並んだキャラバンとデュカト

車中泊仕様車のベースには『貨物バン』が最適!その特徴やメリットとは?



貨物自動車ナンバーであるが故の具体的なメリット

では、ここから先は同じバンでも貨物自動車ナンバーであるが故の具体的なメリットなどを説明しよう。

広い居室スペースを確保できる

商用バンの車内

貨物自動車は座席より後ろの空間=荷室となるわけだが、荷室の広さが選択の重要なポイントともなるため、荷室は無駄を省き極力スペースを広く取れるように工夫されている。

そして、荷室の寸法が明示されるため、同じ車格のライバルが存在すれば切磋琢磨され、改良が加えられる度にギリギリまで荷室の長さを大きくとれるようにするなどの工夫も繰り返されるのだ。ハイエースとキャランバンの関係がこれにあたる。

並んだハイエースとキャラバン

不要となってしまう装備や装飾で競い合われるより、これは荷室を居室スペースにカスタマイズする車中泊目的ユーザーにとっても大変ありがたいことだ。

そしてまた、荷物を積むことが目的として作られている貨物自動車は、乗用専用に設計されたバンと比較した場合、フロントシートから後ろの長さがずっと長く作られている。

乗用車はこの長さが表示されていないことが多いため、正確に数字で比較することはできないが、例えばアルファードやエルグランドより普通のサイズのハイエースやキャラバンの方が全長は約30cm短いが、逆にフロントシートより後ろの長さは確実に30cm以上長いのだ。

質素であることの美徳

ハイエースの車内

貨物自動車登録の車は、装備や装飾が乗用車より少なく、質素であることが多い。これも車中泊仕様車に仕立て上げる際の大きなメリットとなる。

上の画像はハイグレードな部類のハイエースの荷室だが、それでもこの通り至ってシンプル。アルファードなどの車内とは大違いだ。

また、乗用車ナンバーの車よりずっと質素で無駄がないことでその分のコストが抑えられ、車両価格にも影響する。これも貨物車であることの大きなメリットだ。

そして何より、シンプルということは作り込まれた内装より自分でいじれる自由度が高い。

キャラバンに設置されたポータブルトイレ

車内で寝られれば良いという人なら作り込まれた内装でも良いかもしれないが、自分好みの内装に仕立て上げたい人にとっては、当然ながら自由度が高い方が向いている。

無駄のなさの具体例で一つ目に挙げられるのは、無用の長物と化してしまうことの多い三列目シートがないことだ。

バンのサードシート

乗用車ナンバーのバン・ミニバンには三列目のシートが備わっている車が多い。これは二列目のシートとフラットにしてベッドのようにできるものもあって便利でもある。

しかし、そもそも7人や8人乗れるようになっていても、その人数が車内で寝られるわけではない。乗用としてこのシートを使わないのであれば、ここがシートである必要性などない。そしてこれが結構な重量増加の要因ともなっている。

もしかしたら大人数で乗ることがあるかもしれない程度だったら、潔く最初から三列目シートなどない車を選んだ方がスペースが無駄にならず使いやすいのだ。

工事中のキャラバンの車内

次に挙げられるのは内張りの類だ。

例えば室内をバンライファーに人気の板張りにしたかったら、最初から簡素な内装の方が内張りを剥がす手間などが省ける。床も板張りなどにしたかったら鉄板剥き出しのままの方が合理的というものだ。

乗用車では重視される部分ではあるが、余計な装飾なども最初からない方がこうしたカスタマイズはしやすいのだ。

工事中のキャラバンの車内

私のキャラバンを例に挙げると、例えばエルグランドなどよりはずっと簡素な内装ではあるが、キャラバンの中ではハイグレードなタイプであるため、ベイシックなタイプより内張りがちょっと豪華だったり、床もカーペットが敷き詰められていたりする。

これも悪くはない。特に後部座席が立派で座り心地が良く、フルリクライニングできる点はハイグレード車の特典のようなものだ。

しかし、他の諸々の条件が適合してこのグレードの車を選んだのだが、まだ大して傷んでもいないこの中途半端に豪華な内張りやカーペットを全部剥がしてしまうのも勿体なく、またバランス良く要らない部分のみを撤去するのも案外難しそうでもあるため、情けないことに天井や壁まで剥がして貼り替えるまでの勇気がまだ湧いてこない。

板で塞がれたキャラバンの窓

結果、現在の私のキャラバンの一部の窓は、上の画像の通りベニヤ板で塞いでいるのだが、鉄板むき出し部分のあるような内装だったら、とっとと全体を板張りにしていたと思う。

フロアクッションがひかれたキャラバンの床

そして砂を蓄えてしまうことが厄介なカーペットだが、断熱や防音には効果があるためこれも剥がさず、掃除がしやすいように一見鉄板に見えるウレタンのフロアタイルを敷いている。

