『ポータブル電源』戦国時代!車中泊で活躍するポータブル電源、どう選べばいい?
防災への備えとしての需要もある『ポータブル電源』だが、近頃クラウドファンディングなどでも新製品が続々と発表されており、急速に普及しているように感じる。
ポータブル電源は、車内にも導入しやすく手軽に電源を確保できるので、サブバッテリーを搭載していない車にとって大変ありがたい装備だ。
ポータブル電源の価格には結構大きな開きがある。
それに応じて性能にも違いがあることはある程度想像できたとしても、電気に関して全く知識がなければ何をどう選んだら良いのかわからない。
そこで当記事では、ポータブル電源を選ぶ際に必要な基礎知識などを、電気が苦手という人にも分かりやすいように解説したいと思う。
目次
導入前には最低限の基礎知識は必要
冒頭でも書いたがポータブル電源の価格には結構大きな開きがあって、ほぼその値段に応じて性能にも違いがある。
ポータブル電源の性能によって電気製品には使える物と使えない物があるということをまずは肝に銘じておく必要がある。
ポータブル電源の導入に踏み切る前に電気に関して少しばかり基礎的な知識は必要だ。
そこで、まずは電気についてあまり知識のない人に向けて、なるべくわかりやすい言葉で要点のみ説明したいと思う。
ただし、私は電気の専門家ではないので、専門家に言わせたら多少間違った表現もあるかもしれないが、これはあくまで初心者向けの説明であることをご理解いただきたい。
交流と直流
まず最初に、電気(電流)には交流と直流があるのは、みなさんご存知だろう。
車のオルタネーター(発電機)やソーラーパネルで発電した電気は直流、そしてバッテリーに蓄電できるのも直流だ。
当然車のシガーソケット(近頃はこれがない車もあるようだが)から取り出せる電流も直流で、電圧はトラックなどのように大きな車は24Vのこともあるが、一般的な普通の車の電圧は12Vだ。
しかし家やオフィスなどのコンセントに流れてくる電気は直流ではなく交流だ。そして、日本で一般向けに供給されている電気の電圧は100Vとなっている。
しかし、交流と直流では性質が違う(「性質」で表現が合っているのかわからないし、違いを説明するとややこしいので、ここでは「性質が違う」だけとしておく)ため、直流⇄交流の変換をしないことには基本的に交流用の機器は交流、直流用の機器は直流の電流でしか使用することができない。
これは興味のない人も必ず抑えておく必要のあるポイントの一つだ。
ポータブル電源で交流100Vの電気製品が使える仕組み
ポータブル電源を簡単に説明すると、『充電のできるバッテリーに、USBポートやシガーソケットなどの簡単に電気を取り出せる装置や簡単に充電できる装置(外付けのアダプターが必要なものも多いが)などを組み合わせて一体化した機器』のことだ。
しかし、上に述べた通りバッテリーに蓄えられた電気は直流なのに、普通の家にあるようなコンセントを備えているものが多い。どうなっているのか?
種を明かすと、大抵のポータブル電源には電流を直流から交流からに変換するインバーターという装置が内蔵されている。
このインバーターの働きで交流の電源も使えるようになっているのだ。
下の画像は外付けのインバーターだが、こんなものがポータブル電源の中にも入っていることになる。
交流にも品質のようなものがある
交流というのは、周期的にプラスマイナスの極性が入れ替わる電流なのだが、この周期をグラフにすると滑らかな波状の曲線になるものと、カクカクしていて滑らかではないものがある。
滑らかな曲線で極性が入れ替わるものは正弦波と呼ばれ、こちらの方が滑らかではない電流より「言うなれば高品質な交流」ということになる。普通のコンセントから出てくる電流は正弦波だ。
滑らかではないタイプには短形波・修正正弦波・擬似正弦波など幾つかの種類と呼び名があり、質にも違いはあるが、取り敢えず正弦波に対して「正弦波ではない」の括りで良いと思う。
正弦波でないと何が起こるか、ごく簡単に説明すれと、正弦波でなければ十分な性能が得られない機器があったり、ノイズなどが発生して非常に不快な思いをすることがあったり、全く使うことのできない機器もあるばかりか、場合によっては機器を壊してしまうことがあるということだ。
正弦波を作れるか否かでインバーターのコストも大きく変わる。
例えば「シガーソケットにこれを繋げば車の中で家電製品が使える!」などとか書かれたインバーターでも安価な製品は正弦波ではない場合が多く、実際にはこれでは使えない機器もたくさんある。
ポータブル電源に内蔵されたインバーターは正弦波の交流に変換してくれるものが多いが、中には正弦波仕様ではないインバーターが内蔵されたポータブル電源もあるようだ。
ポータブル電源やインバーターを選ぶ際には「正弦波」であるかないかを確認することは大きなポイントとなる。
