日本RV協会 被災地支援 被災地の状況

【取材】能登半島地震の復旧支援に60台のキャンピングカーが活躍




「災害時の新たな支援策=キャンピングカー」という認識が生まれた


珠洲市や輪島市では、キャンピングカーの貸与が始まるまでは、応援のため現地入りした国や自治体の職員は、市庁舎の会議室や廊下に寝袋を敷いて寝ていたそうですが、「夜中に誰かが歩く音で目が覚める」「とにかく寒くて熟睡できない」という声が多かったようです。



しかし、キャンピングカーを宿泊施設として使うようになると、エンジンを切ってもサブバッテリーで稼働するFFヒーターのおかげで静かな上に「車内に入ると暖かいのが何よりありがたい」「ベッドでゆっくり寝られるので仕事に励むことができる」とたいへん好評とのこと。

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キャンピングカーの車内では料理が作れる 日本RV協会



大塚さんは阪神淡路大震災や東日本大震災でも応援に行った経験があるそうですが、「これまでは車で1時間半も走ればコンビニやスーパーがあり水や電気も手に入ったし、宿泊施設もなんとかなりました。しかし、今回は状況がまったく違った。現地に宿泊施設がないことで災害支援をする行政職員や工事関係者、ボランティアなどの多くが金沢など遠方の宿から日帰りで現地に通うことになり、作業時間が十分にとれないため復旧の障害になっている」といいます。

今回の経験から、災害支援には「まずは宿泊施設の確保=キャンピングカーが有効」という図式が明らかになったのではないでしょうか。

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キャンピングカー車内で暖かい食事 日本RV協会



大塚さんによると、キャンピングカーの災害時の有用性を実感した国や自治体の職員からは「今後の災害に備えてキャンピングカーの準備をしないといけない」との声も多かったといいます。

キャンピングカーを災害支援に活用するための日本RV協会の取り組み




過去の災害でもキャンピングカーによる支援を行った経験はありますが、今回ほどの規模での車両貸与は初めてのこと。

日本RV協会では車両の不具合の検知や定期的なメンテナンスを実施できるように派遣車両や、車両の派遣先を一元管理しています。

自治体と連携をとり、管理を徹底することでより安心で、有効的なキャンピングカーの利用が可能となっています。

自治体から被災地に派遣される職員は1〜2週間で入れ替わっていくため、「今後はキャンピングカーの車種ごとに異なる設備の使い方などのマニュアルを、ネット上で確認できる動画の整備などアフターフォローにも力を入れていきたい」(日本RV協会)としています。



日本RV協会ではこれまでも、全国のキャンピングカーイベントでの防災ブースの出展、自治体主催の防災訓練への出展などを通じて、キャンピングカーを利用した防災に関する啓蒙活動を行ってきています。

さらに、日本RV協会は初の事例となる包括連携協定を宮城県栗原市と締結しているほか、会員企業と自治体の間でも、災害時のキャンピングカーによる支援を目的とした災害協定の締結が行われており、2023年12月時点で全国23の自治体と災害協定が締結されています。

キャンピングカー大国の米国では、自治体や政府がキャンピングカーを所有して、平時はキャンプ場などに低価格で貸し出して、有事のときには被災地で活用できる仕組みがすでに作られています

また国内でも、九州北部豪雨の被災地である福岡県朝倉市は、キャンピングカーを所有して災害時は対策本部や休憩所として、平時は観光協会がレンタカーとして町の活性化に利用しています。



能登半島地震によって、災害時のキャンピングカーの利用価値の高さが明らかになったことは確かです。

しかし、日本RV協会の会員各社からの車両提供だけでは台数が足りないことも事実。

今後は、米国のように国や多くの自治体が独自にキャンピングカーを保有して、もしもの時には被災地に集めて活用する仕組み作りが望まれるのではないでしょうか。

【コラム/キャンピングカーを防災アイテムとして利用するために】


本記事で紹介した能登半島地震被災地でのキャンピングカーの活躍ぶりもそうですが、キャンピングカーがレジャーだけでなく、災害時にも威力を発揮することはオーナーの方々は分かっていることでしょう。

では、いざという時に備えるには、どういう準備が必要なのか考えてみました。

まずキャンピングカーの燃料補充やバッテリーとサブバッテリー、持っていればポータブル電源の充電をしておくことは必須です。

そのほかに準備すべきことは何があるでしょうか。

2016年に起きた熊本地震で被災し、家族5人でキャンピングカーに避難した経験のある熊本市危機管理課の大塚和典さんは、「普段の生活で自炊している人の場合、食料に関しては特別な準備はしなくてもよいのではないか」といいます。

自宅にはコメは多少の蓄えがあるだろうし、冷蔵庫にも野菜など食料はあるだろうから、可能であれば家へ取りに戻ることもできるので、「1週間から10日くらいはなんとかなるのでは」と考えているそうです。

その上で、キャンピングカーには「水とカセットコンロ、予備のガスボンベは必ず用意しておくこと」といいます。

今回の能登半島地震でも明らかになったように、大地震では水道やガスなどのインフラが破壊される恐れがあり、命を守るには水の確保が重要になります。

また、煮炊きできるようにガスを準備することで当面の生活は維持できます。

普段からレジャーでキャンピングカーを利用する際に、水とガスは使った分を補充しておけば災害時への備えになります。

もうひとつ大切なアイテムをあげれば、トイレです。保有するキャンピングカーにトイレがなければ、100円ショップなどで売っている簡易型トイレでもいいので準備しておくことをおすすめします。

下水道設備が壊れれば、水洗トイレは使えません。避難所のトイレは不特定多数の人が使うため汚れていることもあります。

かといって、トイレに行きたくないからと水分の摂取を我慢すれば、健康を害する危険もあるからです。

キャンピングカーの駐車場所は、自力走行が可能で道路状況が許せば、避難所の駐車場やその近辺が最適でしょう。

避難所とはいえキャンピングカーで生活するのでプライバシーは守れますし、幼児がいても、またペット同伴でも周りに気兼ねなく過ごせます。

避難所であれば行政から出される様々な情報や物資の配布などを受けやすく、安否確認や持病がある方は健康相談もできます。

自宅の駐車場に停めたキャンピングカーで過ごす場合でも、できるだけ避難所へ出向いて情報収集を心がけるようにしてください。