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【体験記】16日間ルーマニアを車中泊旅!ドラキュラの国はやっぱりミステリアス?
キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパ各地を旅する私たち夫婦。
24カ国目に足を踏み入れたのは、なんとあのドラキュラ伝説が残る国、「ルーマニア」です。
キャンピングカーで16日間旅してみると、そこは荒野のような大地、霧の立ちこめる深い森、ミステリアスな古城と、どこか謎めいた雰囲気が漂う国でした。
今回は、ルーマニアを実際に旅してみてどう感じたのか、キャンピングカー事情やおすすめ観光スポットなど、私たちならではの視点でお届けします。
キャンピングカーでヨーロッパ各国を旅することもうすぐ3年!

私たち夫婦は、”一生の大冒険”を叶えるため、キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを旅しています。
旅をスタートしてから、気づけばもうすぐ3年。
イタリアから旅は始まり、中央ヨーロッパのスイス、ドイツを抜け、キャンピングカーごとフェリーに乗せて、北欧のノルウェー、フィンランドまで。
さらに、ポルトガルやスペインなどの西ヨーロッパ、ポーランド、スロバキアなど、これまでに22カ国を走り抜けてきました。
車内でリモートワークをしながらの日々ですが、そのおかげで旅先でゆったりと過ごすことができます。
美しい街並み、息を呑むほど壮大な自然、そこに暮らす人々との出会い。
普通の旅では味わえない「濃い時間」の連続です。
毎日が小さなワクワクに満ち、私たちのペースで、広いヨーロッパをゆっくり体感しています。
そんな車中泊旅の23カ国目となる目的地が「ルーマニア」。
ワイルドな自然やドラキュラ伝説が残る、どこかミステリアスなイメージがありますが、道路状況やキャンピングカー設備の情報量は少なく、少し冒険感のある国でもあります。
これから自分たちの目で実際に確かめ、どんな出会いや体験が待っているのか、高まる期待とともに、私たちはルーマニアの大地へ足を踏み入れました。
ルーマニアはどんな国?

ルーマニアはヨーロッパ南東部に位置する国で、国土は約238,397 km²。
日本の本州とほぼ同じ広さです。
ハンガリー、ウクライナ、モルドバ、ブルガリア、セルビアの5カ国と隣接しており、東側には黒海が広がっています。
自然の表情がとにかく豊かで、国土の約3分の1は山岳地帯。
森や丘、平野などの大地が続いています。
公用語はルーマニア語で、ラテン語を起源とするロマンス諸語の一つで、スペイン語やイタリア語に少し似ている響きを持っています。
通貨はルーマニア・レウ (RON)。
観光地や都市部ではカード払いが広く使えますが、地方では現金のみというケースもありました。
場合によってはユーロを受け取ってくれる場所もあったので、ルーマニア・レウもしくは、ユーロを少しずつ持ち合わせましょう。

中世の城や古い街並みが残る地域が多く、とくにトランシルヴァニア地方は歴史を物語る古城や要塞教会が点在。
まるで “時間が止まったような世界”が広がっています。
また、西ヨーロッパの主要都市と比べると観光客は少なめで、都市によっても“観光地化されている場所”と“素朴なままの地域”の差が大きいのも特徴です。
訪れるエリアによって雰囲気が大きく変わるため、旅のスタイルや好みに合わせて多彩なルーマニアを楽しめます。
キャンピングカーでルーマニアを旅してみてどうだったのか?【リアルな車中泊事情を紹介】

私たちがルーマニアを旅したのは16日間。
まずハンガリー側から国境を越えて入国し、中部のトランシルヴァニア地方へ。
その後、旅の後半はセルビアへ南下するルートを取りましたが、走るほどに景色が変わり、戸惑いと発見の連続でした。
ルーマニアの高速道路事情

ルーマニアには、EUの多くの国と同じく有料高速道路システムがあり、“ヴィニエタ(vinheta)” と呼ばれる通行許可ステッカーの購入が必要です。
一般道と高速道路を分けるゲートや料金所がなく、「気づいたら高速道路に入っていた!」なんてことも。
ステッカーなしで有料区間を走行すると、罰金の対象になるので注意しましょう。
ステッカーは、国境付近の売店や一部のガソリンスタンド、オンラインなどで買えるので、事前に準備しておくと安心です。
料金は1カ月で21.50ユーロでした。
主要道路はしっかり整備されていて走りやすい一方、地方へ入ると舗装が荒れていたり、デコボコが続く道もあります。
キャンピングカー設備

