ハイエースとトレーラー

フォルクスワーゲンのキャブコンから「CASITA T-glove」+ハイエースにしたオーナーにインタビュー



キャブコンからトレーラーへ

先日、SUPとカヤックどちらもやる10年来のお客さんがキャンピングトレーラーを入手したと言うので、海に遊びに来られる際に、ついでに取材させていただくことにした。

実はこの方、フォルクスワーゲン T4のポップアップルーフのバンコンと、同じくT4のキャブコンを乗り継いできた人で、前回はどういった経緯や理由でトレーラーへとアップグレード(?)していったのか、また実際に使ってみて感じた各々の利点や欠点など、興味深い話を聞くことができた。

今回は、新しく購入したというキャンピングトレーラーをじっくり紹介していきたい。

また、トレーラーに変更した理由や、メリットデメリットなどを伺ったので、購入や車種変更をご検討中の方の参考になればと思う。

CASITA T-glove

CASITA T-glove

まずは新しく入手されたトレーラーの紹介から。名前はCASITA T-glove、カシータはアメリカのテキサスのメーカーだ。

サイズは全長 525cm × 全幅 207cm × 全高 260cmと、日本では小さいとは言えないサイズだが、アメリカの基準ではコンパクトな部類のトレーラーだ。これをハイエースで牽引している。

アメリカの車としては幅が狭い方だから、日本の道路事情には向いている。

車軸も手動で向きを変える際などに取り回しのしやすい1軸(アメリカでは2軸のトレーラーがポピュラーだが、日本では2軸になると重量に関わらず牽引免許が必要になってしまうため、定置型は別として1軸トレーラーの方が多い)ではあるが、重量が750kgを超えてしまうため、日本の法規では牽引免許が必要な車両だ。

カシータの最も特徴的である点は、構造や材質は全く違うがビンテージのエアストリームを彷彿とさせる独特の丸っこいフォルムと、ユニークな構造だ。

多くのキャブコンやトレーラーのボディーは、最初に骨組みを作って、そこに屋根や外壁を貼り合わせていくような構造となっている。

しかし、カシータのボディーの構造材はFRP製のシェルだ。

CASITA T-glove2

下半分と上半分を型に樹脂を流し込んで別々に作り、それをパカッと合わせるような構造で、殻をシェルと言うが、まさに二枚貝のようでもあり、鯛焼きのような作り方なのだ。

この独特な構造であるため、ボディーの真ん中辺りには鯛焼き式であることがわかる合わせ目も見て取れる。

キャンピングカーショーで製造工程の様子を紹介するビデオを観ていて、これはどこかで見た光景だと思ったのだが、サイズこそ違えどFRPのシーカヤックを作る工程とそっくりだった。

この構造の利点は、丸っこい形に作れるため空力的に優れるなどもあると思うが、何と言っても大きな利点は防水性の高さ雨漏りの心配が少ないことだ。上半分はボートやバスタブを裏返したのと同じようなことだと考えれば、防水性の高さは容易に想像がつく。

サーフボードの修理などでも悩まされることなのだが、水というのは針穴以下でも侵入してきて、漏水箇所を特定するのは非常に難しい。

キャブコンでもトレーラーでも、実は多くのキャンピングカーは雨漏りに悩まされ、屋根のコーキングのし直しなど、定期的な雨漏り対策メンテナンスが必須の車が少なくない。それどころか雨漏りとの戦いになってしまうキャンピングカーも存在する。

しかし、この構造なら気にかける必要があるのはルーフエアコンや換気扇の周囲や窓枠程度だ。定期的に屋根全体のコーキングをし直す必要などはない。これは非常に大きな利点だ。

カシータ13ftタイプ

先程サイズを書いたが、今回取材させていただいた方の車は17ftのタイプで、カシータには他に16ftや13ft(上の画像が13ftタイプ)などさらにコンパクトなタイプもある。

また、同じサイズでも幾つかの車内レイアウトが用意されているようだ。興味があったら、これ以上詳しいことはネットで検索していただくとして、この個体についてご紹介しよう。

