キャラバンに車中泊仕様車「NV350 キャラバン マルチベッド」が仲間入り!他モデルとの違いも紹介!

キャラバンに車中泊仕様車「NV350 キャラバン マルチベッド」が仲間入り!他モデルとの違いを検証



この9月に日産NV350キャラバンに一部仕様変更があり、それと同時に新たなバージョンの「NV350 キャラバン マルチベッド」がラインアップに加わった。

名前の通りマルチに使えるベッド(寝台)を備えた仕様だ。

仕様変更自体は特に大きなものではないが、アウトドアスポーツや車中泊愛好家にとっては、このマルチベッドの登場は大変気になるニュースである。

先代のE25キャラバンを常宿・オフィス・倉庫・トランスポーターとして愛用する私としても、これは見逃すことなどできない。早速色々と調べてみた。

アウトドア仕様に力を入れている日産


日産は、以前からこうしたアウトドア向け、車中泊向け特別仕様車に力を注いでいて、今モデル登場以前にも、「NV350 キャラバン トランスポーター ベッドシステムバージョン」や、「NV200 VANETTE マルチベッドワゴン」、「セレナ マルチベッド」などをラインアップしている。

「フルフラットシート」と言いながらも凸凹があり、実際には段差を解消する工夫をしないと快適に寝るのはちょっと厳しいミニバンが多い中、日産のミニバンは、平らなベッドが出来上がる本格車中泊仕様となっており、そこが普通のミニバンとの大きな違いだと思う。

また、製作はどれも日産の関連会社の「オーテックジャパン」が手掛けている。

オーテックジャパンはこうした車輌以外にも、特装車や福祉車両、カスタムカーの製作や、カスタムカー向けのパーツ類の開発もしている。

そうした幅広い分野からのノウハウの蓄積があり、技術力が高いことはもちろん、日産車に密着した形で開発しているため、オーテックジャパンの作る車は「改造しました感」が前面に出ておらず、純正車両らしい仕上がりとなっていることも大きな魅力だ。

アウトドアラインのそれぞれの特徴


キャラバン トランスポーター ベッドシステム

キャラバン トランスポーター ベッドシステム 
出典:OGUshow



バイク(エンジン付き)やマウンテンバイクのレースに参戦する人には、キャラバンやハイエースの愛用者が多い。

そうした人の多くが、乗り物のトランスポーター兼宿としてこういったワンボックス車を使っていて、バイクや自転車を運ぶワンボックス車などは「トランポ」と呼ばれていたりする。

「キャラバン トランスポーター ベッドシステム」は、バイクの運搬専用として作られたわけではないが、泥汚れに強い床など、実際にバイクトランスポーターに向いた工夫も凝らされているし、このネーミングもそれを意識してのことだと思う。

NV200 VANETTE マルチベッドワゴン

NV200 VANETTE マルチベッドワゴン
出典:NISSAN MOTOR CORPORATION



NV200 VANETTEをベースとした「NV200 VANETTE マルチベッドワゴン」は、キャラバンよりサイズが小さく、よりコンパクトなサイズの車を必要とする人に向いている。

そして、価格もキャラバンより大幅に懐に優しい設定となっている。

サイズ的にこれで十分な人であれば、大変使いやすい車だと思う。

セレナ マルチベッド

セレナ マルチベッド
出典:AUTECH JAPAN,INC.



「セレナ マルチベッド」は、人によっては全く使うことのないミニバンの三列目のシートを潔く排し、4名または5名定員として三列目のシートの部分は広い荷室として使えるようにしている。

そして、ベッドにする時も後部座席をベッドの一部として使うのではなく、専用のボードを後部に敷き詰めてベッドにする仕組みとなっている。

セレナ2

出典:AUTECH JAPAN,INC.



