日本の道路事情にフィットした軽量ボディ!バンテック厚木の新作キャブコン『Puppy480』の魅力を検証
今回ご紹介するのは、株式会社バンテック厚木から発表された『Puppy480』。
日本の道路事情にもフィットする軽量でスリムなボディで、キャンピングカーに不慣れな人でも運転しやすいのが大きな強みだ。
ここでは、その魅力を1つずつ詳しく見ていきたい。
目次
コンセプト
バンテック厚木は、ZILシリーズなどでお馴染みのキャンピングカー製造・販売を手掛けるVANTECH株式会社の直営店として長年運営した後、株式会社バンテック厚木として独立。
バンテックで30年に渡りキャンピングカーに携わってきた竹内社長を筆頭に、「自分たちが作らないと、乗りたい人が乗れない」という使命感を持って、日々オリジナルキャンピングカーの販売やメンテナンスなどの業務にまい進している。
竹内社長は、自分たちが世に送り出したキャンピングカーを使って楽しんでいるお客様の姿を見て、影ながら喜びを感じているそうだ。
そんなバンテック厚木が、長年キャンピングカーに関わる中で培ったノウハウを随所に散らしながらも、「作る人目線」ではなく、自分が使うならどういった機能・設備が必要だろうか?と「使う人目線」を突き詰めた1台が『Puppy480』だ。
Puppy480は、「いらないものは省き、ほしいものは最大限に」というコンセプトで造られている。
そんな同車の1番の特徴は、車体のコンパクトさ。
シェル部分の横の張り出しがほとんどなく全幅は174cm、全長は485cm。
横幅が狭いため目の錯覚で高さがあるように見えるが、実は全高275cmと一般的なキャブコンと比べても同程度かやや低め。
それでいながら、室内高は大人が快適に過ごせる190cmがしっかり確保されている。
床を下げ、なおかつルーフベントをくぼませて屋根の出っ張りをなくすという工夫を施すことで、このようなコンパクトな車体が実現したのだという。
戸建住宅の駐車場に停めることができ、出先でも駐車に困ることのないサイズ感なのはうれしい。
想定しているメインターゲットはヤングファミリーだが、キャンピングカーにふれたことがない人でも、乗用車感覚でラクに運転ができるのは大きな強みだろう。
Puppy480
ビルダー:株式会社バンテック厚木
タイプ:キャブコン
ベース車両:カムロード 標準トレッド
価格:¥5,980,000(税抜)
乗車人数:7名
就寝人数:4名
全長:4850mm
全幅:1740mm
全高:2750mm
外装
実用性を一番に考えて開発されたため、Puppy480は架装部が四角く、バンクも先端から厚みがある。
人によっては無骨だと感じるデザインをスッキリと見せるために、要所要所に爽やかなマリンブルーのデザイン線を配置。
ロゴも、「パピー(子犬)=小さな生きもの」にふさわしい、丸みを持たせたかわいらしいデザインを採用している。
また、側壁パネルには厚さ10mmの断熱材を採用。スリムなボディでもしっかりと断熱されていることにも注目したい。
ルーフ
車の高さを少しでも低くするために、ルーフベントはくぼませて設置。
こういったボディラインの工夫は、軽キャンパーの『元祖Puppy』から受け継がれている。
ルーフの上の突起物を排除し、ほぼ平らにしているため、ソーラーパネルも置きやすい。
ルーフの両端部分には雨どいが設置されており、雨の日もサイドから水が落ちてこないような構造になっている。キャンピングカーオーナーを悩ませる側面の雨水によるバーコード汚れもできにくい。
ルーフベントには、吸排気スピードコントロール付きのマックスファン(MAXFAN)が標準装備されている。
リア周り
左側後方には、エアコンの室外機と、20Lの給水タンクが設置された収納庫がある。
この収納庫は室内のギャレー下とダイレクトにつながっており、外部からも室内からもアクセスできる構造になっている。
給水タンクは、ワンタッチで簡単に接続可能だ。
サイクルキャリアも装着できるので、旅先でサイクリングを楽しみたい人にもうれしい。また、サイクルキャリアを装着しても収納庫の開閉には干渉しないのもポイントだ。
その隣には、最長で190cmになる長尺収納庫も。スキーの板などもスムーズに収納できるだろう。
暗くなっても荷物を取り出しやすいよう、照明も完備されている。
テールランプは、「できるだけ品質の安定したものを提供したい」という竹内社長の思いと見栄えの面から、ハイエースのものを採用。ハイエースのテールランプなのでカスタマイズパーツも使用可能だ。
