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大型VANでも狭い道OK!Toy-Factory 「VANLIFE」走行性能を全力レポ

大型VANでも狭い道OK!Toy-Factory 「VANLIFE」走行性能を全力レポ

FIAT DUCATOベースのToy-Factoryの「VANLIFE」を、2泊2.5日の旅で試させてもらう機会を得て、居住性に関すること、ボディーの大きさ故に気になる人が多そうな取り回しなどに関する記事を書いたら、伝えたいことが多すぎて既に3件の記事になってしまった。

今回は、様々な条件の道路を走行し、その走行フィーリングがどうだったかということを報告しようと思う。

居住空間についてはこちら

取り回しについてはこちら

様々な道を走り、車中泊を試す旅


「VANLIFE」のレンタルの拠点となるのは、町田市の国道16号と246号の交差点近くにあるグランベリーパーク内にある「Toy-Factory 東京店」。

しかし今回は、取材車両が藤沢市鵠沼海岸にある「Toy-Factory 湘南店」にあったため、そこからの出発となった。

※レンタルサービスは2025年7月から町田市のグランベリーパーク内「Toy-Factory 東京店」で開始される。「Toy-Factory 湘南店」でレンタルできるわけではないのでご注意を。

トイファクトリー湘南店

まず「Toy-Factory 湘南店」を金曜日の夕方に出発し、その晩は途中の道の駅で仮眠。

土曜日の晩はRVパークに宿泊し、日曜日の夕方には藤沢に戻るというスケジュールを組んだ。

現実的にも、こんな感じで週末を楽しむ人は多いだろうし、電源設備のないところと、あるところ両方での車中泊を試せるからだ。

VANLIFEに電源をさしている

さらに今回は、一般道だけでなく、高速道路、急な上り下りのあるワインディングロード、幅の狭い道、渋滞など、さまざまな条件下での運転を試してみたかった。

そのため、これらすべてが含まれるコースを選ぶ必要がある。

また、私は「車中泊をしに行く」という感覚ではなく、あくまで何か目的があってクルマを移動手段と宿にしている。

そこもリアルでなければと考え、SUPツーリングを予定に組み込んだ。

伊豆でSUPをしている

こうした条件を網羅できる目的地ということで選んだ行き先は西伊豆だ。

距離的には、寄り道なども含めると、往復でおよそ300km程度の道のりになる。

もちろん日中も夜間も走行し、幸い天候も晴天から大雨までバリエーションに富んでいたので、雪道とダートを除けば、ほとんどすべての条件を体験できたともいえる。

一般道からバイパスへ:運転席から感じたDUCATOの特別感


運転席に乗り込んだら、誰もがまず「着座位置が高い」と感じることになると思う。

その高さはハイエースやキャラバンの比ではない。

というのも、ハイエースやキャラバンはキャブオーバーで、前輪の少し上に腰掛けるような形になるが、DUCATOはフロントシートの床が前輪の上にあるような構造なので、視界がとにかく広い。

見晴らしが良く、走り出す前から気分が良くなる。

運転席は最新式


さあ出発というタイミングで、にこやかに見送ってくれたスタッフの方を、高い運転席から呼び止めるという、恥ずかしい事態となってしまった。

サイドブレーキの操作が機械式しかなかった頃は、大きく分ければ3種類しかなかったので、初めて乗るクルマでも戸惑うことなどなかった。

ところがDUCATOでは、サイドブレーキのレバーもペダルも見当たらなかった。

時代は進み、貨物車でも指先で操作するようになっていたのだ。

運転席のナビ

キーを回す動作や機械式サイドブレーキが当たり前だった自分には、便利になったようで、逆にややこしい。

これでシフトレバーまでボタンやダイヤル式だったら気持ちが沈んでしまいそうだったが、幸い普通のATレバーだったので安心した。

ウィンカーの位置は日本車と逆


その他の細かいボタン類は助手席の人に任せることに。

サイドブレーキを解除し、駐車場から道路へ出る時も、ヨーロッパ車あるあるをやらかした。

VANLIFEのベース車両は正規輸入のDUCATOなので右ハンドルなのだが、ウィンカーとワイパーの位置は日本車と逆にあるのが普通だ。

以前ドイツ車に乗っていたので、頭ではわかっていたが、雨も降っていないのにワイパーを回しながら道路に出ようとしたのだ。

帰りに自分のハイゼットジャンボに乗り換えた際にもワイパーを回したので、習慣はすぐに身についてしまうが、日本車にしか乗り慣れていない人がヨーロッパ車をレンタルする際は要注意だ。