違いを十分理解していてコストを抑えるために正弦波ではないインバーターを敢えて選ぶのなら問題ないが、そもそもこの項目を飛ばさずに読んでいただいている人はそれには当てはまらないケースが多いと思うので、ここはケチらずに「正弦波」を選べば間違いないと伝えておきたい。
定格出力
電気調理器などの家電製品や電動工具類など、比較的大きなパワーを必要とする機器を使用する上で非常に重要になるのが、そのポータブル電源が出すことのできる最大の電力、Wで表される数値だ。
この数値は基本的には内蔵されたインバーターの能力によって決まるのだが、この数値の違いによってできることも大きく変わってくる。
後で説明するバッテリーの容量と似て見えるが意味が全く違うので、まずはこれらを混同しないように注意が必要だ。
上の画像の液晶の数値は出力中の電力(597W出力中)を表示している。
一般的にポータブル電源やインバーターには、例えば「定格出力(AC出力と書かれていることもある):600W、サージ:1200W」のような性能の表示がある。
これを例にとって、これがどういった意味かと簡単に説明すれば、「最大消費電力が600Wまでの電気製品が使えます。」
そして、モーターを使う機器のように始動時に瞬間的に大きな電力が必要なものがあるのだけど、サージというのはその瞬間的に必要な大きな電力のことで、「サージで1200W位消費する機器までなら使えます。」といったような意味だ。
だから例え消費電力が400Wであっても、もしサージが1500W必要な機器(そんなのあるか知らないが)だったとしたら、「定格出力:600W・サージ:1200W」のポータブル電源では使うことはできないことになる。
また、実際には機器の仕様書に書かれている以上の電力が必要な場合もあり、ギリギリでは稼働しなかったり停止してしまう可能性もある。少し余裕を持たせておくことも必要だ。
使える電気の量
そのバッテリーで使える電気の量がどれ程なのかを表す方法として、AhまたはmAh(この二つは1A=1000mAのことであるから意味は同じ)で表される場合と、Whで表される場合の2通りある。
AhのAはアンペア(電流)、hは時間、WhのWはワット(電力)、hは同じく時間のことだが、何が違うかと言えば、Ah(またはmAh)はバッテリーの容量(放電容量)を表す単位で、例えば5,000mAhのバッテリーで5Aの電流を流し続けたら理論上1時間で空になるといった意味だ。
それに対してWhは消費電力量のことだ。満充電で1時間にどれだけの電力(W)を使えるバッテリーかといったような解釈で良いと思う。
2種類の表記があると比較しにくいが、電圧がわかればWh=Ah(放電容量)x V(電圧)で換算することができる。例えば105Ahで12VのバッテリーをWhに換算すると1,260Whといった具合だ。
専門家に言わせたら難癖をつけられる説明かもしれないが、素人なら大凡こんな風に理解しておけば十分だと思う。
スマホの充電などに使うモバイルバッテリーなどは通常mAhで表記されていることが多いが、上の画像の黒い方は26800mAh/99.16Wh、白い方は12200mAh/45.14Whと記載がある。ということはどちらも電圧は3.7Vとであることはお分かりいただけただろうか?
少しややこしくなってしまったが、それよりもっとわかりやすのは、家電製品は通常「消費電力:〇〇W」と表記されているから、家電製品を使うならポータブル電源はWhの表記があるとありがたい。
もちろんロスなどもあるので、この計算通りにはならないが、要するに例えば容量が600Whのポータブル電源なら消費電力600Wの家電製品を1時間位使い続けると空になってしまうとか、消費電力30Wの機器なら20時間位使えるといったような意味になるのだ。
家電製品など交流の機器を使う上では、Whで表記されていると目安をつけるのが簡単ということだ。
バッテリーの性能を表す上で時間率とかややこしいことは他にもあるけど、一般的にはそこまで気にかける必要はないと思うのでこの辺で。
車旅におすすめのポータブル電源
個人的には「車旅用にポータブル電源を買うなら、絶対に最低でも出力600W以上をすすめる。」が一つの結論だ。
その大きな理由は、車内で家電調理器具を使えてこそ車旅にポータブル電源を導入する大きな意義があると思っているからだ。
と言っておきながら、当記事ではポータブル電源を選ぶ上で必要な基礎知識や理論に終始し、車内で家電調理器具を使えることの大きな意義や、出力600W以上をすすめる理由も説明していない。
こちらについては、また機会を改めては紹介したいと思う。
最後に私が見出したちょっとした法則のようなものも紹介しておこう。ポータブル電源の価格と容量についての関係だ。
かなり大雑把で全てに当てはまるわけではないけど、例えば容量が400Whクラスなら4万円前後、1,000Whクラスなら10万円前後といったように、概ね容量100Wh:10,000円が価格の目安になっているように思う。
これも参考にしていただきたい。