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近頃見かけるポータブル電源用の走行充電器ってどうなの?
最近ポータブル電源を新調し、その際に以前からずっと興味のあったポータブル電源用の走行充電器も取り付けた。
しかし、周囲の人達にこの話をすると、案外「何のことかわからない」という人が多かった。
この記事では、走行充電や走行充電器について、基礎的な話をしていきたいと思う。
走行充電とは?
自動車のエンジンを始動するにはセルモーターを回す必要があり、走行中はプラグのスパーク・ライト類の灯火・エアコン・オーディオ・ナビなど、多くの電力を必要とする。
そのための電力を蓄えておくのがバッテリーだが、当然ながら電気を使ったら充電しなければバッテリーは空になってしまう。
しかし、内燃機関のエンジンで走る自動車には、エンジンの回転を利用して発電する「オルタネーター」というものが備わっていて、走行していれば(エンジンが回っていれば)バッテリーに充電され続ける仕組みになっている。
もしこのシステムがなかったら、燃料の残量確認や給油に加えて、バッテリーの残量チェックと充電という作業も必要になり、自動車を動かすことが大変面倒になってしまう。
このように、オルタネーターは自動車にとって非常に重要でありがたい存在なのだが、その発電能力についてAIに訊いてみたところ、「新車時に搭載される全ての電装品を賄い、さらに10~15%程度の予備電力を持たせるように設計されている」とのことだった。
走行充電とは、その10~15%の予備電力を利用して、サブバッテリーやポータブル電源のバッテリーを充電することを指す。
ポータブル電源用の走行充電器とは?
走行充電の仕組みを簡単に説明すればこういうことなのだが、もし単純に自動車のオルタネーターにサブバッテリーやポータブル電源を繋いだだけの状態だったとしたら、肝心な自動車のバッテリーに十分充電されなくなってしまうことや、エンジン停止中にサブバッテリーやポータブル電源が自動車のバッテリーに蓄えられた電力を奪ってしまうようなことも起こり得る。
それを人間が管理するとなると、走行中もバッテリーの状態を気にかけなければならないし、エンジンを止めたら毎回忘れずにサブバッテリーやポータブル電源への通電をカットしなければならない。
そんなことでは大変なだけでなく非常にリスキーだ。
走行充電器が必要な理由
そこで必要になるのが、発電中(エンジンが回っている最中)は自動車のバッテリーへの充電を優先し、エンジン停止中はサブバッテリーやポータブル電源への給電を自動的に停止する装置だ。
つまり、自動車のバッテリーから電力を奪ってしまわないように制御してくれる仕組みを備えた機械――それが「走行充電器」だ。
これまでもキャンピングカーのような、サブバッテリーを利用する電源システムを備えた車には、こういった走行充電器が一般的に搭載されていた。
しかし、導入するには相当な知識や技術が必要で、素人がDIYで取り付けるにはハードルが高かった。
走行充電器は、ポータブル電源のように“誰でも気軽に使える電源”というよりは、キャンピングカーなどの電源システムの一部として組み込まれる「隠れた機器」というイメージが強く、見えない場所に設置するのが基本多かった。
最近はポータブル電源用走行充電器が登場

しかし、最近ポータブル電源メーカーが「ポータブル電源用の走行充電器」を製品化するようになってきた。
私が選んだ走行充電器はJackeryのDrive Charger 600Wなのだが、この機器は車内に設置しやすいスッキリまとまった形状をしていて、入力ケーブルや出力ケーブルなども揃ったキットとして販売されている。
JackeryのDrive Charger 600Wの詳細はこちら
もしキット化されていなければ、配線や接続だけでなくケーブル類も自分(または業者)が用意しなければならず、安全で使いやすいケーブルの選定だけでも案外難しい。
しかし、このキットに付属する入力ケーブルは、片側を自動車のバッテリーに繋ぎ、反対側を走行充電器に接続するだけのプラグ式になっている(端子がむき出しではない)。

また、走行充電器からポータブル電源へ出力するケーブルも両側がプラグ接続だ。
ポータブル電源のDC入力プラグはメーカーや機種によって規格が異なるが、Jackeryのポータブル電源で最も多く採用されているDC8020プラグなので、Jackery 1500 Newにはアダプター不要ですんなり接続することができる。

