キャンピングカー旅で発見。滑走路を歩いて越境! ジブラルタルで驚いた体験

スペインの端っこに、ぽつんと存在する”イギリス領”のジブラルタルという場所をご存知でしょうか?
日本ではあまり知られていませんが、スペインとポルトガルがあるイベリア半島に位置しながら、通貨はポンド、公用語は英語。
初めて訪れると「ここはスペイン?イギリス?」と、不思議な感覚に包まれます。
ヨーロッパをキャンピングカーで旅している私たち夫婦も、「せっかくだし寄ってみようか」という軽い気持ちで立ち寄りましたが、想像以上に魅力的で、あっという間にその世界観に引き込まれてしまいました。
キャンピングカー旅18カ国目?ジブラルタルに到着

私たち夫婦は、キャンピングカーで暮らしながらヨーロッパを旅しており、2023年に旅をスタートし早くも2年以上が経ちました。
車内でリモートワークしながら、時間やルートに縛られず、まるで”暮らすように旅する”日々を送っています。
都市から田舎、ビーチから山岳地帯まで、さまざまな風景と文化を味わいながら、イタリアを出発点に、スイス、ノルウェー、フランス、スペインなど、これまでに17カ国を訪れました。
そして今回足を運んだのは、スペインの南端にひっそりと存在する「ジブラルタル」。
「スペインの中にあるイギリスで、かなりユニークな場所だよ!」という旅仲間の言葉に心をくすぐられ、実際に訪れてみることに。
スペインにありながらイギリス領という、なんとも不思議なこの場所!
はたして、ここは「キャンピングカー旅での訪問18カ国目」と言っていいのでしょうか?
今回はその時の様子をお届けします。
ジブラルタルってどんな場所・地域?

Gibraltar(ジブラルタル)は、スペインの南端に位置する、面積わずか6.8km²のイギリスの海外領土です。
スペインから徒歩数歩の距離にありながらも、通貨はイギリス・ポンド、公用語は英語。
街中ではジブラルタルナンバーの車が走っています。
赤い電話ボックスやパブが立ち並び、地元の人々は紅茶を飲みながらブリティッシュアクセントで会話するなど、まるでUK(イギリス)感満載です。

でも、地理的にはヨーロッパ大陸のイベリア半島の一部。
すぐ隣はスペイン・アンダルシア地方で、人々は英語とスペイン語を自在に使い分けて暮らしています。
この“ミックス感”こそが、ジブラルタルの魅力のひとつ。

もともとはスペイン領だったこの地域は、1704年の戦争中にイギリスが占領。
その後もスペインとの間で領有権を巡る動きがありましたが、現在では正式にイギリスの海外領土とされています。
キャンピングカーでジブラルタルに入れるのか?

ヨーロッパには「シェンゲン協定」があり、加盟国間では基本的に国境での出入国審査が免除されています。
観光など短期滞在なら、シェンゲン圏内で最大90日間の滞在が可能です。
そのため、車旅していても、国境をスルッと通過できることが多いのですが、ジブラルタルは例外です。
スペインの南端に位置しながらも、ここはイギリス海外領土。
シェンゲン協定にもEUにも属していないため、入国時にはしっかりとパスポートチェックがあります。
さらに注意したいのが、キャンピングカーでの入国ハードルがかなり高いということ。
訪問前に現地情報を調べたり、他の車中泊仲間たちと情報交換をしたところ、以下のような注意点が挙がりました。
・パスポートチェックに加え、車内や荷物検査がある
・入国審査はかなり厳重
・ジブラルタル市内の道路はとても狭く、交通量も多い
・駐車場の数は極端に少なく、大型車には不向き
「物理的には入れるけど、リスクとストレスを考えるとやめた方がいい」という声が多数。
私たちも無理せず、スペイン側に車を停めて、徒歩での入国を選びました。

利用したのは、国境手前のスペインの街「ラ・リネア・デ・ラ・コンセプシオン」にあるRVパーク、アルカイセダ・マリーナです。
広くてアクセスも良く、給水・排水設備も整っていて、眺めも抜群!
有名なジブラルタル・ロックをバックに最高のロケーションで車中泊が楽しめました。
1泊16ユーロと料金も良心的で、徒歩で国境まで約10分。
私たちのようなキャンピングカーユーザーには、まさに理想的な立地です。
飛行機の滑走路を徒歩で横断しながら入国?
審査は厳重

ジブラルタルとの国境は、私たちが利用したRVパークから徒歩数分。
この日は朝の10時ごろに向かいました。
国境ゲートには、徒歩用レーンと車両レーンがあり、徒歩レーンには30人ほどの列ができていました。
ここでは空港と同じようにパスポートチェックがあるため、しばらく列に並ぶ必要があります。
さらに進むと、「EUパスポート用」と「その他のパスポート用」の2つに分かれます。
私たちはEUパスポートを所持していたため、簡単なチェックのみでスムーズに通過できました。
一方で、EU以外のパスポートの人たちは、カウンターでの入国審査があり、パスポート提示のほか荷物チェックやいくつかの質問も行われていました。
見たところ、非EUパスポートの列では30分ほど待つ様子でしたが、日本のパスポートであれば、観光目的ならビザ不要で90日間滞在可能です。
時間帯や混雑状況によっては思った以上に待つこともあるので、時間に余裕を持って行動するのがおすすめです。
滑走路を渡って市内へ!

