「保険に入っているから安心」とは言い切れない!?思わぬ自己負担金や追加支払いが生じることも…自動車任意保険の落とし穴
車の運転には責任がともない、とくに事故の際には相手方に大きな被害を生じさせることがあります。
それゆえ一般に、「任意保険への加入」はドライバーの責務として考えられています。
さまざまな損害を補償する任意保険は、ドライバーにとっての安心にもつながるでしょう。
しかし加入しているプランや特約によって、補償範囲は大きく異なり、一概に「保険に入っているから安心」と断言できるわけではありません。
今回はドライバーの方々に、「任意保険の落とし穴」についての体験談を聞きました。
「他車運転特約」をつけていたのに…
自動車保険の特約にはさまざまなものがありますが、友人などと遠出する際に便利なのが「他車運転特約」です。
これは保険加入者が契約車両以外の車を運転する際にも、契約車両と同様の補償内容を適用できる特約であり、契約に自動付帯する保険も多く見られます。
しかし、他車運転特約があるからといって、必ずしも「他人の車で事故を起こしても大丈夫」と安心できるわけではないようです。
「大学時代の友人2人と、泊まりでスキーに行ったときの話です。荷物がたくさん載る友人Aの車で行ったのですが、スキー場までは3時間ほどの距離だったので、交代で運転することになりました。全員車を持っていて、他車運転特約にも加入しているので、万が一のときも安心だと思っていたんです。
ですが帰り道、持ち主ではない友人Bが高速を運転している最中、渋滞に気づくのが遅れ、追突事故を起こしてしまいました。停止直前くらいの速度でぶつかったので、相手を含め乗員に怪我はなく、相手方の車の修理代も運転していたBの保険で賄われたんです。
でも、問題はAの車の修理代です。30万円ほどの見積もりだったのですが、Bは車両保険に入っていなかったんですよ。それで、BはAと私にもいくらか負担してほしいと申し出てきたんですね。
結局、Aが10万円、私は5万円を負担する形になりました。お金について話し合うなかで気まずくなり、それからは旅行に行くこともなくなってしまいましたね」(30代男性)
他車運転特約に加入していたとしても、上のように車両保険に加入していなければ、事故を起こした際に自車両の修理代をカバーできず、自分たちで負担することになります。
事故相手の過失が大きければ、こちらの車両に生じた損害の大部分を相手の保険で賄える可能性もありますが、過失割合や修理代の額によってはかなりの自己負担分が発生してしまうケースもあるでしょう。
他車運転特約に加入している場合にも、当人間で補償内容を事前に確認し、万が一の損害をどのように補償するのかについて合意しておくことが望ましいといえます。
「残クレ」で購入、修復歴がつくと…
近年では車の購入方法として、「残価設定ローン」を選択する人が増えています。
これは「将来の査定額をあらかじめ設定し、その額を引いた価格に対してローンを組む方法」であり、月々のローン負担を抑えつつ車に乗れるプランとして普及しています。
たとえば300万円の車に対し、5年後に40%の残価率が設定されている場合には、5年後の売却額120万円を引いた180万円分を5年間で支払っていくことになります。
ここで注意しなければならないのは、5年後には「車をディーラーに返却するか」「ディーラーで下取りに出して買い替えるか」「120万円で買い取るか」のいずれかを選択しなければならない点です。
ここで返却や下取りを選んだ場合、車両に目立った損傷や故障がなければ問題はありません。
しかし修復歴が生じた場合などは、それによる価値の損失分を追加で支払ったり、下取り価格が下がったりといったデメリットが生じます。
「職場の同僚が新車を購入して1年後、かなり大きな追突事故に遭いました。修理代は相手の保険会社から全額支払われたというので、まぁ不幸中の幸いだなと思ったのですが、なんでも同僚の車は残価設定ローンで購入したものらしいんですよ。
それで、事故でフレームまで損傷してしまっているので、修復歴がついた分のちのち残価を追加で支払わなければならないと。もちろん評価損の分も相手の保険会社に請求したらしいのですが、認められたのは修理代の15%程度で、実際の損失分にはまったく足りないだろうと頭を抱えていました」(50代男性)
事故のダメージにより自車両に修復歴が生じた場合には、修理代のほか修復歴が生じたことによる「評価損」についても損害賠償として請求することができます。しかし実際に認められる額は状況によってさまざまであり、「実際の査定額のマイナス分を埋め合わせるには足りない」というケースも多いようです。
このように、「修復歴が残るような事故では保険に入っていても損をするケースがある」というのは、残価設定ローン以外の場合にも当てはまります。ただし、残価設定ローンの場合には「数年後に追加の支払いが生じる可能性」が高まることから、精神的なダメージは大きくなりやすいのかもしれません。
任意保険のプランは多岐にわたり、補償内容にも複雑なものが多く、なかなか適切なプランを選ぶことは難しいかもしれません。しかし、ちょっとした内容の差で補償されるケースが大きく異なることも考えられますので、「どんなときに、どんな補償が受けられるか」は入念に検討しておきたいところです。
ライター:鹿間羊市
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