車中泊
【実体験】能登半島地震後、19カ月の車中泊生活でわかった「本当に必要な備え」
7月28日、熊本県で発生した震度7の大地震。
被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
筆者は2024年(令和6年)1月1日に発生した能登半島地震を経験し、その後19カ月間、能登地方でダイハツ ムーヴで車中泊生活を送りました。
避難生活ではなく、七尾市の企業で復旧業務に携わるための生活でしたが、長期間にわたる車中泊生活を通して、「震災時の車中泊避難」に対する考え方は大きく変わりました。
そこで今回は、自身の経験と現在の知見をもとに、「いざという時に本当に役立つ車中泊避難」について、改めて皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
一日も早い復興を心より願うとともに、もしもの時に備えて、今私たちができる「リアルな備え」についてお届けします。
能登半島地震後、19カ月間車中泊生活を送った筆者のこと

初めて筆者の記事を読んでくださる方へ、簡単に自己紹介をします。
筆者は、石川県七尾市の企業に勤めている会社員です。
実は、能登半島地震が発生する2日前まで、2023年12月1日〜2023年12月30日までの約1カ月間、車中泊生活を送っていました。
理由は年末の繁忙期です。毎日朝早く出社し、夜遅くまで仕事が続く日々でした。
実家は富山県高岡市にあり、片道60kmを通勤しています。
しかし、冬の雪道を疲れた状態で運転することに危険を感じ、「事故を起こすくらいなら車中泊をしよう」と考えたのがきっかけでした。
当時乗っていた車も、本格的な車中泊仕様ではありません。
ダイハツ ムーヴという軽ハイトワゴンで、「最低限寝られる」という程度の環境です。
そして2024年1月1日、能登半島地震が発生しました。
震災後は、地元の人が多く働く工場を一日でも早く復旧させるため、設備の修理や生産ラインの復旧、原料の調達、出荷準備など、膨大な業務に追われました。
また時折、地元のボランティア活動に参加することもありました。
一方で、道路は大きく損傷し、60kmの通勤はこれまで以上に困難になります。
そこで、再び車中泊生活を始めることを決断。
その生活は結果として19カ月に及びました。
ここで紹介する内容は、あくまでも筆者が実際に経験した七尾市周辺の状況です。
七尾市では、上水道がおよそ1カ月間断水しました。
一方、勤務先の工場には飲料水としても利用できる地下水設備があったため、水の確保には恵まれていました。
また、電気は停電することなく通常どおり使用できました。
しかし、一般家庭では断水の影響でトイレや入浴に大きな支障も。
和倉温泉も甚大な被害を受け、多くの温浴施設が営業できない状態となっていました。
そこで筆者は、車中泊場所を富山県氷見市に移しました。
氷見市も被害を受けた地域ではありましたが、高岡市寄りのエリアは比較的被害が少なく、コインランドリーや入浴施設、トイレなどの生活インフラを利用できたため、生活拠点として選びました。
この経験を通して強く実感したのは、車中泊の最大のメリットは「寝泊まりできること」ではなく、「必要な場所へ自由に移動できること」です。
震災発生当時と今で変わった考え方

筆者は、能登半島地震の発生から間もない時期にも記事を書きましたが、当時とは考え方が少し変わっています。
最も大きな理由は、前回の記事を書いた時点では「夏の車中泊」を経験していなかったことです。
能登半島地震が発生したのが2024年1月、前回の記事を執筆したのは同年5月でした。
その後、実際に夏を迎えて車中泊生活を続ける中で、「車中泊は冬よりも夏のほうが過酷な場面が多い」と痛感。
今回の熊本県の地震は夏に発生しました。
報道では、車中泊で避難していた高齢の女性が熱中症で亡くなったことも伝えられています。
筆者自身も車中泊で夏を経験しましたが、現時点でも「これが決定版」と言える暑さ対策はありません。
それでも、実際に19カ月の生活の中で試行錯誤しながら実践してきました。
この時に取った対策について、のちほど書いていきます。
震災時に「あって良かったもの」「あれば良かったもの」
ポータブル電源

