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「すべての車が料金所で止まって現金払い」“ETC普及前の高速道路”ってどんなだったか思い出聞いてみたら「40万貯金できた」…何したの!?

道路

2025年4月6日、NEXCO中日本管内で大規模なETCのシステムトラブルが発生し、のべ106ヶ所でETCレーンが利用できなくなる事態が発生しました。

これにより各地で渋滞が発生するほか、追突事故など大きな混乱が起きました。

ところで、ETCが普及しはじめたのは2000年代前半のことであり、それ以前は「料金所で現金払い」が当たり前でした。

今回のトラブルを考えると、「ETCがない高速」を想像するだけでも恐ろしいですが、実際にETC普及以前の様子はどうだったのでしょう。

当時を知るベテランドライバーたちに話を聞きました。

「とにかく進まなかった」かつての渋滞


渋滞している高速道路

©HAL/stock.adobe.com



ETC普及前の高速道路は、主として「入り口でチケットを受け取り、インター出口で料金を精算する形式」でした。

インター出入り口のほか、中央道の八王子料金所のように、本線上に料金所が設置されていることも。

それぞれのポイントで1台ごとに止まってチケットを取ったり、料金を支払ったりする必要があったのです。

そのためやはり、当時の混雑は今よりも過酷なものだったといいます。

「やっぱり渋滞は昔の方が酷かったですよね。休日の高速はいつ通っても料金所で渋滞が起きていましたし、インター出口もしょっちゅう渋滞して、本線の方まで延々と混雑が続いて。

渋滞の距離もそうですけど、とにかく当時の渋滞は前に進まなかった印象があります。人の手で精算作業をしているわけですから、キャパシティを超えたらそりゃ詰まっていく一方ですもんね」(70代男性)

国土交通省の資料によれば、ETCが普及する以前の2000年の段階で、高速道路の渋滞のうち約3割が料金所付近で発生していたといいます。

また同資料では、ETC利用率が6.1%だった2003年3月に比べ、利用率が73%にまで上昇した2007年3月には、料金所付近の渋滞が95%減少したとされ、その効果の大きさを物語っています。

近くまで来ているのに降りられない!


泣いている子供

©kimi/stock.adobe.com



今回のインタビューでは、やはり「当時の渋滞の過酷さ」を語る声が多く聞かれました。

「有名な観光地に行くときは、インター付近に来てからがとにかく長かった記憶があります。せっかく近くまで来ていても、料金所を抜けるのに何十分、またそこから下道への合流に何十分と、高速を走る何倍も疲れていたような覚えがありますね」(60代男性)

たしかに手作業で精算していては、次々に観光地へ訪れる車両を処理できなくなることは想像に難くありません。

観光地へと向かうインター出口で、「レジ待ちの行列」のような状況が頻発していたと考えられます。

さらに、渋滞によってこんな問題も。

「以前から平日は車に乗らないので、高速を使うのはもっぱら週末や長期連休のタイミングばかりでしたけど、それこそ90年代の頃は至るところで渋滞が起きていたように思います。

サンデードライバーですから、どこが混むのかも予測が立たず……。子どもが小さい頃には、トイレ問題にかなり悩まされましたよ。一度、もう10kmほどで出口だからとパーキングをスルーして、そこから渋滞にハマって子どもがオシッコを我慢できず、ポリ袋にさせたこともありましたね」(60代男性)

トイレ問題は現在でも渋滞中の大きな懸念点ですが、通信技術の発達した現在においては、「この先がどのくらい混んでいるのか」がある程度見通せるようになっています。

反対に、「予期せぬ突然の渋滞」に巻き込まれる可能性を思うと、やはり当時のトイレ問題はかなり切迫していたと考えられるでしょう。

料金所をスルーする無法者たちも…


料金所

©paylessimages/stock.adobe.com



当時の料金所には各ゲートに徴収員が配置されており、止まった車から料金を受け取る形式でした。

ゲートにバーなどは設置されておらず、次のような異常事態もよく見られたといいます。

「1990年前後の大阪には環状族っていうのがいて、毎晩改造車に乗った暴走グループが阪神環状(阪神高速1号環状線)をグルグル回っていたんですよ。とんでもないスピードで一般車両の間をジグザグ抜けていき、しょっちゅう死亡事故なんかにもなってね。

見かけるたびに怖い思いをしていましたけど、環状族はみんな、料金所をそのままノンストップで抜けていくのね。料金所突破とかいって、何台も連なってビュンビュン抜けていくもんだから、それだけ見ると『あれは何のためのゲートだ?』って感じでしたね」(60代男性)

阪神環状での暴走行為や、違法改造、チーム間での抗争など、当時環状族と呼ばれた人たちの所業は現在でも語り草とされています。車両のナンバーも外したり隠したりしているため、料金を徴収することが難しかったようです。

運転席からの支払い、地味に面倒


高速道路の料金所

@Paylessimages/stock.adobe.com



料金所での現金払いは、混雑の面でも厄介ですが、「運転席で支払いの動作をすること」もなかなかに面倒だったと思われます。

スムーズに支払うために、車メーカーやドライバーたちはさまざまな工夫をしていたようで……。

「最近、コインホルダーのある車を見かけなくなりましたよね。ハンドルの奥とか、コンソールに設置されている小さいヘコミのやつ。料金所が現金払いだった頃は、かなり便利だったんですけど。とくに女の子を乗せているときには、料金所で手間取っていたら格好がつかないですからね。迎えに行く前に、わざわざ自販機でお札を崩してセットしておいたり。

でもあれ、コインの収まりが悪いと、振動でカチャカチャうるさかったりするから、ちょっと安っぽい印象にもなっちゃいますよね。まぁ色々、今は便利になりましたよ。どんどん、こっちが工夫する必要もなくなっていますからね」(70代男性)

現在でもコインパーキングをはじめ、運転席から支払いをしなければならない場面はありますが、事前精算機などによりその機会は大幅に減っています。

インフラの変化と車の装備の変化が密接に関係していることを示す、興味深いエピソードです。

当時ならではの「意外な知恵」も


お金

©Montri/stock.adobe.com



最後に、次のような「生活の工夫」を語ってくれた人もいました。

「いちいち小銭を出していると後ろに迷惑になりそうなので、毎回お札しか出しませんでしたね。自分で小銭を用意するより、慣れている料金所の人の方が早いですから。

でも、複数の道路を乗り継ぐと、どんどん小銭が貯まっていって。週に3回くらい乗っていたので、高速のお釣りを貯金するようにして、気づけば10年で40万円くらい貯まったかな。今はもうできない貯金方法ですね」(70代男性)

このように、料金所での現金払いが当たり前だった頃は、今では考えられないような混雑や、支払いをめぐるさまざまな工夫があったようです。

時代の進歩とともに人々の価値観も変化していきますが、時にはこうした「旧時代の思い出」を振り返るのも有意義なのかもしれません。

ライター:鹿間羊市
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