電動キックボードSWALLOW ZERO9は車旅に最適な相棒 -実践編-

電動キックボードが車旅の相棒として良さそうだとずっと気になっていたのだが、比較対象ともなりそうな折り畳み式電動アシスト自転車より色々な面で未知な部分が多い。
SWALLOW ZERO9という電動キックボードのデモ機を10日間以上お借りし、実際に車旅に持ち出したりして色々検証することができたので、それを通して得た知識と学んだことを基に、僭越ながらまずは基礎知識編の記事を書かせてもらった。
今回の記事は、実際に使ってみて思った合理的な使い方。
どんなシチュエーションに向いていると感じたか。
また、やりたいと思ったことなど、使用に際してのより具体的、実践的な話題で進めていきたいと思う。
前回の記事はこちら↓

車載に関して

車旅に最高の相棒と言うからには、まずは車載に関しての話から。
車内への収まり具合や積み下ろしがしやすいか否かは当然重要なことだが、車中泊をする車との組み合わせなのだから、就寝中の置き場所も非常に重要。
そういったことも検証してみた。
SWALLOW ZERO9の折り畳んだときのサイズは、長さ1100mm x 幅200mm x 高さ390mm、重量は19kgとなっている。
畳んだサイズは全然違うが、重量的には私の商売道具でもある折り畳みのカヤックと似た数字だ。
一般的な成人男性だったら車への積み下ろしに問題のない重さだと思う。
しかし、そこそこな重量ではあるので、特に普段からスポーツなどをしていない普通の女性でも車への積み下ろしができるか否か微妙なところだ。

そこで、多分ごく平均的な体力のアラサー女性(私の姪)に積み下ろしを試してもらったところ、「重いけど問題ない。」とのことだった。
大方の人にとって無理ではないと考えて良さそうだ。

キャラバンの荷室に縦方向に積むとこんな感じだ。
写真にして見るとなんだか結構場所を取っているようにも見えてしまうが、実際にはかなり余裕で収まっている。
このように立てたままでカーブのきつい山道などを走ると倒れる可能性がある。
広い荷室に載せる場合は、最初から横に寝かして置いたり、何かで支えるかベルトやロープで固定するなどした方が良さそうだ。

普段は最後部に海関係の用品やシャワー用の水タンクの入っているコンテナボックスが積んであるため、まずは縦向きに積んでみたのだが、海に行くのでなければこのコンテナボックスは必須ではない。
これを退ければ当然ながら横向きにも余裕で収まる。

フレームが中折れする折り畳み自転車と比較するとこんな感じだ。
折り畳み自転車の方が長さは短くなるが、ZERO9の方が幅も高さもずっと小さくなる(ZERO9に限らず大抵の電動キックボードがそうだと思う)。
使い方や収納の仕方によって絶対にどちらの特徴が優れているは言えないが、基礎知識編の記事で、これが折り畳み自転車と比較した際の大きなアドバンテージと書いた通り、私はこの幅の狭さと高さの低さに大きなメリットを感じたので、それについて具体的に説明しよう。

このコットの脚の高さは35cm程度。
うっかりして写真を撮っておくのを忘れてしまったのだが、横に寝かせて置けば、このコットの下に余裕で収まってしまう。
15cmの余裕があるから、人が寝てコットが沈み込んでも背中に当たってしまうようなことはなかった。
また、幅が20cmしかないため、コットの横に並べて置いても全く窮屈な感じにはならなかった。
しかし、中には同様にコットの下に収まる折り畳み自転車もあるかもしれないが、大抵の折り畳み自転車と大抵のコットの組み合わせで、コット下の収納は難しそうだ。
また、折り畳み自転車もコットの横に置くことはできたが、幅があるせいで少し窮屈な感じになってしまい、高さがあるせいで車内を移動しにくく(跨ぎにくい)なってしまった。
あくまで写真の折り畳み自転車での場合だが、この自転車はごく一般的な大きさだ。
多分こんなベッドの下にもZERO9は余裕で収まると思う。