ルーマニアには、ドイツやフランス、イタリアなどで一般的な「無料のキャンピングカー向けサービスエリア」がほとんどありません。
そのため、給水・排水・トイレ処理といった、キャンピングカー旅に欠かせない作業は、有料のRVパークやキャンプ場を利用する必要があります。
旅の計画を立てる際は水回りの管理がとても重要でした。
「どこで給水できるのか」「次の排水はどこで可能か」を常に意識しながらの旅となり、旅のペースが少し制限される印象がありました。
料金の目安
オートキャンプ場、RVパーク:1泊5〜25ユーロ(約900〜4,500円)ほど。
ルーマニアのキャンプ場は、ヨーロッパの中でもかなりリーズナブル。
エリアや設備の有無によって料金の変動は多少ありますが、だいたい1泊10ユーロ(約1,800円)で利用することができました。
ただし、施設によっては給水のみで、排水・トイレ処理などが整っていない場所もあるので、事前に設備内容をチェックした方が安心です。
とくに気になった“治安面”の印象

キャンピングカー旅で欠かせないのが、夜間の治安面。
私たちは普段から安全面を考えて、大型都市や有名観光地などでの車中泊は避け、郊外の小さな町などを中心に泊まっています。
しかしルーマニアでは、普段なら「比較的安心」と思えるような場所でも、「ここで車中泊はちょっと避けたいかも…」と感じる場面が多くありました。
理由としては、
・夜になると人通りが怪しくなる
・街灯が少なく“なんとなく不安を感じる”ことが他の国より多かった
といった、「説明しづらいけれど不安を感じる要素」があるからです。

さらに、私たちはいつも「Park4night」というアプリで車中泊スポットを探していますが、ルーマニアでは「車上荒らしに遭った」、「夜中に不審者が車の周りをうろうろしていた」といったコメントが目立ち、それも不安を後押ししました。
こうした状況を踏まえ、私たちはルーマニア滞在中、路上泊やワイルドキャンプを最小限にし、有料で管理されたキャンプ場を中心に利用するスタイルに切り替えました。
実際、有料キャンプ場はしっかり管理されているところが多く、安全面では安心して泊まれる場所ばかりでした。
場所によっては自由で安全なワイルドキャンプができるスポットもありますが、総合的には「車中泊スポット選びが他国より慎重さが求められる」という印象。
ルーマニアでは自由度の高い“車中泊旅”よりも、「計画的に安全な場所を選びながら進む旅」の方が向いていると感じました。
そんな旅の中で私たちが、安全に快適に車中泊をしながら巡ったスポットをご紹介します。
実際に訪れたルーマニアのおすすめの観光スポット
ドラキュラ伝説が息づく「ブラン城(Bran Castle)」
「ドラキュラ城」として世界的に知られるブラン城は、ルーマニア中部・トランシルヴァニア地方の入り口に位置する、小さな町ブラン(Bran)にある中世のお城です。
13~14世紀頃に建てられた要塞で、外敵から地域を守る防衛拠点として重要な役割を果たしてきました。

霧のかかる深い森と険しい山々に囲まれ、白い壁と尖った赤い屋根。
まさに物語の中から出てきたようなロケーションにたたずんでいます。
この城が有名になった理由が、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』に登場する吸血鬼ドラキュラ伯爵の城のモデルとされていること。
実際のドラキュラ伯爵が暮らした城ではありませんが、荒々しい崖の上にそびえ立つ姿や、どこか不気味な雰囲気が“ドラキュラ城”のイメージにぴったりだとされています。

現在は観光地として整備され、その不気味でミステリアスな”ドラキュラ城”を一目見ようと、世界中から多くの旅行者が訪れます。
城内も城周辺も見どころ満載!
ブラン城内は見学ができ、1人17ユーロ(約3,000円)。

