キャンピングカー
【取材】21年のロングセラー・国産最上級キャンピングカー!常設ベッドのバンテック・ジル520
誰が見ても本格的キャンピングカーだとわかる国産キャブコン。
キャンピングカービルダー(メーカー)各社から様々なモデルが発売されていますが、28年前から進化を続けて、派生モデルも生まれているのがバンテックのZiL(ジル)シリーズです。
現在ジルシリーズには、ジルとジル520、ジルノーブルと3種類がありますが、本記事で紹介するのはジル520。
2004年発売で、車両中央にエントランスドア(出入口)があって、最後部に常設ベッドがある定番レイアウトのキャブコン※です。
今回はジル520について、2025年モデルの実車を見ながら、VANTECH株式会社・広報部の中野 聡史さん(以下、中野さん)からお話しを聞きました。
取材場所は、バンテックの直営店の一つであるVANTECH神奈川。
写真とともにくわしく解説します。
※キャブコン=居室部分を外装含めて大幅に架装したキャンピングカー
ジル520は、国産最上級キャブコン・ジルの派生モデル

キャンピングカーの国内保有台数が増え続けています。
2016年に10万台を超え、そこからは毎年約1万台ずつ増加。
2024年末時点では16万5000台に上っているとのこと。
キャンピングカーを製作するキャンピングカービルダーも現在では60社以上。
各ビルダーから様々なモデルが発売されています。
そんな中で、28年前から売れ続けている国産大型キャンピングカーがバンテックのジル。
その派生モデルがジル520です。
ジルに負けず劣らずの超ロングセラーであり、バンテックのフラッグシップモデルの一つとなっています。
装備や車両サイズは元々あったジルと共通で、レイアウトが違うバージョンという位置付け。
車両最後部に出入り口があるリアエントランスモデルがZiL(ジル)、車両中央あたりに出入り口があるセンターエントランスなのがジル520という位置付けです。
※リアエントランスのジル2025年モデルについてはこちら
バンテック・ジル520
ベース車両:TOYOTA CAMROAD
車両寸法:全長516cm(リヤラダー含まず)×全幅207cm(サイドオーニング含まず)×全高295cm
乗車定員:7名(2WD)、6名(4WD)
就寝定員:5名
希望小売価格:12,990,000円~(税込、諸費用別)
※価格・仕様は変更となる場合があります。
公式サイト▷VANTECH
キャンピングカーに求められる快適アイテム、ほぼ標準装備
前述したようにジル520のデビューは2004年。発売から21年のロングセラーモデルです。
「長く進化を続け、現代のキャンピングカーに求められる快適設備がそろっています」(中野さん)
家庭用エアコン、FFヒーター、冷蔵庫、電子レンジ、トイレ、シャワー。足回りの専用パーツとして専用ショックアブソーバーまで。
しかも、これらはすべて標準装備。
「オプション装備もいろいろ用意していますが、付けるとしてもソーラーパネルとテレビモニター+受像機(テレビ取り付けアームは標準)くらいだと思います」(中野さん)
あらかじめ欲しい装備「全部載せ」。
さすがはバンテックのフラッグシップです。
各部をくわしく見ていきましょう。
一体成型のシェルをまとったこれぞキャンピングカーといった外観

前述しましたが、ジル520はキャブコン(キャブコンバージョン)タイプの大型キャンピングカー。
トヨタ・カムロードをベース車として、居住部分のシェルを架装しています。
キャンピングカーについてあまり知らない人でも、一目でキャンピングカーだとわかる外観です。
ジルの外装のいちばんの特徴はこのシェル。
FRPでできた大きなシェルですが、つなぎ目のない一体成型。
デザイン的にスマートで雨漏りの心配もありません。
見えないところでは断熱処理も万全で、屋根はグラスウールと合板、発泡断熱材。
側面には断熱空気層・合板・発泡断熱材が重ねて施工されており、高い断熱性能を確保しています。

また、これも先に述べましたが、出入り口が車体の真ん中にあるセンターエントランスレイアウトもジル520の外観上の特徴。
カムロードをベース車にしている国産キャブコンはバンテック以外からもいろいろと出ていますが、「現在はどこのモデルも主流はセンターエントランスです」(中野さん)
出入り口が車体の真ん中にあると、室内最後部に常設ベッドを設置できます。
『せっかく大型キャンピングカーを買うなら、横になりたいと思ったときにすぐ寝ころべる常設ベッド付きがいい』というユーザーが多いから、センターエントランスの国産キャブコンが人気なのでしょう。

エントランスドアの下には電動ステップを標準装備しています。
また、見えにくいところですが、乗り心地を左右するショックアブソーバーもカムロードのノーマルパーツではなく、バンテック仕様の専用ショックアブソーバーが標準で付いています。
車体のあちこちに外部収納

ジルの外観で目立つのは車体側面や後部の収納庫。
まず車両右側、後輪の後ろの収納庫。

後部の収納庫は引き出し式。
「底部に水抜き穴があるので、濡れたものや汚れたアウトドアの道具を入れておいて、後で収納庫内部を水洗いできるので便利です」(中野さん)

そしてジル520でいちばん大きいのが、引き出し式収納の上にある収納スペース。

左側にも扉があるほか、車内の常設ベッドからもアクセスできます。

車内、車外どちらからも、大きな荷物や長物を入れたり出したりしやすい設計です。
キャンプ気分が盛り上がるサイドオーニングも標準装備

そしてもう一つ。車体外部の特徴がサイドオーニング。
サイドオーニングとは、車の側面に常設されている日よけ兼雨よけの幕。
普段はロール状に収納されていて、使用時に引き出して使います。
これがあると一気にキャンプ気分が盛り上がるアイテム。
ジル520では標準装備されています。
ベッド3つ、キッチン、リビング、マルチルームまである室内

