キャンピングカー
隠れ家のようなダイネットで大人の時間を確保?!家族向けのキャンピングカー「Gran Cruise WD」

デュカトベースのキャンピングカー「Gran Cruise WD」
今年の「ジャパンキャンピングカーショー2023」でひときわ話題となったのは、欧州商用車市場で絶大なシェアを誇るFIAT PROFESSIONAL「DUCATO」(以下、デュカト)をベースにしたキャンピングカーです。
岡モータースが発表した「Gran Cruise WD」(以下、グランクルーズWD)も、そのユニークなレイアウトから大いに注目を集めました。
国産商用バンでは見られない広々とした車内空間と、日本の細やかな技術が融合したグランクルーズWDを見ていきましょう。
Gran Cruise WD
ビルダー:岡モータース
タイプ:バンコン
ベース車両:FIAT DUCATO L2H2
乗車定員:6名
就寝人数:大人2名・子ども2名
全長:5,410mm
全幅:2,050mm
全高:2,650mm
参考価格:12,650,000円(税込)
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日本の気候に適した3重断熱施工

グランクルーズWDは、「デュカト」日本正規輸入モデルをベースにしたバンコンです。
季節や地域で寒暖差が大きく、湿度の高い梅雨がある日本でも快適な旅ができるよう、岡モータースでは室内環境にこだわっています。
3重の断熱施工を行い、内張りの内部の結露を防ぐ断熱塗装と、吸湿しない軽量断熱材を合わせて菌の発生を可能な限り防いでいます。

キャンパー部の窓はすべて断熱性に優れるアクリル2重窓とし、かつ通風量の多い「押し出しモデル」を採用しています。
暗い車中泊地では、照明をつけると車内が丸見えになるのが難点ですが、すべての窓に断熱プライバシーシェードを標準装備します。
虫の侵入を防ぐ網戸も内蔵するので、自然豊かなキャンプ場でも安心して窓を開けることができます。
フロントウィンドウ&サイドウィンドウにまでシェードが内蔵されているのも便利で、市販のマルチシェードなどを別途用意する必要がなく、一瞬でプライバシーを確保できます。
左サイドにあるエントランスには電動エントランスステップを備え、乗降を助けます。
次のページ▷ 気になるGranCruiseの内装を見ていきます!
「ダブル・ダイネット」が特徴的なレイアウト
全長5,410mm×全幅2,050mm×全高2,650mmという、国産商用バンをひとまわり大きくしたサイズは、かつてないレイアウトを実現します。
グランクルーズWDの「WD」は、ダブル・ダイネットを表しています。

車両前方にメインとなるダイネットがあり、並ぶようにギャレーが位置します。

そして車両後方にサブのダイネットと、扉で仕切られたマルチルーム。
マルチルームは通路のように通り抜けが可能で、リアドアからのエントランスにもなるよう設計されています。
細やかな気配りが感じられる内装
スタイリッシュな外観には欧州車の雰囲気をまといますが、内装には日本のキャンピングカーを知り抜いた岡モータースの知恵と技術が詰めこまれています。
デザインはシャンパンオークの家具に、撥水ブラウンプレミアムファブリックを組み合わせたナチュラルな印象。

ダイネット上部に並んだ棚にはティッシュホルダー機能を標準装備し、収納庫はソフトクローズ機能付き。
スイッチ類は人間工学に基づき、使いやすく配置されています。
光が射し込む明るい窓と調光可能なアンビエントライトで、一日のどの時間帯でも快適に過ごせそうです。
雰囲気の異なる2つのダイネット
1台の車の中に2つのダイネットをもつグランクルーズWD。

