大容量のポータブル電源 EcoFlowの「EFDELTA」を使ってみた#1
リチウムイオンのポータブルバッテリーは、キャンピングカーに組み込まれた電源のシステムと違って車外に持ち出して使うことができる。
難しい配線なども不要で手軽に使え、災害時にも大活躍することから車旅をする人たち以外にも人気が高まっている。
しかし、サイズや能力、価格にも大きな開きがあり、何を選んだらよいかわかりにくいと感じている人も多いと思う。
本記事では「リチウムイオンポータブルの選び方」を簡略化して説明するわけではない。短くまとめたら、かえってわかりにくくなる可能性があるからだ。
このテーマについて書くのなら、これならと思うものを選んで、実機を使った上で解説すれば、性能の違いで何が変わるのか、何ができて何ができないのかなどが、わかりやすく伝えられるのではと思っていた。
そんな折、Makuake(アタラシイものや体験の応援・購入サービスを提供しているサイト)とかで目にして、これは凄いぞと思っていた「EcoFlowのEFDELTA」という物凄いスペックのリチウムイオンポータブルバッテリーと、同社のソーラーチャージャーを試用する機会を得た。
これまでの経緯は以前の記事をご参照いただきたいのだが、実際に使わせてもらうのだから試用できる短期間のうちに実際に色々と試して検証し、それがポータブルバッテリーを選ぶ際の指標になればと思う。
EFDELTAの概要
仕様などはEcoFlowの公式サイトも参考にしていただきたいのだが、ざっと説明すると、バッテリー容量は1,260Wh、AC出力は1,600W(瞬間最大3,100W)となっている。
電気に疎い人はこれがどういう意味かわかりにくいと思うが、実際の使い心地のレポートの部分で追々説明して行く。
しかし、容量の1,260Whもさることながら、ともかく1,600W(瞬間最大3,100W)はポータブル電源としては凄いことだということを先ずは頭に入れておいていただきたい。
そしてこれに輪をかけて凄いのが、充電時間の短かさだ。
ACからの充電では1.6時間(説明書には、最大1,200Wで0~80%の充電に要する時間は約1時間、0~100%で約2時間となっている。)、車のシガーライターソケットからの充電で10~12時間、110Wのソーラーチャージャー4枚使用して充電した場合で4時間となっている。
シガーライターソケットとソーラーチャージャーからの充電時間についてはピンとこない人も多いと思うが、ほとんど誰もが馴染みのあるスマートフォンやカメラのバッテリー、モバイルバッテリーなどの充電時間と比較してみるとわかりやすい。
一例としてiPhone 11 Pro Maxのバッテリー容量をmAhではなくWhで表すと『15.04Wh』となるそうだ。それに対してEFDELTAのバッテリー容量は『1,260Wh』。
この様に同じ単位に換算すると、とてつもなく大容量であることがわかる。
iPhone 11 Pro Maxのバッテリーの84倍もの容量がありながら、2時間かからずに充電できてしまうのだ。
そう考えたら、この充電速度の凄さが理解しやすいのではないかと思う。他の近いサイズのポータブルバッテリーと正確に比較したわけではないが、相当に画期的なことであることは間違いない。
大きさの比較に置いたペットボトルは2Lサイズ。
カタログの数値では、大きさが39.9 x 21 x 27cmで重量が13.6kgとなっている。
こういった機材の外皮のプラスチックの質感は、頼りなかったりすると残念に感じてしまうが、実物に触るまで質感はわかりにくい。EFDELTAの躯体は、実際に触れてみてもしっかりとしていて安心感を覚える。
約14kgと聞くと重いと思われるかも知れないが、両手で持てるように両側にしっかりとしたグリップが付いている。
持ちやすいので、少なくとも私は持ち運ぶのが全然苦にならなかった。とはいえ、決して軽くはない物なのだから、運びやすさも重要なポイントの一つだ。
DCポート
液晶パネル側はこうなっている。
- 液晶パネル
- DC5V 2.4A 12WのUSB-A出力コネクタが2口(各コネクタ最大)
- DC5V・9V・12V 2.4A 28Wの急速充電対応USB-A出力コネクタが2口(各コネクタ最大)