後部座席は座り心地の良い純正のシートのままで、ベッド展開時の凸凹を解消する手間が不要なのは嬉しい。

また、三列シートのミニバンよりベッド下の荷室空間をずっと有効に使えるのも大きな特徴だ。

三列目のシートが不要な人で車中泊をしたい人、アウトドアで使う道具などを沢山積みたい人は、間違いなく普通のセレナよりこっちを選んだ方が正解だと思う。

セレナは見た目の雰囲気でキャラバンより小さいと思っている人も多いようだが、5ナンバーバージョンのセレナと、キャラバンやハイエースの4ナンバーバージョン(スーパーロングなどではなく、いわゆる普通サイズのキャラバンやハイエース)のサイズを比較すると、いずれも小型車枠ほぼいっぱいのサイズに作られているため、高さはセレナの方が若干低いが、長さや幅はほぼ同じだ。

さらに、室内が広くなるわけではないが、外側の大きくなるセレナの3ナンバーバージョンは、4ナンバーの普通サイズのキャラバンやハイエースより幅も長さも大きい車なのだ。

しかし、室内空間はセレナと比べたらやはり、キャラバンやハイエースの方が圧倒的に広い

見た目や乗り心地などの理由で乗用車ベースのセレナを選ぶのは構わないが、キャラバンよりコンパクトだと思って選ぶのは大きな誤解だ。

コンパクトさで選ぶなら「NV200 VANETTE」だ。

「キャラバン トランスポーター ベッドシステム」と「キャラバン マルチベッド」の比較


さて、「キャラバン トランスポーター ベッドシステム」に加えて、今回「キャラバン マルチベッド」(以下、前者をトランスポーター ベッドシステム、後者をマルチベッドに省略)が登場した訳だが、この2台がどう違うのかを検証したい。

まず、どちらも後部座席から後ろ全体をベッド(寝床)にできるようになっていて、ベッドを収納してしまうと広い荷室として使えるようになっている点などは共通している。

トランスポーター ベッド

キャラバン トランスポーター ベッドシステム
出典:AUTECH JAPAN,INC.



キャラバン マルチベッド

キャラバン マルチベッド
出典:AUTECH JAPAN,INC.



上の2枚の画像は、上がトランスポーター ベッドシステムのベッドを展開した状態、下がマルチベッドのベッドを展開した状態だ。

最大幅はどちらも同じ1,510mmだが、長さはトランスポーター ベッドシステムが1,800mmで、マルチベッドが1,760mmと、若干トランスポーター ベッドシステムの方が長いが、大差はない。

マルチベッドのサイズでも少し斜めに寝るなどすれば大抵の人は収まってしまう大きさだ。

どちらにも言えることだが、ベッドの長さがもっと必要と感じるのなら、後部座席をたたんで、ベッドと高さの合う箱などを置き、ベッドの長さを延長すれば良いだけだ。簡単に解決できる方法はある。

トランスポーター ベッドシステム

トランスポーター ベッドシステム 荷室
出典:AUTECH JAPAN,INC.



トランスポーター ベッドシステムの方は、タイヤハウスを覆うような形で、両側に据置の「箱」が設えられている。

その間に3枚のボードを渡すことによって、車内の横幅いっぱいのベッドができ上がる仕組みだ。

マルチベッド

マルチベッド リア
出典:AUTECH JAPAN,INC.



それに対してマルチベッドは、跳ね上げ式のベンチ(走行中に人がここに乗ることはできない)を左右両サイドに設えており、左右のベンチとの間に縦長のボードを1枚はめると、車内の横幅いっぱいのベッドができ上がる仕組みになっている。

トランスポーター ベッドシステムの両サイドに設えられている箱の中は荷物の収納庫になっていて、見た目的にも一体感があり、キャンピングカーっぽいイメージの漂う仕上がりとなっている。

それに対し、マルチベッドの跳ね上げ式ベンチは、特に収納した状態では、ちょっと軍用トラックのベンチのような雰囲気も漂い、簡素な感じの見た目となっている。

トランスポーター サイドボックス

トランスポーター サイドボックス
出典:AUTECH JAPAN,INC.



しかし、似ているようで機能的に大きく違う点がある。

トランスポーター ベッドシステムは、両サイドに渡すボードを一枚置くことで、そこをベンチのように使うことはできるが、両サイドの箱は奥行きが足りなくて、ここをベンチとして使うことはできない。

それに対して、マルチベッドの方は、間に渡すボードをはめなければ向かい合いのベンチとして使うことができ、その間に設置できるテーブルもオプションで用意されている。

マルチベッド ベンチ テーブル1

出典:AUTECH JAPAN,INC.