本体へのケーブル接続はすべてプラグ式でスッキリまとまっているため、車室内の見えるところにに設置しても違和感がない。
少し語弊のある表現かもしれないが、従来の走行充電器で構築する電源システムが、設計図もパーツも自分で揃えて作り上げる模型だとしたら、ポータブル電源用走行充電器は、必要なパーツが基本的にすべて揃った組み立てるだけのキットの模型といったイメージだ。
ともかく、ポータブル電源用の走行充電器は、走行充電導入のハードルを一気に下げた存在と言えると思う。
シガーライターソケットからの充電との違い
ここまで読んだところで、「走行充電器などなくてもシガーライターソケットから充電できるのでは?」と思った人もいると思う。
確かにそれも可能で、そのための専用ケーブルをオプションとして用意しているポータブル電源メーカーは多く、標準付属品としている製品もある。
Jackery 車載シガーソケット充電ケーブルの詳細はこちら
シガーソケットのメリット
現在のほとんどの自動車は、エンジンが回っていない時はシガーライターソケットに電流が流れない仕組みになっている。
そのため、ケーブルを繋いだままエンジンを止めても、自動車のバッテリーがポータブル電源に奪われてしまう心配はない。
さらに、走行充電器の価格が数万円するのに対し、シガーライターソケット充電ケーブルは1万円未満だ。
工事の必要もなく、プラグを刺すだけなので手軽に導入できる。
最大の違いは「充電時間」
では走行充電器とは何が違うのか?
簡単に言えば、充電に要する時間が圧倒的に違う。
例えば、Jackery Drive Charger 600Wは名前の通り最大600Wの電力を得られるが、シガーライターソケットからは12V車の場合で100W程度のしか得られない。
充電時間で実に4〜6倍の差が出ることになる。
実際の充電時間の差
車種や走行状態やオルタネーターの余力によって条件は異なるが、例えば容量600Whクラスのポータブル電源の場合、
・走行充電器使用:1時間半の走行で空の状態から満充電
・シガーライターソケット:6時間走行が必要
600Whならギリギリ許容範囲とも言えるかもしれない。
しかし容量が1500Whになると、シガーライターソケットでは15時間走行しなければ満充電できないことになり、これは現実的ではない。
シガーライターソケットは専有になる
以前、私も600Whクラスのポータブル電源を、走行中はシガーライターソケットから、日中の活動中はソーラーパネルから充電して数日間乗り切った経験がある。
ただし、これが成功したのは以下の条件が揃っていたからだ。
・走行距離が長かった
・天候が晴天続きだった
・夏で太陽高度が高く、車のソーラーパネルの角度の問題がなかった
また、シガーライターソケットをポータブル電源の充電に使ってしまうと、その間はスマホ充電など他の用途に使えなくなってしまう(負荷が大きいため、分配ソケットは使用しない方が良い)。
シガーライターソケットからの充電は、よほど小容量のポータブル電源でもなければ、現実的には補助程度にしかならない。
メインの充電方法として期待するものではない、と考えた方が良いということだ。
自分のポータブル電源に適した走行充電器を選ぶ

現在、ポータブル電源用の走行充電器はJackery・EcoFlow・BULETTIなど数社から販売されている。
「使用するポータブル電源のメーカーを選ばない」と汎用性を謳っているメーカーもあれば、「自社製品専用」と明記しているメーカーもある。
では、どのメーカーの製品を選んだら良いのか?
私は使用しているポータブル電源のメーカーと走行充電器のメーカーを統一するのが得策だと思っている。
その理由はいくつかある。
同一メーカーを選ぶメリット
相性がいい
同じメーカーであれば、そのメーカーのポータブル電源での使用されることを想定して作られているため、相性も良いはずだ。
ケーブルやプラグが適合しやすい
「ポータブル電源用の走行充電器とは?」の項目でも書いた通り、ポータブル電源のDC入力プラグはメーカーや機種によって異なる。
変換プラグを介さず使えるのがベストだが、同じメーカーの製品であれば、
・ポータブル電源に合ったDC入力プラグ付きケーブルがキットに含まれる
・同一メーカー内でプラグ規格の異なる機種が合っても、専用変換プラグが用意されている
これにより、煩わしさが大きく軽減される。
説明書が理解しやすく、誤接続のリスクが低い
同一メーカー品同士なら、説明書も判読しやすく、配線間違いや使用法の誤りも起こりにくい。
異なるメーカーを組み合わせる場合の懸念点
私自身、あまりこういうことを考えて物を購入するタイプではないのだが、違うメーカー同士の組み合わせで使用すると、万が一トラブルが起きたときにメーカー間で責任を押し付け合う可能性がある。
一方で、「自社製品専用」と謳っているメーカーの場合は、「他社製品と組み合わせての使用で事故が起きても責任を負わない」といった文言が明記されている場合も多い。
これは逆に言えば責任の所在が明確で、メーカー側も対応しやすいということでもあり、購入前の安心材料にもなる。
これからポータブル電源を開く人の場合
以上のような理由から、私は同一メーカー品を選ぶことをおすすめしている。
また、これからポータブル電源を購入し、同時に走行充電器も導入する予定があるなら、走行充電器も揃えているメーカーを選んだ方が良いのではないかと思う。
私はメインで使用するポータブル電源をJackery 1500 Newに変更した際に、走行充電器も導入するつもりだったので、迷わずJackery製を選んだ。
もしそのとき選んだポータブル電源がEcoFlowであれば、走行充電器もEcoFlow製にしていたと思う。
走行充電器はどんな車両でも使用可能か?

