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キャンピングトレーラー

『キャンピングトレーラー』ヨーロッパ車とアメリカ車では、実は意外と違う?



車両価格や維持費が安価。普段使いの乗用車でけん引できる。などの理由で、人気上昇中なのがキャンピングトレーラーだ。

キャンピングカーライフの選択肢に入れている人も多いのではなかろうか。

現在日本で販売されているトレーラーはほとんどが輸入車で、国産はごくわずか。

自走式同様、ヨーロッパ系とアメリカ系の2つに分けられる。

今回はそれぞれにどんな魅力があるのか、その違いについて解説しよう。

居室の雰囲気や装備は自走式とほぼ同じだが…?


ヨーロッパのトレーラーの内装

Photo:Hobby Wohnwagenwerk, Ing.



ヨーロッパ車の内装・設備は、

  • 窓が大きく、自然との一体感を楽しむ。

  • 内装はモダンな雰囲気

  • 基本的にバス・トイレ・キッチンはフル装備。


アメリカのトレーラーの内装

Photo:Winnebago ind.



アメリカ車の内装・設備は、

  • 室内は完全空調。気候や環境に左右されず、いつでも快適空間。

  • 内装の雰囲気はカントリー調

  • 基本的にバス・トイレ・キッチンはフル装備。


これらの特徴は、トレーラーであっても自走式とほとんど変わらない。

外観もすっきりとスタイリッシュなヨーロピアンに対し、アメリカンは武骨なイメージで、そのあたりも自走式と同様だ。

ただ、欧と米で決定的に違う点がある。それは「車両」としての性格だ。

引っ張る側の車(ヘッド車という)と、引っ張られるトレーラー側の関係性について、設計思想が全く異なるのである。

一番の違いはヘッド車への『負担』の大きさ


ヨーロッパのトレーラー

Photo:Hobby Wohnwagenwerk, Ing.



トレーラーのスペックには、車両重量のほかに、けん引部の垂直荷重(タン ウェイト)というものがある。つまり、トレーラーとヘッド車を連結したときに、連結部分に対して下向きにかかる重さのことだ。

真横からトレーラーを見てみよう。

ヨーロッパのトレーラー HOBBY

Photo:Hobby Wohnwagenwerk, Ing.



ヨーロピアンは居室部分のほぼ中央辺りに車軸があるのに対し、アメリカンは中央よりやや後ろ寄りに車軸がある。

ヨーロピアンの場合、トレーラーの大小にかかわらず、タンウェイトは75kg前後で設計されており、けん引免許のいらない車両重量750kg以下のトレーラーでも、2軸で車両重量が2t近くもある大型トレーラーでも、それは変わらない。

つまり、ヨーロピアントレーラーを連結した時、ヘッド車のテール部分にかかる重量は、ほぼ成人男性一人分程度、ということだ。

アメリカのトレーラー WINNEBAGO

Photo:Winnebago ind.



一方、アメリカンの場合はどうだろうか。

アメリカンのタンウェイトの設定は「トレーラー重量の10〜15%」。つまり、車両重量が750kgなら80kg前後だが、大型のものだと200kg以上にもなるということ。ヨーロピアンに比べて負荷に大きな差があるのだ。

簡単に言ってしまうと、

  • ヘッド車にあまり依存しないヨーロピアン

  • ヘッド車にもある程度トレーラーの重量を負担させるアメリカン


ということになる。

どんなヘッド車がいいのか


「自分でリヤカーみたいに引くわけじゃなし。関係ないでしょ?」と思うなかれ。

この違いが、ヘッド車選びに大きくかかわってくるのだ。

リアバンパーのところに、75kg程度の大人がひとり、乗ってもさほど問題はなさそうだが、それがふたり、3人となれば(200kgともなれば)、大ごとなのは想像に難くない。

つまりヨーロピアンはあまりヘッド車を選ばないが、アメリカンは引っ張りたいトレーラーの大きさによって、「引くべき車」は変わってくる、ということなのだ。

ヨーロピアンなら、けん引免許不要なものなら1600ccクラスの乗用車でも大丈夫。

2軸の大型トレーラーでも、ガソリン3000ccクラスの車で十分にけん引できる。実際、EU方面では、マツダ・CX-5やベンツEクラスなどで引っ張っている姿をよく見かける。

アメリカンはそうはいかない。トレーラーのサイズによって、かなり慎重にヘッド車を選ぶ必要があるだろう。

そもそもアメリカには、自走式同様『小型軽量』のトレーラーは少ない(フェザーライトなんて謳っていても、1.5tあったりする!)。ということは、少なくともガソリンエンジンで2500ccクラスのパワーは欲しいところだ。

もうひとつ、欧と米の違いを。

連結の方式にも違いがある。アメリカンは「ウエイトディストリビューションヒッチ」を使うのだ。

ウエイト=荷重をディストリビューション=分配するということで、荷重をヘッド車の後輪だけでなく、前輪側にも掛けるような仕掛け。連結作業は少々面倒でヒッチだけでもかなりの重量になってしまうが、走行安定性は高い。

つまり、アメリカンを引くにはやはりそれなりのパワーと、がっしりとした車体が必要だ、ということ。

ぜひモノコックではなく、昔ながらのフレームを持った車を選びたい。

アメリカ車ならフォード・Fシリーズをはじめとするピックアップトラックなど豊富にあるので、やはりアメリカンにはアメリカン、と言えそうだ。もし国産車から選ぶなら、トヨタ・ランドクルーザーくらいしか選択肢は残されていない。

居室の使い心地もさることながら、一番の違いが表れるのは「車両としてのキャラクター」であることがお分かりいただけただろうか。

それぞれ、その国の自動車事情を反映しているともいえる、この違い。オーナーの「車の趣味」がさらに色濃く反映されるのが、トレーラー選びともいえそうだ。