多用途

キャラバンの前でフリーマーケットを広げている図

出来上がったキャンピングカー、特にキャブコンのようなタイプは居室としての完成度が高いのは良いのだが、案外室内に荷物を積みにくいような車も多い。

しかし基本的にボディーはいじらず、貨物車ベースで自分で作り上げる車中泊仕様車なら、元働く自動車なのだから荷物の積み下ろしがしやすいことは当然、寝泊まり専用ではなく、色々な用途に対応できる自由さを残しておくことができる。

維持費が安い

海辺に停まったキャラバン

自動車税が安い。車齢が13年未満の一般的なサイズの貨物車登録のバン(乗車定員が3名以下の場合はまた税率が異なる)の自動車税は4ナンバー1ナンバーともに自家用で年間16,000円だ。

これは排気量なども関係ないので、2.5Lガソリンエンジンの私のキャラバンでも、2.8Lディーゼルエンジンのハイエースでも、1.5Lガソリンエンジンのタウンエースでも変わらない。サイズが大きい方がお得感が高くなる。

それよりさらに大きなお得感を感じるのは乗用車と比較した場合だ。

乗用車登録の場合はエンジンの排気量によって税率が異なるが、日本車のバンの場合で概ね34,500円~51,000円(排気量3L以下)と貨物登録より大幅に高くなってしまうのだ。

3Lを超える大排気量で13歳以上の車を乗用車登録すると自動車税だけで大変なことになってしまう。

駐車場に停められたハイエース

重量税はもちろん車両の重量によって異なり、貨物車登録のバンの方が乗用車登録のバンより安い傾向があるのだが、だらだらと数字を並べても退屈なので、より具体的な例を挙げてみよう。

工賃や部品代などを除いた車検にかかる費用(重量税は含む法定費用のみ)と自動車税を加算した額、要するに、年間の最低限の維持費を3ナンバーと1ナンバーと4ナンバーのハイエースで比較すると、概ね以下のような数値になるようだ。

  • 3ナンバー:78,000円~85,000円
  • 1ナンバー:約55,000円
  • 4ナンバー:45,000円~50,000円

バンの前でキャンプをしている風景

貨物自動車の方が自賠責も任意保険も高く(特に1ナンバーは高い)、貨物自動車は車検が毎年あるなどのデメリットもある。

しかし、乗用車もきちんと12ヶ月点検をするなら1年毎に車検がある車とその点でのコストも変わらないことになる。

保険料が少し高くても、毎年の車検が多少面倒であっても、維持費の安さにおいての4ナンバー車のメリットは非常に大きい。

また、エンジンの排気量が大きくなっても自動車税が変わらないところも見逃せないポイントだ。

フォード Econoline

例えばアメ車のバンは大抵排気量車が多い。例え高速料金や保険料を少し多く払うことになっても、乗用車登録した場合の自動車税と貨物自動車で登録した場合の自動車税の差額の方が遥かに大きくなることは明白だ。

アメ車のバンなど大排気量車を選ぶ場合は、絶対に1ナンバー(貨物自動車)で登録した方がお得だと思う。

軽バンの維持費の安さは比較するまでもないほど別格の安さなので、今回は軽バンとの比較はやめておく。

例え小さかろうと狭かろうと、動力性能で劣ろうとも、軽自動車にかかる経費の安さの魅力は絶大だ。

力強い

白いハイエースの外装

パワーと言うとエンジンの最高馬力に目が行きがちだが、貨物車のエンジンは、最高馬力を高めることより、低回転と広い範囲で大きなトルクが得られるような性質に設定されていることが多い。

重い荷物を積んでいる場合は当然こうした性能が求められるが、普通に使っていても実際にはこの方が実用性が高く、使いやすい。

またほとんどの貨物車は頑丈なラダーフレームのあるの構造で、重い荷物を積んだりトレーラーを牽引するなどしても歪んだりへこたれたりしない。

心臓と骨格がしっかりしている逞しく頼もしい体を持っているということだ。お家のベースにするのも安心だ。

サイズ選びは大いに悩む

デリボーイ 外装

選択肢が減る一方なのは寂しいが、以上のように貨物自動車のバンは車中泊仕様車のベースにするのに最適なプロフィールやスペックを持っている。

しかし、サイズには一長一短があり、どのサイズを選ぶかで大いに悩む。

実際私もキャラバンとバモスの甲乙は付け難いのだが、日本の法規の中での合理性を極限まで追求して作られたようなハイエースやキャラバンと、ミニマムサイズで目一杯頑張る軽バンのどちらを選ぶかで迷う人は多いのではないだろうか。

この比較についてはまたの機会に持ち越したいと思う。