車旅で使うコンロについて考えるvol.2
ガソリン・ホワイトガソリン・灯油などが燃料のストーブ(コンロ)は、ちょっと扱いが面倒で、車内での使用には適さないから車旅向きとは言えないといったような内容で前回は話が終わっていた。
そして今回はその続き。どちらかと言うと今回の内容の方が核心である。
初めて手に入れたストーブの話
と言いながら、その前に自分が初めて手に入れたストーブについて少し触れておきたい。
スベア123Rというガソリン(ホワイトガソリン)ストーブだ。
これは現在「オプティマス」として販売されているが、私が入手した当時はスベアの123Rだった。
70年代の終わり頃だから、スベアのブランドが既にオプティマス社に買い取られた後だったと後年知ることになる。
だが、当時はそんな事情など知らず、オプティマスには8Rという小型のストーブがあり、123R対8Rでスベアとオプティマスはライバル関係だと思っていた。
余談だが、「私のお気に入り道具」を紹介するような記事などで「昔から使っているオプティマス 123R・・・」なんて語っているものを目にすると、つい「昔じゃね~だろがぁ。昔から使ってるんだったら、これはオプティマスじゃなくてスベアなんだよ!」と言いたくなってしまう。
そんな自分を客観視すれば全くただの嫌なクソジジイだと思うのだが、こうして人は自分がジジイになってしまったことを実感していくのかと思う。気をつけよう。
そのライバルだと思っていたオプティマス 8Rも非常に個性的だった。
スーツケースのミニチュアみたいな水色の箱を開けるとバーナー部分とタンクが現れる。映画のトランスフォーマーにオプティマスというキャラクターがいるが、その箱がストーブになる様は、まさにトランスフォーマー的なギミックで面白かった。
そして、なんとなく当時ソロで動くバックパッカーのストーブはこの2択だったような感じがする。
そして私は少し迷ってこのスベア123Rを選んだ。
このストーブはバーナー部分の根元のタンクが円盤状に窪んでいて、そこに僅かに燃料を垂らしてそこに火を着けて余熱するようになっているのだが、その窪みから燃料が垂れてしまうとタンクが火だるまになってしまうなんてこともあったりする。
だから、ここにチューブ入りやタブレットのメタ(固形燃料)を置いて余熱するのが結構一般的な使い方だった。
また、タンクの蓋を開けて吸い終わったタバコのフィルターに燃料を染み込ませ、それをバーナーの根元の窪みに置き、そこに着火して余熱するという裏技もあった。
もう15年以上タバコも吸っていないから今やこの裏技も使わないけど、この方法ならメタなどを別途用意する必要がなく、ストーブが火だるまになる危険性もないから屋内でも安心して使うことができる。
実はポンピングして加圧する仕組みより、この余熱で加圧する仕組みの方が、炎が上がってしまうことが少ないのだ。
絶対に推奨はできないけど、実際にはこうして雪山のテントの中とかでもガンガン使っていた。
そして小さいくせに音は大きく、寒いときなどは聴いているだけで心強く感じるような、勇気づけられるような音だった。
これだったら車内でも使うことはできる(推奨はできないと言うより、絶対にやめていただきたいことだけど)が、現在そんなことはしていない。
何故なら日本国内の車旅なら他にもっと最適なものがあるからだ。
とは言っても、人力移動の旅より持って行ける荷物に余裕があるのが車旅の利点だ。
合理性だけで道具を選ぶのではなく、車内では使わないことを前提で、こうした風情のあるお気に入りの道具を幾つか選んで持って行くのも良いのではないかと思う。
少なくとも旅に出てもスマホの画面ばかり見ているより、そんなことは一時忘れてこうした道具と一緒に過ごす時間の方が心地よく贅沢ではないだろうか。
国内の車旅で最適のストーブとは?