オルタネーターは発電能力(アンペア数)の不足は論外として、逆に過剰であっても無駄にエンジンの力を使って燃費悪化の原因となる。
そのため、オルタネーターの発電能力は、その車両に必要な電力に応じて決められている。
一般的に車格が大きくなるほど電力消費量が増える傾向があるため(車格が全てではないが)、車格が大きいほど発電能力の大きなオルタネーターと大容量のバッテリーが搭載され、小さければその逆になる。
そして先ほど書いた通り、オルタネーターの予備電力は「何アンペア」ではなく「パーセンテージ」で決められているようなので、車格の大きな車と小さな車では余力が異なることになる。
小型車では余力が不足する可能性も
要するに、車格の小さな車両は予備電力があまり多くない可能性があり、ポータブル電源を十分に充電できる余力がない可能性があるということだ。
また、オルターネーターが古くなって劣化すれば発電能力は落ちていくし、プラグコードなどの劣化でもロスが増えるため、いつまでも10~15%程度の予備電力があるわけではない。
走行充電器には無理してポータブル電源に充電しないような仕組みが備わっているようなので、装着しても心配する必要はないのかもしれない。
それでも「無理は禁物」であり、装着しても思ったような結果が得られない(ポータブル電源にあまり充電されない)といったケースも起こり得る。
劣化や車種によっては対策が必要になることも
オルタネーターやケーブル類が劣化している場合、それらの交換が必要となる可能性もあるし、車種によってはオルタネーターをアップグレードしなければならないこともある。
実際、巨大パワーのオーディオを搭載する車や、大容量のサブバッテリーを積むキャンピングカーを作る際に、オルタネーターの強化は珍しくない。
ただし私は自動車整備士でも電気技師でもないため、このあたりのことについて無責任なことは言えない。
よって、ケースによっては購入前にメーカーや信頼できる自動車整備士に相談するのが良いとだけ言っておくことにする。
私の車両での例

参考までに、私がJackery Drive Charger 600Wを装着したのは2,500ccガソリンエンジンのニッサンキャラバンだ。
比較的大きなエンジンでバッテリー容量も大きいため、オルタネーターの余力も多いのではないかと思う。
ただ、2010年製で車齢は若くない(重課税される車齢)ものの、これまで充電不足を感じたことはなく、結果は後述するがポータブル電源も順調に充電できた。
少なくとも、私の車両では問題はないようだ。
走行充電器の実力
装着したJackery Drive Charger 600Wは、先述の通り最大600Wの電力をポータブル電源に供給できる性能を持っている。

取り付けてすぐ、ポータブル電源の入力数値を確認していたところ、エンジンがアイドリング状態でも400W 近く出ていた。
走行中はエンジンの回転数がさらに上がるので、当然それ以上の電力が得られることが想像つく。
実際の結果
まだ一度しか実験していないのだが、結果は以下の通りだった。

