車旅で使うコンロについて考えるVol.1
炊事設備の備わっていない車で旅をする場合、食事は全て外食にするか、調理する必要のないものをコンビニやスーパー、弁当屋さんなどで買ってきて済ませるのでもなければ、安全に運ぶことのできる調理用の熱源が必要になる。
また、炊事設備の備わったキャンピングカーでも、外で調理をするために他にコンロやグリルを用意している人は多い。
そこで今回は車旅で使うコンロについて考えてみたい。
8ナンバーについて
法的にキャンピングカーとしての要件を満たすには炊事のための設備が備わっていなければならない。
そのため、キャンピングカーとして登録されている8ナンバーの車には、車内に調理をするための何らかの熱源が備わっているのが基本だ。
逆に8ナンバー登録してない車の場合は、構造変更の届けをせずに無闇に何かを車体に据え付けてしまったりすると車検が通らなくなってしまう(構造変更届けが通るか否かはまた別問題として)可能性がある。
8ナンバー登録をしないのであれば、ガスコンロなどを簡単に外せないように車体に固定してしまうのはやめておいた方が無難だ。
そして、そのまた反対に、8ナンバーのキャンピングカー登録をしてある車からこの炊事の設備を下ろしてしまうと違法改造扱いとなってしまう。
以前別の機会に書いたことがあるが、たまたまこうした設備を下ろしているいるときに事故に遭って、保険金が下りなかった(全く理不尽な話だが、保険屋さんも商売だから保険金を払わないで済む理由を見つけたいのだ)知人が実際にいたので、いずれの場合も注意が必要だ。
車旅で調理する際の注意点
さて、車旅で使うコンロについて考えてみたいと思うのだが、その前に非常に肝心なことが3つある。
最初の2つは車内で火を使う際の火事と換気。事故に関してだ。
火事に注意しなければならないのは当然だが、一酸化炭素中毒などにならないための換気にも十分な注意が必要だ。近頃の車は気密性が非常に高くなっているため、より一層の注意が必要。
どちらも命を落とす危険があるので、本当に気を付けなければならない。
3つ目はSAや道の駅の駐車場などの屋外(許可された場所を除き)での調理。
これは直接的に他人に迷惑になるだけでなく、これをすると全面的に車中泊禁止になってしまうなど、ルールやモラルを守って仮眠している他のドライバーにも多大な迷惑をかけることになる。
同じ車旅の愛好家として、絶対にやめていただきたいことの一つだ。
コンロについて
「コンロ」を辞書で調べると、「土製・金属製の、持ち運びのできる小型の炉」となっている。
燃料についての定義はないようだから、カセットコンロも七輪も小型のバーベキューグリルなんかもコンロの仲間ということになるが、なんとなく現在はカセットコンロとかが代表的なコンロで、持ち運びができても七輪やバーベキューグリルをコンロとはあまり呼ばないようなイメージがある。
そして、日本では家に据え置きのガスが燃料のクッキングヒーターは一般的にガスレンジ、薪を使っていた頃の火床はカマドと呼ばれ、なんとなく”持ち運び可能型”と”据え置き型”についても呼び名で区別されている感じがある。
またコンロは「カセットコンロ」のようにカタカナで書かれることが多いが、漢字で書けば焜炉。日本語である。ポテイトーやトメィトーのような調子で卵をタメィゴーと発音しても通じないのと同じで、英語の人には通じない。
そして、日本でストーブと言うと普通は暖房器具のことを指すけど、米語でストーブ(Stove)と言うと一般的にコンロやガスレンジなどのクッキングヒーター(持ち運びのできるタイプも据え置き型も)のことを指す。
コンロの本来の意味は、家で使おうと外で使おうとコンロだけど、現在の日本ではなんとなく家で使う卓上用のカセットコンロとかが「コンロ」で、アウトドア文化がアメリカから入ってきたせいか、ガスやガソリンが燃料のアウトドア用品のクッキングヒーターは「ストーブ」や「バーナー(2バーナーストーブとかのバーナーの部分のみを抜き出してこう呼ばれるようになったのか?)」と呼び分けられている感じがする。
ついでに言っておくと、それ以前から山に登ったりしていた人達は、灯油が燃料のストーブ(クッキングヒーター)をラジウス(元来は商品名)と呼んでいた。
このように呼び分けされることで良い面もあるかもしれない(具体的にどんな良いことがあるのかパッと思いつかないけど)が、要らぬ固定概念もできてしまっているような感じもして、初心者の人が何を選んだら良いのか分かりにくくしていたり、あまり合理的ではない選択をしてしまう原因になっていたりもするのではないかとも思う。
燃料について
コンロと言っても使用する燃料は様々だ。まずは燃料の違いによる特徴から考察してみたい。
考察だなんて大袈裟だけど、何だか大層なことについて書いている気分になれるのでこれでこのまま進めよう。
薪・炭
アメリカだったら薪ストーブを積み込んだハウストラックなんかもあるけど、これは余程気合を入れなければ日本ではかなり難しいことだ。
炭火や薪を使った調理は多くの人にとって普段はできないことで、キャンプならではの楽しみの一つになっている。だが、先にも書いた通り、バーベキューグリルとかはコンロとはまた別物扱いになっているような節もあり、車旅で使うコンロの話でここまで広げてしまうと話が長くなり過ぎてしまう。なので今回このタイプについては除外。
ホワイトガソリン・レギュラーガソリン・灯油
これらを燃料とするストーブは火力が強く、寒さにも強い。
冬山では絶大な信頼があり、また一昔前までは、緑色のボディーに赤いタンクのホワイトガソリンの2バーナーストーブが、車で出かけるキャンプの一つの象徴というか、ステータスのような存在でもあった。
しかし、ホワイトガソリンはレギュラーガソリンと比較しても非常に値段が高いことが大きな欠点だ。冷静に考えると燃やしてしまうのがもったいなくなるような金額だ。
燃料にレギュラーガソリンを使えるガソリンストーブもあり、こっちの方がずっと経済的で、乗り物と燃料を兼用できるから、古くから2輪ツーリングライダーには人気があった。しかし、匂いが臭かったり煤(すす)が出やすいのが欠点で、ホワイトガソリンを使用するよりも手入れが必要になる。
そして、これらどれもがガスのようにレバーを捻れば点火できるわけではなく、プレヒートやポンピングをしてタンクに圧をかけて燃料を気化させるための儀式のような作業が必要だ。
灯油はレギュラーガソリンよりさらに経済的だが、ガソリンより気化しにくく、この儀式が中でも一番大変で、なおかつ煤(すす)も出やすい。
この一種の儀式のような作業は面倒なだけでなく、大きな炎が上がったり、時にはストーブが火だるまになることもあるため、ガソリンストーブも灯油ストーブも基本的にテント内での使用はNGとされている(実際には冬山などでは使う人もいるけど熟練していないと本当に危険)。
ましてや無理して車内でこれらを使用するなど絶対にやめておなければならないことなので、車旅で使う場合はキャンプ場などでの屋外調理専用となってしまう。
他の熱源としてはアルコール、使い捨てのボンベに入ったガス、充填式のプロパンガス、電気などがある。
中でも使い捨てボンベのガスを使うものは話のメインとなるタイプだけど、これについて書き始めると長くなってしまうので今回はここまで。