千葉の台風被害でも活躍。キャンピングカーでの災害対策【軽バン秘密基地計画#08】
前回の記事で書いた通り、愛車バモス君のエンジンが、動きはするけど不調を来たしてしまった。プラグを交換してもダメだったので、前回はダイレクトイグニッションコイルを発注したところで終わっている。
前回の記事はこちら
ダイレクトイグニッションコイル交換
これまで乗ってきた車が殆ど20世紀製のものばかりだった私は、デスビがなくて各シリンダーにイグニッションコイルが1本ずつ付いているだけでもちょっと浦島太郎的気分だったのだが、そのダイレクトイグニッションコイルというやつが届き、早速交換してみることにした。
純正が見当たらず、安いのは良いけど若干の不安を抱きつつも社外品を購入。2本は生きているけど、3本とも新品に交換することにした。価格は3本で¥6,280。デンソーのイリジウムのプラグが3本で¥3,120だったので、ここまでかかった費用は諭吉さん1枚に達していない。
この車は初年度登録が平成21年7月だからちょうど10歳。これまでイグニッションコイルも多分一度も交換されていないと思うので、イグニッションコイルも10年働き続けたことになる。全体的に色褪せて先端は焼けて赤くなり、新品と並べるといかにも10年働き続けてきた感がある。
早速交換し、少々緊張しながらキーを回してみると滑らかな音がする。ギアを入れてみてもブルブルしない。走り出しても違和感は消えている。やはり原因はイグニッションコイルの劣化だったようだ。
また登れなくなったらどうしようと恐る恐る家の前の坂を降りて近所を一回りしてみたが、走りは至ってスムーズ。先日荷物を全部下ろしてなんとか登れた家の前の急坂も勢いよく登ることができた。あ~良かったと胸をなでおろす。
しかしその後に小さな問題が発覚。「エンジン関連に問題あり」の警告灯が点いてしまった。誤動作であることはほぼ間違いなく、以前はこうした警告灯類が点灯したままでも実際に問題がなければ車検を通ったが、現在は警告灯類が点灯したままでは車検が通らなくなったと聞いた。
ヨーロッパ車では結構こうしたことがよくあるようだが、これを直すのも意外と高くつくそうだとも聞いている。車検はちょうど1年残っているけど厄介だなあと思っていたところ、翌日何故か消えていた。
なんだったのかわからないけど、結果全てメデタシ。その後500km以上は走ったが、全く問題なく走っている。
以前JAFの人が、故障の原因が機械的なことより電子的なことの方が圧倒的に多くなり、最近はガス欠やパンク以外に現場で対処できることがめっきり減ってしまい、ローダーで運ぶことが殆どだと言っていたが、キャブレターとデスビだった頃の車に比べると、現在の車(10年前の車でも、私にとっては最新式)は調子の悪いところの見当がつきにくい。
しかし今回の件では、まだ自分でなんとか対処できる余地が残っていたことも判明したわけでもある。そして、普通に修理に出していたら、代金は少なくとも今回払った金額(諭吉さん1枚未満)の2倍から3倍にはなってしまったと思う。プロに任せるべきところは任せければならないが、やはり簡単に諦めてはいけない。何から何まで懐に優しい車だ。
DIYでの加工や改造は安全面に影響が出る可能性があります。また、アフターサポートなどを受けることができなくなる可能性もありますので、法令、基準などを遵守した上で自己責任で行ってください。不明な場合は販売店などに確認してから行うようにしましょう。
災害とキャンピングカー
バモス君復活に安堵していたのも束の間、ファクサイ(台風15号)が襲ってきた。私が普段住んでいるのは房総半島南部。もろに被害を受けた地域だ。房総半島は海岸では大きな影響を受けることがあるが、意外にも陸地が台風で甚大な被害を受けることは稀だ。
そして8日の日中は大した気配もなかったのだが、東京湾を北上し、台風中心近くの右側の一番パワーのあるところに房総半島が入ってしまうという稀に見るコースを辿る予報が出たため、8日は早めに海から引き上げ、家の外を片付けるなどの対策をとることにした。
果たしてその判断が大正解だったいう結果になってしまったのだ。
近隣では酷い状況を多々目にしたが、私の家は周囲の木は結構倒れたけど幸い家や車に倒れてくることもなく(悪運が強い)、家の損傷は屋根のテッペンの一部が破損しただけだったため、自分で修理できる程度で済んだ。
しかし停電と断水は長引き、特に災害を意識してのことではないのだが、ソーラーパネルとサブバッテリーとシャワーのための水タンク、キャンプ道具諸々が常備されているキャラバンの有り難みをひしひしと感じることとなった。