また、ベンチの奥行きは58cmあるため、全面ベッドにしないで、各々独立したベッド2台として使ったり、片側だけ出して他は荷室にしておくこともできる。

片側だけベンチを出して後部座席も収納してしまえば、常設の寝床を確保しつつ広大な荷室も確保できることになる。用途に応じて色々なパターンで使うことができ、大変便利そうだ。

マルチベッド ベンチ テーブル2

出典:AUTECH JAPAN,INC.



サイドの収納庫も便利で、見た目はトランスポーター ベッドシステムの方が有利(ベッドボードの厚みも1cm違うようなので、寝心地も優っているかもしれない)だが、使い方のバリエーションの広さでは新しいマルチベッドの方に分があるといったところだろうか。

ベースはどちらもロングボディー・標準ルーフのプレミアムGXだが、最後に一つ大きな違いがある。

マルチベッドの価格は3,094,000円(税別)~3,930,000円(税別)で、「トランスポーター ベッドシステム」は3,225,000円(税別)~4,061,000円(税別)と、税別の価格差が13万円もある。

さらに豪華仕様の「ライダー トランスポーター」となると、3,609,000円(税別)~4,445,000円(税別)に価格が吊り上がり、マルチベッドとの価格差は50万円以上の開きができてしまう。これは大きい。

大変便利なE26キャラバンの後部座席


E26キャラバンの後部座席

出典:AUTECH JAPAN,INC.



現行のE26キャラバンは、後部座席が2分割で収納展開ができる(グレードにもよる)ようになっている。

マルチベッドもトランスポーター ベッドシステムもベースがロングボディー・標準ルーフのハイグレードなプレミアムGXであるため、この機能は備わっている。

これは先代のE25系キャラバンの時代にはなかった機能で、現行のハイエースの200系にもない。

「そんなに便利?」と思う人もいるかもしれないが、実際に後部座席から後ろを居住空間や寝室として使ったことがある人は、これが非常に羨ましく思ってしまう便利な機能であることがわかると思う。

E26キャラバン 後部座席

出典:NISSAN



キャラバンの最大荷室長は3,050mmあり、収納した後部座席から後ろの部分の寸法でも2,375mmある。

前2人後ろ1人の3人乗車をしても、2mを超える長尺ものを積むことができるわけだ。

例えば、3人乗車しても、長さ3m近いロングサーフボード3枚も余裕で室内に積むことができ、その他の荷物の空間もたっぷり残っていることになる。

3人乗車をしなくても、後部座席があると便利な理由は他にもある。

後部座席は座り心地も良いし、足元のスペースも十分あるから、ちょっと休憩する時や昼食をとる時など、運転席に座っているよりずっと快適なことだ。テーブルを置けば食事もできるし、仕事机にもなる。

また、立てる程の室内高があるわけではないが、ワンボックスの後部座席空間は中腰にはなれる高さがあるため、座ったり中腰になったりしながら着替えることができて大変便利だ。

このように、一人分で良いから後部座席があると重宝することは多い。

後部座席片側

出典:OGUshow TRANSPOTER PRO-SHOP



上の画像はサブバッテリーなども備えたオグショーによる架装車輌だが、この画像を見ても分かるように、片側の座席を残したままでも、後部の荷室空間(時には居住空間や寝室)にスライドドアからアクセスしやすいのも、分割式後部座席の大きなポイントだ。

もちろん、両側スライドドアだから、左右どちら側の座席をたたんでおくことも、残しておくこともできる。

普通の一体型の後部座席だったら、後ろの居住空間・寝室へアクセスするにはリアゲートから入るか、後部座席の背もたれを無理やり乗り越えたり、シートバックを倒して、いずれにしても「よっこらしょ」的な感じで乗り越えて行くしかない。または、シート全体を収納することになってしまう。

この違いは非常に大きい。

その他のオプションなど


サイドバー

出典:AUTECH JAPAN,INC.



