走行充電器の取り付け手順(前編)|配線作業の前にやるべき準備
「近頃見かけるポータブル電源用の走行充電器ってどうなの?」の記事で、私は走行充電器「Jackery Drive Charger 600W」を、愛車のE25キャラバンに自分で取り付けたと書いた。
今回と次回の2記事では、「Jackery Drive Charger 600W」の組み込み作業工程を順を追って紹介し、ポータブル電源用の走行充電器の取り付けの全体像をお伝えしようと思う。
今回は配線作業に入る前の段階までの内容だ。
配線作業のほうが興味ある人も多いかと思うが、実際にやってみると、下調べや下準備をしておくことが実際の作業以上に重要と感じた。
なので「退屈な前編」と思わずに読んでいただければと思う。
そしてこの記事は「自分でも取り付けは問題なさそう」あるいは「やはりメーカーが推奨する通り専門業者に依頼した方が良さそう」と判断する材料にもなるはずだ。
もっと言えば、走行充電器の導入自体やめておこう、と判断することにもなるかもしれない。
この記事はそのように活用してもらえたら幸いだ。
最初にお断りしておきたいことがある。
メーカーも基本的に取り付けは専門業者に依頼することを推奨している。
そのため、この記事は「これを読めばあなたも自分で取り付けられる」といったマニュアル記事ではないことだ。
また、車種や車内の様子などによって条件はまったく異なる。
その結果、同じ製品でも人によってやるべき作業がまったく変わるため、プラモデルの組み立て説明書のように、マニュアル化すること自体が無理であることもお伝えしておく。
今回と次回の記事は、記事の内容をそのまま参考にしてもらおうというより、メーカーの説明書に書かれていること以外にも注意しなければならないことや、困難なことがあること(その度合いも千差万別)を知ってもらうための内容だ。
状況に応じて臨機応変に工夫が必要になる、ということを知ってもらいたいという意味の方が大きい。
走行充電器の導入を検討中、機器の購入前に確認しておいた方が良いこと

Jackery Drive Charger 600Wは、基本的に必要なものがほぼすべて揃ったキット状態で販売されている。
ただ「近頃見かけるポータブル電源用の走行充電器ってどうなの?」の記事でキット内容については紹介しているので、ここでは説明を省き、本題に入ることにする。
その前に、Drive Chargerを装着して使用してみた感想を述べてしまうと、本領を発揮する長旅での実践使用はまだしていないものの、走行充電器というのはとても頼もしく、今後大活躍することは間違いないと思っている。
ただ、取り付け作業中に思ったのが、「自分は問題なかったが、しっかり下調べをしてから購入した方が良い人が多いであろう」ということだ。
特に自分で取り付ける場合は、購入してから途方に暮れてしまったり、後悔したりすることなどないように、念入りに確認して準備を整えておくことが必要だ。
まずは、そういった下調べや下準備についての説明をしようと思う。
バッテリーまでの入力ケーブルの経路の確保
「バッテリーまでの入力ケーブルの経路の確保」は、下調べしておくことの中でも、特に重要な事項だ。
Jackery Drive Charger 600Wは、本体を車室内の見えるところに設置する前提となっていて、車両のバッテリーと入力ケーブルで接続する必要がある。
しかし、車両のバッテリーはエンジンルーム内にあるのが最も一般的だ。
軽トラも含めキャブオーバータイプの車両は、荷台の下に搭載されていることも多い。

中にはエンジンが前席の下や、もっと後方に設置されている車両(MRやRRのエンジンレイアウトなど)では、エンジンのあるところとは別の場所、たとえばボンネット内にバッテリーが収まっているケースもある。
ホンダ・バモスや、小さなボンネットのあった頃のアクティなどがこのタイプだ。
ボンネットを開けただけでは、そこにバッテリーがあるとは一見して分からないが、実際にはウィンドウォッシャータンクの下に配置されている。
そのため、バッテリーにアクセスするにはレンチでタンクを取り外し、さらに非常に狭い空間に手を入れなければならず、なかなかの苦行を強いられることになる。