VANLIFEを運転中

そのワイパーにはAUTOモードがあり(今時普通なのかもしれないが私には斬新)、2日目と3日目は大雨から小降りになったり上がったりと、目まぐるしく天気が変わったのでこれは大変便利だった。

また、着座位置が高くて視界が広いので、雨の中の運転も大変楽に感じたことも付け加えておこう。

視界が広く運転がしやすい


「Toy-Factory 湘南店」は、片側一車線の幹線道路に面しており、左右どちらに出ても国道1号か136号に出られる。

ただ左に行くと混雑した街中を抜けなければならないので、まだ慣れないクルマということもあり、混雑の少ない海沿いの国道136号へ出ることにした。

出発時には少しドタバタしたが、道路に出てしまうとすこぶる快適。

とにかく視界が広いので、車両感覚が掴みやすく(その理由などはこちらの記事を参照前回記事添付)妙な緊張感もなくすぐに運転に慣れ、その後は至って順調だった。

VAMLIFEの運転席は視界良好

ミニバンの屋根を見下ろす視点になることが、着座位置の高さを表している



この道路は古い道なので狭くもなく広くもない程度だが、広角レンズで撮った助手席からの写真では、道が狭く、クルマがかなり大きく見える。

しかし、運転している本人は車幅が気になることもなかった。

まるでクルーザーのような座り心地


また、私はクレーン付き4tトラックやダンプ(古い普通免許で運転できる最大クラス)などの運転経験もあるのだが、視点の高さと視界の広さ、椅子に腰掛けるような姿勢はそれに似ていた。

しかし、トラックは平らに近い状態の巨大なステアリングホイールをグルグル回すようなMT車だったが、当然「VANLIFE」はATで乗用車的。

この組み合わせのギャップがなんとも言えない不思議な気分だった。

VANLIFEを運転中

少し狭そうにも見えるが、実際は運転席周りは非常にゆったりしている



シートは座り心地が良く、両側に肘掛けの付いたキャプテンシートで、なんとなくクルーザーを操縦しているような気分だ。

椅子の位置を調整中

座面の高さは変えられないのかなど色々いじってみたところ、チルト機構なども備わっていて、幅広い体格に対応するようになっている。

初めの椅子の位置

最初はシートの位置調整もしないまま走り出したが、このままでもとくに問題は感じず、少し後に調整してさらに快適になった。

渋滞が発生しても気持ちに余裕が生まれる!?


136号は一般道だが、そのまま直進すると大磯で自動車専用道の西湘バイパスに入る。

藤沢から西伊豆へ向かうにはいくつかのコースが考えられるが、高速道路走行も試すため、東名→新東名を選んだ。

西湘バイパスは平均速度が比較的高いが、路面はそれほど良くなく、海沿いで風の影響も受けやすいが、全く問題なく快適にクルーズすることができた。

その後、国府津でバイパスを降り、東名の大井松田ICへ。

その間の道路は夕方ということもあり、そこそこ混んでいたが、座り心地が良く、見晴らしが良いおかげか、イラつくようなことがなく、ゆったりした気持ちで運転できた

精神衛生上も安全面でも、これは大変良いことだと思う。

広い駐車場に停車中

郊外のコンビニやスーパーは駐車場が広くて駐車も楽



その後、途中のスーパーとコンビニにで夕食の買い物をし、いよいよ東名に入る頃には、夏至も間近に迫った時期であったが夕暮れ時になっていた。

高速道路でわかる走りの実力


急な登り坂・カーブはどう?


大井松田からの東名下り線は、足柄へ向けては長く急な登坂路(下り線だが道は上り坂)が続く。

私が高速道路走行でとくに興味があったのは、こういった長く急な登り坂だ。

現在の乗用車は完全にFF(フロントエンジン フロントドライブ)が主流だが、トラックは圧倒的にFR(フロントエンジン リアドライブ)が多い。

それは、荷物を積むと駆動軸に荷重がかかり、トラクションが高くなるからだ。

逆に言えば、FFで後軸に荷重がかかると駆動輪の前輪が浮き気味になり、トラクション不足になりかねない。

そして、登り坂ではさらに後ろ荷重になりやすいため、よりトラクション不足になりやすい。

VANをFFにすると床を低くできる(車内高を高くできる)という大きなメリットがあるが、以前はVANもFRが圧倒的に多かった。

しかし、DUCATOは基本が貨物車でありながらFFを採択している。

駐車場に停める途中

DUCATOはFFでも問題ないと話には聞いていたのだが、やはりこういったことが気になり、ぜひ実際に体験してみたかったのだ。

また、この坂は高速道路としてはカーブがきつい箇所も多く、そのハンドリングにも興味があった。

結果はというと、ハンドリングに関してはFRとちょっとフィーリングが違うと感じることはあったものの、肝心のトラクションについては「FFだからどう」といった感覚はなく、余裕で坂を登り切ってしまった。

