【3年の実体験】ヨーロッパキャンピングカー旅で野生動物に遭遇!注意点と対処法も紹介

日本では近頃、クマの出没や襲撃事件のニュースが相次いでいます。
「もし自然の中で車中泊中に遭遇したら…」と不安に感じる人も多いはず。
実はここヨーロッパでも、キャンピングカー旅で野生動物に出会う可能性はゼロではありません。
私たちも、この3年間の車中泊旅で何度か遭遇し、ちょっぴり怖い思いをしたこともありました。
とくに山岳地帯や森、国立公園では、私たち人間が「彼らのテリトリー」に入っていることを忘れてはいけません。
そこで今回は、夫婦で3年かけてヨーロッパ各地を巡る中で学んだ、野生動物への対策と遭遇時の注意点をまとめて紹介します。
クマやオオカミ、イノシシなどの大型動物はもちろん、見落としがちな小動物まで、自然の中では、いつ何が現れるかはわかりません!
安心・安全な車中泊旅にしてください。
ヨーロッパ各地をキャンピングカーで旅する夫婦

私たち夫婦はキャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを旅しており、気づけばもう3年。
訪れた国は24カ国にものぼります。
南はポルトガル、北は北極圏のノルウェー、そして東はルーマニアまで、広いヨーロッパをじっくり巡ってきました。
街歩きや観光スポットよりも、心を惹かれるのは「自然の中」。
登山などのアウトドアアクティビティが大好きで、旅先では美しい自然や静かな山奥を探しては、車を走らせています。
滞在先も、設備の整ったキャンプ場やRVパークよりも、自然の中で自由に泊まる“ワイルドキャンプ”スタイルを選ぶことが多いです。
こうした旅を続けるうちに、ヨーロッパ各地の自然環境や気候はもちろん、そこで暮らす野生動物との付き合い方にも自然と詳しくなりました。
実際、これまでの旅では、シカやキツネ、イノシシ、オオカミ、そしてクマに出会ったこともあります。
今回は、そんな私たちのリアルな体験をもとに、自然の中で車中泊をするうえで知っておきたい「野生動物との向き合い方」をお伝えします。
実際にキャンピングカー旅で遭遇した野生動物エピソード
クリスマスの夜にオオカミが訪問

それは、忘れもしないクリスマスの夜のこと。
イタリアとフランスの国境付近にあるスキーリゾートの駐車場で、私たちはキャンピングカーを停め、車内でささやかなディナーを楽しんでいました。

料理の香りが広がる温かな車内でくつろいでいると、ふと窓の外に動く影。
「犬かな?」と思った次の瞬間、動きのしなやかさに違和感を覚え、目を凝らすと——なんとオオカミが!
月明かりに照らされた雪原の駐車場に、音もなく現れたその姿は神秘的で、思わず息をのみました。
その夜は他にも数台のキャンピングカーが滞在しており、外でバーベキューをしているグループも。
もしかすると、クリスマスのごちそうの匂いに誘われたのかもしれません。
オオカミはしばらく周囲をうかがったのち、静かに森へと消えていきました。
短い時間でしたが、クリスマスの夜に野生のオオカミと出会うという、貴重な体験となりました。
ノルウェーの北極圏でトナカイに囲まれての車中泊体験

ノルウェーの北極線上に位置するThe Arctic Circle Center(北極圏センター)付近で数日滞在したときのこと。
ここは民家や建物のほとんどない、まさに北極圏らしい静けさが広がるエリアで、トナカイやヘラジカなど野生動物の遭遇率が高い地域です。
数日雨の予報だったため観光は控え、車内でリモートワークをしながらのんびり過ごすことに。
何もない大地にポツンと停めた私たちのキャンピングカーのそばに、思いがけない“お客さん”が、ほぼ毎日のように現れました。
それは、トナカイの群れです!

どうやらこの場所が移動ルートの途中に当たるようで、複数の群れがキャンピングカーのすぐそばを通過。
子どもから成獣までさまざまな個体が見られ、なかでも忘れられないのは真っ白なトナカイに出会えたこと。
群れの中を歩く神秘的な姿に、思わず見とれてしまいました。
真っ白な個体は比較的珍しいようで、まさに自然がくれたご褒美のような瞬間でした。
外に出なくても、車内から野生の営みを間近に感じられる、そんな贅沢で特別な時間になりました。
深夜のドロミテで聞こえた“獣の声”。クマ!? 山男!?正体不明の声にヒヤヒヤ体験

イタリア、ドロミテの山岳エリアで車中泊していた夜のこと。
人けがまったくない場所に車を停め、星空を眺めながら過ごしていました。
周囲にほかの車中泊者はおらず、静寂の中の理想的なワイルドキャンプ——のはずが…。
夜更け、突然、車外から低い唸り声——「グウォォォー…ウォォォー」。
耳を澄ますと、声はあちらこちらから響き、まるで車を取り囲んでいるかのよう。