キャラバンやハイエースサイズであれば、後部座席を出したままでもその後ろに就寝スペースを確保することができる。
後部座席の足元部分に横向きで積むとこんな感じだ。
幅が狭いから全く窮屈な感じではない。
そして、この状態でも一人は十分後部座席に座ることができる。

私はこの奥にポータブルトイレを積んであるのだが、それでもなんとか収まりドアもちゃんと閉められた。
この状態ではトイレが使用できなくなってしまうが、それぐらい余裕はあるということだ。
折り畳み自転車の場合は、畳んだ時の幅があるため、ここには収まらないものが多いと思う(少なくとも私のは入らなかった)。

もう一つ折り畳み自転車との比較で良い点は、組み立てが簡単な点だ。
全ての折り畳み自転車がそうだという訳ではないが、一般的なタイプの折り畳み自転車よりZERO9は圧倒的に組み立てが簡単と感じた。
本当にサッと出して使えるといった印象だ。
しかし、これでは折り畳み自転車の面目が潰れてしまう。
自転車の名誉のために好例も挙げておこう。

これは知人のカローラツーリングワゴン。
たくさんの遊び道具に混ざってホイール径の小さい折り畳み自転車がコンパクトに収まっている。
こんな小さくなる折り畳み自転車(電動アシストではない)もある。
これは本当に軽くてコンパクト。
もちろん性能的にも十分実用になるものだそうだ。
この自転車はほぼ常時積んであるそうだが、このときはインフレータブルSUPも積まれていて、これは仕方のないことだが車が大きくないので就寝時は自転車を外に出していた。
ZERO9は完全防水ではないため、一応外に出しておかない方が良さそうだ。

軽ワンボックスにも余裕で積めることは想像がつく。
しかし、バモス君が入院中のため、代車のワゴンRに載せてみたのだが、軽自動車の規格に合わせて作ったのではないかと思うほど、横向きで荷室にピッタリ収まってしまった。

コペンやS660では難しいかもしれないが、これならほとんどの軽自動車にも積めそうだ。
今回はお試しだったので、車の走行中は他の荷物などで押さえるなどして固定したが、もし私がSWALLOW ZERO9を入手したとしたら、キャラバンには定位置を決めて、床に何かズレ止めを固定してしまうか、簡単にベルトで固定できるような工夫をすると思う。
その他の積載方法として、長さが110cmだからキャンピングカーやバンの室内なら立てて積むことも可能だ。
ベルトなどで車内にしっかり固定できるようになっていれば、床を占有する面積が少なくて済む。
試乗車は分解などせず、普通に折り畳んだ状態で箱に入って送られてきたのだが、入っていた箱のサイズを測ったら1100mm x 270mm x 420mmだった。
これは番外的な話ではあるが、要するにSWALLOW ZERO9は車に積んで運べるだけでなく、宅配便で送ることができる(※ 3辺の合計が170cmを超えてしまうため、ゆうパックの利用は不可)ということでもある。
しかし、大容量のリチウムイオン電池が内蔵されているわけだから、航空便を使う離島などへの送付はハードルが高そう(何か別な手段があるかもしれないが、そこまでは調べていない。)だ。

上の画像は返送するために佐川急便の営業所に持ち込んだところ。
楽しい思いをさせてくれたZERO9君とのお別れが本当に寂しかった。
車旅での便利な使い方
• キャンプ場やRVパークに車を入れ、サイドオーニングを広げたりカーサイドテントなどを設置してしまうと、買い出しや付近の散策などに出かけるために車を出すのが億劫になる。
• 代表例として京都や鎌倉などを思い浮かべるとわかりやすいのではないかと思うが、名所旧跡などの点在する古い街は、全部歩いて回るのはきついが、いちいち車で移動するのも面倒で、移動する度に駐車場代を払うのもばかばかしい。
• 初めて訪れる街を広範囲に見て回りたい。
• 車が大きくて利用できる駐車場が限られる。
• 歩くのには距離や時間的に少々きついが、車に乗って通り過ぎてしまいたくもない。
• 車で入っていくのを躊躇するような、道幅が狭くなりそうなところを偵察したい。
こんなお悩みを解決するのが電動キックボード。
SWALLOW ZERO9があれば、このようなシチュエーションで大活躍することは間違いなさそうだ。
次のページ⇨ 実際に使ってやってみたことを紹介。
実際にやってみたこと
山梨に行く用事があったので、SWALLOW ZERO9を車に積み込んで行った。

