ヨーロッパ・アフリカ・アジアをバンで旅した夫婦にインタビュー!
モロッコで出会ったドイツ人のご夫婦、サイモンとダマリス。
彼らはドイツを出発してから、南ヨーロッパやアフリカ大陸、東ヨーロッパ、アジアまで、様々な場所をバンで旅してきました。
各地でキャンプやハイキング、カヤックやカイトサーフィンなど、様々なアクティビティーを楽しみながら旅をしているお二人。
今回はそんな二人に、どのようにバンライフを送っているのか、車内はどのようになっているのか、バンライフを経験して変わったことなどをインタビューしてきました!
目次
バンライフ・車での暮らしは身近な存在!?
−バンライフをしようと思った経緯やきっかけは?
バンライフにはもともと興味があったんだ。
大学を卒業してから友達と四駆で南アフリカに行くのが最初の予定だったんだよ。その少し後、彼女と一緒になったから、ダマリスと一緒に旅に出ることにしたんだ。
最初キャンピングカーで両親も一緒にプチ旅行をしてみたんだけど、大人数だったのもあって狭いし、両親とシェアするのもめんどくさく感じてきてバンを買ったんだ。
大学を卒業してからすぐアジアに向かって出発する予定でいたけど、大学をやめてメカニックの専攻に変更。その間にお金も貯めて、終わり次第出発しようということになった。
それまでは週末や休暇を使ってドイツ国内やフランス、チェコ、オランダなどへ週末バンライフを楽しんでいたよ。
もともとはバンライフをしたかったというより旅がしたかったんだけど、週末バンライフ中に出会った他のバンライファ―やバンライフしている友達に触発されて、バンライフを始めることになったって感じかな。
愛車はDIYしたフォルクスワーゲン
-車の紹介をお願いします。
1994年フォルクスワーゲンLT4。トランスポーターシーリーズの大きいバージョンだよ。
その時代では最もパワフルなエンジンで、2.4Lターボエンジンのディーゼル車。
エンジンはフロントシートの間にあるから、フロントのエンジンルームがなくて、ボンネットはバスみたいになっているよ。
車のサイズ的に小さなバンに見えるかもしれないけれど、エンジンルームが無い分リビングエリアになっているから車内は広いんだ。
車内は高さ183cmあるから立つのにも充分。床は2枚仕立てにしていて、板と板の間に隙間を空けて空気を送れる仕組みになっているんだ。
後部のダイネットをベッドにも出来るから寝る場所は2カ所。
上のベッドを使わない時は押し上げることが出来るから、その分リビングルームを広く使えるんだ。
サイドドアの傍には小さなキッチン。
フロントシートは回転するから、リビングルームの椅子としても使えるよ。
テーブルと座る場所をフル活用したら大人6人は余裕で座れるようになっているんだ。
ベッドに2人、後部もベッドにすれば1人(小さな人だったら2人)は寝られるスペースがある。
それから、2kwのディーゼルヒーターをテーブルの下に設置したんだけど、これはバンライフですごく重要!塗れた靴や服、わんこを乾かすのに重宝しているんだ。
ベッドの下には洗濯物を干せるラインがあるから外に干す必要がないんだ。でも、干してる間はソファが使えないから横たわっていなくちゃいけないけどね。
あと、引き出し式の小さなトイレもあるよ。
フロントシートの上の部分には、カイトボードや冬服、追加の寝袋とか、普段使わない物を収納出来るスペースにしている。
リビングルームにはアウトドアギアやバックパック、靴、車のスペアパーツなど、バンライフに必要なモノが全て揃っているよ。
テーブルの脚になる部分も収納ボックスになっていて、スイーツ、チップス、ワイン、ビールとかを収納。欲しい時に簡単に取り出せるようになっているんだ。
あと、特にドイツでは重要なんだけど、ほとんどのバンが2人しか乗れない仕様になっているなか、合法的に4名が座れるシートがあるのも大きいね!(シートベルト付き座席)
道路の整備が整っていない国に行くときのために、タイヤも大きいものに変えてリフトアップもしたんだけど、これもしていて良かったよ。
ソーラーパネルとセカンドバッテリー100wも設置しているよ。前からソーラーパネルは1枚ルーフに付けていたけど、今はもう一つ動かせるタイプのソーラーパネルを追加した。
プラグ式で5mのケーブルなんだけど、これは旅をしている途中で欲しくなったアイテムの一つなんだ。
自分の場所をそれぞれ確保できるのは重要!
