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「サンキューハザード」は違反って本当?本来の意味は?教習所に聞いてみた

ドライバー同士のコミュニケーションは数多く存在します。
中でも、車線変更などで道を譲り合った際、譲ってくれた相手の車両に対して感謝の意思を伝えるためにハザードランプを点灯させてお礼をする「サンキューハザード」は誰もが一度は経験したことがあるでしょう。
しかし、ハザードランプを本来の使用目的以外の用途で使うことは違反にはならないのでしょうか?
ハザードランプの役割は周囲に危険を知らせること

ハザードランプの正式名称は「非常点滅表示灯」と呼ばれています。
道路交通法施行令第18条には、「夜間、幅5.5m以上の道に停車、または駐車しているときは、非常点滅表示灯か尾灯をつけなければならない」とされています。
また、スクールバスなどで「小学校などの児童、生徒または幼児の乗降のため停車しているときは、非常点滅表示灯をつけなければいけない」と定められています。
もちろんこれはスクールバスだけでなく、一般客が利用する路線バスやタクシーなども含まれています。
他にも、ハザードという言葉からも分かるように、危険を周囲に知らせるという役割があります。
上記で紹介したような夜間の駐停車時や人の乗降のためだけでなく、駐車場で車を停めるとき、高速道路上で渋滞などでやむを得ず減速するときに点灯させることも、ハザードランプの使い方としては間違っていないと言っていいでしょう。
サンキューハザードは違反になる可能性が高い
では、本来危険を知らせるためのハザードランプがいつ頃から感謝の意思を伝えるコミュニケーションツールとして使われるようになったのでしょうか。
これには諸説あると言われていますが、高度経済成長期の日本で、トラック輸送が活況だった頃、トラックドライバー同士が使い始めたと言われています。
何人かの長距離トラックドライバーに聞いてみても、サンキューハザードは安全な輸送を維持するためには欠かせないコミュニケーションだと話してくれました。
では免許を取る際の教習所ではどのように教えているのか、指定自動車教習所の責任者に話を聞きました。
「ハザードランプの使い方は、危険を知らせるためのツールです。
そのため、感謝の意思を伝えるという善い行いであっても、本来の使い方ではないサンキューハザードの方法などは指導していません。
当然、本来の使い方でないやり方で事故や危険を誘発した場合、違反になる可能性があります。
サンキューハザードに限らず、本来とは違った合図や行動によって危険を誘発した場合は違反になるということを、免許取得前の段階から正しく指導してほしいという警視庁からの通達も来ています。」
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別の方法でコミュニケーションを取ることも大切

©maroke/stock.adobe.com
サンキューハザードは広く一般に認知されているドライバー同士のコミュニケーションであることは間違いありません。
筆者の勤務していた教習所でも、習ってもいないのにサンキューハザードの意味を理解している教習生がたくさんいました。
この点について、別の指定自動車教習所の現役教官は次のように話します。
「サンキューハザードは確かに正しい使い方ではありません。
サンキューハザードに代わる手段として、手を挙げて後続車などに合図を送る方が望ましいという指導を行っています。
しかし、サンキューハザードがドライバー間で広く使われているコミュニケーションのひとつであるということを認識しておくことは重要です。
そのため、学科や技能教習などで、『本来の使い方ではない、違反になるかもしれない』と付け加えた上で、サンキューハザードとは何かという説明をすることがあります。
以前、教習中に車線変更をした際、教習車がハザードランプでお礼をしなかったことに後続の一般車が怒りを露わにし、クラクションを鳴らし続けるなどの嫌がらせ(あおり運転)を受けたことがありました。一般ドライバーの中には、サンキューハザードをやらない車は失礼だ!と思いこんでいるドライバーも少なからず存在するのも事実です。」
サンキューハザードに馴染みのあるドライバーは、道を譲ったからといって、必ず前の車がサンキューハザードでお礼をしてくるものだとは思い込まないようにすることも重要でしょう。
その上で、サンキューハザードがどのようなものなのか理解し、そのかわりに手を挙げるなど、サンキューハザードに代わる行動を取ることで、トラブルのない円滑なドライバー同士のコミュニケーションができるのではないでしょうか。
ライター:室井大和
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