いずれにしても、車両のバッテリーは車室(居住空間)とは壁で隔てられた場所に搭載されているのが普通だ。
そして、その壁を入力ケーブルが通過できなければ、Drive Chargerを車両のバッテリーに接続することはできない。
なお、Drive Charger 600Wのキットに付属する入力ケーブルは厚みが約8.5mm、幅が約14.5mm(円筒形状ではない)となかなかにゴツい。
そのため、Drive Charger本体と車両のバッテリーを隔てる壁には、直径15mm程度の穴が必要になる。
ただし、多くの場合、エンジンルームと車室を隔てる隔壁には「サービスホール」という、ケーブルなどを通すための穴が用意されている。
エンジンルーム内にバッテリーがあり、このケーブルを通すのに十分な大きさのサービスホールがあるのなら、ここを入力ケーブルを通す経路として利用することができる。
一方で、サービスホールがなかったり、それに代わる穴や経路が見つからなかった場合は、他の方法を考えなければならない。
場合によっては、車体の鉄板に新たな穴を開けなければならないことも起こり得る。
たとえば、先ほど軽トラのバッテリーは外にあることが多いと書いたが、軽トラの荷台にキャンピングシェルを載せ、その中に走行充電器を設置する場合は、シェルか荷台のどちらか、あるいはその両方に穴を開けなければならない可能性も考えられる。

もちろん、車体に穴など開けられない、あるいは絶対に開けたくない人もいると思う。
作業に入る前というより、走行充電器を購入する前の段階で、車両のバッテリーと走行充電器の設置場所との間に立ちはだかる「壁」をどのように突破するのか。
その方法をあらかじめ解決しておくことを、強くおすすめする。
入力ケーブルの取り回し
先述の通り、入力ケーブルはかなり太くてゴツく、それなりに重さもある。
そして入力ケーブルは肝腎要のケーブルなので、傷めてしまうことのないように注意も必要だ。
剥き出しのまま車室内に放ったらかし状態では邪魔になるだけでなく、危険でもある。
また、たとえば下の写真はドライブレコーダーの後方カメラケーブルだが、入力ケーブルは太さがあるから、内張の中を通そうとしてもこのように簡単に済ますことはできない。

ドライブレコーダーのケーブル
入力ケーブルに関しては、車室内でどのように取り回すのかも含めて、あらかじめしっかりシミュレートしておいた方が良い。
ACCケーブル接続方法の確認と他に必要なパーツ
ACCケーブルは、車両のバッテリーを守るための大変重要な役割を担っている。
その役割については、前回の「近頃見かけるポータブル電源用の走行充電器ってどうなの?」の記事で説明しているので、そちらを参考にしていただきたい。
メーカーの説明書に書かれているACCケーブルの接続方法は、「ACCケーブルのコネクタのない側を切断して銅線を露出し、車両のACCラインに接続します。」としか記載がない。
そして説明書の図を見ると、先端がどこにも繋がっていない「ACCライン」とやらが、車両のどこからか都合よく出ていることになっている。
だが、そんなケーブルが出ている車両は、あまりないのではないかと思う。
あるのかもしれないが、少なくとも私はお目にかかったことがない。
ACC電流を取り出す方法としては、ヒューズソケットを利用するのが一般的だ。
下の写真のようなパーツが市販されていて、こういったものを使用するケースが多い。

