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ジャパンキャンピングカーショー2020の感想と注目の車種 Vol.1

1月31日から2月2日までの3日間、幕張メッセで開催された「ジャパンキャンピングカーショー2020」に行ってきた。
このキャンピングカーショーのレポートは既にネット上でも何本か目にしているが、今更他と似たような内容のレポートをお届けしたところで何も面白くもない。
そこで、偏見はないけど偏りのある、全くもって「個人的な視点から見たレポート」を数回に分けてお届けしたいと思う。
会場の様子

混雑が苦手な人間だったら、週末ではなく、一番人の少なさそうな金曜日を選ぶところだ。
しかし、今回たまたま金曜日は都合がつかず、混雑しそうな2月1日土曜日に行くことになってしまった。それも珍しく電車で。
混雑は予測していたけど、海浜幕張駅から歩いている最中はそれ程人が多そうな気配を感じることもなく、会場に着いてみるとチケット売り場もそんなに混雑しているわけでもなかった(理由は前売り券を購入していた人が多かったからのようだが)から、ちょっと安心していた。
しかし、会場の入り口へ続く人の列を見てビックリ。
列の最後尾がどこにあるかわからない。建物の連絡通路まで結構な距離を歩いて行くとようやく「最後尾」と書かれたプラカードを発見。
結局会場に到着してから入場するまで10分くらいかかったと思う。
人の多さに、こんなにキャンピングカーへの関心が高まっているのかとまずは驚く。
そして、列に並んでいる人たちに当てはまる共通点などが少ないことにまた驚く。年齢も性別も雰囲気もさまざまなのだ。
これはすごいことだと思う。イベントは内容がニッチであればあるほど、集まる人のタイプや雰囲気にも共通点や傾向など特徴が現れることが多く、集まった人たちの雰囲気で何関係のイベントなのかおおかた想像がつくことも多い。
キャンピングカーも、まだどちらかと言えばニッチ系だと思っていたのだけど、さまざまなタイプの人たちが並んでいて、見ただけではまるで何の集まりか想像がつかない列なのだ。
キャンピングカーは、もはや特定の層の人たちが興味を示す特殊なものなどではなく、あらゆるタイプの人たちから注目や感心を集める一般的な存在となっているようだ。自分もその列に加わりながら、そんなことを実感した。
憧れのFiat Ducato(フィアット デュカト)

顔や雰囲気は昔のアメ車のVANの方が好きだけど、私が現在最も興味をそそられる車がフィアットのデュカトだ。
だから余計目に付くのかもしれないが、デュカトをベースとした車両が多かったことが印象深かった。それも『右ハンドル』を多く見かけた。
少し前までは、需要の多い乗用車でも輸入車には右ハンドルの設定がない車種も多かったし、あってもわざわざ左ハンドルを選ぶような人もいたが、現在乗用車の場合は、ヨーロッパ車でも右ハンドルが当たり前になっている。
しかし、輸入キャンピングカーの場合は、イギリスから輸入した車でもなければ、右ハンドルを選べる機会は少なかった。
世界的に見ると、例えば右側通行のアメリカでは右ハンドルの車が原則登録できない(25年以上経った古い車なら登録できるようだが)ように、道路の外側に運転席がある車の走行は原則的に禁止されている国が案外多い。
しかし、日本はどちらかと言えば何かと車に関する法律が厳しい割に、なぜか左ハンドルには寛容だ。明確な理由など知らないが、安全より経済面でアメリカへ忖度することの方が重視されているからかと疑ってしまう。
私も実際に左ハンドルの車を持っていたことがあり、左側通行の日本でも慣れてしまえば問題ない気もしていたが、やはり左側通行であれば右側に運転席があった方が安全だと思う。
輸入キャンピングカーに右ハンドル車が増えるのは大変良いことで、これもキャンピングカー普及の証しの一つだと思う。
デュカトベース定番のレイアウト

ところで、デュカトベースのキャンパーにはバンコンとキャブコンどちらもあるが、室内のレイアウトは似たものが多い。と言うよりメーカーは色々あるが、以下1.~5.が定石のようになっている節すらある。

