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車中泊だけじゃない!キャンピングカーは災害時の「移動式シェルター」として大活躍するって本当



地震や台風をはじめ、日本に住んでいれば災害のリスクと無縁ではいられません。

災害により家屋の倒壊や大規模停電、断水といった被害が起きたとき、まず選択肢に上るのは「避難所での生活」でしょう。

一方、さまざまな事情から、避難所よりも「車中泊」を選択する人もいるようです。睡眠やトイレ、食事といった面で、できれば共同生活のストレスを避けたいという人も多いと考えられます。

とりわけ新型コロナウィルス感染症の拡大以降、災害時における「分散避難」の重要性が注目されるようになりました。分散避難とは、知人宅や宿泊施設など避難所以外への退避であり、「車中泊」も選択肢の1つです。

車を使った避難生活を考えたとき、何より役立ちそうなのが「キャンピングカー」でしょう。

実際のところ、キャンピングカーはどの程度災害対策として有効なのでしょうか。

キャンピングカーが災害時に役立つのはどんなシーン?


内装

©enoch/stock.adobe.com



キャンピングカーの大きな強みは、車内でライフラインを確保できる点です。

「一般社団法人日本RV協会」による調査では、「キャンピングカーがあれば災害時に確保できると感じるもの」に対する回答として、「場所(34.9%)」「電源(27.9%)」「水(14.8%)」の3つが上位を占めました。

災害時においては第一に、安全な場所を確保することが求められます。

とくに大規模な地震が発生した際には、一度揺れが収まっても、しばらくの間は余震のリスクに備えることになるでしょう。

このようなケースにおいて、キャンピングカーには「移動式のシェルター」としての役割が期待できます。

自宅に何らかの被害が生じた場合はもちろん、洪水や土砂崩れなどが想定されるエリアから事前に脱出するケースなど、キャンピングカーがあることで早め早めの対処が取りやすくなるでしょう。

電気はどれくらい使える?


電気

©geargodz/stock.adobe.com



実際のところ、キャンピングカーは「非常時のシェルター」としてどの程度利用できるのでしょうか。

電源や水まわりの事情について、キャンピングカービルダーのスタッフに話を聞きました。

「キャンピングカーが防災面で注目されている理由の1つに、サブバッテリーが挙げられます。サブバッテリーは一般に、外部からの充電と、走行時の充電、あとはソーラーパネルがあるタイプは太陽光による充電が可能で、外から電力供給が途絶えたとしても、走行やソーラーで電気を貯めることができるわけです。

満充電時にどれくらい電気がもつのか、というのはもちろん容量や使い方によります。通常、キャンピングカーの装備でもっとも電力消費の激しい機器は家庭用エアコンの冷房で、これが600W~700W程度です。

たとえば200Ahのサブバッテリーであれば、12Vで2400Whですから、単純計算で最大出力の冷房が4時間程度使えることになります。
ただ、バッテリー全般に共通することですが、カタログ上の容量を常時使えるわけではありませんので、おおむね7割~8割程度を見込んでおくとよいと思われます」

サブバッテリーの容量は車両によって異なり、トラックをベースとした「キャブコン」であれば合計100Ahクラスを3つから4つ搭載しているモデルもあります。

さらに充電性能もさまざまであり、4時間程度の走行で満充電できるタイプや、アイドリング状態で家庭用エアコンを動かすだけの電力を得られるタイプなど、高性能の製品も見られます。

さらに、冷房の必要がない時期であれば、より長時間にわたり電力を使い続けられるでしょう。

「エアコンほど大きな電力消費の家電はそう多くありません。バッテリー容量が200Ahもあれば、照明や冷蔵庫なんかは1日つけっぱなしにしておいても全然問題ないですね。

暖房に使われるFFヒーターは、車の燃料を使いますので、電力消費は50W程度であることが多く、これもかなり長い時間使うことができます」

総じて、キャブコンの標準的なモデルの場合、スマートフォンの充電や照明など最低限の使用に絞れば、電力供給がなくなったとしても、フル充電時で数日間分の電力を賄うことができるようです。

水まわりの事情は?


水回り

©OceanProd/stock.adobe.com



避難生活においては衛生面も重要ですから、キャンピングカーの貯水性能は頼りになると考えられます。

「給水タンクの容量は、バンコンで10リットル~20リットル、キャブコンで80リットル~100リットル程度が一般的です。飲用ではないので、飲料水はまた別に積んでおく必要がありますね」

東京水道局のWebサイトによれば、1人が1日に使う水の量は平均214リットル。

このうち約75%が風呂・トイレ・洗濯時のものであり、手洗いや洗面などは6%に過ぎず、容量にすると13リットル程度。

数日おきにタンクに水を補給できる環境であれば、避難生活を送るうえで十分な環境を整えられると考えられます。

なお、災害時に備蓄しておくべき飲料水の量は1人あたり1日3リットルとされています。

多くの飲料水をストックしておくうえでは、キャンピングカーの「積載量」が大いに役立つといえるでしょう。

それでは、トイレまわりの問題はどうなのでしょうか。

「トイレは1BOXをベースにしたバンコンだと装備されていないケースが多いですが、ハイエースのスーパーロング・ワイドになると、マルチルームといった形でトイレとして使えるスペースが設けられているものもありますね。キャブコンであれば最初からカセット式トイレを装備している車も多いです」

キャンピングカーの汚水タンクに溜まった水は、ダンプステーションなど所定の場所で処理する必要があり、災害時にこうした場所を確保できるかによって利便性は大きく変わるでしょう。

とはいえカセット式トイレの場合、汚水タンクの容量は10リットル~20リットルであることが多く、1人であれば3日~5日程度は処理せずにいられると考えられます。

このように、キャンピングカーは災害時の「移動式シェルター」として、給電・給水の面でも大きな助けとなるでしょう。

駐車場所の問題や、給油・充電・給水環境の有無など、条件に依存する面はあるものの、プライベートスペースとしての汎用性の高さは多くの場面で有効だと考えられます。

災害時には安全な場所を確保しつつ、道路交通などの妨げにならないよう注意する必要はありますが、やはり「生活空間を移動させられる」ことの意義は大きいようです。

ライター:鹿間羊市
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