運転席・助手席を回転させて対面モードにした「フロントダイネット」は、家族全員がテーブルを囲める広さ。
テーブルは乗降時に邪魔にならないよう向きを変更できます。

一方、奥まった場所にある「リアダイネット」は隠れ家のような空間です。
壁際のインテリアラックもおしゃれで、ちょっとした飲食店の個室のよう。
気分に応じて、あるいは家族の誰かが先に就寝したときの予備として、スペースの使い分けを可能にした贅沢なレイアウトです。
大人用2段ベッドは常設にも
ベッドはフロントダイネットを展開して子ども2名、リアダイネットを2段ベッドに展開して大人2名が就寝可能です。

フロントベッドは1,750mm×930mmで、小学生くらいまでなら余裕をもって横になれるでしょう。

たとえば子どもたちがフロントベッドで寝た後に、後方のリアダイネットで大人だけの静かな晩酌タイム。

眠くなったら、リアダイネットの背もたれを跳ね上げることで1,900mm×850mmの大人用2段ベッドが出現します。
2段ベッドは寝つく時間が異なるときに個別に照明を使えたり、トイレに起きる回数が多い人を下段にすることで同乗者を起こさずに済んだりと、メリットの多い形です。
もしリアダイネットが不要なら、ベッドメイクをしたままにして、常設2段ベッドとして使うのもいいですね。
必要なものがコンパクトに揃ったギャレー

ギャレーには耐熱ガラスカバー付きの2口コンロとシンクを備え、跳ね上げ式のミニテーブルで調理スペースを拡張できます。

シンク下には左右どちらからも開く両開き冷蔵庫(85L)を標準装備し、フロントダイネットからもリアダイネットからも利用できる配置になっています。

プッシュアウト式のスパイスラックや、すっきりとビルトインされた電子レンジなど、必要なものがすべてコンパクトにまとまっています。
欧米車では大型冷凍冷蔵庫や本格的なオーブンを備えたモデルもありますが、短期の旅行が中心で、地方都市にも豊富な飲食店がある日本では実用的ではありません。
厳選された装備が、ちょうどよく収まったキッチンとして設計されています。
マルチルームにはラップ式トイレを標準装備
多用途に使えるマルチルームには、水を必要としないポータブルトイレ「ラップル」を標準装備します。

もともと介護や災害時の使用を想定しているラップ式トイレは、インテリア性にこだわらない傾向がありますが、専用家具のおかげでモダンな内装に馴染んでいます。
専用家具にはペーパーホルダー機能を備え、車両後方から廃棄物を取り出せるよう扉を設けるなど、工夫が凝らされています。
トイレを使わないときには家具ごとすっぽりベッド下に収納可能で、人が通り抜けできるスペースが出現します。

この工夫のおかげで、前述したようなリアドアからの出入りを可能にしています。
壁沿いには扉付き収納庫が並び、トイレを収納して床面を確保しておけば、着替えにも便利そうです。
マルチルームにはもうひとつ、とてもユニークな装備が。

貴重品を管理できるテンキー式金庫を、業界で初めて標準装備しています。
貴重品を置いたまま車を出入りすることの多いキャンプ中や、注目の「バンライフ」にも適した装備です。
過不足のない電装品
電源設備として315Aディープサイクルバッテリーと正弦波1500Wインバーターを搭載します。
充電は外部充電とインテリジェント走行充電システムによって行います。

夏の暑さ対策には省電力の12V直流クーラー、冬の寒さにはベース車の燃料を共有して稼働するFFヒーターを標準装備します。

天井にはマックスファン・ルーフベンチレーターを備え、外気を取り入れたいときや、室内の空気を逃がしたいときに活躍します。
まとめ
イタリア生まれの洗練された外観と、日本のビルダーならではの細やかな気配り。
その両者を併せもった期待のニューモデルがグランクルーズWDです。
とりわけ岡モータースは「ミニチュアクルーズ」に代表されるように、限られた空間の使い方に定評のある名ビルダーです。
モデルはまだプロトタイプで、量産モデルに移行するときには大幅な仕様変更の可能性もあるとのこと。
しかしその完成度は、デュカト上陸による日本のキャンピングカー・デザインの明るい未来を感じさせるのに十分なものです。