32カ国車中泊旅で一番のドキドキ体験!国境審査で車内チェックされた
ヨーロッパでの車旅といえば、国境審査がなく自由に各国を行き来できる、”お隣の国へ遊びに行けちゃう”点が最大の魅力!
ただし、それはあくまでシェンゲン加盟国同士の場合の話。
EU外の国へ向かう際には、厳重な国境審査や車内チェックを受けるなんてことも…。
今回は、キャンピングカーでヨーロッパ各国を旅している私たち夫婦が、ルーマニアからセルビアへ入国する際に、初めて国境審査を体験したときのお話をお届けします。
日本で経験することのない国境越え。
旅の醍醐味にちょっとのスリルが混ざった、あなたの知らない世界をお伝えします。
【3年間で32カ国訪問】キャンピングカーで“暮らすように旅する”ヨーロッパ周遊夫婦

私たち夫婦は、キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパ各地を周遊中。
2023年に旅を始めて、気づけばもうすぐ3年。
イタリアで中古購入した愛車と共に、これまで32カ国を巡ってきました。
車内には、ベッドやキッチン、シャワー、トイレと生活に必要な設備がコンパクトに揃っており、リモートワークをしながら「まるで暮らすように旅する」スタイルで各国をゆっくりと巡っています。
これまで私たちは、イタリアやスイスがある中央ヨーロッパから、雄大な自然が広がる北欧ノルウェー、西の果てポルトガル、さらにルーマニア・ギリシャ・アルバニアなどのバルカン半島まで。
まさにヨーロッパの端から端まで、ほぼ全域をキャンピングカーで走り抜けてきました。
そんな私たちによく寄せられるのが、「車で国境ってどうやって越えるの?」、「本当に簡単に隣の国へ行けるの?」といった“国境越え”に関する質問です。
実は、簡単に行き来できる国もあれば、注意が必要な国もあるのです。
そこで今回は、旅をしながら実際に体験してきた、ヨーロッパ陸路の“国境越え”をご紹介します。
ヨーロッパ陸路旅は”ほぼノーチェック”が当たり前

私たちはこれまで3年間ヨーロッパを旅してきましたが、訪れた国の多くが「シェンゲン協定」加盟国だったこともあり、車で国境を越える際に、国境審査を受けることはほとんどありませんでした。
日本で県境をまたぐ感覚で、ヨーロッパの国々を自由に移動でき車旅には最高です。
シェンゲン協定とは?

通常、空路や陸路で国境を越える際には、パスポートやビザの提示に加えて厳重な入国審査が必要です。
しかし、シェンゲン協定では、加盟国内の移動に関しては、パスポートチェックや入国審査なしで自由に行き来できます!
日本パスポートの場合、観光目的であれば最大90日間滞在が可能。
どこかのシェンゲン加盟国で一度入国審査を受ければ、その後は加盟国内の移動であれば審査を受ける必要はありません。
例えば、飛行機でドイツへ入国(ここで一度だけ入国審査)。
その後、オランダ→ベルギー→フランスへ移動した場合、再度の入国審査は一切なく、スムーズに旅ができちゃうのです。

陸路の場合、国境に検問所やゲートがないこともあり、車で走っているだけで「気づいたらいつの間にか隣の国に入っていた!」なんてことも。
国境越えがスムーズなヨーロッパは、車旅との相性が抜群!
一度の旅で何カ国も周遊できる、旅好きにはたまらないエリアです。
完全にノーチェックではない場合も
シェンゲン圏では「国境審査なし」が基本ですが、実は注意が必要な場合もあります。
・臨時の国境チェックが行われることがある
・国境審査がなくてもパスポートは常に携帯が必須(提示を求められる場合あり)
・誰もチェックしていなくても滞在日数はカウントされる(90日間の滞在期間を守る)
こうした点は、車旅ならではの落とし穴なので注意が必要です。
シェンゲン協定加盟国(2025年時点)
ポルトガル、スペイン、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ドイツ、スイス、リヒテンシュタイン、イタリア、オーストリア、チェコ、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、スロベニア、クロアチア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタ、アイスランドなど。
※アンドラやサンマリノなど、シェンゲン非加盟でも陸路で国境検査がない国もあります。
ヨーロッパはシェンゲン協定内であれば、県をまたぐ感覚でいろんな国を訪問でき、車旅にはまさに最高の環境!
ただし、シェンゲン非加盟国やEU非加盟国に入る場合は、通常通り国境審査を受ける必要があります。
EU外への国境越えは国境審査があるので要注意!