右側面の後方には、汚れ物などを入れておける外部収納庫、スムーズに開くように工夫がされた燃料の給油口がある。
排水タンクは、ポリタンク2本分にあたる47Lの備え付けのものをリア下に設置。
竹内社長の経験上、20Lの給水タンクだけでは足りない可能性があるため、心配せずに過ごせるよう、予備として20Lのタンクを積んでおくケースが多いからだという。
「自分が使う時、どうしたら楽になるか」という「使う側目線」で考えられた設備の1つだ。
キャップを外してレバーを引けば、スムーズに排水できる。
足回り
普通のミニバンと同じサイズ感で、大幅に軽量化を果たしたPuppy480は、走行性の高さにも注目したい。
さらに、横風を受けた時やカーブ時に車体が横に傾くのを抑制する、リヤスタビライザーをオリジナルで開発中だ。
内装
「商品としてではなく、自分の家として考えた場合、どういった設備がほしいか」を突き詰めた内装は、徹底的に機能の取捨選択をすることで、今までキャンピングカーにふれたことがない人も、快適かつスムーズに使えるように作り込まれている。
例えば、こだわりの1つにサードシートが挙げられる。竹内社長みずからの繰り返しの検証によって、身長により多少の差はあるものの、座った時の絶妙なフィット感を実現。
シートに深くもたれて頭を預けても、腰やかかとが浮くことがなく、長時間座っていても疲れにくい。
ひじ掛けも真ん中に鉄骨が入った頑丈な造りになっている。
エントランス
エントランスには、幅が広く大きめのステップ。
簡単に足をかけられるよう、1段目が低く設計されている。そのままでも十分に乗り降りがしやすい設計だが、小さな子どものいる家庭などは、並行スライドタイプのステップをオプションで付けることも可能だ。
外気温の断熱、走行音の防止のため、ステップには断熱材を挟んでいるのも特徴だ。暗くても足元が見やすいように照明も設置されている。
また、室内で過ごしている時にステップ部分に足を踏み外すことがないよう、取り外し可能なステップボードが標準設備されている。
ステップを上がった左手には、65Lの冷凍冷蔵庫が。このサイズは日本初上陸だという。
奥行もあるので使い勝手が良く、中の仕切りを取り外せば、背の高いドリンク類なども置けるようになっている。
冷凍冷蔵庫の上は引き出しで、照明やエアコンのリモコンといった小物類を入れるのに便利だ。
ダイネット
ダイネットの窓はとても大きくて開放的。車内への採光も良くとても明るい。
断熱性もよく結露がしにくいアクリル二重窓を採用。上下に動かせるブラインドと網戸も、ポピュラーだが便利な機能だ。
ダイネットテーブルは幅が非常に広く、対面で座ってもお互いの足が当たらないほど。ダイネットテーブルのカップホルダーは、食事の邪魔にならないよう、窓側に2つのみ配置されている。
ベッド
コンパクトな車体ながらも、フロアベッド(1900×1000mm)、バンクベッド(1900×1620[※1400先端]mm)は、どちらも190cmをしっかり確保。
ダイネットテーブルを外してセカンドシート・サードシートに渡し、背もたれのマットを乗せるだけで、フロアベッドを展開できる。
背もたれのマット部分を折り返すことで、より平らになるというきめ細かい工夫も。
バンクベッドの展開も、ベッドボードを1枚引き出すだけという手軽さだ。
また、温かみのあるオリジナルの木製バンクラダーは、竹内社長の経験から、広めの踊り場も設けられている。
踊り場があると、夜間でもバンクベッドから安心して降りられるからだという。走行中はバンクに横方向に置けるようになっている。
またこのバンクラダーは、オプションの補助ベッドのフレームとして使用する。
補助ベッドが安定するだけでなく、設置したままでも乗車動作が可能で、冷蔵庫も開閉できるように設計されている点も特徴だ。
バンクベッド・フロアベッドの両方とも、枕元に小物類を入れられるポケットと、スマートフォンなどを充電できるUSBコンセントが設置されているのも便利だ。
ギャレー
車内後方にL字に設置されたギャレー(キッチン)がある。
シンクの蛇口の根本に、傾斜の付いたアクリルパネルがあるのがこだわりのポイント。傾斜に沿って水がシンクへと流れるので、蛇口を水がつたっても根本に水がたまりにくい。
加えて蛇口のヘッド部分の位置を上げることで、シンクに食器が入れやすく、洗い物もしやすい構造になっている。パネルは簡単に着脱できるのでメンテナンスもスムーズだ。
