キャンピングカー
車中泊仕様にも対応!ドイツbottの高性能キャビネットシステムとは

ドイツbott社の車載用キャビネットシステムが車中泊ファンの心を刺激
今回の記事で紹介するのはキャンピングカーでもなければ車中泊仕様に作られたクルマでもなく、車中泊向けに作られた関連用品でもない。
キャンピングカー大手の株式会社トイファクトリーが日本総代理店として輸入施工販売を手掛ける、ドイツbott社の車載用キャビネットシステムだ。
これは本来働くクルマ用に作られたキャビネットシステムなのだが、ここで紹介したいと思った理由は、特に何か明確な目的があって車中泊をするような人の感性を強く刺激するようなものと思ったからだ。

かくいう私も思い切りくすぐられてしまい、ウェブサイトで見ていてこれは是非現物を見てみたいと思っていたところ、現在東京の南町田グランベリーパーク内にあるトイファクトリー東京店でデモ車両が展示されているとの情報を得た。
トイファクトリー東京店ASObottについてはこちら▷トイファクトリーHP

そして、南町田のグランベリーパークから程近い相模原市内にトイファクトリーの輸入車キャンピングカー専門店「ユーロトイ相模原」がオープンするのにも合わせ、トイファクトリーのbott担当者も東京店に来られているということで直接お話を伺う機会も得たので、ハイゼットジャンボに乗って東京湾を渡り、取材に行ってきた。
bott詳細はこちら▷トイファクトリーHP
ユーロトイ紹介記事はこちら▷トイファクトリーが輸入車キャンピングカーの屋内展示場をオープン!【取材】
ヨーロッパの働くクルマの先進性とbottの機能美
工具やパーツ類を収納する棚や引き出しなどを荷室に設置した働くクルマ(バンやトラック)は別段珍しいものではない。
業種に応じて特装車メーカーにオーダーして作られた車両、町の鉄工所などに作ってもらった棚を設置したもう少しライトな感じの車両、あるいはアングルなどを組んで自作した棚を設置した車両などがあるが、大抵はお世辞にも見た目が洒落ているわけではない。
働くクルマが好きな人でもなければあまり関心が寄せられることもないと思う。
ところが、同じような目的で使われる働くクルマも、ヨーロッパでは少々様子が異なるようだ。
ヨーロッパでは特装車メーカーなどとは別に、コマーシャルバンやトラック用のシステマチックな車載用キャビネットを製造するメーカーが何社もあり、それが当たり前のように普及しているそうなのだ。
そして、見た目も日本の同種の働くクルマより断然洒落ていてカッコイイ。
直接自分には関係なくてもなんだか羨ましく思えてしまうのだが、実はキャンピングカーメーカー大手の株式会社トイファクトリーが、ヨーロッパ最大手のドイツの車載用キャビネットシステムメーカーと日本総代理店契約を結び、3年ほど前から輸入施工販売を手掛けていたようなのだ。
その車載用キャビネットシステムのメーカーが「bott社」だ。