入国審査を終えると、その先には驚きの光景が。
なんと、ジブラルタル国際空港の滑走路を横断して市内へ向かうのです!
飛行機が離着陸する時間帯には遮断機が下りて通行止めになりますが、それ以外の時間帯は普通に徒歩で滑走路を渡れます。
飛行機の滑走路を歩いて入国する体験なんて、なかなかできる体験ではありません。
ちょっと不思議で、テンションが上がる瞬間でした。
ジブラルタルでの見どころスポット
ジブラルタルは面積こそ小さいものの、見どころがギュッと詰まっています。
ロープウェイでジブラルタル・ロックの頂上へ

ジブラルタルの中心にそびえる象徴的な存在、それが「ジブラルタル・ロック」。
標高426mの巨大な石灰岩の岩山で、街のどこからでもその姿が目に入ります。
山頂へはロープウェイで簡単にアクセス可能。
到着すると、360度の絶景パノラマが広がり、運が良ければ対岸のモロッコやアフリカ大陸の山々まで見渡せます。

私たちが訪れた日も快晴で、くっきりとアフリカ大陸の姿が見えて、とても感動しました!
頂上には以下のようなアクティビティも充実しています。
・展望台からのパノラマビュー
・神秘的な鍾乳洞「セント・マイケルズ・ケイブ」
・海峡を一望できるスリル満点の吊り橋「ウィンザー・サスペンション・ブリッジ」
・足元が透けるスカイウォーク
そのほか、自然保護区内で体験できるアクティビティは17種類以上あり、ジブラルタルの自然と歴史を丸ごと楽しめます。
【料金】ロープウェイ(往復)+自然保護区入場料+17の観光スポットへの無制限アクセス
大人:49ポンド(約9,300円)、子供:31ポンド(約6,000円)
ジブラルタルロックの公式サイトはこちら
メインストリートのショッピング街

ジブラルタルの中心にある「メインストリート」は、英国らしさが感じられる楽しいショッピングエリア。
石畳の道沿いにおしゃれな店が立ち並び、まるでイギリスの小さな町を歩いているような雰囲気です。
スペインから徒歩わずか数分という場所にありながら、街の雰囲気はガラリと変化。
通りにはイギリス本国から直送された食品や雑貨、免税価格で買えるコスメや香水、お酒などが充実していて、お土産探しにぴったりです。

さらに、紅茶専門店やパブも数多くあり、観光の合間に、アールグレイをゆったり味わったり、イギリス名物のエールビールで乾杯したりと、ジブラルタルにいながらちょっぴりイギリス気分を楽しめます。
ローカルグルメを堪能

ジブラルタルでは、イギリスとスペインの食文化が見事に融合。
せっかく訪れたなら、まずはイギリスの定番グルメ「フィッシュ&チップス」をぜひ試してみてください!
私たちは、地元で人気の「ロック・フィッシュ&チップス」というお店で、揚げたてサクサクの白身魚とホクホクのポテトを堪能しました。
日本でよく見かける、一口サイズとは違い、本場スタイルはドカーンと大きい魚が丸ごと一枚そのまま!
ボリューム満点で、外はカリッと中はふっくら。
食べ応えも抜群です。
天気のいい日はジブラルタル・ロックを眺めながら、テラス席で楽しいひと時を過ごせます。
小さくて不思議な国境の街で、異国を旅する楽しさを再発見!
ジブラルタルは、まるでヨーロッパの中にある小さなワープゾーンのような街でした。
イギリス文化とスペイン文化が混じり合い、でもどちらとも少し違う。
そんな独特の雰囲気に、私たちもすっかり心を奪われてしまいました。
キャンピングカーでの入国は少しハードルがありますが、徒歩での入国はとても簡単です。
街自体もコンパクトで歩きやすく、バスなどの公共交通機関も充実しているため、日帰りでも十分に楽しめます。
スペイン南部を旅する予定がある方は、ぜひ「ちょっと寄ってみる?」という気持ちでジブラルタルを訪れてみてください。
きっと、予想外の発見が待っています。