それで、どんなタイプのストーブが日本国内の車旅に最適と私が思っているかという話だが、単刀直入に言うと、使い捨てカートリッジ(缶)入りのガスを使うタイプである。
123Rや8Rのような味も色気もないし、何を今更と思われるかもしれないが、日本国内で旅する上でこんなに便利なものはない。
都会に住む人の中にはその存在を知らない人もいるかもしれないが、都市ガスの設備が整っていない地域(私の家も含め、端的に言えば田舎)では、一般家庭でも充填式のプロパンガスが現在も使われている。
そしてアメリカではキャンピングカーやバーベキューグリルにプロパンガスを使用するのは手軽でごく一般的な手段でもあるから、特にアメリカからの輸入車にはこの充填式のプロパンガスのタンクを備えた車(キャンピングカー)が多い。
そして誰もが知っている通りガス機器は着火も火力の調整も簡単にできて大変便利だ。
と言うより、むしろそれが当たり前で、ガソリンや灯油のストーブ、薪のカマドを使うことがそう簡単ではなことを知らない人の方が多いのが実情だ。
焚き火やガソリンストーブを使用するのが当たり前だった経験があると、簡単に着火のできるガスの有り難さを忘れることがない。
しかし、日本では色々と法の規制等がややこしく、近頃は車に積んだものも含め、ポータブルのボンベにガスを充填してもらうことが以前より一層難しくなってしまっている。
そういった意味ではガソリン・灯油・薪より敷居が高くなっているかもしれない。
ガス缶の種類について
ガスの入ったカートリッジ(缶)は扱いの簡便さでいうと家で使う機器とほぼ同じだ。
使い捨てのガスの缶は、大きく分類すると2つのタイプに分けられる。
上の画像左のようなのがOD缶と呼ばれるタイプで、右側2つがCB缶と呼ばれているタイプ(長い方が一般的だが短い缶もある)だ。
そして、このOD缶とCB缶に互換性はない。
因みに正式な区分でもないと思うのだが、名前の由来はOD:OutDoor、CB:Cassette Gas Bombeだそうだ。
そして、OD缶・CB缶どちらにも言えることだが、法的な規程なのか保証とかに絡む問題なのか事情は詳しくは知らないが、各々の器具に使えるガス缶は決められていて、互換性があってもメーカー指定のガス缶以外は使えないことになっている。
しかし、実際にはCB缶はほぼ全て互換性があると考えて間違いないし、実際には多くの人があまり気にもかけずに他のブランドのガス缶を使っている。
そして、ブランドが違っても実際には製造しているところは同じなんてこともあるようだ。
日本には本音と建前という言葉あるが、何だかこの国に満ち溢れている公然のグレーの一つのような感じもして腑に落ちない。
一方のOD缶と呼ばれるタイプも互換性のあるものが多いが、一見似て見えてもメーカーによって全く互換性のないものもあるので注意が必要だ。
そして、国によって規定が違うようだが、日本の法律では使い捨てのガスカートリッジ(缶)には、充填式のプロパンガスのようなパワフルで寒さに強いガスを入れることができない。
そのため、ガスストーブは高山や寒冷地には向かないというのが定説だった。
しかし、レギュレーターやブースターなど器具側に工夫を凝らしたり、燃料の方も成分を工夫して低温に強くし、プロパンやガソリンには敵わなくとも、寒冷地向けのガスカートリッジが作られ、現在はこうした問題も随分解消されている。
そして、ましてや冬山登山向けの道具の話をしているわけではない。寒いと言っても普通に車で行ける範囲で使う道具の話だ。
確かに凄く寒い時にはパワーがないなあと感じるようなこともあるが、寒さに強い器具と寒冷仕様のガスの組み合わせなら、全く使い物にならないことなど考えにくい。
「全然使えない。」などと聞くと、車という頼もしいシェルターもあることだし、文句を垂れる前に少しは工夫してくれと言いたくなってしまう。
OD缶とCB缶どっちを選ぶか・・・
次にOD缶・CB缶のどっちのタイプを選んだら良いかという問題がある。
OD(Outdoor)缶は名前の通り、アウトドア用品として山などで使われることを想定して作られたカートリッジ。