そしてそんな矢先、9月20から22日に同じ千葉県内の幕張メッセでカートラジャパンが開催されたので、見に行ってきたのだが、生々しい体験から間もないため、カートラジャパンの会場へ行っても「楽しむための装備より緊急時や災害時に役立ちそうな装備」へと自ずと目が向くこととなった。
そこで、実体験とカートラジャパンで見てきたことなどを合わせ、今回と次回の2回に分けて災害時のキャンピングカーの活用法や役立つ装備、備えておきたい物などについての考察を述べたいと思う。
バッテリーとソーラーパネル
先にも書いたが、キャラバンのソーラーパネルとサブバッテリーは本当に役に立った。携帯電話の充電はもちろん、台風が過ぎた後は南からの湿った温かい空気が流れ込み、非常に蒸し暑い。
そんな時にエアコンは使えなくとも省電力で動く扇風機があると有り難いが、乾電池式では電池切れしたらお終い。
その点USBで動く扇風機なら、ソーラーパネルとサブバッテリーがあれば、太陽の光さえあればほぼ際限なく使うことができる(もちろんソーラーパネルの能力にもよるが)。
灯りについては、私は普段のキャンプでも主に防水のソーラー充電式のランタンとUSBから充電するヘッドランプを使用している。
ランタン自体がソーラー充電式なら他から充電する必要もなくて便利だが、雨天や曇天が続いた場合には役に立たなくなってしまう。電源供給元となる容量に余裕のあるバッテリーがあるなら、充電式のランタンも用意しておけばなお安心だ。
ヘッドランプに関しても、先に説明した扇風機や充電式ランタンと同様で、電源供給元となるバッテリーがあることが前提ではあるが、充電式なら乾電池を使い切って使えなくなってしまうこともないからやはり便利だ。
携帯電話の充電に関しては、普段都会で暮らしていると気付きにくい大きな盲点がある。電話機は電波が入りにくい状況では入る電波を必死に探そうとするわけだが、電波を探す時には大量に電気を消費してしまう。
停電すると基地局に安定して電気が供給されにくくなるためか、電波の入りが極端に悪くなってしまうのだが、そのせいで使っていなくても電話機のバッテリーの減りが非常に早くなってしまうのだ。携帯電話は災害時にこそ頼りにしたいツールの一つなのに、最悪の悪循環だ。
今回のカートラジャパンでも持ち運びのできる小型のポータブルタイプから大型キャンピングカー用の本格的なシステムまで、多数のリチウムイオンバッテリー(私のキャラバンに載っているのは鉛のディープサイクルバッテリー)が出品されていた。
サイズも色々あるが、容量が400Wh程度のものがサイズ的にも価格的にも比較的手頃で人気があり、このクラスがスタンダードとなっているようだ。
400Whを簡単に説明すれば、100Wの電気製品をおよそ4時間使用できるという意味で、目安としては5Wのスマートフォンを約40回充電できる、または50Wのテレビを約8時間観られるということになる。
ポータブルバッテリーを選ぶ上で特に注意すべき点は、容量などは同じクラスでも中身のバッテリーの製造国の違いなども含めた信頼性の違い、交流を出力できるものであれば内蔵されたインバーターの性能の違いだ。
例えば擬似正弦波は正弦波インバーターよりずっと安価だが、擬似正弦波ではマイコン制御の電気製品が使用できなかったり、安価なインバーターの中にはテレビ・ラジオの音声にノイズが混入してしまうものや、電気製品が異音を発するものがあったり、擬似正弦波で無理に使おうとすると電気製品を壊してしまう場合もある。
またモーターを使うものなどサージ電力量の多い電気製品を使う場合には、インバーターの容量に十分な余裕がないと使えない。安物買いの・・・にならないように、そうしたことにも十分注意したい。
カートラジャパンに出展していたPIFさんは、停電した房総半島の被災地のSoftbankショップやY!mobileショップにエナジープロEXを設置し、無料で充電できるサービスを展開されていたそうだ。
同じ被災地域に住む者としては大変有り難い話だが、会場で大ぴらにそれをアピールしていたわけでもなく、話をしていたらそんな話題も上がった程度で、謙虚な感じがして尚好感が持てた。
しかし、これはまた別な話となってしまうが、実際にその場にいる人達にこうした情報も含め、ありとあらゆる情報が伝わりにくかったことは今回の災害時における非常に残念だった点の一つだ。こうした時にもっと何か情報が伝わりやすくする方法はないのだろうか?
