大きいけど運転しやすい?DUCATO VANLIFEを試乗して感じた取り回しと快適性

この7月からレンタルも始まったFIAT DUCATOがベースのToy-Factoryの「VANLIFE」を、2泊2.5日の旅で試させてもらう機会を得て、居住性がどうだったかといったことなどに関して、既にレポートした。
DUCATOがベースというと、「日本車より大きい」というイメージから、「取り回しなどで不便しないか」「運転で困ることはないか」などといったことを心配する人も多いと思う。
そこで、今回の記事では、「VANLIFE」の取り回しなどはどうだったのかといったことをレポートしようと思う。
居住性についての記事はこちら
ハイエース スーパーロング バンとサイズを比較
気になる人の多そうな、その大きさについてだが、諸元表などを見ただけでは具体的なイメージが掴みにくい人も多そうだし、逆に「大きい」というイメージだけが先行して、実態が掴めていない人も多いのではないかと思う。

Toy-Factory 湘南店は、地元では「ハイエースのキャンピングカーの店」で通じるようなハイエースベースのキャンピングカー専門店だ。
見かける機会の多い他の車両と比較してみるとイメージしやすくなると思うので、日本車でサイズが近く、かつDUCATOよりも見かける機会が多い「ハイエース スーパーロング バン」を比較対象として、サイズについて検討してみたいと思う。
スーパーロングはキャンピングカーやロケバスのサイズ
ただ、その前に一応確認しておきたいことがある。
様々な業種で使われ、個人で乗用車のように使われていることも多く、最も見かける機会の多い「ハイエース ロング バン(標準のサイズ)」は、全長4,695mm・前幅1,695mm・全高1,980mmで、大きそうに見えて実は小型車枠ギリギリいっぱいたに作られた小型車だ。
ハイエース スーパーロングは、この「普通のハイエース」とはボディーサイズがかなり違う。

実際、普通の貨物車としてスーパーロングが使われているのを見かける機会は意外と多くなく、むしろキャンピングカーやロケバス、救急車などとして、あるいは同じボディーサイズのワゴンや小型のバス(乗車定員11名以上)が送迎車などで使われていることが多い。
また、このバスが離島など人口の少ない地域では路線バスとして活躍しているのを見かけることもある

ところで、DUCATOにはいくつかのボディーサイズが存在するが、「VANLIFE」のベースとなっているシャーシはL2H2というタイプだ。

これは「VANLIFE」より長いL3ボディーのキャンピングカー
Lが長さ、Hが高さを表していて、L2H2はラインナップ中では中位から比較的小柄な部類になると考えて良いと思う。
長さについて
DUCATO L2H2ベース「VANLIFE」の全長は5,410mmで、ハイエース スーパーロング バンの全長は5,380mmだ。
3cmしか差がないので、全長はほぼ同じと考えて良いと思う。
日本の乗用車は、大きくても全長が5mを超えることは稀だが、どちらも軽く5mは超えている。
しかし、この長さ程度であれば、少し経てば慣れてしまうので、普通に運転しているときはあまり問題を感じることはないと思う。
少々問題が起こる主な場面は駐車場だ。
コインパーキングなど、5mの制限がある駐車場は多い。また、5mが境いで料金の変わるフェリーもある。
毛色は異なるが、大きめの箱形車ということで現行のアルファードの全長を調べて見たところ、4,995mmだそうで、憶測ではあるが、この数字は駐車場に関係していそうだ。
「普通のハイエース」や「普通のキャラバン」が小型車枠ギリギリいっぱいの大きさに作られているのと同様、アルファードの全長も日本独特の事情(アルファードは欧米に輸出されていない)に合わせてのことではないかと思う。
DUCATO L2H2:5,410mm
ハイエーススーパーロングバン:5,380mm
アルファード:4,995mm
駐車場で感じるDUCATOの長さ
今回の試乗旅は目的地が西伊豆で、金曜日の夕方に藤沢を出発し、金曜の晩は途中の道の駅で仮眠したのだが、「VANLIFE」を道の駅の一般車のスペースに後ろ向きに停めた様子が下の写真だ。

普通車枠に後ろ向きに駐車すると、この通り前輪の真ん中から前が枠外に張り出してしまうような感じになった。
下の写真の手前のキャブコンの全長は5mあるかないか程度かと思うが、リアオーバーハングが長いこともあって、すっかり枠内に収まっている。

奥の方にも5mクラスのキャンピングカーが普通車枠に何台か停まっていて、そちらの方が多少張り出しても邪魔になりくそうだったのだが、そのせいか混んでいて、良さそうな場所が残っていなかった。
大型車枠を見たらガラガラだったので、そちらに移動することにした。