このパーツの一般名称はよく分からないが、決して珍しいものではない。
価格も安価で、ECサイトなどでも手軽に入手することができる。
Jackery Drive Charger 600Wはキット化されて販売されていて、他に用意しなければならない物はほぼない、と先に書いたが、ほとんどの場合この種のパーツが必要になるケースが多いと思う。
使用法は配線作業の記事で説明するが、これが必要かどうかの確認は事前にしておくべきだ。
必要であれば、当然ながら作業を始める前に入手しておく必要がある。
もちろんそれに合わせて、
・ヒューズのサイズ
・ヒューズボックスの場所
・ヒューズボックス内でのACCヒューズの位置
といった点も、あらかじめ確認しておかなければならない。
また、ACCケーブルは入力ケーブルのようにゴツくはないが、ACCケーブルの取り回しも考えておく必要がある。
走行充電器の設置場所を決める
Drive Charger 600Wは、車室内のどこかに置いておけば良いということではなく、室内のどこかにしっかり固定する必要がある。
また、熱がこもらないようにするため、周囲には一定のスペースを確保しなければならない。
その設置場所についてメーカーの説明書には「製品をトランクに取付け、…」という表現があった。
「トランク」と言われると3ボックスのセダンにあるような「独立した荷室」を想像してしまう人も多いのではないかと思う。
おそらくメーカーが意図しているのは、「乗車スペースではない場所」といった意味なのだろう。
そもそも1BOX車に「トランク」と呼べるような場所は存在しない。
図解でもSUVと思しき車両のラゲージルームに取り付けているし、逆に3ボックスセダンのトランクのような、狭く密閉された空間の方が、むしろ熱はこもりやすい。
そのため、ここで言う「トランク」を「密閉された狭い空間」といった意味で受け取らない方が良いと思う。
適当な平面が見つからない場合は、パネルを立てるなどして設置場所を作る必要が出てくることもある。
そのため、設置場所と設置方法についても、購入前に目処を立てておいた方が良い。
また、多くの場合、車体のどこかにビス穴を開けることになることも念頭に入れておかなければならない。
どこにもビス穴すら開けたくない人は、走行充電器の導入自体が難しくなってしまうだろう。
そして、鉄板に打ち付ける場合は、付属のセルフタッピングビスを使うことになるが、これを打ち込むにはインパクトドライバーも必要だ。
また、車両のバッテリーと繋ぐ入力ケーブルは長さが6mもあるので、長さが足りなくなることはあまりないと思うが、車両のバッテリーからあまりにも遠い場所に設置すると、先述した通りケーブルの取り回しが厄介になってしまう。
使用中にDrive Chargerをいじるようなことはないが、パイロットランプを確認できる位置であること、また、ケーブルの抜き差しをする場面もあるため、ある程度アクセスしやすい場所である必要がある。
さらに、Drive Chargerとポータブル電源を繋ぐ出力ケーブルの長さは1.5mと、あまり長くはない。
少なくとも走行中(充電中)は、Drive Chargerと1.5mのケーブルで繋いだポータブル電源を、安定した状態で置ける十分なスペースが必要になる。
こういったことをすべて考慮したうえで、設置場所を決めることになる。
ここで、意外と注意した方が良いと思うのが、自分で取り付け作業をするのではなく、取り付けを業者に依頼する場合だ。
細かな相談をせずに業者に丸投げしてしまうと、非常に不便な場所や、自分にとっては不都合と思うような場所に設置されてしまう可能性がないわけではない。
取り付けを業者に依頼する場合でも、Drive Chargerの設置場所に関しては、よく相談してから決めた方が良いと思う。
ポータブル電源の定位置の確保
走行充電器があるかないかに関わらず、ポータブル電源を置く場所は、走行中に倒れてしまったり滑って移動してしまったりしないような場所でなければならない。
さらに、走行充電器の設置場所の説明で述べた通り、Drive Chargerと1.5mのケーブル繋いで届く範囲である必要がある。
また、充電中のポータブル電源の置き場所が移動することなく、そのままで使用しやすい位置であると、なお便利だ。
と言うより、それが望ましいのだが、1.5mという長さは、ポータブル電源の入力ポートの向きまで考慮に入れると、案外そんなに余裕がないケースもある。
これらの点を総合して考えると、走行充電器の設置場所だけ先に決めてしまうのではなく、走行充電器の設置場所とポータブル電源の定位置はセットで考えておいた方が良いことになる。
Drive Chargerの設置とポータブル電源の置き場所の確保作業
ここまで説明してきたことについて一通り目処が立ち、全体像が把握できたら、配線作業に入る前にDrive Chargerの設置とポータブル電源の置き場所の確保に取りかかることになる。
作業の順序は車種によって変わることはない。
ただし、冒頭で書いた通り、車種や車内の状態によって条件はまったく異なる。
これから、私が行った作業を順に紹介しようと思う。
ただ、その内容が人(車)によってはあまり参考にならない、あるいは具体的な参考にはならない場合もあるはずだ。
直接参考になるかどうかではなく、「工夫の仕方の参考例」としてアイディアを生むきっかけのように利用してもらえたらと思う。
Drive Charger本体の設置
何度も内装の変更を繰り返してきた私のキャラバンだが、現在は後部座席足元スペース右奥に、足元スペースの奥行きと幅がほぼピッタリで、奥行きが30cmほどのチェストを設置している。
このチェストは車検時などには簡単に外せるようになっているが、当然走行中に倒れてしまうことなどがないようにしっかり固定してある。

下準備の項目で「Drive Chargerは室内のどこかにしっかり固定しなければならない。」と書いたが、私はこのチェストの側面にDrive Charger本体を取り付けることにした。
ここは車両のバッテリー(助手席の下辺りにある)から比較的近く、ケーブルの取り回しに不便しない場所でもある(ケーブルの通過経路や取り回しについては、配線作業に関しての記事で紹介する)。
また、スペース的にも問題なく、頻繁に行うことはないがケーブルの抜き差しもしやすい。
そういった好条件が揃っていた。