CASITA T-glove 車内

車内レイアウトにはバリエーションがあるが、この車は車内に入ると右側手前にクローゼットがあって、その奥にバスルーム(トイレとシャワー)が配置されている。

CASITA T-glove バスルーム

シャワーはもちろん温水。トイレに腰掛けても膝がつかえてしまうことのない十分な広さがある。

外壁と同じでここもFRPで出来ているから防水性が高く、ユニットバスのような雰囲気が漂っている。

CASITA T-glove キッチン

エントランスの左側は冷蔵庫、その向い、進行方向に向かって左側がキッチンスペースだ。扉付きの戸棚や引き出しも沢山あって、収納に困ることもなさそうだ。

CASITA T-glove 車内2

室内も全体がFRPで成形されていて、曲線の中に木製の戸棚の蓋や引き出し、ドアなどがあり、ヨットのキャビンのような雰囲気が漂う。

ネットで少し調べていたら、作りが雑など細かいことを気にするような意見もあったが、私の場合は工芸品のように作られていることより、センスの方が先に立つものだと思う。個人的にはこのセンスが好きで、ヨットのキャビン内のような雰囲気に堪らなく魅力を感じてしまった。

CASITA T-glove ダイネット

キッチンと冷蔵庫の間を通り、奥には二の字型の広々としたダイネットが配置されている。日中は座り心地が良くゆっくりと寛げる広々としたダイネットで、夜は広いベッドとなる。ベッドへの展開も至って簡単だそうだ。

CASITA T-glove 外付けシャワー

室内にもシャワーがあるが、外にもシャワーがある。

後でゆっくり暖かい室内でシャワーを浴びるとしても、外で砂や泥を落としておけると室内の掃除がずっと楽になる。これはウォータースポーツをする人や、泥んこになるマウンテンバイカーなどには大変ありがたい装備だ。

CASITA T-gloveとハイエース

トレーラーの向きを調整する場合は、牽引車でバックしたり引いたりを繰り返してあれこれやっているより、大方停める位置を決めたら後は手で動かして調整してしまった方が手っ取り早い。

電動ドライバーを使って動かす装置

クランク形ハンドルをはめてグルグル回して動かすのが標準だが、こんな秘密兵器というか、アイディア商品のようなものもある。ハンドルの代わりに電動ドライバーを使って動かす装置だ。モーターを使うから手動より早いし、腕も疲れない。

このカシータを牽引するのはハイエース。ハイエースの車内はあまりいじることなく、ノーマルに近い状態だが、脚だけ残して分解可能なベッドキットが組み込まれていて、こっちにも2名就寝することができる。

ハイエースの車内

これなら荷物も沢山積めるし、普段仕事で使う際なども全く支障がない。

トレーラーの前に乗っていたキャブコンについて

クラブマン

では、このハイエース+カシータに変更した理由を説明する前に、これ以前に所有していたキャブコンについて簡単に紹介しておこう。

ベースのシャーシはフォルクスワーゲンのT4で、イギリスのオートスリーパー社で架装されたクラブマンという車だ。

サイズは比較的コンパクトでL5.3×W2.05×H2.7mとなっている。数字を比較すると偶然だとは思うのだがカシータにかなり近い数値だ。

このキャブコンの良かった点を挙げると、

・キャブコンの割にコンパクトだけど居住性は高く、シートのソファーも気持ち良かった
・左リアエントランスの使い勝手が良かった
・窓が大きくて開放感があり、アクリル二重窓で断熱性も高かった
・ヨーロッパ車ならではの内装のセンスの良さと外見も気に入っていた

