横転したトレーラー

キャンピングカーは横転しやすい、は本当か?



「キャンピングカーは横転しやすいって本当ですか?」

「動画サイトで横転事故の映像を見たんですが…」

こんな質問を時おりいただく。

ニュースや動画サイトでドラレコ動画が公開されて、すっかり有名になってしまった「キャンピングカー=横転しやすい」というハナシ。

今回はその「実際のところ」について考えたい。

本当に「横転事故が多い」かどうかは『判らない』


走行中のキャンピングカー

現在のところ、「自動車の横転事故が年間〇件あって、その内キャンピングカーは△件」といった、ボディ形式別の事故統計は存在しない。

だから「キャンピングカーの横転事故」が多いか・少ないか、数字で比較することはできない。

にもかかわらず「キャンピングカーは横転しやすい」という話になるのはなぜか。

それは単に「珍しいから」ではなかろうか。

衝突事故は珍しくないが、それがちょっと珍しい車両だったらどうだろう。ローカルニュースになる確率は高くなる。

横転したトレーラー

人気が定着して増えたとはいえ、社会全体から見ればキャンピングカーはまだ少数派。「珍しい」部類に入れても問題なかろう。

ニュースで目にする機会が多い=印象に残る。その結果「キャンピングカーは横転しやすい」のイメージが強くなったのでは?と推察する。

実際、私に質問してくる人に「どうしてそう思ったんですか?」と尋ねても「知人が横転事故を起こしたんです」という『実例』を身近に経験している人はほとんどいない。ほとんどの人が「ニュースや動画サイトで見たから」というだけなのだ。

これはいわゆる「犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる」というヤツだ。

例えば、車両火災は年間4000件ほど発生しているが、全部がニュースになることはない。だが高級車やスーパーカーが燃えるとニュースになる。姿形が目立つキャンピングカーもそれと同様なのである。

客観的に「車としてどうなのか」を考える


キャンピングカー 外装

「転びやすい」と一口に言っても「何と比べて?」というのが大事なところである。

乱暴に言ってしまえば「背が高い=重心が高い」車は重心の低い車に比べれば「転びやすい」のはわかるだろう。セダンよりワンボックスは転びやすく、ワンボックスよりさらに背の高いキャンピングカーの方が転びやすい。

これは車の形状や重心の高さから、客観的に言えることだ。

ただし、ここに大きな落とし穴がある。それは「同じように運転すれば」という前提があって初めて言えることだということだ。

同じスピード、同じ角度で曲がったら、重心の高いほうが転びやすいのは当然だ。運動特性の違う車(重心の高い・低い)を扱うには、それなりの配慮が必要であることはお判りいただけると思う。

横転のリスクを減らすためには


スピードは控えめに


高速道路

のんびりゆっくり走ること。まずはこれにつきる。特にカーブでは、しっかり減速すること。

横風の強い高速道路での追い越し・追い抜きも同様だ。ただでさえふらつきやすい背の高さ・重心の高さだということを自覚しよう。

タイヤチェックを忘れずに


タイヤの空気圧チェック

横転事故の原因の一つにタイヤバーストがある。空気圧をチェックし、キズがないか等しっかり確認すること。しつこいくらいに点検してちょうどいいのだ。

この二つを心がければ、横転のリスクは大きく減らすことができる。普段乗っている乗用車と同じ感覚で運転しないこと。冷静な人なら、少し運転するだけでセダンとは乗り味が全く違うことはわかるはずなのだ。

そして、もう一つ。覚えておいていただきたい、大切なことがある。

「チューニングではどうしようもない」ということだ。

キャンピングカーのベース車はほとんどが商用車なので、経済性と堅牢さが優先されている。決して乗り心地も良くはない。そこでショックアブソーバーを変えたり、スタビライザーを追加したりして「チューニング」を試みる人がいる。

そのこと自体はもちろん、否定しない。事実、そうした手を加えると安定性が向上することもある。但し、向上した安全性は「マージン」として使うべきだ。

「〇×を装着したので40km/hでも怖かったカーブが、60km/hでも曲がれるようになりました!」

嬉々としてSNSに書き込んでいる人を見かけるとこちらが不安になる。

多少パーツを交換して足回りを強化したとて、重心が高く、重量がある車両だという特性が変わったわけではない。

安定性が増したのなら、今までどおり40km/hで確実にコーナリングするように心がける。それが一番の安全なのだ。

結論


キャンピングカー「だから」横転しやすいのではない。車の特性を理解し、それに合わせた運転をしないから転ぶのだ。

スピードは控えめに、のんびりゆっくり、そうすれば問題はないから安心してほしい。