-お気に入りのポイントは?
2か所あるテーブルと、座る場所と寝る場所が分かれているとこだね!
これはとても重要で、ほとんどのバンがベッドで食べる・仕事をする・寝る・リラックスする、というようになっていて、ベッドにする為の作業も毎回必要でしょ?
バンライフ中、ベッドにいつも座ってなきゃいけないのは嫌だったんだ。
あと、バンで二人で過ごしていて、好きな時に自由に動けないのはほんとうっとうしいからね。
例えば、ダマリスがリビングルームのテーブルでパソコンで仕事をしている時に、僕はお腹がすいたらキッチンで料理作ってもう一つのテーブルに座って食べることも出来るし、片方が仕事中で片方がゆっくりしたい時も、お互いの空間を確保できるのはかなり気に入ってるよ。
あと、他にはクローゼットもとても気に入っている。
中が見やすい様に作ったから何が入っているかひと目で分かるし、ソファをよけたら中のものも簡単に取り出すことが出来る。
そのすぐ上にはたくさんの本を収納出来る棚があって、小物なんかも収納出来るからこれも気に入ってるよ。
それから、ディーゼルヒーターも気に入ってるポイントかな。このバンのコンセプトはすごく気に入ってるよ!
-もしまたバンライフをするなら改善したいポイントはある?
シャワー!あ、でも温かい所へ短期間行くだけなら、今あるシャワーで充分だし、いつどこにいくかにもよるかも。
あと、小さなサイズのシンクじゃなくて、家庭用サイズの大きめのシンクを設置したいな。そしたら洗い物もいっぱい溜めておけるからさ(笑)。オーブンも小さなシンクだと入らないし、洗濯物もできないから……。
あと床暖房だね!ディーゼルヒーターで床も温められるシステムを作るつもりだったけど、まだ途中で出来てないからそれを仕上げたい。
そしたら車内に暖かい空気が回るようになるから、クローゼットの中も暖まって湿気対策にもなるんだよね。
バンライフ中に出会った人や友達からも湿気問題についてはよく聞くし、冬の北欧-30℃で洋服も室内も全部凍たって話も聞いたことがあるよ!
本格的な冬のバンライフも体験したいから、車内全体を暖めるのは重要なんだ。リビングエリアだけじゃなくて車内全体をね!
バンを作る時にどこにいくか、どの季節に行くかによって改善ポイントも変わってくるから、全部の季節に対応できるようにとは言えないかな。
ドイツから南ヨーロッパ、モロッコ、ジョージアへ・・・
-バンライフでどこに行きましたか?
ドイツから南ヨーロッパ、そしてモロッコ。モロッコからまた南ヨーロッパに戻って、地中海沿岸沿いを走りながらトルコに、そしてトルコからジョージアに行ったよ。
その後カザフスタンに行く予定だったんだけど、冬の時期にジョージアにいてすごく寒くて、バンがその寒さの中正常に動いてくれるか、バンライフを続けられるか分からなかったから戻ることにしたんだ。
だから、黒海沿いルートでブルガリア・ルーマニア・東ヨーロッパを抜けてポーランドへ。バルト海沿いのルート・リトアニア……でコロナになって、この先どうなるか分からなかったから、船で2020年の3月11日にドイツに帰ったよ。帰る選択をして正解だった!