bottのウェブサイトやパンフレットの写真を見ると、機能美に溢れ、整理整頓が行き届いたカッコいい働くクルマが並んでいる。
現在の自分の仕事に直接結びつくわけでもないのだが、こんなクルマで仕事に向かえば仕事の効率や質が上がり、良い仕事ができそうにも思えてしまう。
実際ドイツなどヨーロッパ諸国と比較して、日本は生産効率が低い傾向があることが数字にも表れてしまっているようだが、案外こういったことも影響しているのではないかと、羨ましいような、ちょっと情けないような気分にもさせられてしまう。
次のページ▷▷▷【bottはどんなキャビネット?どんな車につけられる?】
日本総代理店トイファクトリーが提供するbottキャビネットシステムの概要
bottのキャビネットシステムは基本的に働くクルマのためのものなので、このシステムが「車中泊仕様車やキャンピングカーにも活用することが可能なのか?」といったことがDRIMOの読者にとっては一番関心のある点かと思う。
というより、それができなければDRIMOで取り上げる意味がない。
bott社が推奨しているわけではないが、もちろん車中泊仕様車への応用は可能だ。
カスタムオーダーのシステム
bottは出来合いのキットを組み込むとか、基本形があって、それをカスタマイズして設置するだけのようなシステムではない。
約25000点にも及ぶパーツから用途に合わせて必要な物をチョイスし、車両の形状に合わせてキャビネットを作り上げていく完全にカスタムオーダーするシステムとなっている。
パーツ類の材質は、腐食に強く軽量で丈夫なアルミ合金が多用されている。
そして、キャビネットのサイズは、幅は12cm、高さは5cm刻みと、大変細かなサイジングが可能だ。
しかし、逆に全てを0から作り上げるのでは効率も悪くコストも嵩んでしまうが、bottには、軽く頑丈で精度の高い作りのシェルフ型、引き出し型、ボックスなど多種多様な形状の基本ユニットが用意されている。
こうしたユニットが用意されていることによって、コストや強度の面でも有利になるが、発注前にユーザーが完成イメージを描きやすくなり、それも大きな利点になっていると思う。
そして、ユーザーとメーカーとのコミュニケーションを円滑に進めることにも大いに貢献しているのではないかと想像できる。
また、多種多様なユニット類は、もちろん工具や部品の収納だけでなく、使い手の想像力次第で色々と便利な使い方ができるはずだ。
それをいかに上手に自分の使い方やスタイルに取り入れるかは楽しくもあり、ユーザーのセンスの見せ所にもなるだろう。
bottのオーダー方法と設置が可能な車両
bottのオーダー方法だが、まずはbottのドイツ本社での技術研修に合格したトイファクトリーの認定スタッフが、ユーザーから使用方法や組み込む車両などについてしっかりとヒヤリングを行う。
その後、それを基に専用のプランニングソフトを用いてシミュレーションを行い、ユーザーと一緒にそのユーザーにとっての理想の形を作り上げて行く。
そして、金額や納期面でも納得がいった後にドイツのbott社へユニットを発注する。
イメージや予算に合わなかったなどといった間違いが限りなく生じにくい、堅いシステムだ。こういったところにもドイツらしさを感じる。
次にbottのキャビネットシステムを組み込むことが可能な車種はどうなのか?
例えば、ベッドキットなどにはハイエース専用でキャラバンには取り付け不可などいったものも少なくない。
しかし、bottは先に述べた通りカスタムオーダーのシステムなので、基本的にどんな車種を選ぶことも可能だ。軽自動車を選ぶこともできる。
そして、ベース車両は新車をbottと合わせてトイファクトリーに発注することもできるが、持ち込みもOKなので、現在使用中の車両や中古車をベース車両に選ぶことも可能だ。
ところで、車種に合わせて形状やサイズが完全オーダーとなるパーツも多いわけだが、ヨーロッパでは主要な車両データがbott社側に揃っている(デュカトはサイズの種類も多いが、それら全て網羅している)ため、そこは比較的容易に進むようだ。
しかし、日本車の場合はbott社にデータのない車種の方がむしろ多くなってしまうため、スムーズに間違いなく進むのか心配になるところだ。
だが、そこはキャンピングカーの製造でノウハウの蓄積されたトイファクトリーならではだ。
正確なデータを用意してスムーズにメーカーへユニットを発注することができるので、その点でも安心だ。
そしてドイツからユニットが届いたら、トイファクトリーの専門スタッフが取付施工をして完成ということになるのだが、シミュレーションから完成までに要する時間はおよそ4ヶ月程度だそうだ。
4ヶ月というと長いような短いような微妙な時間だ。
しかし、現在新車のキャンピングカーを発注した場合、納車まで1年以上待つなどということはざらだ。
また、現在はノーマルな車両本体の納期もかなり時間がかかっていることが多いようなので、ベース車両より先にオーダーメイドのbottのパーツが届いてしまう可能性も十分あり得るということになる。
そう考えると、シミュレーションから完成までがおよそ4ヶ月というのは、非常に短いのではないかと思う。
車検やナンバーはどうなる?

