危ないっ!キャンピングトレーラーに車が突っ込む!?
突然ですが、もしあなたがキャンピングカーで移動中に、交通事故に巻き込まれたらどうしますか?
私はオーストラリアでパートナーと一緒にキャンピングトレーラーで、移動しながら生活をしています。
これは移動中に突然事故に巻き込まれた時の話です。
皆様が事故に遭わないことが一番ですが、万が一遭遇してしまった時の参考にしていただければ幸いです。
事故の概要
その事故は2020年1月上旬に起きました。クリスマスとお正月を親族や友人と過ごし、また新しいキャンプサイトに向かって移動していた時です。
その事故は郊外で起きたのですが、都市部と田舎の町を繋ぐ幹線道路だったので、それなりの交通量がある道です。
オーストラリアの田舎道らしく、登り下りの繰り返しとカーブが何か所もあるので、以前から「事故が起きそうだな」とは思っていました。
ところが事故はカーブを曲がった先ではなく、比較的見通しの良いほぼ直線の場所で起きました。
パートナーのアレックスが運転していたのですが、彼は対向車に異変を感じ、あえて車道ギリギリに車を幅寄せしました。
それと同時に対向車が中央線を越えて、私たちに向かって来たのです。
アレックスが先に幅寄せしていたのでなんとか私たちが乗っているヘッド車(牽引車)は回避できたのですが、キャンピングトレーラーにぶつかりました。それでも大きな衝撃は私たちにはなく、異常音が聞こえたくらいでした。
キャンピングトレーラーの状態
すぐに車を路肩に停車し、自分たちの安全を確保してから、トレーラーの状態の確認を行いました。
対向車がトレーラーの右角に激しくぶつかった後、そのまま側面を傷つけ車輪も破壊したのがわかりました。
前方部分は物入れになっていますが、その蓋も変形して開けることはできません。
青いものが見えますが、それは本来壁のなかに入っている断熱材です。
地面に垂れ下がっているものは、トレーラー内で過ごす時に、揺れを防止し安定させてくれるキャンピングトレーラーの足のようなもの。
移動中は折りたたんでいるので、当然地面つくことはありませんが、車が衝突したことにより完全に垂れ下がってしまっています。
これは水を加熱するための温水システムの機械ですが、蓋が吹き飛ばされ、機械も壊れています。
対向車はスピードを緩めずタイヤにもぶつかったので、パンクだけではなくタイヤをつなげる部分にも大きなダメージを残しました。
このダメージはかなり大きく、この時点ではトレーラー丸ごと破棄しなければならない最悪の事態も想像しました。
この交通事故は、3台の車が絡む事故になりました。私たち、私たちにぶつかってきた対向車、そして私たちの後ろを走っていた車です。
奇跡的に誰も大きなケガを負いませんでした。
事故の原因となった対向車の運転手だけが、額から少量出血をしていましたが大事には至っていません。
私たちの車は無事でしたが、トレーラーは大破し、他の2台の車も大きなダメージがあったので、レッカーが必要な状態でした。
助けを呼ぶ
この事故では警察とレスキュー(消防)、そして救急車を呼びました。
オーストラリアでは、緊急時の連絡先は警察も消防も救急もすべて一緒です。
電話をして何が必要か伝えたり、向こうからいろいろ聞かれて、オペレーターの判断の元、必要な助けが来ます。
今回は明らかに対向車に過失があるので、警察が必要でした。
大きなけがは誰も負ってなかったですが、それでも額に傷がつき血を流している人がいたし、時間が経ってから症状が出る可能性もあるので、救急車も来ることになったのです。
助けを待っている間、私たちはトレーラーの内部を確認しました。
まず目の前に飛び込んできたのは、シャワードア。
激しくぶつかった衝撃で、シャワードアがフレームから外れ、倒れてしまっていました。
さらに、ただシャワードアが外れただけではなく、1枚は割れてしまっていたのです。
シャワードアだけでなく、戸棚が空いて中身が飛び出していることからも、衝撃がいかに大きかったのもわかりました。
外から見ると大きくへこんでいた角ですが、内部から見るとそこまで大きな穴にはなっていませんでした。それでも、もちろん壁に穴が開いている状態には変わりません。
二次災害を防ぐため、道路に散らばった障害物をできるだけ拾っておく必要がありました。もちろん、その前に事故現場の写真は撮っておいたことは言うまでもありません。
田舎の道で起きたので、警察やレスキューは都市部のようにすぐには駆けつけては来ません。
私とアレックスは、しばらく事故に巻き込まれたショックと、これからどうなるかわからない不安を抱えて路肩に座っていました。
そんな中、後続車が次々と停まって何かできることはないか聞いてくれたり、けが人がいないか気にかけてくれたりと多くの人が気遣ってくれました。中には進んで交通整備する人もいました。
目の前が真っ暗のように感じていましたが、見ず知らずの人の優しさに触れることができたことがせめても救いです。
最初に到着したのはレスキュー隊でした。
すぐに路上に危険物がないかを確認し、交通整備を始めました。
その後に到着したのは救急隊です。
外傷がないことを一人ひとり確認しましたが、前述した通り事故の大きさの割には誰一人大きなケガをしていなかったので、彼らも驚いていました。
交通事故による体の影響は時間が経ってから出現することもあるので、どのような症状が出る可能性があるか、症状がある場合や心的ストレスを感じた場合は必ず医師に診てもらうように説明を受けました。
幸いなことに私もアレックスも、その後も心身ともに問題はありませんでした。
最後に警察が来ました。
3台の車のそれぞれの運転手から事情聴取と、アルコールと薬物検査を行いました。同乗者は検査は受けませんでしたが、連絡先だけ聞かれました。
移動先の確保
この事故は3台ともレッカーが必要だったので、トレーラーもやってきました。それぞれの車を載せて次々と移動していきます。