ジル520の室内を見ていきましょう。
車両中央のエントランスドアから室内に入ると、正面がリビング(ダイネット)。
右横にはキッチン、キッチンの対面にトイレ・シャワー・洗面台付きマルチルーム。
室内最後部が常設2段ベッドとなっています。
また、大型キャブコン共通のメリットですが、大人が立って歩ける高い天井高(約190cm)も魅力です。
リビングは大人5名までが座れます

リビングルーム(ダイネット)は大きなテーブルを挟んで大人5名が対座可能。
2~3名なら、かなりゆったりくつろいだり食事したりできるスペースです。

リビング右側には大型のアクリル二重窓。
断熱性・遮音性ともに抜群で、網戸とシェード、両方が付いています。
ドリンクホルダーもあって、移動中でも飲み物をこぼしにくい配慮がされています。
家族連れでも十分。3カ所の就寝スペース

ジル520の特徴としては、豊富な就寝スペースも挙げられます。
キャブコンタイプのキャンピングカーとして象徴的な運転席・助手席頭上のバンクベッドに大人がゆったり2名分。
子どもなら体格にもよりますが3~4名は寝られるでしょう。

後部常設2段ベッドには上下1名ずつで大人2名。

上下とも跳ね上げ式で、上段ベッドを使わず下段で寝る場合は上だけ跳ね上げれば頭上の空間もかなり余裕が生まれます。

2段ベッドの枕元には照明スイッチと家庭用コンセント付き。
実際に寝ころんでみましたが、幅と長さは一人で寝るには寝返りも打てるくらい十分な広さでした。
また、セカンドシートとサードシートをフラットにすることで、リビングもベッドに。
補助マットを敷き詰めれば、余裕で大人1名が寝られます。
ジル520の就寝定員は5名となっていますが、これらのベッドをうまく使えば大人3名+子ども4名といった大人数の家族連れでも車中泊できます。
収納たっぷりで温水も使えるキッチン

前述したようにキッチンはエントランスドアから入ってすぐの右側。
ガスコンロは2口。
ジル520には温水ボイラーが標準で備わっているので、シンク内の蛇口からは温水も出ます。

コンロとシンクには上蓋が付いていて、使わないときはキッチンの上面全体をフラット化することも可能。
シンクとコンロの下には、食器や調味料を収納できる引き出し式の収納。
キッチンの頭上にも収納棚があり、自宅のキッチンと比べても遜色ない設備が整っています。
トイレ、シャワー、洗面台付きのマルチルーム

長期の車中泊旅行にも対応できるように、リビング後方のマルチルームにはトイレとシャワー、洗面台も完備。
トイレはラップ式で、圧着して排泄物をラップの中に閉じ込めるので、汚水処理の手間がなく後処理のことをあまり気にせずトイレを使えます。
シャワーと洗面台はキッチンと同様に温水も使用可。
寒い季節でも快適に洗顔やシャワーができます。
まさに動く別荘、動くホテル。トイレとシャワーがあると災害時のシェルターとしても万全です。
エアコン、ヒーター、天井換気扇、冷蔵庫、電子レンジまで標準装備

ジル520は家電などの快適装備も大充実。
冷暖房どちらも使える家庭用エアコン、キャンピングカー定番の暖房機器・FFヒーターも標準装備。

さらに、ジル520ではFFヒーターの配管がリビングの床下を通っているため、床暖房も兼ねています。
エアコンやFFヒーターだけだと足元が冷えることが多いですが、そんなデメリットも解消しています。

空調設備では、ルーフベンチレーター(天井換気扇)も標準装備。

家電類では冷蔵庫、電子レンジ(電子レンジのみ2026年モデルから)も標準で付いています。
たっぷり電気使えます

エアコンや天井換気扇、冷蔵庫、電子レンジ……。
電気製品満載のジル520には、それらを動かすための電源設備もしっかり標準装備。
サブバッテリーは2,000Wh×3で計6,000Wh。
8畳用のエアコンが一般的な目安で冷房時に消費電力700Wと言われているので、単純計算すると6,000Whというのは、冷房で8.5時間使えるくらいの容量。
予備としてポータブル電源を用意しなくても、かなり強力です。
王道レイアウト、細部まで使いやすい本格的キャンピングカー

ここまで紹介したこと以外にも、リビングの足元に間接照明を付けることで、夜間に誰かがトイレに立っても他の人がまぶしくて起きてしまわないようにしたり、エアコンの室外機回りが遮音構造になっており、室外機の作動音が室内で気にならないようにしたり。
ジル520には、細部まで快適な車中泊ができるような配慮がなされています。
繰り返しになりますが、本記事で紹介した機能や設備はすべて標準装備。
キャンピングカーにあったら便利で付いていてほしい設備が最初からそろっているのがジル520です。
「オプション装備もいろいろ用意していますが、付けるとしてもテレビモニターと受像機(テレビ取り付けアームは標準)、ソーラーパネルくらいで十分だと思います」(中野さん)
しかも、納期は約半年。昨今、キャンピングカーの長納期化が当たり前となっている中で、驚くほどの短納期です。
定番レイアウト・センターエントランスのジル520。
家族での長期車中泊だけでなく、災害時のシェルターとしての利用も見据え、最初から装備がそろっているキャンピングカーに乗りたい人に向いているモデルと言えます。