- DC5V・9V・15V・20V 3A 60WのUSB-C出力コネクタが2口(各コネクタ最大)
- 主電源ボタン
- DCの出力ON/OFFボタン(この面からの出力)
急速充電対応のコネクタを含めてUSB-A出力が4口もあれば、大抵事足りると思う。もちろん同時に使用可能。さらにUSBが必要なら、AC出力にUSBのアダプターを付ければもっと増やすこともできる。
液晶パネル
この液晶パネルに表示されるデータの主だったところは、
- バッテリー残量
- 残りの充電時間
- 入力W数(充電状況)
- 出力W数(使用状況)
などだが、他にも過負荷の警告や高温・低温・冷却ファンの稼働(過熱防止の冷却ファンが内蔵)などなど、状況や状態を細く表示してくれる。大変便利で安心な機能だ。
また、使用状況と充電状況が数値になって表示されるのは見ていても案外面白いもので、これのおかげでソーラーチャージャーからの充電は、結構目まぐるしく数字の上下動がでることも知ったし、使用量と残量や入力量(充電)とのバランスを見ながら電気を使っている(充電しながら電気を使うことができる)と、『アポロ13』のトム・ハンクスの気分なんかもちょっと味わえたりして面白い。
そしてもう一つ重要な表示がある。
EFDELTAは使用する機器に応じて交流100Vの出力を50Hzと60Hzに切り替えができるようになっているのだが、50Hzか60Hzかもこのパネルに表示される。
どっちでも問題ない機器もあるが、問題が生じる機器もある。交流の機器を繋ぐ場合は確認が必要だ。
ACポート
液晶パネルがあるのとは反対側の面にはACコンセント(出力用)が6口もあり、その他にDC13.6Vのシガーライターソケット出力1口もこの面に備わる。
主電源ボタンとは別にこの面にAC電源ボタンもあるので、ACを使用しない時の安全性も高まって良い。また、この電源ボタンも反対面の主電源ボタンとDC電源ボタンもON/OFFの表示灯が付いている。
入力ポート
広い方の面の片側には、左からソーラーチャージャー充電用のコネクタ(車のシガーライターソケットから充電する際のコードもここに繋ぐ)・AC電源入力コネクタ・充電過負荷保護スイッチの3つが並び、これらを使わない時には蓋でカバーするようになっている。
この反対の面は上部に冷却ファンの空気孔があり、使用する時にはそこを塞がないように注意する必要がある。
ソーラーチャージャーで充電実験(その1)
本機が届いたときのバッテリー残量は31%となっていた。充電時間の概要などについては冒頭で書いた通りだが、今回は同じEcoFlowの、110Wの折りたたみできるソーラーチャージャー「IGUANA」も4枚お借りしたので、先ずはソーラーチャージャーでの充電を試みることにした。
このソーラーチャージャーは、4つ折にたためるようになっていて、たたむと上の画像のように画板のような感じで専用の収納ケースに収まるようになっている。
たたんだ時の大きさは約55cm×42cm(バッグの外寸)で、広げると約158cm×51cmになる。
このケースは持ち手も付いていて持ち運びもしやすいが、充電するときはチャージャーのスタンドとしても使えるようになっている。
バッテリー本体とソーラーチャージャー4枚を車の中に収納するとこんな感じ。
また、EFDELTAは、このチャージャーを直列の場合は3枚まで接続して使用することができる。4枚あるからと言って、4枚全部を直列に接続して充電することはできない。
しかし、別売のパラレル接続ケーブルセットを使用することで、直列2枚の2組を並列接続して同時に4枚使用することができ、直列3枚を2組並列接続すれば、最大6枚のチャージャーを使って充電することもできる。
複数枚のソーラーチャージャーを使って充電する仕組みは少しわかりにくいかも知れないが、この直列接続と並列接続に関しては理解しておく必要がある。
先ずは3枚直列での充電を試してみることにしたのだが、充電を開始する前にコーヒーメーカーとオーブントースターがセットになったものを使って朝食の準備をした。
液晶パネルで出力の数値を見ると、トースター使用中が480W、コーヒーメーカーの方が多くて620W程度となっていた。
