大容量のポータブル電源 EcoFlowの「EFDELTA」を使ってみた#2
「EcoFlowのEFDELTA」という物凄いスペックのリチウムイオンポータブルバッテリーを試用させてもらった記録の第2弾。
今回さらに色々と試してみたら、返却するのが名残惜しくなってしまった。
目次
1日の調理をEFDELTAに貯めた電気だけでやってみた
EFDELTAなら、1,000Wオーバーの電気ケトルが使えることは前回の記事で書いた通り。
そして今回は、夕食を二晩続けて貯めた電気のみで調理することを試みたのだが、1日の調理を全て貯めた電気だけで調理するとどんな感じになるのかを報告する。
電子レンジ
先ずは電子レンジ。電子レンジには500Wとか600Wの数字が並ぶが、これは温める力のことであって、電子レンジ全体の消費電力のことではないので注意が必要だ。
一般的な家庭用の電子レンジの消費電力はこれの1.5倍以上で、1,000Wから1,300W程度は電力を消費する(もっと消費するものも少なくない)そうだ。
ということは、バッテリーの出力も最低1,300W程度はないと電子レンジを使うことは難しいことになってしまう。要するに、現在普及している、価格が10万円以内のポータブル電源の多くでは電子レンジが使えないことになる。
DRIMOの記事であるから、基本的にEFDELTAを車で使うことを想定し、家で使う時にも車の側でトースターやコーヒーメーカーを使ったり、実際に海岸近くへ車で持ち出してインフレータブルSUP(空気で膨らませる立ちこぎボード)の空気入れに使ったりしていたのだが、実は棚に入った電子レンジを外に持ち出すのは面倒臭いことに気付いてしまった。EFDELTAを電子レンジの近くに持って行った方がずっと楽そうなので、横着して電子レンジは家の中で使うことにした。
だけど、これは言い換えればEFDELTAを運ぶのは、電子レンジを動かすより厄介ではないことを証明したことにもなる。
先ずはブロッコリー250gを茹でる代わりに電子レンジで調理してみた。バッテリーの出力は1,200Wを超え、5分間で電力は7%消費という結果だった。
小型炊飯器
次に、2合炊きの小さな炊飯器で米を炊いてみた。これの消費電力は300Wとなっている。
そしてたまに数値が上下するが、実際のバッテリー出力も300W前後で推移していた。後に電動工具の項目で説明するが、炊飯器などは特に初動時に大きな電力を必要とするような機器ではないので、これはEFDELTAのような大パワーがなくても、使えるバッテリーは多いと思う。しかし、時間が30~40分かかったので、1,260Whの大容量を誇るEFDELTAでも7%程度の電力を消費。
この程度の炊飯器ならあまり大きな電力は必要としないが、バッテリーの容量が小さいと、米を炊いただけで残量が大幅に減ってしまうなんてことにもなりかねない。容量があまり大きくないバッテリーの場合は油断禁物だ。
ミニ熱調理機
米を蒸らしている間に肉を調理。家にホットプレートというやつがなく、1 ~2人用の鍋やちょっとした焼き物に使える電熱調理機があったので、これを使用。消費電力500Wと書かれている。実際に使ってみると、バッテリーの出力表示は480Wと出ていた。小型炊飯器同様これなら使えるバッテリーも多そうだ。
肉を250g載せてみると、あまり火力が強い感じではないので、焼くと言うより煮ているような感じになる。食材の量がもっと少なければ焼いた感じになるのかもしれないが、この程度のパワーでは強火にはならないので、香ばしい焼き色は期待できなさそうだ。
途中で野菜も加えたりして調理時間は約20分間かかった。出力はそれ程高くもないけれど、電力消費は6%程だった。
調理に費やしたトータルの電力消費量