能登半島地震を経験して、「持っていて本当に良かった」と実感したものの一つがポータブル電源です。
特に、災害時は情報収集が何より重要になります。
避難情報やライフラインの復旧状況を確認する機会が増えるため、スマートフォンを充電できる環境は必須といえるでしょう。
ただし、筆者が当時使用していたポータブル電源は定格出力が300Wのモデルでした。
長期間の避難生活を考えると、やや物足りなさを感じました。
現在であれば、筆者なら定格出力1,000W程度のモデルを選びます。
このクラスであれば、電気ケトルや炊飯器、卓上IHコンロなど、多くの家庭用調理家電が使用できます。
すでに卓上IHコンロなどを持っている方は、その消費電力に合わせてポータブル電源を選ぶのがおすすめです。
また、以前の記事から考え方が大きく変わったのが充電方法です。
当時は「シガーソケットから走行充電できれば十分」と考えていましたが、最近では、充電のためだけに車を長距離走らせることが難しい人も多いということに気付きました。
そのため現在では、ポータブル電源とソーラーパネルはセットで備えておくべきという考えに変わっています。
ポータブル電源は災害時だけでなく、停電対策やアウトドアでも活躍するため、普段の生活でも持っていて損のない装備だと感じています。
BLUETTI
¥55,980
(2026/08/21 07:20:04時点 Amazon調べ-詳細)
サーキュレーター・扇風機

以前の記事を書いた時は、夏シーズンを体験する前でした。
今回の熊本県の地震でも、避難生活における暑さ対策は大きな課題になっていると思います。
近年は車中泊向けのポータブルクーラーも販売されていますが、価格が高く、普段から車中泊やアウトドアを楽しむ人でなければ、災害対策だけのために購入するのはハードルが高いでしょう。
そこで筆者が実際に使用していたのが、USB給電式のクリップ型扇風機です。
ホームセンターやカーショップでも購入でき、安価で防災用品としても準備しやすいアイテムです。
就寝時は、扇風機の風がふくらはぎに当たるように設置すると、体感温度が下がり、多少暑い夜でも眠りやすくなりました。
ただし、同じ場所に長時間風を当て続けると、ふくらはぎが冷えすぎて足がつることがあります。
そのため、知り合いの医師からは、風の強弱が自動で変化するリズム風(ゆらぎ機能)機能付きの扇風機を選ぶと、体への負担を軽減しやすいと教えてもらいました。
MAXWIN
¥2,680
(2026/08/21 07:20:05時点 Amazon調べ-詳細)
電気調理器
ポータブル電源とも関係しますが、最近特に重要だと感じているのが電気調理器です。
筆者は車中泊スポットについて道の駅へ問い合わせをすることがありますが、「火気の使用は禁止」と案内されるケースが少なくありません。
そのため現在は、カセットコンロ中心の調理から、IHコンロなどの電気調理器へ少しずつ移行しています。
カセットコンロは便利ですが、車内で使用すると一酸化炭素中毒や火災のリスクがあります。
特に、災害時の車中泊では疲労やストレスも重なり、思わぬ事故につながる可能性も。
やむを得ず「車中泊避難」を選ぶ人であれば、普段から家庭で使っている家電を、そのまま災害時にも使える環境を整えておくほうが無駄が少なく、実用的だと感じています。
例えば、次のような家電があれば、避難生活でも温かい食事を取りやすくなります。
・小型IH機器
・IH対応の鍋
・炊飯器
・電気ポット
・最低限の食器類
これらをポータブル電源で使えるようにしておけば、長期間の車中泊避難になった場合でも、避難所だけに頼るより食事の選択肢が広がり、心身の負担も軽減できるでしょう。
こうした経験から、最近の筆者は家電を購入する際、性能や価格だけでなく「消費電力」も必ず確認するようになりました。
Beasty Coffee
¥8,889
(2026/08/21 07:20:05時点 Amazon調べ-詳細)
軽バンでもできる。避難を想定して車中泊訓練のすすめ
以前、Facebookのコミュニティで「アルト エコでも車中泊はできる」という話題がありました。
その投稿を見た車中泊未経験の方が、「私も始めてみようかしら」とコメントされていたのが印象に残っています。
実際、車中泊はハイエースや軽バンでなければできないものではありません。
工夫次第で軽自動車でも十分に実践できます。
だからこそ、災害時に備えて一度は「車中泊避難の訓練」をしてみることをおすすめします。
まずは近場で一泊してみる