長く曲がりくねった坂道区間も、気付けば難なく終了していた。

どういうセッティングをすればこれが実現するのか、本当に不思議だ。

小排気量ディーゼルターボ+多段ATの実力


エンジンは2,184ccの直列4気筒ディーゼルで、少し昔の常識ではこのサイズのボディには考えられないほど排気量が小さい。

だがインタークーラー付きのターボが備わり、最高出力:180hp(132kw)/3,500rpm、最大トルク450Nm/1,500rpmを発生する。

それに組み合わさるトランスミッションは8速AT(取材車両は9速ATだった)。

ターボはどこから効き始めているのかわからないほどマイルドで、遮音性も高いためか、いつギアが切り替わっているのかあまりわからず、坂道でも「頑張って登っているな」という感じがまったくしなかった。

燃費は計測していなかったが、14km/Lほど走ってしまうそうだ。

ハイゼットジャンボとVANLIFE比較

私のハイゼットジャンボが13〜16km/L程度、キャラバンは7〜10km/L程度で、どちらもガソリンなのに、DUCATOはさらに単価も安い軽油だ。

「なんてこった」という気持ちになる。

長距離運転が楽しくなる運転フィーリング


あまりに快適だったので、御殿場ICを過ぎ新東名に入ったあたりで、「オレこのまま九州まで運転できる」と無意識に呟いていた。

それくらい、どこまでも走って行きたくなるような気にさせる運転フィーリングだった。

そして、新東名に入って間もなくすると120km/h区間に入る。

高速走行時の安定性にももちろん興味があったのだが、車内は非常に静か(最新の乗用車に慣れている人の感覚とは少しずれているかもしれないが)で普通に会話もでき、スピードが出ている実感もあまりなく、気づけば120km/hに達していた。

もちろん制限速度は守っていたが、それでもまだ余裕がある走りだった。

しかし、余裕があると逆にそんなにスピードを出す気持ちもなくなってしまう。

渋滞時にも感じたことだが、高速走行時も精神面と安全面どちらにも良い作用をする性質を持っているようだ。

などと考えていたら、あっという間に長泉沼津に到達してしまった。

車中泊中のVANLIFE

この区間は何度も走行しているが、実際の速度の問題ではなく、いつもより早く終わってしまったように感じた。

そう感じさせるほど運転が快適だったということだと思う。

そして、後ろには快適に過ごせる部屋兼荷室が備わっているのだから、本当に長距離ドライブに最強のクルマだと感じる。

山道の走行性能


VANLIFEで朝食

道の駅で仮眠した翌日は、いつも房総半島西岸から見ている伊豆半島の、最も高い辺りを越えることになる。

車中泊の朝

修善寺辺りから伊豆半島西岸の土肥までの道のりは、昔と比べたら格段に道路事情が良くなった。

しかし、登りもそこそこきついが、峠を越えた後の下り坂がもっときつい。

山道を走行中

快適に山道を進みながら「天城」という文字が出てきた辺りで、演歌の話になり、自ら聴こうと思ったことなどないのだが、せっかくCarPlay対応なのだから聴いてみようということに。

助手席の人が自分のiPhoneをCarPlayに繋ぎ、曲も見つけてかけられたところまでは良かったのだが、音量の調節の仕方がどうにもわからず、調節の仕方がわかったのは随分後のことだったのだ。

夫婦でもない男女2人が、外に聞こえるほどの大音量でガンガンさゆりちゃんをヘビーローテーションしながら伊豆の峠を越える様子は、狂気とカオスの世界だったのではないかと思う。