調理に費やした電力をEFDELTAのバッテリー容量の%で表すと、
夕食:電子レンジ7%+炊飯器7%+熱調理機6%=トータル20%
昼食:カップヌードルの湯沸かし3%
朝食:トースター+コーヒーメーカー10%
1日で調理に費やした電力のトータルはEFDELTAのバッテリー容量の33%という結果だった。全体量の1/3。
調理だけに使うなら、満充電で3日はもつ。
3枚のソーラーチャージャーを直列で使って充電するなら、晴れた日の日中に充電しておけば、2時間もかからずに燃料代タダで1日の調理に必要なエネルギーが賄えるという計算になる。
電動工具も使ってみた
電動工具の使用はキャンピングカーの話とは直接関係ないとも思えるが、例えば旅先で拾った流木や石や貝殻の加工をその場でできたら面白いだろうなあと思う。
また、個人的には外でグルーガンとドライヤーを工具としてセットで使えたら便利と思うことがあるのだが、ドライヤーはEFDELTAのようなパワーと容量がなければ無理だから、これまで諦めていた。
前回の記事で触れた「ポータブル電源では使えない物リスト」とは逆に、使える物リストに電動工具が入っている場合がある。
確かに出力が400Whクラスのポピュラーなポータブル電源でも使える電動工具は少なくないが、使えないものや、ごく短時間しか使えないようなものもあるため、どんな電動工具も使えるとは思わない方がよい。
と言うのも、電気機器には動き始めてしまえばそれ程ではなくても、始動時に非常に大きな電力を必要とするものもあるからだ。
例えば、工具ではないが冷蔵庫やエアコンなどがこれに該当する。普通の家庭用エアコンの場合、30分程度止めるくらいなら回し続けた方が電気の消費量が少なく電気代もお得だそうで、それ程始動時に大きな電力を使っているということだ。
モーターを使う電動工具にもこの傾向はある。モーターを使う機器は始動時に結構大きな電力を使い、大きな負荷がかかると相応に電力が必要になる。
EFDELTAは上の画像にある工具はもちろん、全て余裕で使用することができた。しかし丸鋸(まるのこ)は動き始めたらバッテリーの出力は310W程度(何も負荷をかけずに回しているだけの状態)と表示されていたが、始動時は一瞬1,000Wを超えていた時もあった(毎回一定ではなく、何度か始動停止を繰り返すと数値も変化し、平均して始動時は500W程度だった)。
同じモーターを使うものでも、徐々に回転の上がって行くベンチグラインダーは割と余裕。
ドリルとディスクグラインダーは動き始めれば150~200W程度だが、やはり始動時は1.5~2倍の電力を必要とした。
この結果から出力が400Whクラスでも使える工具は多そうだが、今回試さなかったけれど、チェーンソーなんかは無理なことが多そうだ。また、パワーにも余裕は欲しいが、電動工具は始動を何度も繰り返してトータルで長時間使うような性質の物だから、消費電力は思った以上に多くなってしまう可能性が高い。
動かすことはできても容量が大きくないと実用性が高いとは言えなくなってしまうので、本格的に電動工具を使おうと思ったら、EFDELTAのような大きなバッテリー容量が欲しくなるのではないだろうか。
充電色々
EFDELTAにはオプションのような形で、充電用の折りたたみ式のソーラーチャージャーの用意があり、EFDELTAとのお得なセット販売もあるようなので、是非このソーラーチャージャーと併せて合わせて使用することをお薦めする。
このソーラーチャージャーについて詳しいことはEcoFlowの公式サイトをご覧いただくとして、このソーラーチャージャーを直列3枚で使って充電を試した結果は、前回の記事中の「ソーラーチャージャーで充電(その1)」で書いた通りだ。