メーカーの説明書には機器の上下左右各々20cmの範囲に「物を置かないように」と書かれている。実際には向かって右側面の壁との間隔は20cmに満たないためこれを全てクリアできていないことになるかもしれないが、ここは自己責任。
そして、チェストは木製なので、車体の鉄板に穴を開けて固定するよりも、ずっと手軽に取り付けられて都合が良い。
「室内のどこかにしっかり固定」なので、車体に直接固定しなくても、こういったしっかり固定できて、安全でしかも使いやすい場所があるのなら、そこを利用するのも合理的だと思う。
車体に直接固定することに拘る必要はないはずだ。
また、メーカーの説明書には、「製品はバッテリーと同じ側に取り付けることをおすすめします。」と記載があったが、私のキャラバンはバッテリーが助手席の下で、Drive Chargerを設置したのは運転席側の後ろなので、説明書で推奨している位置関係とは逆になってしまったことになる。
しかし、入力ケーブルの取り回しのことを考えると、この場合は絶対にこの位置関係の方が安全かつ、いろいろな意味で合理的であると判断したのも、私がこの位置を選んだ理由の一つだ。
「製品はバッテリーと同じ側」をメーカーが推奨する理由が気になる人はメーカーに直接問い合わせてみたら良いと思うが、理屈を考えて合理的と思える選択をすることも大切だと私は思う。※その選択が間違っていた場合は自己責任
実際の作業は、チェストの側面にまずは構造合板の下板を打ちつけ、そこにDrive Chargerをビス留めしただけなので、詳しく説明するほどのことでもない。
また、メーカーの説明書はDrive Charger本体の設置方法については結構丁寧に説明しているので、基本的な作業手順はそれが参考になると思う。
ポータブル電源の定位置を決め、台座を作成

Drive Chargerの設置が終わったら、次に走行充電中のポータブル電源の置き場所を決め、ポータブル電源を置く台座を作成した。
しかし、実際には「次に」というより、「ポータブル電源の定位置の確保」の項目で述べた通り、Drive Chargerの設置位置とポータブル電源の定位置は、最初からセットで考えていた。
Drive Chargerを取り付けた目の前の後部座席の座面は、チェストの奥行き分だけ座ることができなくなり、結果として余剰スペースになっている。
ここなら出力ケーブルの長さもまったく問題なく、無駄になってしまうスペースを有効活用できる。
そして何より、ポータブル電源を大変使いやすい位置でもある。
後部座席は、食事をする際などに座る場所もあり、就寝時にはベッドの一部にもなる場所だ。
ただし、一つ問題がある。
シートの座面は窪みがあって平らではなく、硬くもないのでそのままポータブル電源を置いただけでは不安定なことだ。

そこで、座面には上の写真のような、主に就寝時に座面の凹凸を解消するために使っている、少し硬めのクッションを置いて水平にした。
さらに、その上に構造合板の台座を敷き、ポータブル電源がクッションに沈み込んでしまわないようにすることにした。
しかし、シートと壁の間には隙間があるため、ここに板を置いただけで重い物を置くと、その隙間に向かって傾いてしまうし、板ごと滑って移動してしまうこともある。

そこで逆にこの隙間を利用し、写真のように、板の壁側になる裏側に脚を板に取り付けることにした。
この脚は床まで届く長さなので、これを付けることで板が沈み込んだり傾いたりすることがなくなった。
また、脚がシートと壁の間に引っかかることで、板が動いてしまうことを防ぐ効果もある。

これで台座となる板は安定したが、これだけでは走行中にポータブル電源が台座の上で滑って動いてしまう。
そこでその防止策として、ポータブル電源の大きさに合わせて、台座の板に枠組みを打ちつけることにした。

旅先で慌てることのないよう、一応近所のワインディングロードを走行して試してみたところ、まったく問題はなかった。
これでDrive Chargerの設置と、ポータブル電源(Jackery 1500 NEW)の定位置の確保は完了だ。
ちなみに、Jackery 1500 NEWは置いた時の安定性が高く、通常走行の範囲ならこの状態で特にベルトなどで固定する必要はなさそうだ。
余談になるが、ポータブル電源を車載する場合、「置いた時の安定性」が結構重要なポイントだと思う。
奥行きと幅に対する高さの比率、つまり安定感のあるバランスかどうか、といった点も車載用のポータブル電源を選ぶ際の重要な要素になると思う。
段取りと工夫が重要
ここまでの作業は、特に難しいことはなく、直接電気に関わる作業ではない。
そのため、そういった意味での危険性も高くないが、自分で工夫する必要はある。
配線作業を業者に依頼するとしても、ここまでの工程は自分でやってみるのもありなのではと思う。
もちろん、依頼する業者にはそれも含めて、あらかじめ相談しておいた方が良いと思う。
また、Drive Chargerの設置場所とポータブル電源の定位置については、他にもいくつか候補があった。
いろいろ考えた末に最終的にこの位置に決めたのだが、実際に作業している時間よりも、考えている時間の方がずっと長かった。
後から変更できなくもないが、現在の室内レイアウトであれば、これがベストだと思っている。
やはり工事は、作業より段取りの方が重要だ。
一段落したところで、この先には注意を怠ったり、間違えたりすると、感電や破損などの事故につながりかねない配線作業が待っている。
次回「配線作業編」へ続く。
