車内に電源を確保するなら、ポータブル電源がおすすめ!サブバッテリーとメリット・デメリットを比較してみた。
車中泊やキャンプで電気を使うには、「車両搭載のバッテリー」「車両に設置したサブバッテリー」「エンジン発電機」「外部電源の引き込み」「ポータブル電源」などを利用することになる。
これまで私は愛車キャラバンに自力でサブバッテリー+ソーラーパネルのシステムをセットアップして電気を使ってきた。
しかし、最近ポータブル電源を導入した。
サブバッテリーのシステムにも利点は多々あるが、このポータブル電源が何かと便利なことが多い。非常に使い勝手が良く、本当に重宝している。
「彼を知り己を知れば…」の如く、利点を理解するには他の方法について知っておくことも大切だ。
当記事では、発電機や外部電源の利用については除外し、バッテリー限定とするが、他の方法の利点欠点を説明しながら、ポータブル電源の利点やおすすめの理由を説明しようと思う。
目次
車のバッテリーに頼るのは?
普通の車(電気自動車やHVではない車)に搭載されているバッテリーは、充電可能な鉛バッテリーだ。
燃料の噴射装置の常識がキャブレターから電子制御のインジェクションに変わろうと、これは車にバッテリーが搭載されて以来ずっと変わっていない。
そして、このバッテリーの最も主要な役割はエンジンを始動させるためのセルモーターを回すこと(クランキング)だ。
クランキング時間は長くても数秒以内だが、瞬間的に非常に大きな電流が必要であるため、それに適した性能が第一に求められる。
一方、こうしたタイプのバッテリーは過度の放電状態になると極端に蓄電能力が低下してしまい、再充電をしても回復できなくなってしまう性質がある。放電と充電を繰り返すような使い方は苦手だ。
しかし、エンジンが回っているときはオルタネーター(発電機)が稼働し、バッテリーはほぼ満充電に近い状態が維持される。
スパークプラグ・ライトやウィンカーなどの補器類・オーディオなどへの給電に問題ないのはこのためだ。
また、車のシガーソケットから電源をとれるのは、一般的にはキーがオンになっているときに限られ、基本的にはエンジンが回っている状態(アイドリングストップ機能のある車のアイドリングストップ時は除く)であるから、過放電などの間違いは起こりにくい。
バッテリーの容量を増やせばバッテリーから直接電源をとっても大丈夫なのではと考えるかもしれないが、性質的に充放電の繰り返しには向いていないバッテリーなのだから、結局傷みを早めてしまうことになる。これはやめたほうが良い。
電気自動車(以下EV)やプラグインハイブリット(PHEV)以外の車で本格的に電気を使いたかったら、とにかく車用とは別のバッテリーを用意することが必須条件となる。まずはそれが基本で大前提だ。
EVはどうか?
電気が使えると謳うEV。確かにEVには普通の車とは比較にならない大量の電気が蓄えられる。
そして、現在のEVのバッテリーはリチウムイオンバッテリーが一般的で、クランキングがメインの役割向けに作られた鉛バッテリーとは性質が違い、充放電を繰り返すことも基本的には問題ない。
EVの広告などでは、「停電しても家で使う電気を車から供給できる。」とか「夜間に車に充電しておいた電気を昼間家で使ったり、ソーラーパネルで発電した電気を車に貯めておいて使うと経済的。」或いは「電気を供給するためにEVが被災地に出動して大活躍。」といったような文言が並んでいるのを目にする。
道なき道を進んで行った先で煌々と灯りを照らしながら電気製品を使いまくっている画なども見る。
最後のは疑わしいとしても、どれも嘘とは言えない。しかし、これらが誤解や間違いを招きやしないかとちょっと気にかかる。
車を走らせるために貯めた電気を家で使ってしまったら、その分だけ車が走れる距離が減ってしまうのは当然だ。それどころか電気の使い過ぎで車を動かせなくなってしまっては本末転倒だ。
例えば家族やパートナーが家で車の電気を使い倒してしまい、車に乗ろうと思ったら動かなかったなんてことも起こり得る。しかしそれだけでは済まされないことがある。
燃料は人力でも運ぶことができるができるが、充電は基本的に設備や電源のあるところまで車を移動しなければならない。
PHEVや日産のe-POWERなども含め、エンジンを使う車だったら、もしも道なき道を進んだ先で燃料切れになったとしても、最悪歩いて燃料を確保しに行って補給すれば、自走して帰還することが可能だ。
雪に閉じ込められて身動きができなくなってしまった場合なども、燃料を持ってきてもらうなどして補給ができれば車内で暖房を使い使い続けることができる。
しかし、完全なEVの場合はこのどちらも不可能。電気を使い切ってしまったらサバイバルは難しい。
EVを数キロ走らせることのできる強力なポータブル電源もあるが、「それがあるなら、そもそも車の電気を他のことになど使わなければ良いのでは?」となる。
