商品数も増える。おのずと本体、周辺機器とも、価格は落ち着くはずである。
直接姿を見る機会も少なく、音も発しない、文字通り「縁の下の力持ち」のバッテリー。
しかし、キャンピングカーライフの快適さの、ほぼすべてがサブバッテリーにかかっていると言っても過言ではない。
キャンピングカーを選ぶ際、「どの位の容量のバッテリーを搭載しているか」「どんな充電システムなのか」についても、ぜひチェックしておきたい。