などがある。

逆にマイナス点を挙げると以下の通り。

比較的コンパクトだが、街中では運転に気を遣う
・車高が2.7mあるため、駐車場探しに苦労することがあった。 地下、立体駐車場はほぼ駄目
・地方でも、名物の街中のレストランとかアミューズメント施設(水族館や美術館、入浴施設)の駐車場で入場を拒否されてしまうことがあった
LPガスの確保問題(現在のトレーラーもLPガスを使用するが、購入先が比較的近く、そこで確保できる)
・ベース車が古く、さらに並行輸入の外車であるため、トラブルがつきもので、この車に詳しい修理業者を探し(そうしたことも必要)、定期的に診て貰ってはいたが、旅先ではいつも故障の心配があった
エアコンがフロント部分しかなく、リアまで送風されていないので真夏は暑く冬は寒い

など。

エンジンがかからなくなって、キャンプ場から車はレッカーで帰宅したり、高速道路上で止まってしまったことなどもあったそうだ。それから、「ジロジロ見られたり(笑)、近所でも目立ってしまう(笑)」なんてこともあるそうだ。

キャブコンは、比較的コンパクトな車でも高さで入れない駐車場が結構あることは覚悟しておく必要があるし、場合によっては抱くイメージで実際より大きく感じられて入場を断れてしまうようなケースもあるのかもしれない。

また、やはり修理に関する問題やLPガスの充填(以前より難しくなっている)については、車を購入する前にしっかり確認しておいた方が良さそうなことが窺える。購入を検討している人はこうしたことは甘く見ない方が良いと思う。

キャブコンからトレーラーへの変更理由

車内 ダイネット

上のマイナス点を解消すべくキャブコンからトレーラーに変更しようと考えたわけだが、以下のような理由もあったそうだ。

・所有しているキャブコンの車両自体が95年式と古くなって一層維持が難しくなり、コストもかかってしまう
・子どもの中学野球リーグ(土日はほぼ活動、連休やお盆時期も活動、親も手伝いに駆り出される)が原因で使用頻度が落ち、その割には税金と修繕費などの維持費が重くのしかかっていた
・車がキャブコンだけでは何かと不便なため、どうしても2台持ちになってしまい、その分経費がかかる
・しかしバンコンでは家族構成(大人2人子ども3人)的にやはり狭い(ポップアップルーフのT4のバンコンの所有経験あり)のと、トイレが欲しい
子どもが成長して、所有しているキャブコンでも少々手狭になってきた

ハイエース+トレーラー

しかし、ハイエース+トレーラーへ変更すれば以下のようなメリットがあると考えた。

・トレーラーを牽引している最中の機動性は高くないが、切り離せばハイエース(キャンピングカーではなく普通の4ナンバー車)は仕事や日常の足として普通に使うことができるため、エンジン付きの車を2台持つ必要性がなくなる
・トレーラーは税金が安い
・トレーラーは動力系のパーツがないから整備する箇所が少なく、整備費用も安く抑えられる
動力系に関するトラブルはなく、寿命が長い
・運転席とエンジンその他がなく、シートなどの規制も無い(※ 走行中はトレーラーに乗車は不可)ため、レイアウトが自由で室内が使いやすい
牽引車がハイエースなら荷物の積載能力にも大きな余裕がある
・大きくなった子どもも含め家族5人で出かける場合には、ハイエースに男子2人、トレーラーの広いベッドに父母と小学生の娘3人に分散して寝られるので、広々していて快適
人数が少ない場合はハイエースだけでも宿泊可能
ハイエースなら故障も少なくて安心だが、仮に故障してもどこでも修理ができる(修理ができる工場が至る所にある)

トレーラー探しを始める

CASITA T-glove 後ろ姿

トレーラーを探すにあたり、候補に上がったのは、昔から知っていて見た目が丸くて雰囲気の好きなカシータと、歴史のあるハイマーのエリバ。この二つに絞って探したとのこと。

カシータはアメリカ、エリバはヨーロッパで、各々違った個性や特徴を持っている。

調べたら、トレーラーの荷重の場所とか連結の方式などが、微妙に違う。

また、アメリカ車は頑丈で悪路も行けるけど重量が重いヨーロッパ車は重量が軽く作られている車が多く、小さい車でも牽引できるものも多いが、悪路には弱い。などの傾向がある(必ず当てはまるわけではなく、あくまで傾向ではあるが)ことも知る。