しかし、元々数の少ない大型車用スペースを利用して、夜中に到着した大型車の停まるスペースがなくなってしまうようなことにならないかと、それが気がかりではあった。
幸い、朝も大型車枠は空いていたので安心したが、この5.4mという長さは、「中途半端な長さ」であることを実感した。
長さ制限があって入れられない駐車場があるだけでなく、このようにどこに駐車するか悩むようなことはありそうだ。
運転や取り回しには全く問題を感じない長さで、新しい駐車場であれば普通車枠でも奥行きが十分な場合もあるが、日本では中途半端な長さになってしまうことがあるのが少し残念だ。
しかし、これはL2H2 DUCATOがベースの「VANLIFE」だけではなく、ハイエース スーパーロングでも同様ということになるので、このクラスのキャンピングカーを検討する場合は、こういったことを念頭に入れておいたほうが良さそうだ。

観光地の少し古い駐車場などでもこのように長さがはみ出してしまうことがあるが、駐車する場所を選ぶことで迷惑にならないようにすることができる。

広い駐車場では一歩でも建物に近いところに駐車しようなどとは考えずに、広く空いたスペースに駐車するのが得策だ。
高さについて

DUCATO L2H2ベースの「VANLIFE」の全高は2,525mm(ニコニコ)で、ハイエース スーパーロング バンの全高は2,285mmなので、全高はDUCATOの方が24cm高い。
背が高ければ風(特に横風)の影響を受けやすいことになるので、背の高さは運転に影響する要素だが、風の影響の受けやすさは車高の違いだけで単純に比較できないので、それについての比較しないでおく。
それよりも実用面で違いが出るのは駐車場などの高さ制限だ。
ハイエース スーパーロングの全高がギリギリ2.3m未満に抑えられているのは、高さ制限2.3mの駐車場(高さ制限は他にもあるが、2.3mという中途半端な数字をよく見かける)を意識してのことではないかと勝手に推測している。
これもまた日本独自の事情による数字なのだろう。
もっとも、ルーフキャリアやルーフラックを付ける人は多いと思うが、そうすると軽く2.3mを超えてしまうので、その時点で2.3m未満のメリットは消える。
しかし、この24cmの全高の差によって、キャンピングカーとしての使い勝手には決定的な違いが生れる。
それは運転というより、車内で直立できるかどうかという話だ。
「VANLIFE」で実感する立てる室内の快適さ
未架装状態のハイエース スーパーロングの室内高は1,635mm、H2のDUCATOの室内高は1,970mmもあり、天井も床もしっかり架装した「VANLIFE」でも1,850mmある。

ハイエース スーパーロングがベースのToy-Factory BALEIA<LION KING>EDITION(室内高は1,600mm)
室内高が1.6mもあれば、直立はできなくてもほとんどの人が中で楽に着替えができ、食事して寝るだけなら、中で直立できるか否かはそんなに重要ではないとも思える。
実際、私もそう思っていた。
しかし、この「VANLIFE」の中で実際に寝食を体験してみると、この室内高と垂直に立ち上がった側壁(ハイエースは四角く見えても壁は緩くカーブしている)が組み合わさると、外観はVANなのに、中での居心地は普通のバンコンとは全く異なるレベルだということを知ってしまった。
DUCATO L2H2全高:2,525mm
ハイエーススーパーロングバン全高:2,285mm
(差24cm)
DUCATO L2H2室内高(未架装)/VANLIFE室内高: 1,970mm/1,850mm
ハイエーススーパーロングバン室内高:1,635mm
(差33.5cm)

この違いは、実際に使って体験してみないとわからなかったが、一度体験してしまうと、全長が5m近い自分のE25系(先代キャラバン)の室内が狭苦しく感じてしまいそうで恐ろしい。
高さについては、「とにかくハイエースが良い」という人は別として、この別次元の居心地の良さをとるか、キャリアなどを付けずに2.3m未満を死守したいか次第なのではと思う。
ところで「全高24cmの差に対して室内高が33.5cmも違うのはなぜ?」と思った人もいると思う。
その最大の理由は、DUCATOがFF(前輪駆動)でハイエースはFR(後輪駆動)だからだ。
フロントシートの下にエンジンが搭載されている後輪駆動のハイエースやキャラバンは、床下をドライブシャフトが貫通しているが、DUCATOはそれがないため床を低くできるのだ。
これが、車内高だけでなく、荷物の積み下ろしや室内への出入りのしやすさなどにも大きく影響する。