マルチベッドやトランスポーター ベッドシステムには、便利なメーカーオプションやディーラーオプションも豊富に用意されていて、用途に応じてそれらをプラスして行くとさらに使いやすくなる。

ここでそれらを列挙しても、人によって求める機能は違うから、ニッサン・オーテック・ディーラーのオグショーのウェブサイトなどで確認していただきたい。

キャラバンとハイエースの違い


ハイエースとキャラバン

キャラバンとハイエースは、車格や荷室の広さなどはほぼ同じと考えて良いと思う。

外観も先代のE25系キャラバンと100系ハイエースは明らかに違っていたが、現行のNV350 E26系キャラバンと200系ハイエースはかなり近くなっている印象(と少なくとも私は思う)だ。

以前はキャラバンのライバルとなる存在として、マツダのボンゴブローニーや、いすゞのファーゴなどがあったが、残念なことに現在明らかにライバルとなる存在はトヨタのハイエース(レジアスエースやOEMのボンゴブローニーも含む)のみになってしまった。

キャラバンとハイエースにはもちろん色々と違うところはあるのだが、何が一番違うかと言えば『販売台数』だ。

圧倒的にハイエースの方が多い。

数の多いハイエースは、専用のアフターマーケットパーツなども多数存在しているのが、大きな魅力だろう。

共用できるようなものもあるが、キャラバン専用は雲泥の差程に少なく、その点でキャラバンは残念だ。

また、人気の高いハイエースはリセールバリューも高い。中古もかなり高値で売れるようだ。

しかし、裏を返せばキャラバンの方が高品質な中古がハイエースより安く入手できる傾向にあることにもなる。これは私自身が中古のキャラバン購入時に実感している。

そして、キャラバンがジャパンドメスティック(だったと思う)なのに対し、グローバル展開(北米は除く)されていて途上国も含む諸外国でも人気の高いハイエースは、バラバラに分解して輸出する手もあるためか、盗難されてしまう確率も非常に高い。

確か盗難される車種第1位だ。そうなると人気があるのも考えものだ。他人と被ることを嫌う人もキャラバンを選んだ方が間違いない。

また、ハイエース頑丈神話のようなものもある。確かに信頼性は高いと思う。

しかし、中古で購入して5年の私のキャラバンは今年10歳を迎え、走行距離は12万キロを超えて(半分以上の距離を私が乗っている)いる。

サンデードライバーのような人達にとってはとっくに買い替え時期の限度を超えているデータかもしれないが、何の問題もなくつい最近継続検査を更新したばかりで、乗っていても特に劣化を感じるようなこともなければ、これまで不調を感じたこともない。

オイル交換は割としっかりやっているが、他は特別気にかけるようなこともなく、普通にと言うより、どちらかと言えば酷使されているような車だ。

私の車が当たりだったのかもしれないが、実体験としてキャラバンが耐久性で劣るというようなことはないように思う。

他にも、先述した通り、現行キャラバンの分割式後部座席は目立たないけどハイエースにはない大きな魅力だ。

これを真似されてしまったら、もし私が日産の関係者だったらかなり痛いと思う。

ハイエースは現在もレインガーターがあり、キャラバンも先代のE25系まではレインガーターがあったのに、現行のE26系にはレインガーターがない。これはかなり残念な点だ。

やはりレインガーターがあった方がルーフキャリアなどを取り付けることを考えると色々な理由で何倍も有利だ。

乗用車の場合は見栄えを考えるとない方が良いのかもしれないが、商用車なのだから実用性重視でなぜ残さなかったのかと、残念に思ってしまう。

因みにジムニーは、20年続いた先代は見た目を乗用車ライクにしようとレインガーターを取り払ってしまったが、現行型では実用性重視とユーザーの声を反映したのか、レインガーターが復活している。

次にキャラバンがモデルチェンジした際には、是非ともレインガーターを復活させて欲しいものだ。

もし買い替えるなら


キャラバン

最新のキャラバンは先進の機能も満載で、安全性が高く便利、マルチベッドも大変使いやすそうで、自分だったらこうやって使うとか、ああしようこうしようと想像力を刺激させられる。

4ナンバーだけど荷室の有効面積は大変広く、私の1ナンバーのキャラバンより高速代や保険代や停められる駐車場の制限などで有利な面も多い。

しかし、幸いにも私の10歳12万キロ超の先代E25キャラバンはまだまだ元気で働いてくれていて、個人的にはゴム枠の付いた後部サイドウィンドウなど、ちょっとクラシカルな雰囲気の残るルックスも気に入っている。

当分買い替えはないと思うのだが、もし買い替えるとしたら「キャラバン マルチベッド」が最有力候補に上がることは間違いないと思う。