そして、このチャージャーはもちろん1枚や2枚でも使用でき、EFDELTAでは、並列と直列を組みわせて4枚、または6枚での充電も可能なので、1枚での充電と4枚使った充電も試してみた。
直列2枚 x 2組で充電
前回の記事でも触れたが、EFDELTAでこの110Wのソーラーチャージャーを同時に4枚使用する場合は、直列で2枚接続した2組を並列で繋ぐ必要がある。
この意味を理解せず直列で4枚繋いでも充電できないのでご注意いただきたい。中学校(小学校?)の理科を思い出せばなんてことはない。そして並列接続するためにはオプションの並列接続用ケーブル(下の画像)が必要だ。
この直列2枚 x 2で充電した時は、最高で400W位の入力があった。最高で400W位というのは、ソーラーチャージャーからの充電では入力のデジタルメーターの数値が本当に目まぐるしく上下動し、止まっていることがないからだ。単純に考えれば4は3の1.33倍ということになるが、直列3枚で充電した時のおおよそ1.5倍のパワーが出ていたことになる。
しかし、デジタルメーターの数値が目まぐるしく上下動するように、思っていた以上に発電量は光の強さや向きに敏感に反応するようなので、全く同じ条件で試したわけではないから、正確な比較にはなっていないことをご了承いただきたい。
ソーラーチャージャー1枚で充電
海岸に持ち出した時にチャージャー1枚でも充電してみた。
3枚4枚並べると見た目がかなり大げさなことになってしまい、場所もとるので公共の駐車場とかでは控えたい。しかし、1枚なら上の画像の通り大げさなこともない。
正確な数字をメモするのを忘れてしまったが、確か80W位は入力されていた。
朝にインフレータブルSUPに空気を入れて、昼食やお茶のお湯を沸かして、帰りにシャワー(電動ポンプ)を浴びても、昼の休憩中にソーラー発電しておけば使った分くらいは補充できる。
話題が逸れるが、「大量のソーラーパネルを並べるのは公共の駐車場とかでは控えたい」のついでに言っておきたいことがある。
上の画像の駐車場は無料の駐車場で、普通の乗用車サイズなら20台以上停められるスペースがある。しかし、この日はタープやバーベキューの機材(バーベキュー禁止の看板も立っているのだが)を広げた5台のキャンピングカーがほぼ占拠していた。
温泉施設とかで「キャンピングカー侵入禁止」なんて看板を見かけたことがあるが、他人の迷惑を顧みない非常識な行動が「○○禁止」発令の原因となることは多い。そこに居合わせた人に直接の迷惑になるだけでなく、他のキャンピングカーユーザーがとばっちりを食うような行為は絶対にやめていただきたいものだ。
話を戻す。写真を撮り忘れてしまって画像はないのだが、小雨の混じるような曇りの日にもチャージャー1枚で充電を試してみた。
お日様が完全に隠れていると、やはり結果は顕著にあらわれ、発電は10W程度にまで落ちてしまう。
最初は太陽の隠れているであろう方向にチャージャーを向けていたのだが、ふと思い立ち、真上に向けみたところ、斜めに立てているより幾分入力電圧が上がることが判明した。
光源がはっきりしないような場合は、この方が効率が良くなる(のかもしれない程度だが)ことを発見した。
ACからの充電
EFDELTAのACからの充電が特別に速いことは前回の記事でも書いたが、今回の試用では、ソーラーチャージャーを試すことをメインとしていたので、ACからの充電は二の次としていた。
しかし一応試しておこうと思って、確か残量60%位になっていた状態でACに繋いだところ、時間も測り忘れてしまったが、何か他のことをしていてふと見たら、もう満充電になっていた。やはり凄い速さだ。
許可を得てコンセントを拝借する場合も短時間でかなりの量を充電できるのは大変便利だ。
良いことばりじゃないからさ?