まず充電したポータブル電源は容量1,536WhのJackrey 1500 New。
残量50%の状態(≒768Wh)から走行充電を開始した。
よく行く場所までの片道28km、35~40分の道のりを往復したところ、残量は85%(+35%)になっていた。
・1時間あたり:約430W
・56kmの走行で:537.6W(1536Whの35%)
という計算になる。
その後、ポータブル電源を全く使用せず(もちろん追加の充電もせず)に、2日後に同じ場所まで走行した際、目的地に着いた時点で残量は100%になっていた。
片道28kmの「1往復半」なので、距離にして80km以下、走行時間にして100分程度で、残量50%(768W)が満充電になった計算だ。
実際の旅を想定した場合のシュミレーション
私の住む房総半島南部から少し遠くへ行こうとすると、アクアラインを渡ることが圧倒的に多い。
その場合を例にしてみると、
・出発時に残量50%でも、ちょうど東名の横浜町田ICに到着する頃には満充電
・ほぼ空の状態で出発しても、足柄SA(家から約2時間半)に着く頃には満充電
Jackeryの説明書きには基本は交流100Vからの充電で、走行充電器はあくまで補助というような記載があったが、これなら家のコンセントから充電する機会がなくなりそうだ。
私の使用スタイルとの相性の良さ
容量1,536WhのJackrey 1500 Newを選んだのは少し余裕を持ちたかったからだが、実は私は600Whクラスでも困ったことはほとんどない。
そもそもポータブル電源登場以前に長く車中泊をしていたので、便利さには慣れてしまったとはいえ、「ポータブル電源なしでは困る」というほどでもない。
さらに、旅に出れば1日に100分以上、または80km以上走行するのはごく普通のことだ。
平均的にこれだけ走るなら、永遠に他の充電方法を使わずに旅を続けられてしまう。
凄すぎる。
取り付けを自分で行うか業者に依頼するか
ポータブル電源用の走行充電器の登場によって、走行充電器導入のハードルが格段に下がったことは先述した通りだ。
また、走行充電器の取り付けには資格が必要というわけでもなく、板金や木工のような特別な技術力の必要な作業でもない。

しかし、「誰にでも簡単に取り付けられる」などとは決して言えない。
Jackeryも基本的に取り付けは専門業者に依頼することを推奨している(他のメーカーがどうなのかはわからない)。
実際、少しの油断や知識不足によってショートや感電の危険があり、失敗すれば少なからぬ損害を被る可能性もあるなど、大きなリスクを伴う作業であることは確かだ。
説明書だけで誰でもできるわけではない

車種によって諸々条件が異なるため、付属の説明書を読めば誰でも取り付けが可能、ということではない。
とはいえ、私は自分で取り付けを行い、決して難しい作業とも思わなかった。
しかし、実際にやってみて逆に、誰にでもすすめられることではないことも実感した。
走行充電器の取り付けで必要なのは、技術や経験よりも知識、仕組みへの理解、それと工夫をする力とやる気と少しの勇気だと思う。
これらを持ち合わせていれば何とかなる類の作業だが、どれか一つでも欠けているようならDIYはやめておいた方が良い。
自分で取り付けておきながらこう言うと上から目線に聞こえるかもしれないが、安直な考えで手を出すと本当に危険で、色々な意味でリスクが大きい。
そのための注意として言っているので、誤解しないでいただきたい。
業者に依頼する場合の注意点
不安な人や自分で責任を負えない人は、工賃を払ってプロに任せる方が良いと思う。
しかし、専門業者といっても千差万別で、中には信用のできないところもあるので、業者選びも慎重にした方が良さそうだ。
また、技術や知識が確かでも、一般的な車屋さんでは走行充電器のようなニッチな機器の取り付け経験がある人は少ないと思う。
では、走行充電器の取り付けに一番信頼できるのは誰か?
やはり、キャンピングカーを製造している業者、またはキャンピングカーのメンテなどを行なっている業者が最も知識や経験が豊富で安心だ。
ただし、機器の「持ち込み取り付け」に対応してくれるかどうかは業者次第なので、個別に確認する必要がある。
いずれにしても、業者に依頼するのであれば、走行充電器を購入する前に「これを取り付けてもらうことは可能だろうか?」と相談し、概ね工賃がどれくらいになるかなども確認してから購入した方が良いのではないかと思う。
走行充電器は導入する価値があるのか?
まだ一度しか実験しておらず、実際に車中泊旅で使用するのはこれからだが、Jackery Drive Charger 600Wがしっかり実用性のある機器であることは十分証明できた。
少なくとも私にとっては導入する価値が大いにあったのは確実だ。
しかし、一方で一泊しかしない人や、外部電源を利用できるキャンプ場やRVパークを常に利用する人には必要ないかもしれない。
「なんとなくあったら良さそう」ではなく、自分ならこう使う、と具体的に想像してから導入を決断した方が良さそうだ。
今後は、実際に車中泊旅で使用した際の結果などをリポートしたいと思っている。
また、誰にでも自分での取り付けをおすすめするわけではないが、次回は実際に私が取り付け作業を行った様子の記事を書く予定だ。
自分で取り付けができるか否かの参考材料にしていただければと思う。