城の周辺には、多くのお土産ショップや売店があり、ドラキュラをテーマにしたさまざまなお土産を買うことができます。
吸血鬼モチーフのマグカップやマント、赤ワインなどユニークなグッズがずらり。

周囲もちょっとドラキュラ感を出したダークな装飾になっていて、雰囲気をたっぷり味わうことができます。
絶景のビュースポット
お城から少し離れた広場は絶好のビュースポットがあります。
森に抱かれながらそびえるブラン城の全景をゆっくり撮影できます。
とくに夕暮れ時は、シルエットがより際立ち、まるで物語のワンシーンのような幻想的な景色が広がります。
キャンピングカーでの訪問も安心

ブランの街にはキャンピングカーも停められる有料駐車場があり、私たちもそこを利用しました。
観光地としてめずらしく、キャンピングカーでも停めやすい環境が整っていたのは嬉しいポイントです。
中世のお城で“ドラキュラ伝説”を感じてみたい方は、ぜひブラン城を旅のルートに入れてみてください。
野生のクマに遭遇?!世界屈指の絶景ドライブルート「トランスファガラシャン・ロード」
ルーマニアで絶対に外せないスポットのひとつが、トランスファガラシャン(Transfăgărășan)です。
ルーマニア中部のトランシルヴァニア地方とワラキア地方をつなぐ国道7Cで、標高2,000mのファガラシュ山脈を縫うように走る超ワイルドな山岳ロードです。

全長は約90km。
地図上では一本の線がぐにゃぐにゃとねじれるように走り、”世界で最も美しいドライブルートのひとつ”と称されています。
周囲には切り立つ岩壁、果てしなく続くヘアピンカーブ、迫力満点の山並み――標高が上がるほど視界が開け、別世界に迷い込んだような景色が広がります。
どこを走っても息をのむパノラマビューが続き、まさに一生もののドライブ体験です。
標高2,034mの「バレア湖(Lacul Bâlea)

とくにおすすめしたいのはLacul Bâlea(バレア湖)です。
標高約2,034mに位置する湖で、周囲を険しい山々に囲まれ、鏡のような湖面に風景が映り込む姿はまさに圧巻。

湖周辺にはレストランや売店、ホテル、駐車場などの施設もあり、トランスファガラシャンの中でもとくににぎわうスポットです。
好きな場所で楽しめる「展望ポイント」

トランスファガラシャン・ロードの道中には車を停められる展望スポットが点在していて、好きなところで絶景を眺めたり写真撮影ができるのも魅力です。
また、このルートはキャンピングカー旅との相性も抜群で、ワイルドキャンプも楽しめるほど自然に囲まれたエリアです。
注意!クマ出没

ただし、注意点がひとつ。
このエリアはルーマニア国内でもクマの出没率が非常に高い場所であること。
とくに、標高800m付近の巨大なダム湖 ヴィドゥラル湖(Lacul Vidraru)周辺はクマの目撃情報が多発!
私たちもこのエリアで4匹の野生のクマに遭遇しました。
車のすぐ横を歩いていたり、木陰から突然現れたり、かなり刺激的なシーンも。
クマに遭遇した時の記事がこちら
クマが多いエリアで守るルール
・むやみに車の外を歩き回らない
・クマに食べ物を与えない
・ゴミを捨てない
・このエリアでの車中泊は避ける
トランスファガラシャン・ロードは最高の絶景ルートですが、自然のルールを守りながら慎重に走ることが大切です。
荒々しく、ワイルドで、これまでにないヨーロッパ体験をくれる国「ルーマニア」
16日間のルーマニア旅をして感じたのは「こんなにも野生的で独特な魅力を放つ国があるんだ」という驚きでした。
どこまでも続く荒々しい自然と素朴で静かな街の空気、中世が色濃く残る古城や小さな村。
そして、森や山に暮らす野生動物たちの気配。
他の国ではなかなか味わえない空気も印象的でした。
キャンピングカー旅としては、雄大な自然の中を走り抜ける爽快感がある一方で、治安面や車中泊スポット選びに慎重さが求められる場面も多くあります。
ワイルドで素朴な自然の中で、”心動かされる瞬間に出会いたい”そんな旅を求めている人にこそ、ルーマニアは強くおすすめしたい場所です。