甲府駅近辺は南口側の方が栄えているような印象で、これまであまり北口側に足を運んだことがなかった。
そして、南口側は坂らしい坂は甲府盆地の南側の縁までないような感じでずっと平らな地形が広がっている。
しかし、駅北口側には典型的な扇状地のようのような地形が広がり、駅から少し離れるとなだらかな坂が続いている。
JR中央線がちょうど甲府盆地の広い平地の北側の縁を走っているような様相だ。
そして、北口を出てなだらかな坂を真っ直ぐ2km程登った先には由緒ある武田神社がある。
その他、工場の見学のできる古いワイナリーがあったり、学校も多い。
甲府駅北口側は文化的な空気の漂う落ち着いた雰囲気の街だ。
散歩してみたくなる街だが、全体的に緩い坂で構成されているから、徒歩で広範囲を回るのは少々きつく、私は片足に問題を抱えているため徒歩で回るのは不可能(昔は一日に30km以上山中を縦走していたというのに)だ。
逆に考えれば平らなところばかりでもなく、急坂ばかりでもない地形は、電動キックボードの有用性を試すのには絶好の条件だ。
まずはここで試してみることにした。

駅からすぐのコインパーキングとほんの200mほど離れたコインパーキングとでは料金も変わる。
そんなところを見つけるというか、嗅ぎつけるのも旅のテクニック。

多少周囲の視線を気にしつつZERO9でなだらかな坂を2km程登ればあっという間に武田神社に到着。
至って快適だった。

スマホで地図を確認し、また他の神社やお寺や学校などのある道を通り抜け、坂を少し下って行くと、住宅地の中の少し意外な場所に信玄公の墓地があった。
古い住宅地の中の道は舗装が少々荒れているところもあったが、のんびり走れば問題なし。
その後も特に目的もなく適当にぶらぶらしてみたりしたが、とにかく気負わずに動けるところが良い。

速くもなく遅くもない程良いスピード感が大変心地良く、全く体力を使わないことも楽で良いのだが、動力で移動する方が自転車よりむしろ度々止まることに抵抗を感じないような気もした。

ちょっと写真を撮るために停車しても、車体が細身だからかホイールが小さいからなのか、自転車やバイクより気持ち的に邪魔な感じがしないと言うか、他人の迷惑になっている感じが少ないのも良い。
機動力が高くて身軽な特徴は、写真撮影の好きな人にも非常に好都合だと感じた。
次に、同じ山梨県の笛吹市方面に車で移動し、車は敢えて山の少し下の方に駐車し、リニアモーターカーの走行実験を見学できる展望台のあるところまで、幹線道路ではなく、桃畑の広がる農道の坂道をZERO9でトコトコと登ってみた。
たまにすれ違う車のほとんどが軽トラのそんな道も大変快適だ。
たまに農家のおばちゃんが妙な乗り物にビックリして見ていたが、街ではなく、田園風景の中を走るのも気持ち良い。

どちらもハイテク技術の産物なのに、地上最速の乗り物の軌道と最ものんびりな電動の乗り物。その対比がシュールだ。
ペンションをやっている近所(房総半島の鴨川)の友人のところにも持って行って、友人にも試乗してもらった。

車中泊とは直接関係のないことだが、友人が乗っているところを見ていたら、電動キックボードをレンタルしてくれる宿も良いのではと思えてきた。
付近の散策をするのに便利でお客さんに喜ばれそうだ。

