絶版車ホンダ バモスの魅力とは
室内・シート
前席は独立していて、どちらもフルリクライニングする。軽トラの運転席のように姿勢を強要されることもなく快適だ。
後部座席も左右2分割になっていて各々独立してフルリクライニングできるようになっている。
大変座り心地が良いわけではなく、上を見たらキリがないが、少なくとも私の基準では前後とも十分な質感のシートで、乗用車だけあって後部座席は普通の商用車の軽バンの後部座席とは比べものにならないほど豪華だ。
実際に乗ったことはないが、バモス/アクティの後継とも言えるN-VANよりずっとまともな後部座席であることも確かだ。
また、後席の足元には十分な広さがあるが、後席より後ろの荷物スペースの奥行きは1m以上もあり、4名フル乗車でも結構な量の荷物を積むことができる。
前席の背もたれを平らになるまで倒すと後席の座面と高さが合うようになっていて、こんな風に前後の座席をつなげることもできる。
後席の背もたれが立っていれば足を前に出して座ることができて寛ぎモードになるが、この画像のように後席の背もたれも平らに倒し、段差の凸凹を埋める工夫をすればベッドにすることもできる。
横幅は少し狭いが、後ろに結構広い荷物スペースを残したまま2人分の就寝スペースを作ることができて、この方法も便利だ。
後部座席をたたむと座席足元に収納できるようになっている。これも左右別々にできるので、片側だけ座席を残しておくことも可能だ。
収納すると荷室の床面と4cm程度の段差ができるが、全面フラットになる。段差があるとは言え、水平だから段差の解消は難しくない。
それより、この仕組みのおかげでたたんだ座席の分荷室長が減らないことがありがたい。
この仕組みなら後部座席をたたむと前席より後ろに長さ1.8mのスペースが生まれるが、よくある座席をたたんで前に寄せて立てかけるような方式だとその分長さが減り、身長が170cmを超えると真っ直ぐ寝るのが難しくなりそうだ。
少なくも私は1.8mあればなんとか頭や足がつかえる事なく寝られるので助かっている。
後部座席には中央にカップホルダー付きの収納可能なアームレストも備わっている。
片側の座席をたたむと、このアームレスト分だけ左座席をたたんだ時の方が幅の広いスペースが生まれることになる。この左右均等でないところもポイントだ。
寝るのが1人だけなら片側の座席をたたむだけで幅は足りるが、左右均等割したより幅が少し広くなるからだ。
私は左座席のみたたみ、幅は60cm程度の段差解消するための低い台を置き、そこを寝床にしている。4人乗車など滅多にないから、これを常態としている。
上に座っても頭が天井につかえない程度の高さの台だが、滅多に出番のないチェーンやパーツ類などをしまっておくスペースとしては十分で、段差の解消策でありながら、案外荷物整理の役にも立ち、一石二鳥以上だ。
欠点・弱点
まず挙げられるのはメンテナンスのしにくさだ。エンジンの位置の関係上、荷室のカーペットをめくり上げ、蓋を止めてあるボルト4本を外さないことにはエンジンや関連の主要メカニズムにお目にかかることができない。
これは非常に面倒くさい。エンジン周りに何かトラブルがあった場合は積んである荷物を全部下ろさなければならないだけでなく、億劫だからプラグやベルト類の点検なども怠ることになる。これは良くない。
前席の下にエンジンのある車は助手席を持ち上げる仕組みのものが多く、これも面倒と言えば面倒だが、それよりもっと面倒だ。この点ではエブリィ・ハイゼットの方が有利だ。
そして面倒くさいだけでなく、例えば床を板張りにするなどは難しくなってしまうし、ベッドや棚なども、より簡単に取り外しできる仕組みに工夫する必要がある。
入手当初、オイルの残量や状態をチェックするのも一大事なのかと心配していたら、オイルゲージは後輪の脇からアクセスできるようになっていたので、これには一安心した。
そして、この車は短いながらも鼻があり、伊達ではなくフードが開くようになっている。
そこにラジエターとリザーバータンクがあるので、水の確認は問題ない。ウォッシャー液のタンクもここにあるからそれも問題ない。
バッテリーもこの中にあるから問題ないと思いきや、バッテリーはフードを開けてもすぐには見当たらない。
なんとウォッシャー液のタンクの下に隠れていて、タンクを外さなければ端子にアクセスすることもできないのだ。
ジャンプスタートや充電する際にも工具を使って一旦ウォッシャー液のタンクを外さなければならないが、それだけでも厄介なのに、狭くてバッテリーの取り出しや設置が非常にしにくい。
そしてケーブルの付け外しの時に、ちょっと油断するとスパナでショートさせてしまいそうで危険でもある。
上の画像はヘッドライトを交換するためにフロントグリルを外した時のものもだが、向かって右にあるウォッシャー液のタンクの下にあるのがバッテリーだ。
もう一つフード周りで好きでない部分がある。これはバモスに限ったことではないが、フードとフロントガラスの間に窪みのある車は、このように落ち葉やゴミが溜まってしまうのが厄介だ。
またいつの日かの復活を望む
今後もさらに厳しくなる安全基準等に適合させるためにはバモス/アクティの設計は古過ぎ、生き残るためにはフルモデルチェンジが必須となっていたのだと思う。
しかし、プラットフォームを刷新するとなると莫大なコストがかかるが、利益率の低い軽自動車に大きな開発費をかけるのは負担が大き過ぎる。
兄弟のアクティのトラックも大変残念なことに2021年6月で生産終了予定となっていることから、費用対効果でプラットフォームの刷新を断念したのだと察しがつく。バモスが消えてしまった一番の理由はおそらくこれだ。
また、日本一売れているN-BOXなどのスーパーハイトワゴンの登場で、バモスのような商用車をベースにした軽5ナンバーワンボックスワゴンの必要性は薄れている。
確かに乗用車のバモスはN-BOXに代替できる人が多い。そして商用車アクティのユーザーはダイハツやスズキに鞍替えすることもできる。
しかし、アクティの替えがなくてはホンダの販売店は大変困ったことになってしまう。そこでホンダはNシリーズのプラットフォームを使ったユニークなVANを作ることにしたのだと思う。
そして、その車は実質的にはアクティとバモスの後継に近いような存在ではあるが、その新しいVANもNシリーズの一員ということで、アクティやバモスの名前は引き継がず、新しくN-VANと名付けることになったのではなかろうか。
N-VANも楽しそうな車で大変興味深いが、バモスホンダがホンダ バモスになって復活したように、いつの日かまた形を変えてでも良いからバモスが復活してくれたら嬉しい。
もし今度復活するときは、EVやさらに革新的な動力源を得た車になっているのだろうか?
ところで、ご存知の方も多いと思うが、VAMOSはスペイン語でLet’s goのような意味だ。楽しい響きの良い名前だ。
若かりし頃カリフォルニアの農場で働いていた時、同僚にメキシコ出身者達がいたのだが、出身地の訛りなのかどうかわからないけど、「ヴァモノス パラ ラ カサ!」のようにヴァモスではなくモとスの間にノを入れて発音していたことを思い出した。
VAMOSのスペルさえ知らなかったその頃の私も当然ヴァモノスと発音していた。
自分の愛車も愛情を込めて、これからはバモノスと呼ぼうかと思っている。