こんな予期せぬハプニングも旅の楽しみの一つだが、便利な機能が多いほど操作が複雑になるので、やはり説明書の類は一度読んでおいた方が良いようだと教訓になった。

ワインディングロードのハンドリング


ワインディングロードを走行中

上の写真で前を走っているのは、ミドルルーフだがワイドボディーのハイエースだ。

前回の記事でサイズ比較の例に挙げたハイエーススーパロングと高さは違うが幅は同じ。

こうして見ると、2m前後の車幅もそんなに大きなものでもないと感じる。

一般道の急な登りも、高速道路の登りと同じで至って快適だったが、ワインディングロードでのハンドリングには何かちょっとしたクセのようなものを感じる瞬間がたまにあった

とはいえ、それが気になって仕方がないというほどではなく、常にではないので、慣れてしまえば「こんなものか」と、それが普通になってしまいそうな程度だった。

そのちょっとしたクセのようなものは、アンダーステアが極端に強いとか、ロールが大きいということもでもない。

ロールも少なく下りも安心


この着座位置の高さなので、ある程度ロールは覚悟していたが、トレッドが広いせいか全然問題なかった。

また、シフトアップ時もキックダウン時も滑らかすぎて、これが正しい表現かわからないがCVT(無段変速機)かと思うようなフィーリングだった。

ただ、自分でシフトダウンすればエンジンブレーキも十分に効く。

そして、先述の通りアンダーステアもロールも十分抑えられているので、急な下り坂のタイトコーナーも全く不安感がなく、至ってスムースに抜けることができた。

山道を走行中

登りでのトラクションに全く違和感など感じなかったことや、足回りがガッチガチで乗り心地が悪いわけでもないのに、この着座位置でロールがしっかり抑えられていて、本当に良くできたクルマだと感心してしまった。

狭い道は運転しやすい?


宿泊した「RVパークTAGOBASE」のある田子湾は国道から下ったところにあり、まあまあ狭い道(と言っても結構大型のキャンピングカーでも入れる程度)を通る必要がある。

ついでに周辺の、もう少し狭い道もどんなものかと試しに走ってみた。

大きくても感覚は掴みやすい


RVパークの狭い道

車両感覚がとにかく掴みやすいので、対向車が来ても物理的にすれ違い可能な道幅さえあれば何も問題を感じなかった。

ただ、大きなクルマが向かってくると、相手が先にスピードを落として端に寄ってくれたり、こちらとしては全然大丈夫と思っていても、停まって待ってくれたりする傾向がある。

確かに狭い道で大型ダンプなどが向かってきたら、ほとんどの人がそんな行動をとりそうなものだが、それと似たような感じなのかと思った。

デュカトの正面

大きさで威圧感を与えてしまっていたとしたら申し訳ないような気もするが、DUCATOは威圧感を与える顔でないのが救いだ。

そんなわけで、物理的に絶対に入ることのできない道を事前に下調べしておきさえすれば、困るようなことは特にないだろう。

走りも居住性も最高


「日本は道が狭いから」という言葉はよく耳にする言葉だ。

確かに狭くて迷路のような道も存在するし、軽自動車でなければ無理なような道も日本には存在する。

トンネルを走行中

しかし、私が実際に行ったアメリカ・カナダ・オーストラリアなどの広々とした道路とは別として、ヨーロッパの古い街並みには、日本以上に狭い道もたくさんあると思う。

にも関わらず、ヨーロッパではDUCATOが日本のハイエースのようにポピュラーな存在となっている。

安心して走れるDUCATO


DUCATOは運転がしやすく、走行安定性が高く、一部のキャブコンのようなフラフラ感やパワー不足を感じることもなく、安心して長距離走行もできる。

実際に運転してみて、本当に車両感覚が掴みやすいと感じたので、L2H2のDUCATOなら、慣れとちょっとした工夫で十分対処できる場面が多いと思った。

日本での使用も躊躇する必要などないのではと思う。

以上が2泊2.5日の旅で実際に使ってみて実感したことだ。

VANLIFEは本当に快適


駐車場に停車中のVANLIFE

そして、そんなL2H2のDUCATOをベースにした「VANLIFE」は、居心地も使い勝手も最高だったので、本当に素晴らしいクルマだと感じた。

全体を通して少し褒めすぎと思われたかもしれないが、褒めたところで私にメリットがあるわけではなく、これが実際に使ったリアルな感想だ。

ただ一つ、このクルマに惚れ込んでしまったのだが、「VANLIFE」の価格は1,000万円を超える。

こればかりは、工夫しても悩んでも解決できないことなので、これが唯一で最大の問題だ。

VANLIFE(CRAFTPLUS×TOY-FACTORY)の詳細はこちら
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笠原 サタン

スポーツカーやピックアップトラックも好きだけど、車を見ると快適に寝られるかどうかを先ずは考えてしまう。 VANと旅と波乗りとネコをこよなく愛するPaddler。