例えばDUCATOに近いサイズのパネルバンの荷台は後輪より上に床があり、荷物の積み下ろしをする際にはステップを一段上がって、よじ登る感じになる(佐川急便のドライバーさんなどの様子を思い浮かべるとイメージしやすい)。
カムロードベースのキャブコンも、多くはステップを上がる仕組みだ。
しかし、「VANLIFE」はサイドドアを開けると平らで低い床が広がっていて、標準的な体格の大人なら、よじ登る必要はなく、荷物の積みお下ろしも楽にできる。
幅について
全幅は、DUCATOが2,100mmで、ハイエース スーパーロングバンが1,880mmなので、結構差が大きい。
※ 2,100mmはVANLIFEのカタログ値。
1,880mmはほぼ1.9mだが、ハイエース スーパーロングバンやアルファード(1,850mm)が車幅をギリギリ1.9m未満に抑えている理由には、¥1,980に似たものを感じる。
幅が1.8m代であることをアピール(そんなに大きすぎないぞと)できるようにするためではないかと、私はまた勝手に勘繰っているのだ。
それはさておき、経験上、幅で違いを明白に感じる区切りは、
①軽の幅
②概ね1.8mくらいまで(ミニバンも含めた乗用車に多いサイズ)
③2.2m〜2.3m(平均的な4t車のサイズ)
④2.3m以上
それと②と③の間の5つの区分のように思っている(あくまで私の経験上の私見)。
言い換えれば、私見では凡そ1.9mと2.1mは同じ区分に入ってしまうので、大きな差を感じないということになる。

そして、今回の試乗旅の最中に2.1mの幅があることで困ったことや不便に感じたことは一度もなかった。
長さがはみ出すことはあっても、幅2.1mで収まりきらない駐車場はあまりないと思う。
そして、駐車がしやすい理由については後の項目でも説明するが、幅が広くて駐車に苦労することなども一度もなかった。
事情は人それぞれなので誰にも当てはまることではないが、私だったら外寸が22cm広くても、ボディーの加工をせずに横向きのベッドが設えられる方を選びたいと思う。
DUCATO幅:2,100mm
ハイエーススーパーロングバン幅:1,880mm
アルファード幅:1,850mm
コースターとも比較しておこう
もう一台、ハイエース スーパーロングの上のサイズでロケバスとして使用されることが多く、キャンピングカーに改造されことも多いトヨタ コースターとも大きさを比較しておこう。
キャンピングカーの話なのに、「ロケバス」という単語が二度も登場した理由は、ロケバスの運転手さんというのが、一般人なら無理と思いそうなところへも大きな車体をものともせず入って行ってしまう人が多いからだ。
真似はできなくても参考になるという意味だ。
現行のコースターの標準ボディー(最も全長の短いタイプ)のサイズは、全長:6,255mm、全幅:2,080mm、全高:2,630mmとなっている。
幅はDUCATOとほぼ同じで、全高はH2のDUCATOより10cmちょっと高い程度だが、室内高は1,890mmと諸元表に記載されているで、逆に8cm低くなってしまうようだ。
全高に関しても、ここまで高くなると大差とも言えるが、全長は84.5cmも長くなるので、広めの駐車場であっても普通車枠への駐車は完全に無理そうだ。
そして、フェリーの料金は6mを超えると大幅にアップしてしまうことが多い。
トヨタコースター:全長6,255mm、全幅2,080mm、全高2,630mm、室内高1,890mm
DUCATO L2H2:全長5,410mm、全幅2,100mm、全高2,525mm、室内高1,970mm/1,850mm(VANLIFE架装)
見切りの良い車体、見やすいミラーなど
ボディーの大きさは確かに取り回しのしやすさに大きく影響するが、それより大きく影響するのは、実際のボディーの大きさより、「車両感覚の掴みやすさ」ではないかと私は思っている。
DUCATOは小さなボンネットの中にエンジンが収まるFFレイアウトなので、日本車のミニバンと呼ばれる乗用車と基本的には同じレイアウトだ。
そのため、DUCATOはミニバンをそのまま大きくしたようなクルマとも思われそうだが、実は色々な面でかなり違う。
現在のFFの乗用車は、Aピラーの傾斜角が緩く、古い人間にはダッシュボードの奥行きが異様なまでに長いと感じるようなクルマが多い。
日本のミニバンもその傾向が強く、ボンネットが短く見えても、車体前端から着座位置までの実際の距離は結構長いことが多い。
キャブオーバーや、ボンネットがあってもAピラーがもっと立っていた頃のクルマに慣れてきた者が、たまに今時の一般的なデザインの乗用車(ミニバンも含め)に乗ると、車体前端の位置が把握しにくく、曲がる時やワインディングロードではAピラーが視界に入って鬱陶しく感じることが多い。
簡単に言えば、こういったデザインは車両感覚が使いみにくいと思うのだ。
しかし、DUCATOは似ているように見えてこれらとは全然違う。
ダッシュボード周りと見切り