コンロは開閉型。コンロの下には外部とつながっている収納庫がある。
右手には引き出しと電子レンジの収納スペースがあるが、オプションの電子レンジを使わない場合は収納庫として活用できる。
マルチルーム
マルチルームをトイレとして使う場合は、ポータブルトイレと外からもアクセスできる扉がセットになったオプションがある。
後方上部には、小さい扉が。中を開けると外部の長尺収納庫とつながっており、棚板を取ると、190cmのものまで収納可能になる。
小さい子どもでも手が届く位置に照明のスイッチがあるので、子どもが夜に起きてトイレに行く場合も安心だ。
収納
ダイネットには、大きく奥行のある吊り棚を設置。
その下には照明、さらに間接照明がある。間接照明はドライバーの視界に入りにくい位置にあり、夜間でも灯りを点けたまま走行できるのが魅力だ。
ギャレーそばのベンチとして使える収納庫は、荷物の整理をしやすいよう、フタを開けた状態で保持できるのが特徴。
サードシート下も収納スペースとして活用可能だが、ここにはFFヒーターがあるので熱に弱いものの収納やFFヒーターの吸い込み口をふさがないように注意が必要だ。
ちなみに、シートベルトはすべて巻き取り式。ベルトが「だらん」として邪魔になることなく、快適に過ごせるだろう。
空調
標準装備の家庭用エアコンは、停車中はサブバッテリーから給電、走行中などエンジンを始動しているは時はオルタネーターから直接インバーターに電気を入力するシステムを採用。
設定温度によって変動するため一概には言えないが、停車している場合、日中ならトリプルバッテリーで3時間、夜間なら一晩は十分に持つという。
FFヒーターも標準装備。室内空間があたたかい空気で満たされるのはもちろん、マルチルームへの吹き出し口もある。
また、運転席と居住空間の間には、「冬場はカーテンだと寒い」というキャンピングカーオーナーの意見を活かし、ボタンフックで留められる断熱性に優れたキルティング加工のシートも設置。前方からの目隠しとしても重宝するだろう。
電装系
外部充電に加え、走行充電はバンテック厚木オリジナルの「昇圧走行充電システム」を採用。
コンスタントな電流で充電できると同時に、エンジンがかかっている間はエンジン(オルタネーター)からダイレクトにインバーターへ電流が流れるため、サブバッテリーを消費しないのが特徴だ。
例えば、走行中にエアコンを使用した場合、電力はオルタネーターからダイレクトに賄われるため、サブバッテリーを消費しなくて済む。
さらに、1500Wのインバーターに加え、ダイネットの照明、テレビ用コンセントとして小型の122Wインバーターを別途装備している。
オプションで480Wの大容量ソーラーパネルも設置可能だ。
まとめ
車体のコンパクトさに加えて、走行フィーリングも良い『Puppy480』は、キャンピングカーが初めての人も気軽に乗れるサイズ感なのが大きな強みだ。
実はこの『Puppy480』構想、オーナーたちの生の声でブラッシュアップを続けながら、竹内社長が10年間あたためてきたものだという。今回実現に至ったのは、タイの工場「モーターホーム社」の協力があってこそ。
モーターホーム社の中島さんは竹内社長のバンテック時代の同僚で、約30年の付き合いになる。当時から竹内社長が営業先の声や要望を、設計を担当する中島さんに伝え、製品をより良く改良するためのサイクルを回していたのだそう。
その関係性を生かしてデザイン、内装レイアウト、素地といったアウトラインは竹内社長が指示、モーターホーム社の設計技師がミリ単位で寸法調整を行い、約1年の月日を経て『Puppy480』が完成した。
10年、20年後も乗り続けられるよう、歴代の車の中で、もっとも故障などにスムーズに対応できる構造にしたというのも特筆すべき点だろう。
「遊ぶための車ではありますが、それだけじゃない。乗用車感覚だけど、乗用車よりももっと活用してもらえると幸せです」と竹内社長が話すとおり、同車は遊びはもちろん、自宅の離れ、別荘、隠れ家、はたまた災害時の避難場所としても大活躍すること間違いなしだ。
小さい子どもがいる家庭は特に、子どもの「キャンピングカーでお出かけだ!」とはしゃぐ姿が、かけがえのない宝物になることだろう。
バンテック厚木
住所:神奈川県厚木市山際511番地
TEL:046-280-5983
定休日:毎週水曜日、第1・3木曜日
公式URL:http://www.vantechatugi.com/