私たちの場合は、キャンピングトレーラーなので一般的なレッカートレーラーには載りません。
問題はそれだけではありません。私たちはキャンピングトレーラーの住人なので、家はありません。つまり、レッカーされる行き先を聞かれても困ってしまうのです。
もちろん修理が必要ですが修理工場なんて見当もないし、そもそも何も考えられない状態でした。
すると、レスキュー隊の1人がやって来て言いました。「私の家族がキャンピングカーの修理工場やってるんだ。敷地も大きいし、そこに行かせてもらえないか今、連絡取ってみるよ」。
願ってもない言葉でした。そして、そのお宅が快く受け入れてくれて、レッカーする行き先が決まりました。
この経験から、もし旅先で事故に巻き込まれてしまった場合、どこに移動するか考えておくことを是非、お勧めします。
私たちのキャンピングトレーラーをレッカーしてくれるトレーラーの到着です。
まずは、壊れて垂れ下がってしまっているトレーラーの足をテープで固定してくれました。
トレーラーの後部は、写真のように斜めになります。ロープをトレーラーから引っ張り、キャンピングトレーラーに繋げると、自動で巻き上げて荷台に載せることができるのです。
キャンピングトレーラーのタイヤは、完全にパンクしている状態でした。
自動で巻き上げて荷台に向かって移動している間、タイヤが「キーキー」と大きな音を上げていたのですが、私にはそれが泣き声に聞こえました。まるで「痛いよ」と泣いているように聞こえて涙がこみ上げました。
修理工場に連絡
通常ですと、修理工場に連絡をして日程調整をしなければなりません。
すぐに直してもらえるかはわからないし、私たちのようにキャンピングトレーラーが家の場合では、宿を確保する必要も出てくるかもしれません。
今回のように修理工場がすぐ見つかり、滞在させてもらえたのは、本当に幸運でした。滞在と言っても、幸い私たちのトレーラーは住むことには問題なかったので、敷地だけ間借りさせてもらいました。
事故後、無事に修理工場があるお宅に到着し、早速ビニールで穴を補強することになりました。
空いてしまった穴をそのままにはできません。真夏の時期なので、虫が入って来る可能性が高いし、雨が降ったら室内も濡れてしまいます。
ところが、私もアレックスも正直なところ、何もする気が起きませんでした。
すると、憔悴しきっている私たちを察して、なんと滞在先の家族が代わりに補強してくれたのです。地面に寝っ転がって草が背中につくのも気にせず、しっかりとテープを貼っている様子を見て胸が熱くなりました。
修理工場のスケジュールで、私たちのキャンピングトレーラーの修理は2月中旬以降になると告げられました。
その後にコロナウイルスの拡大がありましたが、その間ずっとこの修理工場の敷地に滞在させてもらいました。
修理中の宿の確保
ついに修理が始まることになったのですが、修理中は私たちはどこか別のところに移動しなければなりません。しかし、見ず知らずの土地です。私たちが途方に暮れていると、サプライズがありました。
なんと修理工場のオーナーが、内緒でホテルを用意してくれていたのです。ホテルに5泊させてもらい、その間にキャンピングトレーラーは修復しました。
修理はまず外側のフレームを剥がすところから始まりました。完全に曲がってしまった物入れの扉と、そのフレームも一緒に外します。
フレームを外して見ると、こんな状態でした。
壊れてしまった温水システムの機械をどうするかも問題でした。修理するには機械の取り寄せが必要なのと、プロの電気技師に配線を頼まなければなりません。
実は壊れているいる間、ずっとキャンプシャワーを代用していたのですが、私たちはすっかりこのシャワーが気に入ってました。
シャワーの前に鍋でお湯を沸かすという作業が必要ですが、その分自分好みの温度に調整するのが簡単で、適温がすぐシャワーで出てくるので節水にもつながるのが大きな利点です。
なので、この機械はそのままにすることにしました。この決断はコストを大きく抑えることにもつながりました。
そして修理を終えて、工場からトレーラーが出てきました。
これが修理後の写真です。
大きくへこんでいた角も、すっかり元通りです。新しい物入の蓋も、しっかり収まっています。
温水システムがあった場所も、そのままフレームを貼りました。元を知らない人には、まったく違和感がない外観だと思います。
実はオーストラリアのキャンピングトレーラーには前面だけでなく、側面にも補強フレームが貼られていることがあります。野生動物との衝突のリスクが高いからです。
なので、側面の補強にもなり、結果的に良かったと思います。
実は温水システムの機械以外にも、もう1か所、修理工場で直してもらわなかったところがあります。それはシャワードアです。
キャンピングトレーラーの販売元に問い合わせて、新しいシャワードアを購入したのですが、なんとサイズが合いませんでした。こういうことはオーストラリアあるあるで、日本ではあり得ないことが多い上に時間もかかります。
アレックスも飽き飽きしながらも、プラスチックのオーダーメイドをしてくれるお店に行き、同じ大きさのシャワードアをオーダーしました。そしてアレックス自らドアをつけ、動かないよう金具で留めてくれました。
こうして私たちの数か月に渡るキャンピングトレーラーの負傷期間と、同じ場所に滞在する日々に終わりを告げることができました。
事故自体は決して良い思い出ではないですが、そんな中でも多くの良いことがありました。
事故直後に何人もの知らない人が気遣ってくれたこと、レスキュー隊の一人が修理工場をしている家族を紹介してくれたこと、修理工場のオーナーさんがコロナウイルスの緊急事態の最中も滞在を許してくれたこと。
いくつもの奇跡のような幸運が重なり、私たちはまた移動生活に戻ることができました。
もう二度とこのようなことが起きないように願いながら、私たちのキャンピング生活は続きます。