また、災害時の備えとして移動手段の確保は大変重要だ。自衛隊員は災害時に備え、常に私用の車も燃料を半分以下にしないように心がけているなどといった話を聞いたことがある。
地震はいつ起こるかわからないのに、夜間に蓄電するつもりで車に貯めておいた電気を昼間使ってしまい、夕方に大地震でも起こって停電したら、電気が使えないだけではなく、移動手段の車が使えないことになってしまうではないか。
人助けのために自分の顔を人に食べさせてしまうこともあるアンパンマンにとって、新しい顔を作ってくれるジャムおじさんは不可欠の存在だ。
EVも電気を供給して人助けをすることはできるが、自分自身にも必ず電気の供給元が必要なことを忘れてはいけない。
「停電している被災地で電気を供給した後、そのEVと運転してきた人は帰れたの?」といった疑問を抱くのは私だけではないと思う。
EVを蓄電池として活用する考えも悪くはないが、良いことの裏にはこのように多くの矛盾点があるのも事実。評価しないわけではないが、過大評価は禁物だ。
やはり車を動かすための電気と、他のことに使う電気は基本的に分けて考えておいたほうが間違いないのではないかと私は思う。
サブバッテリーのシステム
キャンピングカーにはサブバッテリーのシステムが備わっていることが多い。自分で設置している人もいる。
キャンピングカーの購入を検討している人、自分の車に組み込もうと検討している人はもちろん、この設備が備わったキャンピングカーを利用している人も、ポータブル電源との違いやメリット・デメリットなどを理解しておいた方が良い思う。
ディープサイクルバッテリー
サブバッテリーには、リチウムイオンバッテリーが使われることも近頃はあるが、コストがかさむこともあり、今のところ鉛バッテリーの方が一般的だ。
しかし先述の通り、車両搭載用の鉛バッテリー(クランキング用のバッテリー)は充放電を繰り返すような使い方には不向きだ。
そこでサブバッテリーには、車両搭載用の鉛バッテリーとは性質の異なる、ディープサイクルバッテリーと呼ばれる鉛バッテリーが使用される。
ディープサイクルバッテリーはクランキングに使用するバッテリーのように一気にどっと電流を流すことより、少なめに長時間出し続けることの方が向いた性質で、充放電を繰り返しても傷みにくい。
筋肉に例えたらクランキング用のバッテリーが瞬発力の高い白筋、ディープサイクルバッテリーは持久力のある赤筋といったところだ。
利用するにはそれなりのハードルも
しかし、そのディープサイクルバッテリー本体だけでは電気を使うことができない。
直流のまま使うなら汎用性の高いシガーソケットを配線したり、家電など交流の機器を使いたければインバーターを繋いだりする必要がある。
当然、充電するための充電器も別途必要だ。ソーラー発電や走行充電を活用したければ、それら専用のコントローラー類も必要になる。
バッテリーを入れるケースや安全な設置場所の確保も必要だ。あれやこれやでそれなりに大掛かりな設備となり、結構場所もとる。
少し電気についての知識がないと、これらをセットアップするのは難しいだけでなく、危険でもある。誰にでも簡単に…などとは言えない。専門業者に設置を依頼すれば相応にコストもかかる。
そして、キャンピンカーを購入する際にも注意しなければならない重要なポイントがある。
サブバッテリーはインバーターや充電コントローラーなどとケーブルで繋がれ、車内据え置きになるのが普通だ。
充電の度にバッテリーに繋がれたケーブル類を全て外し、毎度重いバッテリーを車から下ろして充電するのは現実的ではない。
また、走行充電や小規模なソーラーパネルからの充電は結構時間を要する。ソーラー発電は天候にも大きく左右される。
電気の使用量が少なければそれらのみで賄えることもあるが、ヘビーユーザーはそれだけでは追いつかなくなってしまうことが多い。
本格的に電気製品を使いたいのなら、交流100Vからの充電がメインで、走行充電やソーラー発電は補助的程度と考えておいた方が無難だ。
しかし、近くにコンセントのない駐車場などが車の保管場所の場合は、充電することが難しくなってしまう。これは小さくないウィークポイントだ。マンション住まいの人などは特にこういったことにも注意が必要だ。
もちろんメリットもある
多くのポータブル電源は内蔵のバッテリーのみの交換ができず、内蔵されたバッテリーの寿命=全体の寿命となってしまうケースが多い。
しかし、サブバッテリーのシステムなら、バッテリーのみを交換することは容易だ。
そして、鉛ディープサイクルバッテリーはリチウムイオンバッテリーよりずっと安価な上、システム全体から見たらコスト的にバッテリーの占める比重は案外高くない。
高価なインバーターや充電コントローラーなどを無駄にせず(通常これらの方がバッテリーより寿命が長いと思う)に、リフレッシュがしやすいことになる。
容量を増やしたくなった場合も、置き場所の確保さえできればバッテリーの増設は難しくない。より本格的に規模を大きくしたければ、ポータブル電源より有利だ。