安全性を最重要視しているbottのキャビネットシステムは、ガッチリと車両に固定される。
そのため、構造変更の届けをすることになり、同時に車検整備も受けることになる。
構造変更と聞くと少し面倒な気がするかもしれないが、そういった手続きもトイファクトリーが行ってくれるのでユーザーは何も面倒なことなどなく、むしろ正式に構造変更を届け出ておくことのメリットは大きい。
例えば、走行中に倒れないように棚をしっかりと車両に固定したとすると、その棚は荷物とは見なされなくなってしまうため、構造変更を届け出ていなければ車検が通らなくなってしまう。
面倒でも基本的には毎年荷物も棚も全て降ろさなければならなくなってしまうということだ。
そんな手間が省け安全性が高いのだからこんなに良いことはない。
次にナンバーについてだが、bottをハイエースやキャラバンのような商用車に組み込む場合、基本的に4ナンバーや1ナンバーのままで登録することになる。
こういった貨物車ナンバーは初年度以降毎年車検になるのでそれを嫌がる人もいる。
しかし、12ヶ月点検は車検のように受けなければ走らせることができなくなるというものではないが、いずれにしても12ヶ月ごとにしっかり点検はしてもらった方が良いと考えると、車検もそんなに煩わしいものでもないし、税制で有利という大きな利点もあるので、特に不利に感じることなどない。
それが、長年バンやトラックに乗り慣れている者(私)が実感の上の意見だ。
また、キャビネットの設置状態も1年に一度くらいは点検しておいた方が良いという意味でも、点検を忘れずに済むので毎年車検でちょうど良いのではないだろうか。
あるいは、寝台・水道・調理設備なども組み込み、キャンピングカーとして8ナンバー登録をすることも不可能ではないと思う。
しかし、あまりそういった方向に作り込み過ぎてしまうと、bottのキャビネットシステムを利用する意味合いが薄れてしまう可能性もある。

普通にトイファクトリーのキャンピングカーをオーダーした方が良いようなことになってしまったら本末転倒なので、bottを車中泊に利用するなら、やはり貨物車ナンバーのままの登録の方が良いように思う。
トイファクトリー東京店で体験できるbottキャビネット

トイファクトリーはフィアット デュカトの正規ディーラーでもある。
bottのキャビネットシステムを組み込んだデモ車両もデュカトだ。
南町田のグランベリーパーク内にあるトイファクトリー東京店は、「TOY-FACTORY ASOBI STYLE」のアンテナショップとして、キャンピングカーと遊びを楽しむための様々な情報を発信している店舗だ。

そして、「キャンピングカー・レンタルサービス」も行っている他、店舗内には、ミニベロと電動アシストサイクルの販売を手掛ける「TOY-BIKE」コーナーも設置されている。
というより、その「TOY-BIKE」コーナーが大変充実しており、私が訪れた時点では店内に2台のキャンピングカーと、屋外にbottのキャビネットシステムを組み込んだデュカトも含め2台の車両が展示されていたのだが、どちらかといえばキャンピングカーも展示しているミニベロ専門店のようだった。
私も折り畳み電動アシスト自転車をクルマに積んでいるが、「キャンピングカーまたは車中泊仕様車+ミニベロまたは折り畳み電動アシスト自転車」は、旅先での活動範囲が広がる非常に良い組み合わせだ。
デモ車両は車中泊も可能な自転車のサービスバン仕様
そして、bottのキャビネットシステムを組み込んだデモ車両のデュカトは、この店舗にピッタリマッチした自転車のサービスバンのような仕様となっていた。

上の写真だけ見たら、自転車マニアの部屋かお洒落な自転車屋さんの整備コーナーのように見える。
しかし別な角度か少し引いて見ると、運転席もある紛れもないクルマの中だ。

車内が広いのでもちろん何台も自転車を積める余裕もあるが、細かなパーツや整備のための工具の多い自転車にとって、こんな動く基地はありがたい。

車内左に設置されている木の天板は幅を広げられるベンチになっていて、その上にスリーピングマットを敷けば快適に寝られるようになっている。
これはbottで元々用意されているオプションというより、キャンピングカーメーカーのトイファクトリーのお家芸のようなものだ。
こんなクルマを見たらヨダレを垂らす自転車乗りもいそうだ。
見た目・機能ともに美しいユニットの数々
このクルマに組み込まれているユニット類は、数ある中のほんの一部でしかないようだが、いくつか細かい部分も見てみよう。

上の画像は棚から積載物が落ちるのを防ぐためのストッパーのようなパーツだ。
同じストッパーが二列並んでいるが、奥(車両前方側)が閉じた状態で手前が開けた状態だ。
さすがドイツの工業製品といった感じの美しい装いだが、少し上に上げるだけでロックが解除され、下ろせばしっかりロックされるという見た目も操作もシンプルな仕組みだが、作りはしっかりしていて安全性が高い。
これ一つ見ただけでも、ドイツ人はなんでこう野暮ったくならずに丈夫で確実なモノが作れてしまうのかと、本当に感心してしまう。