- 運転席と助手席が回転して後ろを向くようになっている。

- 回転して後ろを向いた運転席と助手席とテーブルを囲むように二人掛けのシートがサイドドアと反対側に配置されている。

- 二人掛けシートの後ろがバスルーム(シャワー・トイレ)
- 二人掛けシートの反対側にはギャレー。

- 最後部が横向きのベッドで、その下が物置。
などだ。もちろんこれとは違うものもあるし、各々のメーカーで内装や雰囲気は違うが、これがおおかたのデュカトベースのキャンパーの定番レイアウトだろう。
私は、このレイアウトが非常に合理的で良いと思っている。
そして、ボディーに手を加えて広くしたキャブコンタイプも快適そうであるとは思うが、基本的には元のボディーのまま架装したバンコンタイプの方が、個人的にはデュカトベースの場合は色々な意味で好ましく思う。
デュカトのVANは全長と全高の違う数種類のボディーがラインアップされていて、長さは最も短い5m弱から約5.4m、約5.9m、6.4mまで4種類のバリエーションが揃っているようだ。
そして、車の大きさなどによって定番レイアウトからバスルームが省かれていたり、シートが追加されたり後部のベッドが二段ベッドになっていたり、ポップアップルーフの追加や、キャブコンの場合はバンクベッドが追加されていたりしている。
デュカトベースのキャンピングカー

これはAdria(アドリア)の車で、定番レイアウトの後部のベッドが収納できるようになっていて、バイクなど大きなものや大量の荷物を積むことができるようになっているバージョンだ。
これは頼もしい。倉庫代わりにもなりそうなスペースだ。

こちらはHymerの「Sydney(ハイマー シドニー)」。
デュカトで最も短いボディーをベースにしていて、全長は4,960mm。私のE25キャラバン スーパーロングと変わらない長さだ。
5mを切っているから駐車場の長さ制限に引っかかりにくく(コインパーキングなどは5mまでとなっているところが結構ある)、フェリーも5m未満の料金で乗ることができる。
ハイルーフではなくポップアップルーフ仕様としてあるため、全高は2,350mmに抑えられている。そのため、ハイルーフ仕様(デュカトのハイルーフは、最低でも2,600mm以上になってしまう)より入れる屋内駐車場も多い。
全幅は2,050mmあるから、定番レイアウトの最後部の横向きベッドの長さは大抵の人が余裕で寝られる1,970mm(幅は1,350mm)ある。
そしてポップアップルーフ部分にも2,020 x 1,500mmのベッドが展開されるため、大人4人が無理なく就寝できるスペースが確保されている。
短いボディーでハイルーフではないためバスルームはないが、トイレやシャワーの必要性を感じず、就寝できる人数は多い必要のある人にとっては、現実的に大変使いやすい非常に魅力的な車なのではと思う。
ただ一つ多くの人にとってあまり現実的でない点は価格(標準仕様が消費税込みで¥9,460,000)だけ。高級キャンパーのHymerだから仕方がないと言えば仕方がないが…。

他にHymerのデュカトベースのバンコンには全長が5,410mmの「Free 540」と5,990mmの「Free 600」と「Free 602」があり、Freeはハイルーフでどれもバスルームがあり、ポップアップルーフはオプションとなっている。

同じHymerのキャブコン。幅はバンコンより広く全幅2,220mmとなるが、この車の長さは6mを切っているから、コースターやシビリアンのバスコンよりは短い。
このExsis-tシリーズには6m未満から7mを超えるものまで豊富なバリエーションが揃っている。

Sunlightの「Cliff 540(サンライト クリフ540)」は、長過ぎないことをアピールするディスプレーがされていた。
Hymer Sydneyよりは長くなってしまうが、十分使いやすいサイズ(全長5,410mm 全幅2,050mm 全高2,605mm)だ。
同じ5,410mmボディーをベースにした車には、他にHymer「Free540」、Roler Team「Livingstone K2」、Adria「Twin」などがある。
ベースが同じだからサイズも同じだが、室内もほぼ同じレイアウトとなっている。
十分な荷物を積むことができて、手間が掛からずすぐに寝られる独立したベッドルームがあって、ちゃんと使えるバスルームがあって、長過ぎない車。
この全てを網羅しているのがデュカトの5.4mボディーベースの定番レイアウトのキャンパーなのではと思う。
話題の新型ハイエース

新型ハイエースは何かと話題になっていて、私も気になる車ではある。
柵のある一段高いところに置かれていて、触るどころか中を覗くこともできなかったが、Toy Factoryからポップアップルーフを備えた輸出用の新型ハイエースが参考出品のような形で展示されていた。
ゴージャスなパッセンジャーバンは日本でも「グランエース」という名前で発売されることが、既にトヨタから公式発表されているが、商用車バージョンや特装用ベース車の発売予定は今のところ未定なようだ。
グランエースは最低でも600万円以上するみたいだから、グランエースをベースにほとんど内装を作り直すような本格的な改造を施すのはコストの無駄が多く、現実的ではない。
新型ハイエースベースのキャンピングカーに興味を抱く人も多そうではあるが、特装用ベース車が発売されなければ、本格的なキャンピングカーの登場はどうなのかなといった感じは否めない。
また、短いボンネットのある形のVANということで、デュカトと似たタイプの車両として扱われそうだが、グランエースはFRだから、デュカトやニッサン バネットのように低床にすることはできない。