また、バッテリーも他の機材もしっかり設置してあれば、倒したり落とすなどして壊してしまう心配も少ない。
配線の仕方によって、より普通の家のコンセントと変わらない使い心地や感覚で使用できることもメリットの一つか。
ポータブル電源のメリット
では本命のポータブル電源について。
充電が容易
ポータブル電源は、その名の通り持ち運びができるため、交流100Vからの充電は家の中などに持ち込めば済ませられる。
充電器やアダプター類は本体に内蔵されているか、外付けでも簡単に繋げられるものが付属しているのが普通だ。そうした意味でも交流100Vからの充電は至って気軽だ。
また、走行中の車のシガーソケットから充電するためのコントローラーやアダプターが内蔵または付属していたり、本体内にソーラー充電コントローラーが組み込まれているものも多い。
ソーラーパネルの発電効率は太陽光の向きや角度によって大きく変わるが、ポータブルのソーラーパネルならそれに合わせて調整がしやすく、効率良く充電できる。
これは車の屋根に固定したパネルとポータブルのパネルで比較実験したところ、時刻によって効率に大きく差が現れたことを確認済みだ。
ポータブル電源+ポータブルソーラーパネルなら、日の当たるところであれば、例えばマンションのベランダなどでも手軽に充電できる。
車は日陰に駐車し、ポータブル電源とソーラーパネルを日向に置いて充電することも可能だ。
また、私の使っているEcoFlow RIVER Proのように、充電の速度が非常に速いタイプもあり、それならソーラーを充電手段のメインにすることもできる。
RIVER Proを使い始めてまだ2ヶ月程度ではあるが、今のところコンセントからは試しに一回充電してみただけだ。
ポータブル電源には、残量や使用量、充電に必要な時間などのデータが液晶パネルに表示されるものが多いが、EcoFlow RIVER Proはソーラーパネルからの充電状態などもリアルタイムで確認できるようになっている。
これがわかると効率の良いパネルの向きや角度を調整するのに役に立つが、数字が上がって行くのを見ていると何か得したような気もして、使っていて結構面白い。
ともかく、コンセントからにしろソーラーにしろ、車をどこに駐車しようと充電ができるメリットは非常に大きい。
手軽に色々な方法で電気を取り出せる
大抵のポータブル電源にはインバーターも本体内に組み込まれていて、手軽に家電製品や工具などの交流機器を使うことができる。
但し、「『ポータブル電源戦国時代!』…」の記事でも書いたが、正弦波であるかないかと定格出力の確認は、ポータブル電源を選ぶ際に非常に重要なポイントだ。
USBやUSB-Cポートを備えたものも多い。
スマホなどの充電に便利なことは言うまでもないが、これがないとパソコンに充電する場合は一旦交流に変換した電源から充電することになる。
しかし、USB-Cポートと専用のケーブルがあればダイレクトにパソコンに充電ができる。
ケーブル類がスッキリして良いだけでなく、この方が変換ロスも抑えられて効率的だ。
コンパクト
充電器やコントローラーが不要でスッキリまとまったポータブル電源はスペース効率も良い。
軽バンなどの小さな車で使う場合に有利なのは当然だが、これまで使っていたサブバッテリーのシステムからポータブル電源に変更したことで、私のキャラバンは車内に結構大きな空きスペースができた。
以前バッテリーの入った箱と充電コントローラーやインバーターが設置されていた場所(コンロとかも置いてあったけど)は、現在、簾・箒・釣竿などの長尺もの置き場になっている。
持ち運びが容易
持ち運びが容易であることの利点は、充電する際に便利なだけではない。
一台を複数の車で共有することもできる。私の場合は、もう一台の愛車バモスでも電源を使用できるようになり、大変大きなメリットを感じている。
また、友人の車で出かける時には「電源持参」なんてことも可能だ。
車内だけでなく外に持ち出して使える利便性の高さも見逃せない。車の駐車場所に左右されずに電源が使えると利用の幅が広がる。
キャンプで重宝するのはもちろん、工具などを使用する際にも大変便利だ。手軽に持ち出せることで災害時などの利便性も高まる。
まとめ
もちろんこれらは全てのポータブル電源に共通する装備や性能ではないので、購入する前には仕様をしっかり確認することが必要だ。
その辺りは、過去に配信した「『ポータブル電源戦国時代!』…」「車内調理は『電気が安心!…」なども参考にしていただければと思う。
しかし、サブバッテリーのシステムよりずっと手軽で敷居が低いことは確かであり、EVのバッテリーをあてにするより安心で現実味が高いとも思う。
また、変な言い方だけどサブバッテリーのサブとして、サブバッテリーの備わったキャンピングカーに導入するのも使い勝手が上がって良いのではないかと思う。
今後も実際に使用した経験を通して、便利な使い方や魅力をお伝えして行きたいと思うので、ご期待いただきたい。