聞き覚えのない音に「これ、なんの動物?」、「山男でもいるの?」と不安が募り、外へ出る勇気も出ないまま、緊張と恐怖の中でいつの間にか眠ってしまいました。
翌朝に調べると、正体はヨーロッパアカシカの雄の鳴き声だったことが判明。
ヨーロッパ最大級のシカで、9月〜10月の発情期には、雄が独特の低いうなり声で鳴くのだとか。
シカがあんな恐ろしい声を出すとはビックリです。
あの夜の「山の魔物のような鳴き声」は、きっと一生忘れない体験です。
車中泊中に遭遇する可能性のある動物たち
出会う可能性がある大型動物

自然では、思わぬ遭遇があります。
可愛くて近寄りたくなりますが、近づかない・餌を与えない・食べ物やゴミを外に出さないのが基本です。
・ヒグマ:通常は臆病で人を避けますが、子連れ・採食中・驚かせた場合は防衛的に攻撃の恐れあり。
・オオカミ:基本は人を避けます。群れで行動することもあり、襲いかかってくることも。
・イノシシ:夜間に活動し、残飯やゴミの匂いに誘引。驚かせると突進してくる場合があるため要注意。
・シカ類:一見おとなしいが、繁殖期の雄は角で威嚇してくることも。また、道路へ飛び出し車との接触事故も多く、注意が必要です。
見落としがちだけど注意が必要な小型動物たち
・ヘビ類:地域によっては毒ヘビも生息しています。テント設営時やキャンプチェアに隠れていることもあるので注意が必要です。
・ネズミ:キャンピングカーの大敵!換気口などの小さな隙間から入り込み、食料や配線をかじられ大きな被害になることも。
野生動物に遭遇したときの注意点と対応方法

自然の中で車中泊中は、私たちは動物たちの住処に「お邪魔している」という意識が大切です。
野生動物と安全な距離を保ち、無用な接触や刺激を避けることが、安全で快適な車中泊旅へとつながります。
動物を寄せ付けない!ゴミ・食べ物の管理は最重要ポイント
野生動物は「匂い」に引き寄せられます。
以下を徹底しましょう。
・ゴミはすべて持ち帰り、何も残さない!
・食べ残し、調理済み食品を屋外に放置しない。
・ゴミ袋は車外に出さない。密閉容器に入れて車内保管。
・洗い物の排水にも注意!排水は外に垂れ流しにしない。
・食料は見せない、匂わせない。窓から見える場所に置かず、匂いが漏れにくい密閉式ボックスや冷蔵庫、クーラーボックスに入れて保管する。
野生動物に遭遇したときの対処法
絶対に食べ物を与えない!
一度でも食べ物を与えると「人間=食べ物」と学習して警戒心が薄れ、積極的に近寄る・奪おうとして攻撃的になる恐れがあります。
自力採食の能力が衰えたり、繁殖サイクルや移動ルートにも影響を与える可能性があるので、絶対に食べ物を与えないようにしましょう。
驚かせない、刺激しない
大声や急な動きは厳禁。
動物がこちらに気づいていないなら、静かにその場を離れるか、車内から様子を見るようにしましょう。
距離を保つ
撮影目的で近づかない。
とくにクマやイノシシ、オオカミ、子連れは非常に警戒心が強く、危険度が高いです。
音を立てず、少しずつ距離を取るようにしましょう。
車内や安全な場所へ避難
車はシェルターになります。
危険を感じたら落ち着いて車内へ戻るのが一番です。
最近はドアを開けて侵入するクマもいるので、鍵もしっかりと閉め、必要に応じて避難をするようにしましょう。
車中泊時の注意点
事前調査

その地域の野生動物の出没情報や、国立公園・自然保護区のルール(車中泊の可否や焚き火・ゴミなど)を確認する。
日没前チェック
停泊場所の周囲を確認し、日が沈む前に、動物の足跡、糞などの痕跡がないかを見る。
夜間の行動
夜はできるだけ外に出ない。
食べ物とゴミは密閉して車内保管、ドア・窓は施錠し、外にものを置きっぱなしにしない。
私たちが常備している「野生動物対策グッズ」
クマよけスプレー(ベアスプレー)
常にすぐ手が届く位置に常備。
出現率が高いエリアでは車中泊時だけでなく、ハイキング時も携帯します。
使用時は風向きに注意し、誤噴射防止ロックを確認。
国・地域、国立公園によって所持・使用の規制があるため事前に確認を。
音の出るアイテム(クマ鈴・ホイッスル)
クマ鈴、ホイッスルなどを登山や散歩時に携帯し、自分の存在を知らせて回避につなげます。
センサーライト(モーションセンサー付きライト)

キャンピングカーの外に設置し、夜間に動物が近づいた時に自動で点灯するため、不審な動きにすぐ気づくことができます。
まとめ・マナーを守って安全で楽しい車中泊ライフを

車中泊旅は、広大な自然を満喫できる最高な旅のかたち。
一方で、そこに生きる野生動物とどう向き合うかがとても重要なテーマでもあります。
自然の中では、私たち人間は「お客さん」であることを忘れずに。
だからこそ、驚かせない・近づかない・食べ物を与えない・汚さないといった基本的なマナーと対策を意識することが、動物たちの命も自分たちの安全も守れます。
自然を尊重しながら、安全で心に残る車中泊旅にしましょう。