ソーラーパネルもポータブルバッテリーに合わせ、常設タイプではなく折りたたんで持ち運びのできるポータブルタイプが各種出ている。
リチウムイオンのポータブルバッテリーとポータブルタイプのソーラーパネルは普段の旅やキャンプでも大変重宝するし、災害時には大活躍することは間違いない。是非備えておきたい装備だ。
水タンクとシャワー
常日頃から海でシャワーを使用するため、私は電動ポンプ式のシャワーをキャラバンには設置していて、タンクの水は大体いつも満杯に補充してある。
そのため、断水で風呂には入れなくても(元々夏はほとんどシャワーだけで済ませてしまうが)普通にシャワーを浴びることはできたので、汗まみれで不快な思いをすることもなく過ごすことができたのは幸いだ。
電動ポンプでなくてもタンク内にポンプに手動で加圧して水の出る仕組みのシャワーなどもある。シャワーなどなくてもそのまま水を被れば良いと思うかもしれないが、シャワーはそのまま水を被るより一回で使う水の量を大幅に減らすことができ、節水に大きく貢献する。
災害時の装備としてあまり取り上げられることはないが、手動/電動にかかわらず、シャワーは災害時にも大変役立つ合理的な装備の一つだと私は思う。
車に不要なものを常々載せておくのは燃費に悪影響だから良くないとも言われるが、災害や緊急時に備えて、飲料水のペットボトル以外に取り敢えず10L~20Lくらいの水とシャワー装置を常に積んでおくのも良いのではないだろうか。
そんなことを考えていたら、カートラジャパンの会場で面白いものを見つけた。その名もRoad Showerという製品だ。
ルーフキャリアの脇などに付けて使用する細長い形状の水のタンクのシャワー設備だ。タンク内にポンプで加圧することで水を噴出する仕組みになっているため、設置場所に必ずしも高さが必要なわけではない。高さの低い車でも使うことができる。タンクは丈夫で軽量なアルミボディ。黒く塗られているので、太陽が出ていれば暖かいシャワーが浴びられそうだ。
ハイエースのルーフキャリアに付いていると決して格好悪いわけではないのだが、水道屋さんなど設備屋さんの車の屋根に載っている塩ビ管のあれと間違われてしまう可能性がなくもなさそうだ。
しかし、ハイラックスの荷台の脇に付けられているのは間違いなくカッコよかった。でもハイラックスとこのタンクの色が赤だったら消防関係の車両に見えなくもない?
サイズは約15Lの4S、約26.5Lの4、約38Lの4Lの3種類あり、本体が¥52,000~¥72,000と、決してお手頃とは言えない価格だが、しっかりとした作りで長く使えそうだし、人だけでなく道具類を洗うのにも便利そう。
車内にポリタンクを積むのと違って、車内のスペースを食ってしまわないのも高ポイントだ。バモスに付けたいけど、今付けているお仕事用キャリアにこれを取り付けたら、設備屋さんと勘違いされることはほぼ確実だ。
もう一つシャワー関係で面白いものを見つけた。写真のピントが少々ずれていてお見苦しくて申し訳ないが、アールブイランドさんが出品していたKampaポータブル温水ボイラーだ。
これは水のタンクとガスボンベは別として、本体の大きさは約310mm x 305mm x 360mmと大変手頃な大きさの温水器だ。ポンプには12Vの電源を使用し、湯沸かしにはLPガスボンベの他に別売りの3連カセットガス供給機を使用すれば手軽なカセットガス(CB缶)を使用することができる。
冬に海から上がった時に暖かいシャワーを浴びられるのは、私にとってはささやかな夢の一つでもある。これがあれば立派な設備のキャンピングカーでなくてもその夢に一歩近づくことができそうだ。
また、今回の災害は暑い時期だったが、寒い時期だったら温水が出るのは災害時にも大変有り難いことだろうと思う。
今回はここまで。次回もキャンピングカーや車中泊仕様車に絡んだ実際に災害時に役立つ装備や知識などについて述べさせてもらう予定だ。