キャンピングカーの「エアコン」について考える
一昔前は「キャンプにエアコンなんて邪道!」「暑いときは涼しい場所に行けばいい」などと言われていたものだが、ここ数年の夏の気候を考えたらそうも言っていられない。
「北海道が東京より暑い」年もあったりして、エアコンなしで夏を過ごすのは命にかかわるレベルである。だからといって、夏にキャンピングカーを使わないというのもナンセンスな話。
「じゃあエアコンを搭載すればいいじゃないか」ということになるのだが、エネルギーが限られているキャンピングカーにそれなりのパワーを要するエアコンを取り付けるとなると、一筋縄ではいかないのだ。
目次
エアコンの仕組みを知っておこう
「カーエアコンを使うと燃費が悪くなる」「小排気量の車の場合、やや出足が鈍くなる気がする」。乗用車でこんな経験はないだろうか?
燃料を燃やせばいいだけの暖房と違って、冷房はとてもエネルギーを必要とするのだ。エアコンはカーエアコンであれ家庭用であれ、基本的に「冷媒冷凍サイクル」という仕組みで動いている。
詳しい説明は省略するが、冷媒(エアコンの場合はフロンガス)が凝縮・膨張・蒸発・圧縮を繰り返すことで冷たい風を創り出している。この圧縮をするコンプレッサーを動かすのに多くのエネルギーが必要なのだ。
カーエアコンの場合はコンプレッサーの動力源はエンジン。だから、エアコンを使うと動力性能影響が出るし、エンジンを切ったらエアコンは使えない。
そこで、停泊時のエアコンはモーターでコンプレッサーを動かす必要がある。つまり、夜、エンジンをかけっぱなしにしなくても居室を冷やせるようにするには、
・居室用のエアコンを搭載する
・そのエアコンを動かせるだけの電力を確保する
必要があるのだ。
キャンピングカー用エアコンは3種類
キャンピングカーに搭載されるエアコンは大きく分けて3つのタイプがある。
・ルーフトップエアコン
・家庭用エアコン
・新世代車載用エアコン
それぞれのメリット・デメリットを見ていこう。
ルーフトップエアコン
文字通りルーフトップ=屋根の上に設置するタイプのエアコン。古くからアメリカ製キャンピングカーで使われており、いまでもアメリカでは広く使われている。
以前はキャンピングカー用エアコンといえばコレしかなかった。アメリカ製キャンピングカーはもとより、国産キャンピングカーでもルーフトップエアコンを搭載したモデルもあったのだ。
構造も制御方式もシンプルで、安価に流通しているというメリットもある。しかも頑丈なので、アメリカでは相変わらず主流だ。
ただし「省エネ」とか「静音」なんていう気遣いとは全く無縁なしろものなので、重い・うるさい・エネルギー喰いの三重苦である。
・外部電源が確保できる
・大容量の発電機を用意する
ことが前提なので、日本での使用環境にマッチしているとはお世辞にも言えない。
家庭用エアコン
日本の家庭用エアコンは世界でトップクラスと言っても差し支えないクオリティだ。
省エネで静か。サイズもコンパクトだ。この家庭用エアコンをキャンピングカーに搭載するのが最近のトレンドになっている。
省エネ設計でキャンプ場の電源やポータブル発電機でも十分使える上、サブバッテリーからのDC-ACインバーターでも数時間は運転できる(動作時間はバッテリー容量や外気温、車両の断熱状況などによる)。
ただ、製品そのものは車載することは考慮されていないので、搭載するには改造が必要な場合も多く、家電量販店のような価格では取り付けられないのが残念なところ。
また、重量配分や設置場所(室外機含め)、配管スペースなどの問題で、基本的には「後付け」が難しいのも難点だ。
新世代車載用エアコン
最近注目を集めているのが、新世代の車載用エアコンだ。今年のジャパンキャンピングカーショーで展示されているのを目にした人も多いのではないだろうか。
DC-ACインバーターを必要とせず、サブバッテリーに直結してDC12V(24V仕様もある)で動作する。インバーター不要なので効率が良く、しかも車載用に作られているので振動対策や排水対策も完璧だ。
加えて、室内・室外機ともに非常にコンパクト。バンコンでも車体を改造することなく床下に室外機を収めることができる。
さらに、システム単品で販売されているので「後付け」に対応できるのもうれしいところ。冷房専用だが、開発した会社によれば「シンプルな構造にすることでトラブルを少なくするために、あえて冷房専用にした」という。
すでに採用しているビルダーもあり、おそらく今後の主流になっていくのではなかろうかと思っている。
エアコンのポテンシャルを引き出す使い方
どのタイプのエアコンにも共通して言えることだが、少し配慮するだけで、より効率ようく使うことができる。ここは基本に立ち返って、効率の良いエアコンの使い方をおさらいしておこう。
車の温度を上げない
暑い状態から温度を下げるのは、一番エネルギーを要する。
・走行中にカーエアコンでなるべく冷やしておく
・可能な限り日陰を選んで停車する
など、車の温度を上げない工夫をするだけでかなり違う。
断熱する
冬場と同じく、夏でも断熱は重要だ。居室部分の断熱加工がしっかり施されているキャンピングカーほど、冷房につけ暖房につけ、効率が良いのは当然だろう。さらに熱は断熱できない窓から交換されやすい。シェードなどを使ってフロントやサイドの窓を塞ぐことも大切だ。
また、エンジンから上がってくる熱に注意。キャブコンやバンコンは運転席・助手席の下にエンジンがある、停止してもしばらくはエンジンから熱が上がってくるので、運転席・助手席と居室の間をカーテンで仕切るなどして、すこしでも熱を遮断しよう。市販の断熱材をエンジン周辺に仕込むのも効果的だ。
終わりに
これからキャンピングカーを買おうとする人にとって、どんなエアコンが付いているかは、車選びの重要なポイントになるだろう。
今の愛車にエアコンがない、という人にも新世代エアコンのおかげで「後付け」という選択肢が出てきたのは朗報だ。
本格的な夏が来る前に、愛車のエアコンのチェックを。そして、すでにエアコンが付いているなら、より賢く使って、暑い夏を乗り切ろう!