キャンピングカー
【取材】28年売れ続ける国産キャンピングカーの一つの頂点。5代目バンテックZiL
「国産キャンピングカーの中で、サイズも装備も価格も人気も、そしてこれまでの販売実績もいちばんのモデルはどれ?」と聞かれて、「たぶんバンテックのZiL(ジル)かな」と答えても、あながち間違いではないでしょう。
そんなジルについて、2025年モデルの実車を見ながら、VANTECH株式会社・広報部の中野 聡史さん(以下、中野さん)からお話しを聞きました。
取材場所は、バンテックの直営店の一つであるVANTECH神奈川。
写真とともにくわしく解説したと思います。
誕生から28年。5代目となった国産キャブコンの最上級モデル・ZiL

毎年、キャンピングカー国内保有台数が増え続けています。
2016年に10万台を超え、そこからは毎年約1万台ずつ増加。
2024年末時点では16万5000台に上っているとのこと。
全国各地で開かれるキャンピングカーショーも盛況で、「キャンピングカー、流行ってるな」と感じている人が多いと思います。
キャンピングカーを製作するキャンピングカービルダー(メーカー)も現在では60社以上。
各ビルダーから様々なモデルが発売されています。
なかなかの規模になってきているキャンピングカー業界ですが、その黎明期から国内キャンピングカー市場を開拓してきた大手メーカーの一つが1986年創業のVANTECH(バンテック)。
そして、国産大型キャンピングカーの代名詞と言っても過言ではないのが、本記事で紹介するバンテックのフラッグシップ・ZiL(ジル)です。

初期のジル VANTECH
ジルの発売は1997年で、28年もの歴史がある超ロングセラーモデル。現行モデルは5代目。
誰もがパッと見てキャンピングカーだとわかる外観です。
トヨタやISUZUのトラックをベース車に、居住スペースを架装したキャブコン(キャブコンバージョン)タイプのキャンピングカーです。
■バンテック ジル主要諸元
ベース車両:TOYOTA CAMROAD
車両寸法:全長516cm(リヤラダー含まず)×全幅207cm(サイドオーニング含まず)×全高294cm
乗車定員:7名(2WD)、6名(4WD)
就寝定員:5名
希望小売価格:12,900,000円~(税込、諸費用別)
※価格・仕様は変更となる場合があります。
公式サイト▷VANTECH
快適アイテム、ほぼ標準装備
発売から28年の歴史の中で、改良を続けられてきたバンテックのジル。
「発売当初は、特に内装がキャンプに行く車といった感じでしたが、そこから進化を繰り返し、現在はホテルのようなインテリアで、快適設備がそろっています」(中野さん)
家庭用エアコン、FFヒーター、冷蔵庫、電子レンジ、トイレ……専用ショックアブソーバーまで。
しかも、これらはすべて標準装備。
オプションは付けなくても十分ラグジュアリー。さすがは最上級キャブコンです。
それでは各部をくわしく見ていきましょう。
一体成型のシェルをまとったこれぞキャンピングカーといった出で立ち

前述しましたが、ジルはキャブコン(キャブコンバージョン)タイプの大型キャンピングカー。
トヨタ・カムロードをベース車として、居住部分のシェルを架装しています。
キャンピングカーについてあまり知らない人でも、一目でキャンピングカーだとわかる外観ですね。
ジルの外装のいちばんの特徴はこのシェル。
FRPでできた大きなシェルですが、つなぎ目のない一体成型。
デザイン的にスマートで雨漏りの心配もありません。
見えないところでは断熱処理も万全で、屋根はグラスウールと合板、発泡断熱材。
側面には断熱空気層・合板・発泡断熱材が重ねて施工され、高い断熱性能を確保しています。
詳細はこちら▷https://www.vantech.jp/brand/advantage/
また、エントランスドア(出入り口)が最後部にあるリアエントランスレイアウトも特徴。
「ジルと同じようなトヨタ・カムロードをベース車にした国産キャブコンは現在、キャンピングカービルダー各社から発売されています。その中でリアエントランスは少数派。車体中央に入り口があるモデルの方が多くなっています。
リアエントランスのメリットとしては、まずエントランスドアを開けたときに、外から車内のリビングスペースが見えないことがあります。プライバシーが守られるということです。また、入り口が最後部にあることで、居住スペースの大半をリビングにできるため、リビングスペースが広く取れるという利点もあります」(中野さん)

このほか入り口には電動ステップも標準装備。

さらに、乗り心地を左右するショックアブソーバーもカムロードのノーマルパーツではなく、バンテック仕様の専用ショックアブソーバーが標準で付いています。
車体のあちこちに外部収納

ジルの外観で目立つのは車体側面や後部の収納庫。
左側面と後部の収納庫は引き出し式。

「底部に水抜き穴があるので、濡れたものや汚れたアウトドアの道具を入れておいて、後で収納庫内部を水洗いできるので便利です」(中野さん)

入り口横の収納庫は室内につながっていて、室外と室内両方から荷物の出し入れができます。
キャンプ気分が盛り上がるサイドオーニングも標準装備

そしてもう一つ。車体外部の特徴がサイドオーニング。
サイドオーニングとは、車の側面に常設されている日よけ兼雨よけの幕。
普段はロール状に収納されていて、使用時に引き出して使います。
これがあると一気にキャンプ気分が盛り上がるアイテム。
ジルでは標準装備されています。
細部まで居心地の良さと使いやすさを追求したジルの室内
それでは次にジルの室内を見ていきましょう。
リアエントランスだからこそ実現できる広々リビング
車体最後部に出入り口があるリアエントランスのジル。

