車旅で使う鍋・釜・フライパン類について考える Vol.2
前回「車旅で使う鍋・釜・フライパン類」などというニッチと言うかマニアック過ぎると言うか、冷静になって考えると「だからどうした?」のようなテーマで書き始めてしまったが、前回は概要みたいなところで終わってしまった。
自分でもちょっとバカバカしいテーマだったかなあと思いながらも引っ込みが付かなくなってしまったので、今回は実際に自分が車旅でどんな鍋・釜・フライパン類を使っているのか、または使ってきたのか、どんなものがおすすめか、例を挙げながら紹介したいと思う。
ここに挙げたものの他に、かれこれ40年以上経ちながらもまだ現役で使っているキャンプ用のコッヘルとか多々あるけど、今回はあくまで車で旅をする時に使う鍋・釜・フライパン類のみの紹介にする。
他にも見せたいものや自慢したいものもあるけど、人力移動のキャンプでしか使わず、車旅では使わないものはここでは省略している。
目次
車旅でおすすめの鍋・釜・フライパン
取手が取れる鍋とフライパン
取手が取れないと不便でしょうがないなんてこともないけど、取れればスタッキングがしやすく、限られたスペースに収納するのに有利だから、取手が取れることは車旅には大変便利な機能だ。
このタイプはフッ素樹脂加工などが施されたアルミ製がほとんどだけど、私はちょっと珍しいエナメル(琺瑯)の取手が取れる大小の鍋セットも持っている(余計な自慢だけど鍋マニアなんだから仕方がない)。
正直言って、フッ素樹脂加工の取手が取れる鍋とフライパンは、見た目的には何も風情も味気もない。だから「映え」が重要な人達には向かないかもしれない。
しかし、前回説明した通り、肉厚の薄いキャンプ用の鍋類より調理がしやすく、流水で洗えないところでも拭くだけで済んでしまう(あまりに汚れや扱いが酷いとダメだけど)のは、車で旅をする時には非常に大きな利点になる。
また、T-FALが有名だが、他のメーカーやホームセンターのオリジナル品なども多々出回っているから値頃感のあるものが多く、選択肢も広い。
現在このタイプが車旅用の調理器具としては最も実用性が高く、一番間違えのない基本の選択だと思う。
これから車旅を始めようとする人は、家にこのタイプのクッカーがあればそれを使えば良いだろう。キャンプ用のクッカーを買うより、先ずはこのタイプをおすすめする。
アルミのダッジオーブンと無水鍋
かれこれ30年くらい使っている鋳鉄製のダッジオーブンも持っているけど、出番はこのアルミ合金のダッジオーブン(右)の方が多い。
一人でこれを使うことはあまりないが、家で使う機会も結構多い。
直径は約25cmくらい。アルミだから鉄より軽いことも利点だが、大きすぎず小さすぎない絶妙なサイズで、焚き火でも使えるが、キャンプ用の小型のストーブ(コンロ)でも使える。
フッ素樹脂加工はされていないけどハードアノダイズド加工がされていて、油も馴染んでいて、何よりしっかりとした厚みがあるから熱が均等に回り、焦げ付いてしまうようなこともあまりない。肉厚であり、機密性も高いため、無水調理もできる。
高さが低めで鍋料理やすき焼きにも向いた形状。焼き物にも使える。
ダッジオーブンだからもちろん蓋に炭や薪を乗せればオーブン料理もできる。
このダッジオーブンはかなりの万能選手で重宝していて、使用頻度も高い。しかし、欠点を通り越して欠陥とも言える特徴を持っている。
ダッジオーブンには、バケツなどと同じような半円形の持ち手が付いているのだが、バケツと違って本体の高さが低いため、持ち手を持ってぶら下げようとしてもバランスが崩れてしまうのだ。物理学(そんな大袈裟なとも思うが初歩の物理学だ)を無視したような全く無茶な構造だ。
この欠陥を知らずに迂闊に使うと非常に悲惨な結果が待ち受けている。
身近で目の当たりにしたこともあるが、世界中でどれだけの数の料理が無残にも地面や焚火の中にぶちまけてしまったことだろうと思う。腹を空かした人が待つ中、料理をぶちまけてしまった人がその後どうなったかを想像すると恐ろしい。
美味しい料理は人を幸せにするが、この鍋は不幸を招く危険性も併せ持っている。
因みに現在これは廃盤になってしまったのか入手不可能となっているようなので、メーカーも紹介しないでおく。
蓋に炭を乗せられないのでオーブンにはならないが、アルミダッジオーブンを少し小さくしたようなのが、左のキャストアルミの無水鍋。これは北陸アルミの「オールマイティパン」という製品だ。