-バンライフで何をしていましたか?
春・夏・秋・冬オールシーズン、ワイルドキャンプを経験したよ。最高気温は47℃で、最低気温はジョージアの-20℃!
-20℃では全部凍ってて、車を動かすのも厳しかった……。
アイドリングが15分以上必要だったし、エンジンオイルは寒さで固まってきてたし、車にとっても良くないと判断して、これは戻った方が良いねってなったよね。
フロントシートとリビングルームの間にウールのカーテンを付けてたんだけど、5~7℃くらい気温が変わるから、フロントシートは凍るほど寒くてもリビングエリアは+の温度を保てて、すごく良かったよ!
フロントシートエリアを暖めるのに毎朝かなりの時間がかかっていたし、これを毎日続けるのは嫌だと思ったなぁ。
カヤックを車のサイドに収納出来るようにして持っていったんだけど、この旅では2回くらいしか使わなかったかな(笑)
スペインやモロッコは暑くて乾燥してて、川の水もなくなってたから夏に南ヨーロッパに行くのはあんまりいいアイデアじゃなかったかも……。そして冬は川が凍ってるし、カヤックはあまり使うチャンスがなかったなぁ。
ルーマニアで出会った他のキャンパーと一緒に、雪の中、山キャンプに出かけたんだけど、その時カヤックを荷物運びのギアとして使ったよ。
テントや寝袋、山の上で夜を過ごすのに必要なギアを全部カヤックに詰め込んで引っ張っていったんだ。ドックスレッジみたいにね。かなりの距離を歩いたよ。帰りはカヤックに乗って雪山を滑り降りながら帰ってきて楽しかったな(笑)。
ほとんどの時間をバンの周りで過ごしていたけど、チャンスがあればハイキングに行こうと心がけてたよ。
だけど天候や状況なんかのタイミングが合わなくて、あまり行けなかったな。
それからカイトサーフィンも楽しんでたよ!
あ、あといっぱいスタックしたね(笑)
他の人の助けを借りないで自分達でスタックから抜け出すのはかなり上手になったよ!
一度だけハイリフトを持ってる人に助けてもらって、旅の終わりの方でハイリフトを買ったんだけど、買った後は使う機会がなかったな。
バンライフ を通して気づいたこと
-バンライフをする前と後で、ライフスタイルや気持ちは変わりましたか?
うーん、難しい質問だね。
バンライフを始めたばかりの時は長い間やりたかったことだし、すごいハッピーだったけど……。旅の途中は、退屈に感じた?なんて言ったらいいんだろう?
お家に住んでいたらやりたい事も何でもできるけど、バンライフ中に何かやりたい事とかアイデアが浮かんでも、実行出来ないからね。
(ダマリス)私はバンライフをすごく楽しんでたわよ!バンライフの経験を経て考え方を変えないといけない事がたくさんあった。
始めに気づいたのが、水を使うのは簡単だけど、水を節約するのがどれだけ大切かってこと。始めはいつどこでシャワーを浴びられるか、どこでお水を汲めるか、そればかりずっと考えてた。
あと、どこにゴミを捨てられるかも常にある問題の一つ。東ヨーロッパに行くほどゴミ問題は深刻だってことを学んだわ。
ゴミは本当にどこにでも捨ててあった。東ヨーロッパはひどかったけど、ゴミの問題なんてなさそうな北欧でも……。豊かな国だし教養もあるからゴミの問題はみんな分かっているはずなのに、木の後ろだったり、隠すようにしてゴミが捨ててあったの。
(サイモン)これは僕たちのライフスタイルを変えたことと言えるかもしれない。他の国をバンライフで周って気付いたことは、例えば食品を買う時、プラスチックでいちいち包装されていないんだ。
フルーツも野菜も包装されずに裸のまま売ってる、お米もね。でも、ドイツではすべてのものがプラスチックで包装されている。貧しい国だからプラスチックで包装していないというわけではなくて、包まずに販売することは可能だってこと。