シェンゲン協定圏内では国境審査なしで自由に移動できますが、EU外やシェンゲン非加盟国に入る場合は、正式な出入国手続きが必須です。
とくに車で国境を越える際は、パスポート確認はもちろん、国によっては車両チェックや荷物検査、追加書類の提示などを求められることもあります。
国ごとに審査基準や必要書類が大きく異なるため、事前の確認がとても重要です。
必要書類が不足している場合、入国を拒否される可能性もあるため、注意しましょう。
ヨーロッパの車旅で必要な書類
・パスポート
・車両登録証
・運転免許証と国際運転免許証
・自動車保険証(国際保険Green Cardなど)
・車両所有者の委任状(レンタカーや名義が異なる場合)
・ペット連れの場合はマイクロチップ証明書・狂犬病予防接種証明書
ルーマニアからセルビアへの「ドキドキ」国境審査体験

私たちはEU加盟国のルーマニアを数日間旅したあと、次の目的地はEU非加盟国・シェンゲン圏外の「セルビア」。
キャンピングカーで、しっかり国境審査が行われるエリアへ入るのは今回が初めてだったため、少しドキドキ。
もちろん必要書類はすべてそろっていたし、持ち込み禁止のものもなし、とくに引っかかる理由はないのですが、やっぱり国境審査は緊張します。
まずはルーマニア側の出国審査へ
EU加盟国だし、パスポートも問題ない。
「サッと通れるだろう…」そう思っていた私たちの予想は、あっさり裏切られました。
車で国境検問所に到着すると3人の係員が近づき、パスポートと車両登録証(車検証)の提示を求められ、そのまま書類を持ってどこかへ行ってしまいました。
ぽつんと車内に残された私たち。
「え…?何か問題あった?」、「私たちの車、何か怪しまれた?」そんな不安がじわじわ広がっていきます。
数分後、戻ってきた係員たちは、一気に質問攻め。
「どこから来たのか?」、「これからどこへ向かうのか?」、「ドラッグを持ち込んでいないか?」、「所持金はいくらか?」と質問詰め…。
そして極めつけは「このキャンピングカー、いくらしたの?」と国境審査と関係ある…?と思うような質問まで。
きっと興味本位だったのでしょう。
とはいえ、正直に値段を伝えたあと、係員同士がルーマニア語で何か話しているのを聞くと、あまり良い気持ちはしませんでした。
生活エリアのチェックも
さらに「後ろを開けて」と言われ、キャンピングカーの生活エリアを確認されることに。
中に入ってくることはありませんでしたが、扉からじっくりと車内を確認され、ようやく「OK、行っていいよ」と通過を許されました。
出国はもっと簡単だと思っていたのに、まさかの念入りな質問とチェックの連続。
「出国だけでこんなに緊張するとは…。」「じゃあ、セルビアの入国はどれだけ厳しいの…?」とドキドキで入国ゲートの方へと向かいました。
ついに“わが家”に審査官が…!セルビアの車内チェック体験

ルーマニア側の出国審査を抜け、数キロ走るとセルビアの国境検問所が見えてきました。
ここで迎えてくれたセルビアの係員はとてもにこやかで礼儀正しく、先ほどのルーマニアでの厳しい対応とのギャップに少しホッとします。
パスポートと車両登録証、自動車保険証を提示すると、係員から一言。「少し脇に移動して」
その指示を聞いた瞬間「あ、これは車内点検をするんだな」と心の準備を始めました。