内径が18cmくらいで、こっちの方がより少人数に向いていて、一人でも持て余すことのないサイズだ。少し手前に置いてあるから、ダッジオーブンと大差ない大きさに見えてしまうが、実際のサイズ感は結構違う。
ノンスティック加工も施されていて、蓋はフライパン代わりにもなる。
無水料理は使う水が少なくて済むからキャンプにも向いていて、おまけにヘルシーで良いが、どちらにも共通する大変大きな特徴が、失敗が少なく簡単に美味しいご飯を炊くことができる(下手な電気炊飯器より美味しい)ことだ。
白いご飯だけでなく、肉・魚・野菜なんでも一緒に炊き込めば、料理は鍋一つで済んでしまう。缶詰の魚とかを一緒に炊き込んだだけでも本当に美味しくできるから、現地で調達した食材を活かしたオリジナル料理などにも最適だ。
どっちも鋳鉄製よりずっと軽いため、車旅ではなく二人以上の人力旅の際に持って行くこともある。
二人以上でパートナーがお米好き(実際のところ私は普段からお米がなくても大丈夫な方だが、お米は案外キャンプに合理的な食材だと思う)だったら、色々持って行くより、これ一つで済ませてしまった方が合理的とも考えられるからだ。
スキレット
長年愛用している身としては、何だかここ数年の流行りに少し戸惑いを感じてしまうのがスキレット。
写真の大きい方のスキレットもかれこれこれ四半世紀は使っているが、使うことを放棄しない限り自分より長生きすると思う。
長年使い込んでしっかり油が馴染んでいるから、肉などを焼いた後も少し冷めたところで水を入れてお湯を沸かすだけでほぼ汚れはすっかり落ちてしまう。意外に思われるかも知れないが、手入れが案外ラクなところが車旅にも向いていると思う理由の一つだ。
小さい方は割と最近入手した物。こういった小さいサイズはダイソーやイオンのオリジナル商品にもあり、これも500円もしない安物だが、少し拘ったのが高さだ。いくつかの店を見て回って、高さがあるタイプを選んだ。
主な使用目的がアヒージョ用だから、小さくて高さがあった方が使いやすいのがその理由。安物だけどシーズニングはしっかりしておいたから、目玉焼きなんかを焼いても調子は良い。
小さなキャンプ用ストーブやアルコールストーブにもピッタリなサイズだから、車内でも比較的使いやすい(車内で火を使う場合は換気と火事には十分な注意が必要)が、この小さなスキレットでアヒージョだけでなく、チマチマと色々作りながら外で酒を飲んだら楽しそうだ。
保温調理鍋
これは真空保温水筒で有名なThermos(サーモス)の「シャトルシェフ」という製品。
鍋を火にかけた後、写真奥の保温容器に入れて余熱で保温調理ができるクッカーだ。保温容器には魔法びんの真空断熱技術が使用されているので、長時間高温が維持できる。
余談だが、近頃日本ではStanleyの方がステータスみたいになっているが、日本の古いヤマヤ(真剣に山登りを愛する人々)は真空保温水筒のことをテルモス(Thermos)と呼んでいた。
この鍋はステンレス製だが、底の部分はアルミがサンドイッチされた厚底の多重構造になっていて熱の周りがよく、焦げ付きにくくなっている。沸騰したら保温容器の中に入れてしまうので、燃料を節約できる。
また、ストーブ(コンロ)が一つしかなくても、例えば「パスタをこれで保温調理している間にソースを作ることができる」なんてのも大きな利点だ。
煮込み料理も火加減を心配することなく放ったらかしておけばできてしまうし、車内で長時間火は使いたくないが、普通は長時間火にかける必要があるような料理も車内で作ることができる。
実際のところ私は家で使うことの方が多く、車旅に持って行くことは稀だが、旅先で長時間の煮込み料理をしたい人や、パスタ茹でには大変便利。
アルマイト鍋
正式名称はわからないが、アルマイト鍋とか実用鍋なんて呼ばれていたりする。
近頃はこれを見たこともないという人もいそうだし、大きさも様々だが、一昔前はほぼ確実に一家に一つはこんなのがあったと思う。
ハッキリ言って「映え」とかとは全く無縁な容姿で、ブルーシートに匹敵するようなダサさだ。格好いい道具を並べて写真を撮ることが趣味のような人にはまるで向かない。
そして、アルミだけどあまり厚みはないから油断していると焦げ付かせてしまう。昔のお母さん達は火加減が上手かったのだと思う。
しかし、個人的にはこのダサカッコ良さを理解してもらいたいと思ったりもする。