これも地味だが非常に便利で美感を損なわないパーツの一つだ。
例えば、ラッシングベルトの固定に使える(専用のラッシングベルトももちろん用意されている)レールなのだが、ベルトのアンカーになる位置を細かく変更することができるようになっている。
荷室の床や壁の所々にベルトやロープを通すリングが付けられているバンはある。
しかし、リングのある位置が決まっているとそれに合わせて荷物を載せる位置を決めることになってしまったり、荷物の大きさや形状によってはあまり役に立たなかったりするケースもある。
しかし、このように細かに位置の調整ができて、必要な数だけベルトを付けられるようになっていれば、載せたいところに荷物を載せられて、しっかりと固定できて安全性も高い。
そしてこのレールは好みの長さのものを色々な場所に取り付けることが可能だ。

目立ちもせず、地味ながら、実は非常に使い勝手の良さそうなパーツの一つだ。
他にも、こんなパーツケースなどもある。

細かなカラクリの説明は省くが、これもまた凝った作りで、これ単体でも欲しくなってしまうような代物だった。
こういったものもきっちりキャビネットに収まるようになっているのだが持ち出しもしやすくなっていて、トータルでコーディネートできるようになっているところがまた憎い。
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アイデアが広がるbottキャビネットシステムの活用例
bott社としては、日本でも一番推進して欲しいのは、本来の”働くクルマとして使い方”だそうだが、アイデア次第で様々な業種や遊び方に応用できると思う。
私はデモ車両を見ていて、何に向いていると考えるより、こんな商売やあんな仕事に使えると、逆にできる仕事ややってみたい商売をあれやこれやと妄想してしまった。
モトクロッサーやMTBのトランポ兼ピット兼宿には間違いなく最高だと思う。見てきたデモ車両の内容ほぼそのままで行けそうだ。
動くスキーのチューンナップルームにも良さそうだ。
私は以前潜水工事や調査をするダイバーをしていたことがあるのだが、その時にこんなクルマがあったら最高だったろうなとも想像してしまった。
ドローンやラジコンの基地(遊びじゃなくて仕事の)としても最適だ。
僻地(へきち)で長期間働くことになることの多いログビルダーの倉庫兼家にも良いと思う。
また、平日は仕事の道具、休日は遊び道具のように、ボックスやカゴなどのユニットごと入れ替えて使うなどという手もある。
永遠の憧れのサンダーバード2号のようなシステムだ。
また、現在大きな重機類は人が乗り込まずに遠隔操作(巨大なラジコのパワーシャベルやダンプのようなこと)をすることが多くなっているようだが、実際にその操縦ルームとして活用されている例もあるそうだ。
こうして並べたてても尽きないが、車中泊にbottのシステムを導入するのであれば、例えばMTBのレースに参戦するとか、ドローンの撮影基地にするなど、大きな物を積むことができて、尚且つ細かな物の収納がキッチリできることと宿になることも必要など、冒頭でも述べた通り明確な目的のある使い方に向いていると思う。
気になる購入・設置の価格は?
ベースとなるキットのようなものがあるわけではないので、価格も¥〇〇〜のような設定ではない。
例えば引き出しの数が多くなればそれだけどんどん料金も嵩んでいくような仕組みであるため、サイズもあまり価格の目安にはならなさそうだ。
また、その都度輸入することになるので、為替レートにも左右される。
しかし、半ば無理やり参考価格を提示するとすれば、このデモ車両は工賃など全て含めて(車両代は含まず)およそ¥80万ほどとのことだった。
ベース車両のデュカトは、クルーズコントロールや衝突安全関連など走行に関わる部分はしっかりなんでも揃っているような状態ながら、キャビンから後ろは全くの伽藍堂で無駄がないため、L2H2サイズなら新車で529万円〜と、意外なほどに高くない。

ローグレードは何から何までお粗末で、ハイグレードは要らぬものが付いて無駄に価格も高くなってしまう日本車に多い設定と真逆だ。
デュカトは、トイファクトリーをはじめ正規ディーラーができたので、整備関係も心配がなく、安心して乗り続けることができる。

また、正規輸入車はもちろん安心安全の右ハンドルだ。
日本車にも組み込み可能だが、1000万円しないでこんなクルマが手に入るなら、中途半端に日本車を選ばず、ここは一つベース車両もデュカトにしてカッコよく決めた方が良さそうだ。
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こんなクルマが増えたら日本の景気も良くなりはしないだろうか
デモ車両を見ていて思ったことは、とにかく想像力が広がるし、先にも書いたが、こんなクルマがあったら良い仕事ができそうだということだ。

こんなクルマで仕事も遊びも大いに楽しむ人が増えたら生産効率も上がり、世の中が明るくなって、景気の好転にも影響するのではないかと、ドイツ製の車載キャビネットシステムはそこまで気持ちや考えを飛躍させるようなすごいものだった。