その最大の恩恵が広々としたリビングルーム(ダイネット)です。
後部の常設ベッドがなく、キッチンを室内最後部に置いていることで、運転席・助手席のすぐ後ろから入り口左のカウンターまで全部がリビング。
大人5~6人がゆったりくつろげます。
「出入口が車体の真ん中にあるとその分リビングが狭くなるだけでなく、車体の左側に大きな窓が取れず、ソファも置けません。ジルはセカンドシート・サードシートの左側に大きな窓があって、走行中に対向車に遮られずに景色が楽しめます。これはリアエントランスならではのメリットだと思います」(中野さん)

窓はアクリル二重窓で断熱性・遮音性ともに抜群。網戸とシェード、両方が付いています。

さらに言うと、エントランスドアを開けてもリビングが見えないのでプライバシーも守られます。
また、大型キャブコン共通のメリットですが、大人が立って歩ける高い天井高(約190cm)も魅力。
バンクベッドとリビングのベッド展開で5名就寝

就寝スペースは、キャブコンタイプのキャンピングカーとして象徴的な運転席・助手席頭上のバンクベッドに大人2名分。
外したソファの背もたれをリビングに敷き詰めて作るベッド(大人3名)で計5名がゆったり寝られます。
収納たっぷりで温水も使えるキッチン

前述したようにキッチンは室内最後部に設置。

ガスコンロは2口。
ジルには温水ボイラーが標準で備わっているので、シンク内の蛇口からは温水も出ます。

コンロとシンクには上蓋が付いていて、使わないときはキッチンの上面全体をフラット化することも可能。
シンクとコンロの下には、食器や調味料を収納できる引き出し式の収納。
キッチンの頭上にも収納棚があり、自宅のキッチンと比べても遜色ない設備が整っています。

キッチンの向かい側には、暖色の照明で彩られたアイランドカウンター。
入り口から入ってすぐ左側にあって、シックな雰囲気を醸し出しています。
トイレ、シャワー付きのマルチルーム

長期の車中泊旅行にも対応できるように、キッチン横のマルチルームにはトイレとシャワー、洗面台も完備。
トイレはラップ式で、圧着して排泄物をラップの中に閉じ込めるので、汚水処理の手間がなく後処理のことをあまり気にせずトイレを使えます。

シャワーと洗面台はキッチンと同様に温水も使用可。
寒い季節でも快適に洗顔やシャワーができます。
まさに動く別荘、動くホテル。トイレとシャワーがあると災害時のシェルターとしても万全です。
エアコン、ヒーター、天井換気扇、冷蔵庫、電子レンジまで標準装備

ジルは家電などの快適装備も充実。
冷暖房どちらも使える家庭用エアコン、キャンピングカー定番の暖房機器・FFヒーターも標準装備。

しかもジルではFFヒーターの配管がリビングの床下を通っているため、床暖房を兼ねているというスグレモノ。
エアコンやFFヒーターだけだと足元が冷えることが多いですが、そんなデメリットも解消しています。

空調設備では、ルーフベンチレーター(天井換気扇)も標準装備。
家電類では冷蔵庫、電子レンジ(電子レンジのみ2026年モデルから)も標準装備されています。

冷蔵庫は、かがんだり座ったりしなくても必要なものを取り出しやすいやや高めの位置に設置。
ちょっとしたことかもしれませんが、長く使うほどに「なるほど」と実感する心配りの行き届いた設計です。
電源設備もしっかり

エアコンをはじめ、電気製品が満載のジル。
これらを稼働させるサブバッテリーも大容量のものが標準装備されています。
サブバッテリーは2,000Wh×3で計6,000Wh。
8畳用のエアコンが一般的な目安で冷房時に消費電力700Wと言われているので、単純計算すると6,000Whというのは、冷房で8.5時間使えるくらいの容量。
かなり強力です。
使い勝手を考え抜いた本格的キャンピングカー

ここまで紹介したこと以外にも、リビングの足元に間接照明を付けることで、夜間に誰かがトイレに立っても他の人がまぶしくて起きてしまわないようにしたり、エアコンの室外機回りが遮音構造になっており、室外機の作動音が室内で気にならないようにしたり。
発売から28年間、使い勝手をよりよくするために改良に改良を重ねて、現在のジルの姿があります。
繰り返しになりますが、ここで紹介した機能や設備はすべて標準装備。
オプション装備もいろいろ用意されていますが、選ぶとしてもソーラーパネルとテレビモニター+受像機(テレビ取り付けアームは標準)くらいではないでしょうか。
キャンピングカーにあったら便利で付いていてほしい設備が最初からそろっているのがジル。
しかも、納期は約半年。
昨今、キャンピングカーの長納期化が当たり前となっている中で、驚くほどの短納期です。
国産の大型キャブコンが欲しい。けれど、どれを買ったらいいか迷うという場合は、高い人気でリセールバリューも期待できるジルを選べば大きな間違いはないでしょう。