これを使いこなせれば達人的な雰囲気が漂うことも間違いない。因みに上の写真は私が撮っているので、写っているのはどちらも私ではない。私はこの二人とは違って、もっと洗練された都会人らしくて現代人的な容姿をしている(と自分では思っている)。
特別に車旅に向いた特徴などもないのだが、軽いから人力移動のキャンプ(上の写真はSUPに荷物を積んで行ったキャンプ時のもの)にも使うことがある。しかし、学生時代下級生の時にこれを背負わされて山に登るのはカッコ悪くて嫌だった。
アルミの寸胴鍋とエナメルの鍋
業務用の寸胴鍋と、寸胴鍋と同じような形のエナメルのキャンプ用鍋。
寸胴鍋はプロっぽく見えるし、エナメルの鍋は西部開拓時代的な雰囲気もあり、「映え」が重要な人にも歓迎される容姿だ。
どちらも焚き火で使えるし、寸胴鍋は少人数の時には使わないけど、5人以上くらい人数がいるキャンプでは結構実用的で、案外出番がある。
エナメルの方は何かと便利なサイズだから、見栄えとかではなく、私のキャラバンには常に積んである。青い色のを見かけることが多いが、焚き火の煤汚れ(ススよごれ)が目立たないこの色を私は気に入っている。
ケトル兼用鍋
これは私の持っているクッカーの中では一番の新顔で、実を言えばまだ家でしか使っていなくて、旅で使用したことがないのだが、期待の大型(サイズは小さいけど)新人だと思っている。
同じようなスタイルの物がいくつかのメーカーから出ているようで、サイズもいくつかあるようだ。そんな中から私はホームセンターコメリのオリジナルの1.9Lサイズ(現在コメリのウェブサイトを見ると大きい方の2.4Lサイズしか掲載がない)を選んだ。
注ぎ口が付いているので鍋としてだけでなくヤカンとしても使え、また料理を食器に移す時にもこぼしにくい。高さがあるから吹きこぼれにくく、上部が微妙に絞られた形状で、揚げ物でも油が飛び散りにくい。
インスタントラーメン(袋麺)が入る直径で、麺以外に野菜もたっぷり入れられる容量と形状。直径が大きすぎないから、茹で卵などを作るときに水と燃料と時間を無駄にしない。
フッ素樹脂加工されているから炒め物もOK。炒めるのも煮るのもこれ一つで済ませられるから、なんでもごちゃ混ぜのわけのわからない料理などにも最適だ。
持ち手がマグのようなスタイルで、持った時に安定感があり、横に柄の張り出した普通の鍋より収納時も邪魔にならない。
これらはまさに、一人旅用クッカーとしてかなり究極の特徴だ。少し前までは直径20cm以下のちょっと深めのフライパンが究極の一人用クッカーなのではと思っていたのだが、これの登場によってその座が危うくなってきた感じだ。
気になる点はガラスの蓋が付属しているが、割ってしまう心配があること。
また、かなりマルチに使えるが、何かと便利な注ぎ口から大量に蒸気が出てしまうので、このままでは炊飯には向かないとも思う。少し厚みある木の板で注ぎ口まで覆う蓋を作れば、ガラスのように割れる心配がなく、お米も炊けて良いかもしれない。
最後に
ところで、鍋・釜・フライパンと書きながら、鍋と釜の違いってなんだ?と思って辞書で調べてみたところ、釜の説明に「主として炊飯に用いる金属製の器。鍋よりも深くて、普通かまどにのせかけるための鍔(つば)がついている。」といった件があった。
機能的にダッジオーブンや無水鍋は釜に近い機能を持ってはいるけど、基本的にこの中に釜は含まれていないことになる。
そして、この機会に自分の持っている鍋・釜・フライパン類を改めて見返してみると、「キャンプで使う鍋」で確実に登場しそうな鉄のダッジオーブンも当然持っているし、他にも十分車旅に便利な鍋やフライパンはまだまだあった。
そう言えばキャンプで圧力鍋を使っていた時期もあったっけなぁ、なんてことも思い出したりもしたし、人力旅でしか使わないと思って除外していたアルコールストーブがセットになったクッカーは、バモスで出掛けた時に使おうと思ってバモスの中に積んでいることを忘れていた。これはいずれストーブ編ででも紹介しよう。
前回私は、自分自身を決してコレクタータイプではなく、鍋・釜・フライパンのコレクターでもないと念を押すような感じで書いてしまったが、こうして見ると、それはどうやら酔っ払いが「酔っ払ってなんかいないよぉ~」と言っているのと同じようなことだったのだと気付かされることにもなってしまった。
自覚することは大切だ。