ドラレコはなぜ新車標準装備されないのか?ディーラー販売担当者の回答に納得
あおり運転に起因する事故が社会問題となってから、安心のために「ドライブレコーダー」を装着するドライバーが増えています。
ソニー損害保険株式会社による「2018年 全国カーライフ実態調査」によれば、2017年に15.3%だった装着率は2018年に31.7%まで急上昇。
2021年の同調査では43.0%に向上しています。
「自衛の手段」としていまや必需品となりつつあるドライブレコーダーですが、新車販売においてはオプション扱いとなっていることがほとんどです。
はじめから標準装備されないのはなぜでしょうか。
選択の多様性に配慮しているから
第一に、ドライブレコーダーが標準装備とされないのは「消費者に選択の余地を残す」ことが理由として挙げられます。
ドライブレコーダーはここ5年ほどで急速に普及しており、消費者によっては「まだ新しい技術」と考えていたり、そもそも関心を寄せていなかったりすることもあるようです。
あるディーラーの販売担当者は、「ディーラーオプションとして、ドライブレコーダーは定番になっています。こちらでも装着をおすすめしていますが、やはり『別に必要ない』と仰る方もいらっしゃいます。特段メリットを感じないという方、ご自身の運転を記録されることに抵抗を感じる方がいるように思います」と話します。
ドライブレコーダーの有用性は多くの人が知るところとなっていますが、やはり人によって捉え方はさまざまであり、搭載を歓迎しない向きもあるとのことです。
さらに、ドライブレコーダーの種類や搭載される技術も多岐にわたります。
製品を選ぶ際には、画質や画角の違いはもちろん、前後方や全方位など録画方向の違い、さらには駐車監視機能の有無などを検討する必要があります。
別のディーラースタッフによれば、「現在では多くのメーカーからさまざまな製品が発売されており、ディーラーオプションとしても複数のタイプから選べるようになっています。予算やニーズに合わせてお客様が選択できるので、今のオプション設定の形は理に適っているのではないでしょうか」とのことです。
高機能なものほど価格は高くなる傾向にあり、現時点でドライブレコーダーを標準装備とする場合、「どのような機能を備えたものが最適か」を一様に決定しなければいけません。
この点で、消費者側に選択権を与えつつ、販売店側としても取り付けにさほどリソースを要さない現在の販売形式は、双方にとってメリットが大きいのだと考えられます。
今後の「コネクテッドカー」でドラレコはどうなる?
ドライブレコーダーには年々便利な機能が搭載されていますが、純正採用の可能性を考えるうえで注目したいのが「コネクテッド機能」の強化です。
近年、運転支援や車両管理のシステムが高度化するなか、緊急通報などの機能を備えた「つながる車」が登場しています。
エアバッグ作動時に自動的にオペレーターに接続されるシステムや、ドライバーに異常があった場合に車両を緊急停止し、オペレーターにつなぐシステムも搭載されはじめています。
今後、ドライブレコーダーが標準搭載されるとしたら、このようなシステムの一環として組み込まれる可能性もあるかもしれません。
コネクテッドカーにおけるドライブレコーダーの未来像を示唆するのが、いくつかの損害保険会社が近年導入している「ドラレコ特約」と呼ばれるオプションです。
損害保険会社の営業担当はドラレコ特約について、以下のように説明しています。
「月額1,000円弱で、ドライブレコーダーを保険会社側から貸与する特約です。ドラレコには通信機能が付帯され、衝撃検知時に保険会社に事故報告をしたり、警察・救急への通報を行ったりと、コネクテッドカーの代替としても利用できます。さらに、クラウドを介して事故映像のデータを保険会社に送信できるので、事故状況分析もスムーズに行えます」
つまり、保険会社においてはドライブレコーダーが「緊急通報」と「事故処理」を自動化するアイテムとして活用されていることになります。
今後、コネクテッド機能の一環としてドライブレコーダーが標準搭載され、簡単な操作で緊急通報や映像の共有などが可能になれば、より迅速な事故対応や救命活動にも寄与することになるかもしれません。