そして、実際に車探しを初めてみると、カシータは市場に出回っている数が少なく、あっても古い車が多かったりで、良いものがなかなか見つからなかった。

エリバは割と数はあるけど小型のトイレ無しが多く、もちろんエリバにもトイレ付はあるが、車格が大柄となってしまうことが多い。トイレ必須と考える派としては、エリバはほぼ断念することになる。

さらに調べると、トレーラーは部屋代わりに使っている人も多いようで、あまり動かさないで使われてきた車両もちらほらあった。

CASITA T-glove 真横

そんな折、高年式(新車購入後一年半)のカシータが比較的近い横浜(お住まいは東京南西部)のショップにあるのを見つけ、その日のうちに見に行く。

内装、外装はおしゃれだけど、アメリカらしい雑さがあるのは否めない。しかし、それはそういうものと納得し、そのまま契約へと進む。

キャブコンを購入した時の経緯でも書いたが、「中古車は即断即決しないとダメ」がこの人のモットー。何事も悩みに悩んで決める人もいて、人それぞれかもしれないが、中古車は一点物なのだから、確かにこうした潔さは重要だと私も同感する。そして、側から見ていて気持ち良い!

雑さに関しては先程も書いたが、もう少し筆者の私見を挟ませていただくと、アメリカ人の肩を持つわけではないが、雑に見えるのは「余計なところにコストをかけて(手をかければコストは上がる)何か良いことでもあるのか?」といった合理的な考え方の表れでもあると私は思う。

トレーラーならではの気を遣う点など

ハイエースでトレーラーを引く様子

良いこといっぱいのトレーラーだが、マイナス面がないわけではない。

・車種にもよるが牽引免許が必要なことがある。この17ftのカシータは要牽引免許であるため、購入に合わせて免許を取得
・牽引自体は考えているほど難しくはないが、走行中も気を付けることは多く、それなりに緊張はする
バックはハンドルを逆に切らないといけない(ジャックナイフ)のでとても難しい
・まだ使い始めて日は浅いが、旅先で駐車場に難儀しそうなことが予測される

行ったことのない場所へ向かうときは、駐車スペースや狭い道路に遭遇して困ることなどないように、事前にグーグルマップなどで調べているそうだ。バンコン・キャブコン・トレーラーと永くキャンピングカーを乗り継ぎ、旅慣れているからこそ思いついたことが窺えるアイディアだ。

また、キャンプ場はトレーラー受け入れ不可のところもある。しかし、持っていないと気にかける機会もないことだが、OKなところが少しずつ増えている印象もあるそうだ。

また、最近はRVパークなども増えているので、その辺も利用しつつ楽しみたいと思っているとのことだった。

もっと普及しても良いのでは?

CASITA T-glove

その他、これまでの車両も含め、キャンピングカーを持って良かったことなどについて伺うと、

・北海道や北陸などへ長期で出かけた時に、行き当たりばったりで自由に旅ができたのは非常に楽しかった
・移動中も家族はゆったりしていて、キャブコンになってから特にソファーで寛ぐ時間が気持ち良かった(これはカシータになっても同様であろう)
・スキー場でもヒーターが暖かくゆっくりできた

などの感想も今回の取材で聞くことができた。

少し敷居が高いような、躊躇してしまう人も多いと思うトレーラーだが、今回見せてもらって話を伺って、利点は多く、上手く活用することができれば案外融通も効いて合理的な選択肢であり、長い目で見るほどコストも割安になるのではないかといった印象を得た。

しかし、日本でトレーラーだけでなくキャンピングカーがもっと普及するためには、欧米のように随所に広いRVパークが存在するのが普通になることが鍵のような気もする。いつになることか?

個人的な感想としては、私は実際のところ、これまでVANと小型のトレーラーの組み合わせについてあまり考えたことなどなかったのだが、このハイエース+カシータを目の当たりにして、これと基地になる土地があれば1人なら十分快適に暮らして行けるだろうなぁなどと考えてしまったのだが、いかがだろうか?

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