ポータブル電源は車中泊の必需品か?【頼りすぎずに電気とは上手に付き合おう】
ポータブル電源がない頃から車中泊をしていた
リチウムイオン電池など、近年バッテリーの技術が格段に進歩し、ポータブル電源というものが急速に普及した。
持ち運ぶことができて大量の電気を蓄えておくことができ、大変便利になったものだ。
SNSや情報記事などでも、車中泊にはポータブル電源が必需品のようなことを書いている人もいる。
私もポータブル電源は便利だと思うし、実際に使用もしている。
しかし、ポータブル電源の歴史はそんなに長いわけではなく、ポータブル電源が登場するずっと以前からクルマの中で寝ながら旅をしてきた人は私を含め大勢いて、なくても何も問題なく車中泊はできていた。
そこで、ポータブル電源が「なくても十分」あるいは「ないことの利点」などの理由や例をまとめてみることにした。
ただし、この記事はポータブル電源を否定しようとか、使用をやめようといったネガティブな主張ではない。
誤解のないようにお読みいただければと思う。
ポータブル電源の歴史と私個人の使用歴
ポータブル電源が必需品か否かの前に、まずはポータブル電源の歴史と、ポータブル電源が登場する以前の電源事情などについて触れておこう。
携帯電話などの充電に使うモバイルバッテリーや一般的な乾電池などを除くと、ポータブル電源が登場する以前に車内で電気を使う最も簡単な方法は、シガーライターソケットから取ることだった。
車内に灰皿もなくなった現在、何故この名称なのかわからない人もいそうだが、元はここにタバコに火をつけるための電熱式ライターが挿してあったからこう呼ばれている。
ちなみにこの写真はバモスで、使うこともないのでライターはいつの間にか紛失してしまったが、2020年製のハイゼットトラックはすでに灰皿がなく、ソケットはあってもライターも元々なかったようだ。
そして、ここに簡易的なインバーターを繋げば一応交流100Vの機器を使うこともできる。
しかし、かなり制約があって使用できる機器は案外少なく、本格的に交流100Vの電化製品を使えるといったようなものではない。
また、基本的に車両のエンジンがかかっていなければ使用できないという大きな欠点もある。
車外から電源を引き込むという方法もあるが、当然ながらこれをできる場所はかなり限定的となってしまう。
エンジン発電機を外に置いてケーブルを車内に引き込むというのもあるが、これも音や置き場所の問題(マナーやモラル上)があって、使える場所は限られる。
エンジン発電機を搭載したキャンピングカーもあるが、北米製のキャンピングカーなどには本体のV8エンジンよりエンジン音がうるさいようなものもあり、やはり使用できる場所や時間帯にかなり制約がある。
要するに、自車だけで完結してどこでも車内で本格的に電気を使おうと思ったら、ポータブル電源が登場する以前は重いディープサイクルバッテリーを積み込み、充電器やインバーターなどの設備を構築する以外の選択肢はなかった。
これは現在もキャンピングカーの電源設備としては一般的だが、“手軽”などとは言い難く、誰でもどんな車種にも導入できるといったようなものではない。
また、90年代~2000年代初頭の頃、鉛バッテリーを搭載した現在のポータブル電源の前身のようなものもあるにはあった。
しかし、容量が小さく、白色LEDも普及していなかった(まだなかった?)ような時代だったので消費電力に関しての条件も悪かったこともあり、はっきり言ってしまうとジャンプスタート以外には大して役に立つこともないような代物だったため、あまり普及することもなかった。
ということで、ポータブル電源登場以前は、本格的なキャンピングカーやディープサイクルバッテリーのシステムを構築したクルマ以外では、車内で本格的に電化製品を使うことはできなかったというのが実態だ。
ではポータブル電源はいつ頃登場したのか?
私がポータブル電源を使うようになったのは、2020年にEcoFlowの検証記事をDRIMOで書いたことがきっかけだ。
要するに、私はポータブル電源というものを使い始めてまだ3年半程度しか経っていないことになる。
また、EcoFlowは現在人気実力ともに絶大で、ポータブル電源界のトップ3に君臨する存在となっているが、その記事を書いた当時、私もJackery程度は知っていたが、正直に告白するとEcoFlowという名前を聞いたことすらなかった。
2017年設立のEcoFlowが日本で有名になり始めたのもこの頃からだ。
また、ポータブル電源を使い始める以前に、私はディープサイクルバッテリーとソーラーパネルのシステムをキャラバンに自分で構築もしてはいたが、その期間を含めても私の「車内電気歴」は5~6年程度でしかない。
結構前から電気を使っていたようにも思うのだが、たかだかこの程度で、こうして改めて振り返ってみると、クルマの中で寝て旅をするようになってン十年になる私の経験の中では、「車内電気歴」はほんの束の間のことでしかなかったようだ。
ほとんどの期間は電気などなしでやってきたということだが、むしろその頃の方がクルマの中で寝て旅をする頻度も高かった。
それで、リチウムイオン系のバッテリーを搭載したポータブル電源というものがいつ頃から登場したのかざっと調べてみたところ、正確には不明だが、せいぜい15年程度しか経っていないようだ。
当然初期の製品は現在の基準から考えると物足りない性能だったと思うので、ポータブル電源が一般化したのは、私の「車内電気歴」とほぼ同程度のことではないかと思う。
これほど歴史が浅く、なかった時代の方がずっと長いと思うと、“必需品”とまでは呼べないと思うのだが、いかがだろうか?
次のページ▷▷▷【ポータブル電源は本当に必要?なくても意外といけるかも!その理由は?】