まず訓練場所としておすすめなのは、自宅から比較的近い場所です。
車中泊が認められている道の駅であれば、トイレや自動販売機が利用できるため、初めてでも安心して過ごせます。
ただし、近年は車中泊を禁止している道の駅も増えています。
必ず事前に利用ルールを確認してから出かけましょう。
「災害が発生した」と想定し、あらかじめリストアップした持ち出し品を車へ積み込みます。
最初は必要最低限の荷物だけで構いません。
実際に一晩過ごしてみると、「これは必要だった」「これは不要だった」ということが必ず見えてきます。
食事は「普段とは別物」と考える
食事も、実際に試してみることが大切です。
車中泊での食事は、家庭と同じようにはいきません。
キャンプのように自由に火が使える環境でもないため、「普段の食事とは別物」と考えたほうがよいでしょう。
一方で、お米が炊けるようになると食生活の幅が広がります。
片手鍋やフライパンを使った炊飯は少しコツが必要ですが、一度覚えてしまえば炊飯器がなくても温かいご飯を食べられます。
災害時にも役立つ知識なので、ぜひ一度試してみることをおすすめします。
実際に寝て「足りないもの」を知る

次に重要なのが就寝環境の確認です。
実際に車で寝てみて、「何が足りないのか」がよく分かります。
例えば、目隠し用のカーテンやサンシェードは、プライバシーの確保だけでなく、防犯や車内温度の上昇を抑える効果もあります。
100円ショップやホームセンター、最近ではコンビニでも手に入るものがあるので、訓練を機に準備しておくと安心です。
また、マット選びも車種や体格によって適切なものが異なります。
筆者の場合、ダイハツ ムーヴのロングソファーモードで寝ていますが、ヘッドレストを外した金具が体にあたり、痛みを感じました。
通常のマットでは解決できなかったため、最終的には長座布団を金具の上に敷くことで快適に眠れるようになりました。
身長が高い方は寝姿勢が制限されることもあるため、実際に一晩寝てみて確認することが大切です。
なお、シートを倒しただけの姿勢で寝る方法は、エコノミークラス症候群のリスクが高まる可能性があります。
できるだけ足を伸ばし、自宅で寝る時に近い姿勢を確保できるよう工夫しましょう。
持ち出し品も実際に準備してみる
そして、災害時の車中泊で忘れてはいけないのが貴重品の持ち出しです。
銀行通帳や現金、身分証明書、保険証、お薬手帳など、すぐに持ち出す必要があるものは、日頃からまとめて管理しておくと安心です。
普段から車中泊をしている人であれば、寝具や道具を車に積みっぱなしにしていることも多いでしょう。
しかし、普段は荷物を降ろしている人や、車中泊用品を家庭でも使っている人は、「災害発生」を想定して実際に車へ積み込む練習をしてみてください。
車中泊避難で最も大切なのは、高価な装備をそろえることではありません。
一度でも実際に体験しておくことが、何より大きな備えになると筆者は考えています。
あとがき|被災地にとどまるか、安全圏へ移動するかの判断
能登半島地震を経験し、その後の復旧状況を見ていて思ったことがあります。
筆者が勤務する七尾市では、上水道の復旧まで約1カ月を要しました。
一方で、輪島近辺は現在でも水道が復旧していない場所もあるそうです。
同じ震災でも、地域によって生活環境は大きく異なります。
筆者は1人で車中泊生活を続けたため、苦労はほとんどありませんでした。
しかし、家族全員で長期間車中泊を続けるとなると、現実にはかなり厳しい場面も多いと思います。
それでも、「車中泊避難は現実的ではない」と切り捨てるのではなく、避難手段の一つとして選択肢に入れておくことが大切だと筆者は考えています。
また、生活のすべてを車中泊で完結させる必要はないということです。
例えば、自宅や避難所を拠点にしながら、風呂や食料確保だけでも被害の少ない地域へ移動する。
車は、単なる移動手段ではありません。避難場所にもなり、荷物を運ぶ手段にもなり、必要なライフラインがある場所へ移動するための「命を守るツール」にもなります。
この記事が、これからの防災について考えるきっかけとなり、そして一人でも多くの方の備えにつながれば幸いです。


