Vantech(バンテック)のキャンピングカーの魅力とは!?【渡部竜生のビルダー列伝 Vol.1】
バンテックは創業30年以上を誇る、日本のキャンピングカービルダーの中でも老舗だ。
ZILを筆頭とした、人気のキャブコンの数々で知られているが、実は軽キャンピングカー「ルネッタ」やバンコンの「マヨルカ」もラインナップに揃える総合ビルダーなのである。
バブル真っ盛りに創業したチャレンジャー
創業は1986年。時代はバブル景気真っ盛りの頃である。
バンコンを自作するための家具キットの販売からスタートし、90年には完成車両のバンコンを発売する。以来、次々とバンコンを発表、95年に初のキャブコンとなる「JB-500」を発売する。このJB-500は今でも愛用している人がいるというから、その完成度の高さがうかがえる。
ちなみにその当時、日本国内でバンコン・キャブコンを製造しているビルダーはいくつかあった。バブル景気に背中を押されて、高額な輸入キャンピングカーが人気を集め、第一次キャンピングカーブームが巻き起こった。
その少しあとの話である。欧米から輸入するキャンピングカーばかりではなく、日本には日本にぴったりのキャンピングカーがあるはずだ、と、各社こぞって新モデルの開発にいそしんでいたのだ。
その頃の顔ぶれは、ロータスRVやセキソー・ボディ、ヨコハマモーターセールスなど、今も活躍するビルダーの数々。その中のひとつだったバンテック。老舗に肩を並べる一社と言って差し支えなかろう。
さてそのバンテックは、今に至るまでに様々なモデルを製造し続けている。
ベース車両も国産車にとどまらず、メルセデスベンツやヒュンダイなどの輸入車を使ったこともある。ボディ形状もバンコン、キャブコンはもちろんのこと、マイクロバスベースのセミフルコンを手掛けたことも。過去には自社製作のみならず、海外からのキャンピングトレーラーの輸入販売をしていたこともある。
およそ、ありとあらゆるキャンピングカーを手掛けてきた、日本市場のチャレンジャーなのである。
人気の秘密は徹底したユーザー目線
そんなバンテックの現在のラインナップを見てみよう。
軽キャンピングカー1モデル、バンコン1モデル、キャブコンが8モデル。
一般に広まっている同社のイメージ通り、キャブコンが主力である。
現在のキャブコンは
- シンプルな内装でリーズナブルな価格のコルドシリーズ
- コンパクトなボディに機能が凝縮されたジル480スキップ
- キャブコンの代名詞ともいえるシリーズ
- フィアットデュカトベースのフラッグシップモデルV670
以上、大きく4系統に分類することができる。
それぞれに個性が異なるキャブコンだが、いずれも共通しているのは徹底したユーザー目線。その時その時のニーズを研究し、きめ細かく応じたモデルを提供し続けていることは、各ラインナップの履歴を追ってみるとよくわかる。
同社のカタログを見るとわかるが、どのモデルも「標準装備」が非常に充実しているのだ。
「必要なものをきちんとセレクト」し、「過不足なく標準化」する。この「過不足なく」の見極めが非常に難しいと思うのだが、それも徹底した「ユーザーリサーチ」のたまものだろう。
およそ必要なものはすべてパッケージされているので、「いろいろ追加していったら、当初の予算を大きくオーバーしてしまった」などということがない。
そういう点も、同社がユーザー目線を大切にしている証拠だと言えるだろう。
生産拠点はタイと山形
バンテックの主要生産拠点はタイ工場と山形工場だ。
FRP製ボディや家具はタイ工場で。それらがコンテナで山形工場へ運ばれ、ボディはシャシーと合体し、家具や各種機器が装備されて完成車となる。
現在の山形工場は2017年に新設されたもので、広い敷地に架装を待つシャシーや、完成車がところ狭しと並ぶ光景はなかなかに壮観だ。
元は大きなスーパーの敷地だったというだけあって、その敷地面積は約4千坪!同じく山形にあった旧工場の5倍にもなる。
生産能力は約50台/月。毎週10台以上の新車が生産されている計算になる。
生産能力をつとめて増強するのも「お客様をお待たせしない」「バックオーダーは恥ずかしいこと」という、頑固なまでの哲学に基づいてのことなのだ。
見据える目線の先はヨーロッパ
バンテックは創業初期から、キャンピングカーの本場ドイツ・REIMO社のパーツを多用してきた。その結果、デザインの方向性はヨーロッパに向くこととなる。特に近年は、設計担当者を積極的に海外視察に派遣するなどして、最新のヨーロッパトレンドを吸収するよう努めているのだという。
その結果は製品に反映され、最近のバンテック車はセンスの良さが際立っている。
家具類の基本デザインはもとより、カラーコーディネートや照明計画の完成度の高さを見ていると、いよいよ日本のキャンピングカー市場も、欧米並みに「女性受け」が大切になりつつあるのだと実感する。現に、同社の広報担当に聞くと「奥さんの一言で決まった」車両は多いのだという。
「グランピング」や「おしゃれキャンパー」などがキーワードになる昨今、センスの良さは今後ますます大切な要素になるだろう。
ヨーロッパ志向のもう一つが、フィアット・デュカトの採用だ。
同社はこれまでフラッグシップモデルとして、大型キャンピングカーVEGAを販売していた。初期は2tトラックをベースにしたキャブコンで、後にトヨタ・コースターベースのセミフルコンになったモデルだが、最新モデルではなんと、フィアットベースの採用に踏み切ったのである。
新しいVEGAを心待ちにしていたファンも、これには驚いた。フィアット・デュカトがヨーロッパで圧倒的なシェアを誇っていることは、私も各所で執筆・紹介してきたので知られていたとは思う。フィアット社が日本市場に魅力を感じている、という動きもあったので、いずれどこかが扱うのでは?と目されていたが、「それをVAGAに持ってきたか…!」というわけである。
日本で作る以上、国産車をベースにした方がなにかと有利なのでは?とも思えるが、あえてフィアット・デュカトを選んだのは、車両の持つポテンシャルの高さだけではないだろう。
もしかしたらこの先のビジョンとして、海外マーケットを見据えているのかもしれない、とひそかに邪推しているのである。