実際にはやらなかったけど、漁港の周辺を走り回っていたら釣り場の移動なんかにも便利そうだと思った。
今回はやらなかったけど、やってみたいと思ったことなど
• 私が週末よくいる海岸の駐車場はトイレまで結構距離がある。折り畳み自転車は意外と展開が面倒でトイレまで行くためだけに広げるのは億劫だが、キックボードは本当にサッと出せる感じで、そんなちょっとした用途にも良さそう。
• 上にも書いたけど釣り場の移動。
• 比較的街に近いRVパークなどに車を駐車し、そこから電動キックボードで出かけて街を散策し、良さそうなお店があったらアルコールも飲んでしまう。そして、帰りはキックボードを畳んで収納バッグに入れてタクシーに乗って寝床(車)まで帰る。
• 旅には車で出るが、路面電車や風情のあるローカル線(鉄道)などに畳んだ電動キックボードを持って片道だけ乗り、帰りは電動キックボードに乗って車を駐車した駅まで戻る。乗り鉄・撮り鉄どちらにも対応。
• カヤックやSUPで片道のみパドリングする際の車の回送。
などなど、色々使い方を想像しているだけでも楽しい。
走れる距離・使用できる時間に関して
SWALLOW ZERO9の性能は、バッテリー:48V 13Ah、定格出力:600W、航続距離:~40km、最高速度:40km/hとなっている。
満充電で何時間程度走行できるか直接の記載はないが、距離ではなく時間で表すと、最大の力を発揮しても1時間程度は走れる計算(多分それで基本的な考え方は間違っていないと思う)になる。
1時間と聞くと少ないと考える人もいるかもしれないが、延べ使用時間と考えれば1日の使用時間としては十分だ。
それより基地である車からの足と考えると、40kmも走ることはまずなさそうなので、この性能で不足を感じることはないと思う。
しかし、数日間の旅で使用するとなると、問題はその後の充電だ。
電源の使えるRVパークなどで宿泊するなら、夜のうちに充電しておくことができるので問題ない。

充電できる設備のないところで車中泊をする場合はどうするか。
私の使用しているポータブル電源:EcoFlow RIVER Proは容量が720Wh。
私の場合は、この容量でAC100Vから充電せずに太陽光や走行充電のみで数日間の生活は全く問題ない。
それは実証済みなのだが、SWALLOW ZERO9に充電したら、それだけでRIVER Proを殆ど使い切ってしまう計算になる。
それでは問題ある。
しかし、RIVER Proには容量を倍にできるエクストラバッテリーのオプションがある。
エクストラバッテリーがあればこれまで通りの電気の使用+SWALLOW ZERO9の充電も問題なさそうだ。
皮算用と妄想に耽る
実際に試させてもらって本当に楽しかったのだが、これは乗って楽しむだけのオモチャのようなものではなく、車旅をする者にとってのちゃんとした実用品である実感を得た。

もしSWALLOW ZERO9を入手するなら一緒にRIVER Proのエクストラバッテリーも導入か?などと考えているうちに、全く購入できる算段など立ってもいないのに皮算用を始めてしまった。
SWALLOW ZERO9が¥109,800(改めてウェブサイトを確認したら諭吉一人分、期間セール中のため値下がりしていた。基本価格は¥119,800)で、差し当たり追加したいオプションがフロントキャスター+ハンドル:¥8,000、リモートキー+イモライザー:¥8,000、ワイドタイヤ:¥9,000で、それにRIVER Proのエクストラバッテリー:¥36,700を追加したら合計¥171,500。
これは私が最も多くご購入いただいている価格帯のSUPと同じくらいの金額。
或いはツーリング用の折り畳みシーカヤックはこの2.4倍はする。
そう考えると決して現実味のない話でもないかなどと、SWALLOW ZERO9を連れて長旅に出る妄想に耽ってしまうのであった。
公式サイトはこちら↓
https://swallow-scooter.com/