良いことばかり書いていてはただの宣伝と疑われてしまう。ここで、マイナスな点も書いておこうと思う。
まず一つ目として、ソーラーチャージャーの入ったバッグ。
これはアウトドア用座椅子みたいな感じでチャージャーを立てるスタンドにもなる。
まあ便利ではあるのだが、何かこうシャキッとしなくて、私の感性にはあまり合わず、使えはするけど、少なくとも私は「大変使いやすい」とは感じなかった。
しかし、これはあくまで私の感想で、これがとても良いと思う人もいると思う。そして、収納バッグとしての機能は何も問題なく使いやすい。
スタンドとして使いやすいと思わないのであれば、使用するシチュエーションも人によって違うのだから、自分の使い方に合わせて、それくらい自分で工夫したらよいと思ったところで、この問題は解決。
次に少し気になったのは、ソーラーチャージャーと繋ぐ充電ケーブルの長さ。
ソーラーチャージャーは思いっきり日向に置かなければならないが、バッテリー本体はなるべくなら車内など日陰に置いておきたい。
その際、チャージャーを1枚や直列2枚で繋いでいる場合は全然気にならなかったのだが、直列2枚を2組並列接続する場合は、ケーブルの取り回しの自由度が低くなり、もう少し長さがあれば、より使いやすいのだがと感じることがあった。
もう一つは、説明書や注意書きについて。
EFDELTAは出荷前には充電放電のテスト済みだが、危険回避のために出荷時には満充電されていない。前回の記事の「ソーラーチャージャーで充電(その1)」で、充電を開始する前に少し使ったと書いたが、後で説明書の入っていた容れ物を見たら、「必ず充電してから使うように」と書かれていた。
私は説明書を全く読まないようなタイプでもないが、字が小さかったり、目立たなかったり、説明が簡潔でなかったりすると後回しになりがちで、とにかく使ってみて、分からないところがあってから読んだり、落ち着いてから読んでみたりするようなところがある。
これは読まずに使ってしまった私が悪く、取り敢えず何も問題が生じなくて良かったのだが、「必ず充電してから使うように」はあまり目立つものではなかった。
一応、「必ず充電してから使うように」はおしゃれに小さな字で書くのではなく、箱を開けた瞬間ドーンと目に飛び込んでくるような書き方にした方がよいのではないかと思った。
また、EcoFlowの説明書は決して分かりにくいものでもなく、注釈ばかりで何度もページを行ったり来たりしなければならないイラつくような最悪の部類ではないのだが、読もうという気持ちが湧く感じのものでもなかった。
分かりにくいと文句を言う人がいそうな感じも漂う。
説明書は分かりやすいのはもちろん重要だが、読む気を起こさせることも大切だと思う。読まないやつが悪いのだが、説明書ってもう少しなんとかならないものかと思うことは多い。
他にマイナスを探してみても、お世辞や忖度抜きに特に思い当たることがない。
価格については、人によって感じ方はさまざまだと思うが、個人的には性能を考えるとむしろ安いのではないかと思える。
最後に
本当に楽しい実験だったし、EFDELTAはお世辞抜きで良い製品と断言できるもので、本当に欲しくなってしまった。
できれば旅に出て使ってみたかったのに、それができなかったことが残念だ。
実は肉眼では気付いていなくて、撮った写真を見てから「なんだか少し色むらがあるけど、何か汚しちゃったのかな?」と思ったことがあった。
しかし、白状すると説明書と同様で、返却直前まで読んでいなかった本体上面に貼ってあった保護フィルムに、こんなことが書かれていた。
「EcoFlowは環境保全に全力で取り組んでいます。製品の製造過程でも汚染物質をできるだけ減らすため、フリースプレー塗装を採用しています。その為各製品の表面には各製品で完全にユニークなパターン(ムラ)が生成されますが、私達はこれを個体の個性と考えています。この保護フィルムを剥がして、あなただけのEcoFlowパターンを見つけてください。」
色むらの理由はこういうことだったようだ。(ちなみに、次の記事で紹介するRIVER 600も、EFDELTA同様にフリースプレー塗装が採用され、環境保護に配慮した仕様になっている。)
自分が汚したわけではなくて良かったと思うとともに、さらにEFDELTAに対する好感度がアップした。
この実験中に届いた新製品の「RIVER 600」についても書こうと思っていたのだがスペースが足りなくなってしまった。
次回は「RIVER 600」の紹介と、EFDELTAとの比較や使い分けについて書きたいと思う。
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