トルコからヨーロッパに戻って来た時はカルチャーショックを受けたよ!ヨーロッパのスーパーマーケットに行けばなんでも買える。
(ダマリス)シーズンオフの野菜も果物も、その他何でも買えるんだもん、クレイジーだと思ったわ。
(サイモン)それと同時に、今まで当たり前に何でも欲しいものは買えてたって事に気づいたんだ。
国によってはシーズンの物を食べるという選択しかなかったけど、それは逆にいい経験だったな。
この経験は何が欲しいか、何が必要か、どれだけドイツが恵まれているかということを気づかせてくれた。
ルーマニアに入ってLIDL(ドイツのスーパーマーケット)を見つけて、恋しかったトマトジュースを買いに走ったのは今でも覚えてるよ!笑
ライフスタイルで変わったことは、シーズンの野菜やフルーツしか食べないようになったことかな。
あと、ゴミを出来るだけ減らす様に気を付けるようにもなったよ。
それから、保護犬シェルターに寄付している。バンライフ中にたくさんの野良犬が居ることを知ったし、彼らはみんなかわいい!
(ダマリス)私たちもバンライフ中にドックシェルターで犬を引き取ったしね。
(サイモン)犬が欲しい人にはシェルターから保護することをおすすめするよ!
あと他にバンライフで学んだことは、世界中のほとんどの人はとても優しくて協力的で、親切だってことだね!
これからの展望
-これからのバンライフの展望は?
無期限の旅もいいけど、今は仕事もあるし拠点が必要だから最長でも3カ月が限界かな。でも、5年以内にロシアとカザフスタン、タジキスタン、西アジアに行く予定だよ。
でも別のバンで、今のフォルクスワーゲンでは行きたくないんだ。四駆でフォルクスワーゲンじゃない車を考えているよ。
今の車はスペアパーツを手に入れるのも難しいからね。
-3カ月で戻ってくる予定なの?
3カ月バンライフをしたら、どこか車を停めておける場所を見つけて駐車しておいて、自分たちだけいったん戻ってまたそこから旅を続ける予定だよ。
いつかアメリカでもバンライフをしたいんだ!
今はコロナだから予定もたてられないし、お金も貯めなきゃだからいつになるとはまだ言えないけど。車で旅するのが大好きだから、いつかは世界中の大陸をバンで周りたいな。四駆でオフロードの旅が好きだからね!
−最後に、バンライフをするか悩んでいる方へアドバイスをお願いします。
もし二人旅で、旅をしながら仕事しなきゃいけないなら、テーブルは絶対二つあった方が良い。
あと、長い間バンライフをするつもりなら、小さい車はおすすめしないかな。最低でも車内で立てるバンで!そしたら問題ないと思うよ。
それからトイレはあった方が便利だね。特に寒い時はそのありがたみを実感するよ。
あと、車を買う前に何が必要か考えた方が良いね。もしフルタイムでバンライフをするつもりなら大きな車が良いけど、休暇や週末バンライフとかだったら、そこまでこだわらなくてもいいと思う。
もし完璧な快適を求めているなら、バンはやめておいた方がいいよ(笑)。快適を求めるなら豪華なキャンピングカーだね、そして常にキャンプサイトを探す旅になると思う。
どの車を買うか決めるのは、どこに行きたいのか、何をしたいのか、何が必要かを明確にしてからだね。スペアパーツがどこでも手に入る車なのかもとても重要だよ。
旅を続けるうえで予定通りにいくとは限らないから、臨機応変に、柔軟に対応していくことも大切だよ!
※サイモンとダマリスのYouTubeにバンの紹介ビデオがあるので興味のある方はぜひ見てみてください。
ドイツ語ですが、映像を見るだけでもどのようにDIYしたのかとても分かりやすく紹介されています。