因みに私の車に積んである機材(ディープサイクルバッテリー+定格800Wのインバーター)でコーヒーを淹れていると、バッテリーの力不足なのか、止まりはしないけどインバーターから警告音が鳴るようになってしまった。
【11:30am】
3杯分のコーヒーを淹れてトースト2枚を焼いた後のバッテリー残量は19%。トースターとコーヒーメーカーで10%ちょっと使ったことになる。
やはりこういった電気をダイレクトに熱に換える物は電力消費量が多い。
ここから110Wソーラーチャージャー3枚直列での充電開始となる。
コネクタを接続し、液晶パネルを見ると入力は240W前後で推移していた。
【1:00pm】
30分おき程度に何度かチェックしていたが、充電開始1時間半後には残量19%から50%にまで上がっていた。
同じペースで充電を続ければ、0%からスタートしたとしても、約5時間で満充電となる計算だ。
疑っていたわけではないが、「4枚のソーラーチャージャーで4時間」に偽りはなさそうだ。
【1:30pm】
色々やっていたら昼食を作るのが面倒になり、カップヌードルで済ませることにする。せっかくだから、あっという間にお湯の沸くティファールの電気ケトルを使用してみることに。
使用中の出力は1,250Wを表示していた。
これは定格のAC出力が1,600Wのパワフルな「EFDELTA」ならではの成せる技で、そこいらのバッテリーでこのケトルは使用できないことを意味している。
これを使えるのはポイントが高い。なんと言っても750ml程の常温の水が3分も経たずに沸騰してしまうのだ。寒い時に海から上がって、電源スイッチを入れるだけで6分後にはカップラーメンが食べられるなんて、ちょっと大袈裟だけど夢のようだ。
ところで、最近読んだ「ポータブル電源の選び方」のような記事で、「ポータブル電源では使えない物リスト」に電気ケトルが入っていた。
しかし、500W程度の電気ケトルもあって、実際私は普段それを使っている(沸騰するまでに確実に5分以上はかかるが)。それに、EFDELTAなら「あっという間の…」も使えない物リストには入らないのだ。
自分が作ったわけでもないのに何故か優越感に浸りながらカップヌードルを食べた。しかし、速いがさすがに電力消費量も多い。65%位にまで上がっていたバッテリー残量はここで3%減少。
この実験の間、カメラのバッテリーやiPhoneの充電にもちょこちょこ使っているのだが、大容量の「EFDELTA 」にとっては微々たるもので、ほとんど数値にも影響が出ない程だった。
【3:00pm】
太陽の向きに合わせて何度かソーラーチャージャーの向きを変えていたのだが、ちょっと油断していたら、入力が160W程度にまで下がっていた時があったり、再度調整すると300W近くまで上がる時間帯もあったりした。
普通にしていたら快晴としか思わないような状態でも、バッテリーの数値を見ていると妙に下がっている時があって、空を見上げるとそんな時は日光が雲に若干遮られているような状態だった。
こうして数値に表されると、ソーラーチャージャーは思っていた以上に日光の向きや強さに敏感で正直なやつなんだなあ、と感心してしまった。
そして3時も過ぎ、太陽が西の方に移動するに従い、雲に太陽が若干隠れ気味になることも多くなり、充電のペースは落ち始める。
【4:00pm】
4:00pmの時点でバッテリー残量は90%。日は傾き始めて少し雲に隠れてきたので、この日の実験は終了。
その後
この後に電子レンジや小型の炊飯器などを使って、EFDELTAに貯めた電気のみで夕食を作る実験をし、翌日は電動工具なども試してみた。
また後日、小雨の混じるような曇りの天候にも恵まれ(?)たため、そんな日のソーラーチャージャーでの充電も試してみたりもしている。
ところが、そうこうしているうちに、新製品の姉妹機「RIVER 600」の試用の話も舞い込んだ。
次回は、まだ続くEFDELTAとソーラーチャージャーの使用実験の続き(電子レンジと炊飯器、電気工具の使用結果もあり)と、RIVER 600との比較や使い分けなどについての話題となる。
ご期待いただきたい。
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