ボンネットは短いがダッシュボードの奥行きがとくに長いようなことはなく、車体前端から着座位置までの距離も実際に短い。

手前の白い軽自動車と左に見える黒いミニバンと、右奥に写っている「VANLIFE(DUCATO)」は、大きさが全く異なるが、ボンネットが短く全長と車幅に対して背が高めという点で共通している。
しかし、白い軽自動車のボンネットは短いが、実際に運転手が座っている位置は結構後ろ(車体の中央にかなり近い)にあり、そのためサイドウィンドウの横幅も結構長い。
それに対してDUCATOはサイドウィンドウの横幅が短く、外から見たら運転席周りが狭いのではと誤解されてしまいそうでさえあるが、もちろんそんなことはなく、DUCATOの運転席周りは十分に広い。
DUCATOのフロントシートは前輪より後ろにあるが、フロントシートの床は前輪より上にあるため、ダッシュボードの奥行きを長くしてシートの位置を後退させる必要などがないのだ。
そのため、ボンネットがあってクラッシャブルゾーンも確保されていつつ、着座位置が高くてフロントウィンドウが大きくて視界が広いため、とにかく見晴らしが良い。
コーナリング時にAピラーが視界の邪魔をするようなこともなく、前端の位置も把握しやすい。
ミラーや先進装備のおかげで運転しやすい

車体側面は垂直に立っていて、縦長の大きなサイドミラーは後方全体を見渡しやすく、下の方は地面を映すようになっているため、車幅も大変把握しやすい。
ハイエース スーパーロング バンも運転したことがあるが、サイドミラーは断然DUCATOの方が良いと思った。
DUCATOはボディーが大きいけれど、とにかく車両感覚が掴みやすいクルマなのだ。
さらに先進的な設備もいろいろと備わっている。

デジタルルームミラーもクリアな視界で大変見やすいが、取材車両にはiPad miniのようなサイズの大画面ディスプレイも備わっていたので、リバースにギアを入れればそこにも後方が大きく映し出される。

だからバックも全く不安がなかった。
助手席側ドアには大型トラックの助手席側ドアの下の方にある小窓、あるいはガッツミラーなどと呼ばれる下を映すミラーと同じ役割を果たす、巻き込み防止用の小さなディスプレイが設置されている。

これもガッツミラーより断然実用性が高いと感じた。
その他、何かが近づくと警告音や警告灯で注意を促す仕組みなど、いろいろ先進的な装備も備わっていた。
車幅があっても駐車に困らない理由
車幅に関する項目で、車幅が広くても駐車に苦労しないと述べたが、それはこのようにとにかく車両感覚が掴みやすく、車幅の把握が大変しやすいため、枠内の真ん中に正確に駐車をしやすいからだ。
軽自動車でさえ、ミラーの向きが少し違っていると曲がって駐車してしまうとか、左右どちらかに寄ってしまうようなこともあるが、そんなことにならない。
駐車場で幅に関して問題を感じることなどないということだ。
先進設備ももちろん素晴らしいのだが、とくに私はサイドミラーが走行中の車幅の確認にも駐車のしやすさにも大きく貢献していると思った。

観光地ではこのように道端に小さなパーキングスペースが設けられていることがあるが、大きいと思われがちなこのボディーでも、案外こういったところにも躊躇なく入ることができたのは、車両感覚が掴みやすいからに他ならない。
取り回しに関して心配するようなことはない。
とにかく、「VANLIFE(L2H2 DUCATO)」は室内が広々としていて外寸も大きいのに、取り回しのしやすいクルマだった。
もちろん、駐車場や家の近辺の道路事情などで、どうしてもこのサイズは無理だという人もいると思う。
しかし、そういった条件がクリアできるのであれば、躊躇することもない。
そして、ハイエース スーパーロング バンなら大丈夫で、DUCATO L2H2「VANLIFE」では無理というケースはおそらく少ないのではと思う。
次回は運転のフィーリングなどについてのレポートをするので、そちらも併せて参考にしていただけたらと思う。
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