そして、デュカトはエンジン横置きFFで正真正銘ノーズが短い。
また、ダッジやシェビーなど古き良きアメ車のバンも新型ハイエース同様にFRのエンジン縦置きレイアウトだが、短いノーズに収まりきらないエンジンは、運転席と助手席の間に大きく張り出すことで、室内長を稼いでいた。

それに対し新型ハイエースは、この手の形の日本車によくあるように、外に張り出した部分が短くて一見ノーズの短い車だが、フロントガラスのスラントが強く、実際にはドライバーズシートから車の先端までの長さが結構長い。上2枚の画像を比べると一目瞭然だ。
よって、室内高でデュカトより不利なだけでなく、有効な室内長もデュカトや古き良きアメ車のフルサイズバンのようには長くはなさそうなことを残念に感じてしまう。
あまり好意的ではないと思われるかもしれないが、これが新型ハイエースに対して抱いた個人的な感想だ。
今年も軽キャンパーが人気

軽キャンパーの展示も多かった。
軽自動車は車体の価格のみならず維持費なども大きな車より大幅に安い。またキャンピングカーをセカンドカーとして考えた場合も、維持費や駐車スペースなどの負担が小さくて済むことは大きなメリットとなる。
そういったこともあり、軽キャンパーは人気が高く、どのブースも盛況だった。
また来場者の中にはキャンピングカーに興味はあるけどおぼろげで、まだ現実味のない人も多くいたと思う。
しかし(勝手な想像の域を脱しないのだが)、軽キャンパーや小型のキャンパーを見ている人は、現実的な選択肢として熱心に見入っている人が多いような気もした。
軽のイチオシはN-VANか
現在、軽のバンを製造しているメーカーはスズキとダイハツとホンダの3社のみ(スズキとダイハツは他のメーカーにOEM供給もしているが)となってしまった。
そして、スズキ(エブリイ)とダイハツ(ハイゼット)は、どちらもオーソドックスなシート下にエンジンの収まるFRレイアウトだが、ホンダのN-VANはボンネットの下にエンジンの収まるFFレイアウトであることが他の2車と大きく違う点だ。
FFレイアウトは室内高を高くとれる点では有利だが、小さいながらもエンジンの収まる部分の張り出しがあるため、エブリイ・ハイゼットと比較すると荷室の長さでは不利になってしまう。

それをカバーするためにN-VANは後部座席も助手席も全て床下に収納することで、長尺ものを収納できる長く平らな床を作れるようになっている。
その運転席以外全て平らになる床と、助手席とスライドアドアの間にセンターピラーのない大きな開口部がN-VANの大きな特徴として取り上げられることが多いが、キャンピングカーとしての使い心地を考えた場合、実は高い室内高こそが他の2車とN-VANとの絶対的な違いであると私は思っている。
床全面をベッドにしたエブリイやハイゼットを見て私がよく思うことは「寝るとき荷物はどうすんだろう?」だ。
展示車を見ていると、魅力的な内装の装備とかに目が行きがちで、荷物の置き場について考えることを忘れてしまう人も少なくないのではないかと思うのだが、実際に車中泊をする場合には荷物の置き場は非常に重要だ。
エブリイとハイゼットはハイルーフでも室内高が125cm未満しかない。マットの厚みなども考慮した上で中で座ることを考えると、この高さで床下に収納のあるベッドを作ろうと思った場合、ポップアップルーフでもなければ床下収納の高さは20cmくらいまでが限度ではないかと思う。
しかし、普通のハイルーフでも室内高が1,365mmあるN-VANなら、同じように考えると30cmの高さの床下収納スペースを設けられることになる。

この高さがあれば、運転席も含めて室内全体を寝室にした場合も、快適に過ごせる室内高と結構な量の荷物を収納しておく床下スペースを確保することが可能だ。
また、1,365mmあると中腰で立つこともできるため、室内で寝っ転がったりせずに着替えをすることなどもできる。
こういった特徴から、実はN-VANは大きな改造をしなくても非常に現実的に使いやすい車中泊カーになる車ではないかと私は思うのである。
次回
といったところで今回はここまで。次回の内容はこのショーの話の続きで、トレーラー、ナイスなアイディア、キャンピングカーを取り巻く環境などについて。