キャンピングカーメーカーで働くプロが伝えるキャブコンとバンコンの違い

キャンピングカーメーカーで働くプロが伝えるキャブコンとバンコンの違い



ここ2.3年の間に「キャンピングカー」という言葉がとても身近になった様に感じますね!

キャンピングカーは奥の深い世界です。かつてキャブコンを所有し、今はキャンピングカーメーカーに勤め、休みの日もビルダーへ行って色んなキャンピングカーを見て回ることが趣味の私がキャンピングカーの種類とキャブコン、バンコンの違いについてお伝えしていきたいと思います。

キャンピングカーの種類について

キャンピングカー

初めてキャンピングカー屋さんへ行くと「キャンピングカーは欲しいけど、種類が色々あってよくわからない…」と思ってしまう方も多々いらっしゃるでしょう。「キャンピングカー」と一口に言っても種類は様々です。

軽トラックや軽のバンをベースにした軽キャンパー、SUVなどのパワーのある車でけん引するキャンピングトレーラー、トラックなどに居住空間になる箱を乗せたキャブコン、外装はボディカットなどはせずベースの車そのままに中を改装したバンコン、文字通りバスをベースに作るバスコンなど、キャンピングカーにはたくさんの種類があります。

これからキャンピングカーの購入を検討する人たちはこの中から、乗車定員や就寝人数、駐車場、さらには家具の風合いや装備などから1台のキャンピングカーを選んでいきます。

一見同じ車に見えるキャンピングカーも、乗車定員は4名だったり9名だったり様々です。

家族みんなで旅行に行くスタイルの方には4名定員のキャンピングカーは合わないでしょうから乗車定員の7名のキャンピングカーが良いでしょう。

ただ4名のキャンピングカーは座席やベッドが少ない分、家具が充実していたり、トイレがついていたりしますので、ゆったりした2人旅には最適です。

キャブコン・バンコンの違いについて

キャンピングカーの中でも代表的なよく比較されるキャブコンとバンコンの違いを、明確に比較できる居住性と走行性に分けてお話ししていきましょう。

まず、キャンピングカーという車両はキャンピングの部分を制作する「ビルダー」と呼ばれる架装メーカーと、ベース車両を作るディーラー(TOYOTAなど)によって作られています。

キャブコンとはキャブコンバージョンの略称です。キャブとはトラックの事を指し、キャブの荷台にFRPで出来た箱を乗せて出来ているのがキャブコンです。

キャブコンの主なベース車両はカムロード(TOYOTA)、ライトエーストラック(TOYOTA)、ボンゴトラック(MAZDA)、バネットトラック(日産)など、基本的にはトラックをベースに制作されていますが、中にはハイエース(TOYOTA)のボディをカットしたキャブコンも存在します。キャブコンの主体であるカムロードのガソリン車は排気量が2000㏄です。

キャブコン

キャブコンのおおきなメリットは車内空間の広さです。身長180センチの成人が車内で直立しても問題ないキャブコンがほとんどです。また、基本的にリビング部分(キャンピングカー屋さんはダイネットとも言います)をベット展開せずに4名が就寝可能なモデルもあります。

キャブコンは外装からもわかる通り、車体のおでこの部分がリーゼント(バンクと言います)の形状になっているキャブコンが多いです。

この部分がおおむね大人2人は寝れるスペースになっているのです。さらに後ろに二段ベットがあると、ダイネットはそのままに4名就寝可能ということになります。

また、車内空間が広い分、シャワー兼トイレルームがあったり、発電機を積んでいるタイプの車もあり居住性においてはキャブコンに軍配があがりそうです。

しかし、ここでバンコンと比較したキャブコンのデメリットの部分のお話しもしておきましょう。

キャブコンがバンコンより劣る部分、それは走行性能です。

キャブコンのベース車はトラックが多い話は上でもしましたが、居住部分・走行中の後席にあたる部分は極端に言えばトラックの荷台の上なのです。また、キャブコンは車体側面が広いため、横風の影響も受けやすく、実際毎年ニュースでも報道されるキャンピングカーの横転事故はキャブコンがほとんどです。

キャンピングカーのオーナーさんなら一度は経験があると思いますが、高速道路で横を大型バスやトラックが通ると、風圧で車体が横に流されるなんてこともあります。風が吹けば揺れ、路面が悪ければ揺れ、スピードは安易に出せず、車重に対してのパワーも弱い、というのがキャブコンです。

ハイエースバンコン

その点、バンコンは外装はそのままに、車内を架装しているので走行性はそのままです。

バンコンの主流であるハイエースのスーパーロングはエンジンがガソリンの2700㏄です。

ボディはキャブコンより小さくなりますが、排気量はカムロードよりハイエースの方が700㏄大きくなります。

また、車体は純正のままですので、走行性能をアップさせるためのショックアブソーバーやスタビライザーなどの「足回り」と呼ばれる装備を取り付けた時に素直に反映されるのもバンコンの特徴です。

「キャンピングカーは走らない車」とわかっていても、夏場の坂道をとろとろ走る車に自分が耐えられるかどうかがバンコンかキャブコンを選択する決め手になる方もいます。

ベンチレーター

「外装はそのままと」お伝えしましたがベンチレーターという換気扇の部分のみボディカットは行います。

余談ですがベンチレーターとはエンジン停止時の換気扇の事で、この装備の有無で車中泊の快適度はかなり変わりますのでお勧めの装備の一つです。

キャンピングカーに興味を持ち始めるとサブバッテリーやFFヒーター、ソーラーパネルやオーニングなど、車の装備にしては今まで聞いたことのない装備の名称が出てくるでしょう。そういったキャンピングカー装備の解説はまたの機会にさせていただきます。

話を戻すと、バンコンのベース車両で多いのは圧倒的にハイエース(TOYOTA)です。ハイエース意外だとキャラバン(日産)や、アルファード/ヴェルファイアベースのバンコンも存在します。

どの車種も基本的に外装はそのままですので、走行性能もそのままです。ミニバンから乗り換える際に多くの方がバンコンを選ばれるのはこの走行性能の部分が大きいですね。

つまり、走行性においてはバンコンに軍配が上がります。

では、そんな走行性能においてはキャブコンより良いバンコンの居住性はどうなのでしょうか。バンコンはキャブコンのバンク部分が当然ありません。車両後部に二段ベット搭載モデルはありますが、4名で就寝しようとすると、リビング部分を就寝時にはベット展開しなくてはなりませんね。

「ご飯を食べた後にベット展開するのはおっくうだなぁ」という方はバンコンを選びません。また、装備もキャブコンに比べると軽装備に思えます。トイレは常設式ではなくポータブルトイレだったり、お水を溜めるタンクは装備していないので、シンクで使うお水はポリタンクで管理します。

いよいよキャブコンとバンコン、どっちを選んで良いかわからない!という声が聞こえてきそうですね。簡潔にまとめると走行性を優先するならバンコン、居住性を優先するならキャブコン、ということになります。

なかなか一概に「私は居住性より走行性を優先するからバンコンだ!」なんて決めるのも難しいとは思いますが、キャンピングカーに興味がある方は是非一度近くの「ビルダー」に足を運んでみて下さいね。