キャンピングカーは、車であると同時に「私たちの家」。
見知らぬ人に私物を触られるのは、正直あまり気持ちのいいものではありません。
入念な車内チェック
この日は大雨でしたが、審査官は車に入る前に靴の汚れを丁寧に落としてから入ってくれたので、その気遣いに「おお!」と少し緊張がやわらぎました。
車内に入った審査官はまず内部を入念に観察し、前方の棚をひとつずつ開けて中を確認し始めました。
棚の中だけでなく、その中に入っているポーチ等もひとつずつ開けて中身をチェック。
「これは、化粧ポーチ?」「これは何が入っているの?」とそれが何なのか、私たちとコミュニケーションを取りながら丁寧にチェック。
目の前で開けてくれるので少し安心でしたが、私物を触られるのはやっぱりあまり気持ちのいいものではありません。
コンタクトレンズのポーチから薬のポーチ、さらには財布の中まで確認され、何も違法な物はないとはいえ、ここまで細かくチェックされると緊張するものです。
キッチン以降はサラッと確認
「この調子だと、どれぐらい時間がかかるんだろう…」と半分覚悟したところで、次に向かったのはキッチン。
しかし、ここから急に空気が変わりました。
「ここはキッチン用品だね?」、「食材はここ?」と確認するだけで、棚を開けることはありません。

ベッド上の棚やトイレも同じで、外から形だけ確認して終了。
どうやら「怪しいものはないだろう」と判断してくれたようで、その後のチェックはスムーズに終了しました。
こうして、審査官による私たちの“家”をくまなくチェックする作業は無事完了。
私物を触られるのは正直落ち着かないものですが、審査官は終始丁寧で穏やか。
ルーマニア側の審査にあった圧もなく、安心して国境を通過することができました。
なぜここまで?EU外の国境の”厳しさの理由”
ヨーロッパでは、EUやシェンゲン加盟国の国境は驚くほどスムーズ。
しかしEU外へ出入りする国境は一気に空気が変わることもあります。
私たちが今回体験したように、書類の徹底チェック、細かな質問、車内の隅々まで確認される検査は、珍しくありません。
では、なぜここまで厳しくなるのか?
その背景には、次のような理由があります。
不法入国・不法滞在の防止
EU外の国境は、EUの外と内を分ける“境目”です。
ここでの審査が甘くなると、EU内へ不法に入国しようとする人、不正滞在を狙う人が流れ込む可能性があります。
国境審査は必然的に厳しくなります。
密輸・ドラッグなどの犯罪対策
EU外の国境では、ドラッグ・武器・密輸品の持ち込み防止がとくに重視されています。
そのため、今回私たちが体験したように、所持金の確認、荷物のひとつひとつのチェック、車内の隅々までの確認といった、徹底した審査が行われることがあります。
キャンピングカーは“収納が多く、隠し場所も多い”
キャンピングカーは、普通の車に比べて収納スペースが多く、国境審査では「物を隠しやすい車」と見なされる傾向があります。
大きな収納棚や多数の引き出し、ベッド下の収納スペースなど「何か隠しているかも?」とキャンピングカーは一般車よりも疑われやすくなってしまうのです。
【まとめ】国境越えも旅の一部。キャンピングカーだから味わえる体験

今回のルーマニアからセルビアへの国境越えは、私たちのキャンピングカー旅の中で初めての“本格的な国境審査”でした。
旅仲間から「キャンピングカーは車内チェックを受けやすいよ」と聞いていたものの、ここまで徹底的に調べられるとは思わず、想像以上でした。
これまでEU内を移動する“ノーチェックの国境越え”とはまったく違い、今回の体験は衝撃的で、そしてどこか旅のスパイスのようなドキドキ感もありました。
ヨーロッパの中でも、「簡単に国境を移動できる国もあれば」、「しっかりとした審査がある国境もある」そんな大きな違いを肌で感じられるのも、キャンピングカー旅ならではの楽しみ。
移動そのものが「旅の一部」になっていくのが、このスタイルの魅力だと改めて感じました。
これからもまたどんな国境に出会えるのか…。
ちょっとの緊張と、たっぷりのワクワクを積み重ねながら、私たちのヨーロッパ旅は続いていきます。