一方CB缶は、元々は一般家庭の卓上で使われるカセットコンロと呼ばれるようなストーブ用の燃料として企画されたものだ。
また、器具との接続方法がOD缶はネジ山がしっかり刻まれたねじ込み式で安心感があるのに対し、CB缶はブシュッと差し込むだけのような感じで、比較するとこれだけで大丈夫なの?(ガッチリ固定する仕組みに工夫されたものもあるが)といった雰囲気である。
缶の作りなども、実際のところはどうなのか知らないが、なんとなくOD缶の方が頑丈そうに見えたりする。
これだけ聞くとCB缶を使う器具を外で使うのは心許なく、なんとなくOD缶を使うタイプを選んでおいた方が良さそうな気もしてしまう。
確かに寒風吹きすさぶ雪山で、家の中で鍋を囲む時とかに使う普通のカセットコンロと普通の燃料(寒冷仕様ではない燃料)を使うのは無謀ではある。
しかし、パワーの違いは缶のタイプの違いとは関係なく、あくまで器具側の作りと燃料の質に関係していることだ。
また、本格的な山用品用のストーブは名前の通りのOD缶を使うタイプというイメージは、欧米のメーカーにCB缶のガスストーブが見当たらないことも一因となっているのではないかと思う。
欧米のメーカーにCB缶のガスストーブが見当たらないのは、これは詳しいことは知らないけど、単に日本のようにCB缶の規格が普及していないことが主な理由ではないかと思う。
しかし、現在はちゃんとアウトドアで使うために作られたCB缶のストーブが日本のメーカーから出ているし、寒冷仕様のCB缶もある。
缶の形状の違いによるストーブ自体の性格の違いはあるとしても、それも絶対にどちらが有利と言えることではない。
少なくとも車旅で使用する上で、CB缶がOD缶に劣る理由など見当たらないどころか、有利な事の方が多いのが実情だ。
まず、CB缶は何より燃料を入手しやすい。
ガソリンスタンドがあればガソリンは買えるといった意見もあるし、先程グレーと書いたが、ブランドを問わなければカセットコンロ用のガス缶はコンビニでも大抵売っている。
そしてどんな僻地のようなところへ行こうと、集落に売店があればこれが手に入らないことはまずない。
それに対してOD缶はコンビニでも見かけることは少なく、運が良ければ釣具屋やホームセンターで入手できる可能性がある程度だ。
もう一つの大きな利点がコストの安さだ。
当然OD缶よりCB缶の方がずっと安く、ヘビーユーザーであればあるほど(旅する機会が多ければ多いほど)ランニングコストに開きが出てしまう。
ガス屋さんと契約してプロパンを使うよりカセットコンロの方が安くて済むという理由で(真偽は定かでないが)家でもカセットコンロのみという変人も実際私の友人にはいるほどだ。
またこうした話とは別で、他の器具との燃料の互換性を選ぶ際のポイントとして挙げる人もいる。
それも確かに間違いではないが、違った考え方もできる。
例えば、現在ランタンはガスやガソリンのランタンよりLEDランタンの方が合理的で主流となっている。
しかし、灯りに風情を求めるなら、燃料の互換性など無視して、メインのLEDランタンの外に灯油のランプやキャンドルを用意するのも良いと思う。
車旅なら、必ずしも「ストーブとランタンの燃料は統一して。」なんて固く考える必要などないのだ。
また、CB缶とOD缶のストーブ両方を使うことはあまり得策ではないとは思うが、手軽に使えるCB缶のストーブとは別に、よりキャンプらしい気分を味わうため、イベント的にガソリンの2バーナーストーブを用意するのはありだと思う(自分は今更そんな面倒なことなどしないけど)。
それと同様に先程の123Rや8Rも「もう一つのストーブ」の選択肢に入れる価値はあるんじゃないだろうかか。
こんな説明や考え方は、ステレオタイプな内容の記事には書いてないことだし、おそらく道具好きのにわかエキスパート(失礼)の先輩方のアドバイスにもないことだと思う。
でも私は断言してしまう。
余程特別な事情や趣味で選ぶのでなければ、日本の車旅に最適で基本となるストーブは、CB缶を使うストーブだと。
というところで、実際に私が愛用多用しているCB缶ストーブを紹介しようと思ったのだが、長くなり過ぎるので今回はこの辺で。